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plumeria

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「四王司さん、久しぶりです!私のこと、覚えてますか?」
「あぁ、東京でお会いした・・・今回は若宗匠にご同行されてるんですね?」

「はい、今日はお隣ですね。宜しくお願いします。私・・・誰もお知り合いがいないので」

つくしがそんなことを言って四王司と話してやがる。しかも妙に変な腰の捻り方で・・・。


それは宴会が始まるっていう時間、全員が揃って席についたときのことだ。

正面には爺さん。その隣に俺・・・鬱陶しいけどその隣が穂華。
牧野は予定通り末席の方で四王司と隣になってて、その位置が俺達から丸見えの所。つまり穂華が四王司を見やすいようにって事だろうが、俺にもつくしが丸見え。
何だってこんな離れた所から他の男とつくしが並んでるところを眺めなきゃいけねぇんだよ!

隣に座った穂華も何気にチラチラ視線が末席に向かってる。もう何分おしぼりで手を拭いてるんだか。

爺さんが簡単に挨拶をしてから会食は始まり、俺の周りにはこっちの幹部達が酌をしに来るってもんじゃない!
目の前がおっさんだらけになってつくしが見えない・・・あいつが演技のつもりでも知らず知らずのうちに四王司の気を引かないかとイライラしていた。

そして相変わらず機嫌の悪そうな穂華。
自分が箸で摘まんでるものを口に運ぶのも忘れて四王司の方を見ていた。てか、穂華がこんなに気にするほどあいつらはくっついてんのか?そう思って身体を横に傾けたら、目の前のおっさんも同じように傾ける・・・なんて邪魔なんだっ!

やっと目の前に誰もいなくなって末席が見えた。
つくしと四王司は何故か2人とも機嫌良く、やけにくっついて目の前の料理をつつき合ってる・・・あれだけ作法の稽古をしたのになんで四王司の皿から自分の好きなものを取ってんだっ!

「総二郎・・・もしかしたら牧野さんは四王司の息子の方が似合いはせんかの?」
「お爺さま!そんなことはございません。つくしは言われたとおりに四王司さんを誘惑・・・いや、わざといちゃついてるだけです。あれは本当に楽しんでるわけではございません」

穂華がすぐ横にいるから爺さんとの会話は超小声。でも、そんな気を遣わなくても穂華の耳には聞こえてなさそうだったけど。

「そうかのぅ・・・随分と嬉しそうに見えるがのぅ・・・」
「・・・そのような事はございません。何も意識してないからあのように笑えるんです。あいつはすぐに顔に出るから好きになったら速攻真っ赤になって上手く喋れないはず・・・」

「もう真っ赤じゃが?」
「はい?」

爺さんに言われてつくしを見たら確かに既に真っ赤だった!あれは照れてるんじゃなくて酒飲んでるんじゃねぇか?あいつ、滅茶苦茶酒に弱いのに!
つくしの手は四王司の肩に乗ってて耳元で何かを囁いてる。そして四王司はそれを聞いて同じようにつくしの耳元に口を・・・!
なにやってんだ!って俺が立ち上がろうかと思ったら、穂華の方がグラスをダンッ!とテーブルに叩き付けた!!

怖っ・・・すげぇ怖い目してやがる。
俺はそれを見た瞬間、自分の怒りが何処かに消えた。

「おい、穂華・・・そんなに気になるなら四王司を連れて部屋から出てもいいぞ?ちゃんと素直に話してこいよ」
「・・・と、とんでもないですわ。あんな人、どうでもいいんです。そこまで知らない人にあんな風に・・・女性に見境のない人は嫌いです!」

「そんなの気にしないんじゃなかったのか?自分に嘘ついてちゃこの先の長い人生楽しくないぞ?」
「お爺さまが牧野さんのことお認めになっても、私、諦めませんわ。総二郎様のことが好きですもの」

「でも、俺はお前じゃねぇし・・・」
「私は四王司さんなんて・・・あっ!」

穂華の一言でつくしの席の方を見た。


***********


「京都はいかがですか?牧野さん」
「はい!ご飯が美味しいですねぇ!こっちに来た日に嵐山で郷土料理いただいたんですがホントに美味しかったです」

四王司さんはどことなく美作さんみたいな感じで、優しくて穏やかだった。
上品で声も柔らかくて私に目の前の料理のことを色々と教えてくれた。
周りの人達は随分歳が離れていたから会話が出来そうになかったけど、その代わりに四王司さんがずーっと話しかけてくれていた。

だけど私が四王司さんを見ようとしたらその向こうにすっごく怖い顔した総二郎が見える。
しかもその隣の穂華さんまで総二郎とは話もせずにこっちを睨んでる。これは・・・私の誘惑作戦が成功してるってことよね?
このままヤキモチを焼かせて穂華さんが四王司さんに告白するように仕向けたらいいのよね?

よし・・・!頑張るわよ!見ててね、総二郎!

「えっと、四王司さんはお酒は飲めるんですか?」
「はい、大丈夫です。牧野さんは?」

「は、私?は・・・はい!めっちゃ強いです!」
「それは頼もしい!ではどうぞ。日本酒ですか?ビールですか?ワインも頼めるみたいですよ?」

「に、日本酒で」

あ、あら?お酒を飲ませてほろ酔い気分にさせようかと思ったのに私が飲むの?いや、でも私、本当は飲めないんだけど!
今更言えなくて私の前に置いてある冷酒用のグラスに四王司さんがお酒をとくとくと・・・ど、どうしよう!

「それでは乾杯しましょうか。再会を祝って!」
「ははっ!か、カンパーイ!」

四王司さんはくいっとお酒を飲んだけど、私はこれを飲んだら自分がどうなるのかさっぱりわかんない。以前ほんの少し飲んだだけで気持ち悪くなって吐きそうになったし。しかも冷酒なんて初めて・・・。
でも四王司さんが見てるから頑張ってくいっ!とそれを口に中に流し込んだ。

あれ?意外と美味しい・・・もしかして、これなら飲めるかも?

「美味しいですね、このお酒!実は冷酒は初めてなんですけど」
「あぁ、そうなんですか?まだ宴会も始まったばかりです。ゆっくり飲みましょう。急いで飲むと酔いますよ?」

「はい!ゆっくり・・・ゆっくり飲みます!」

これがヤバかった・・・既に1杯目で酔っていた。
このあと四王司さんと楽しく会話が始まった。こんなによく話す人だなんて思わなかったわ。私の話もよく聞いてくれて、総二郎よりも大人っぽい。こんな会話に慣れてないから、またあの時と同じ質問をしてしまった。

「四王司さん、聞いてもいいですか?」
「何でしょう?答えられることなら」

「ふふっ!えっとねぇ・・・好きなものは何ですか?食べ物、色・・・それと、どんなタイプの人が好きですか?」
「あっはは!すごく普通な質問ですね。食べ物はあっさりしたものが好きです。京料理は私にはよく合うんですよ。色は・・・ブルーかな?女性は・・・」

「あら!女の人は?好きな人、いるんですか?」
「・・・はぁ、まぁ。その人は別な人が好きみたいですけど。さぁ牧野さん、そんなことより私はこれが苦手なんですよ。食べてくれません?」

「はーいっ!私これ大好きですっ!」

つい、四王司さんのお皿からサイコロステーキを1つ、お箸で摘まんで自分の口にパクンと入れた。その瞬間を総二郎に見られてるとも思わずに・・・。
そのあとも西門での失敗談を話し始めて、四王司さんの耳元で私が厚化粧したら事務長に笑われたって言ったら、すぐに彼が耳元で「そのままが可愛いですよ」・・・だってーっ!!

「いやん、四王司さんったら!そうですか?薄い方がやっぱりいいですか?」
「牧野さんは大きな目をしてるからあまり派手にしなくても映えますよ。ホント、可愛いですね。若宗匠が羨ましいです。こんな可愛い恋人がいて・・・」

「あら、四王司さんもちゃんと伝えたらいいと思います。女ってなんだかんだ言っても告白してくれるのを待ってるんですよ。言ってくれないからわざと違う人を見てるフリしてるのかも・・・。勇気出して!四王司さん!」

そう言って四王司さんの両肩に手を置いた瞬間、上座の方からすっ飛んでくる人がいた!


「つくしーっ!お前、俺の目の前で何やってんだ!とっとと四王司から離れろーっ!」
「きゃああぁーっ!総二郎、ちょっと、何言ってんのよーっ!!」

「聡さん、あなたもよく知りもしない牧野さんにそんなに・・・!私、もう帰りますわ!」
「あっ・・・穂華さん、待ってください!穂華さん!」


あら?もしかして上手くいったんじゃないの?
会場を出ていく穂華さんを追いかけて四王司さんが走って行ったわ。私の誘惑作戦は成功したんじゃないかしら・・・?
お酒のせいで目の周りがぼーっとしてるし、身体がふらふらしてるから倒れそうになる・・・それをガシッと捕まえた腕の先には恐ろし顔をした総二郎が・・・。

「何処見てんだ!おいっ!お前・・・酒飲んだな?」
「・・・そう言えば飲んだ。うえ・・・ちょっと気持ち悪いかも・・・」

「それであんなに四王司にくっついてたのか!この俺がいるってのに・・・今晩も覚悟しやがれ!馬鹿野郎!!」
「いやだあぁ!総二郎、やめてって言ってもやめないんだもん、身体が持たないよぉ!」

「お前が悪いんだよ!俺以外のヤツに・・・・・・はっ!」


酔っ払っていた私にはよくわからなかったけど、この時会場はシーンとしていた。
目の前で総二郎が真っ青な顔して周りを見てる。それを見たと同時に私は彼の腕の中にガクンと倒れたんだと思う。


この後の記憶は全くなかった・・・。




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