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plumeria

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う~ん・・・頭がガンガンする・・・吐き気もする。
うわ、気持ち悪い・・・前にも似たようなことがあったような?

何処か静かな部屋で寝かされてる。それはわかるんだけど・・・ここは何処だろう。


「・・・目が覚めましたか?」
「・・・・・・」

その声は志乃さん?
薄く目を開けたら真上にはまた鬼みたいな顔をした志乃さんが私を見下ろしていた。うあわっ!と、思ったけど少し動かしただけでも頭がズキーンと・・・。
もう一度目を開けて志乃さんの方を見て、そのあとに時計に目をやったら薄ら見えたのは12時。

あれ?いつの間に帰ったんだろう・・・それを聞こうにも上手く言葉が出なかった。

「ホントにもう!行く前にもお話ししたと思うのに、何で言うことを聞いてくれないんでしょうね、あなたって人は!牧野さん、あなた、宴会場で飲み過ぎて総二郎様の前で倒れたそうですよ?それでご隠居様の許可をいただいて総二郎様が背負ってお帰りになったんです!明日も野点があるのに何で総二郎様のご迷惑になるようなことをあなたがするんです!牧野さん、聞いてるの?」

「・・・はい、聞こえてます。でも・・・全然覚えてなくて」

「記憶をなくすほど飲む人がいますか!自分がお酒に弱いって知らないわけじゃないでしょう!」


志乃さんの話によると、あのあと私は酔っ払って総二郎に倒れかかり、そのまま宴会場から出されたらしい。お爺さまからもさっきお電話があって、私の様子はどうかと・・・。
志乃さんが涙流しながら平謝りしたと真っ赤な顔で怒られた。

「あの・・・総二郎は・・・」
「総二郎様は明日の支度をされてます!あなたを家元夫人にするにはどれだけお稽古積まなきゃいけないのかと思うと・・・あぁっ、頭が痛い!」

「ははは、大変ですねぇ」
「牧野さんっ!!誰のせいで悩んでると思うの!」

その声・・・頭に響くんだけど。


私が志乃さんにお説教されていたら襖が開いて総二郎が入ってきた。
ここで志乃さんはお小言を止めたけど、相変わらず顔は鬼のまま。総二郎からも「まぁ、そのぐらいにしてやって」と言われてようやく部屋から出て行った。

総二郎は私の布団のすぐ横に座って呆れたように顔を覗き込んだ。でも彼の方はそこまで怒ってないみたい・・・情けない顔した私のことをクスクス笑っていた。

「大丈夫か?お前、ホントに酒が弱いんだな。もう少し鍛えないとな」
「・・・ごめんなさい。あのね・・・四王司さんにね、お酒飲めますって言っちゃったの。だってね・・・」

「あぁ、もういいって。あいつらなら2人で飛び出していったまま帰ってこなかったから、もしかしたら話が出来てるかもしれねぇぜ?お前が頑張ったから穂華にも効果があったんじゃねぇかな・・・すっげぇヤキモチ焼いてたから」
「ホント?四王司さんもね、自分の好きな人は別の男性が好きみたいでって言ってた。ふふふ、上手くいくといいねぇ・・・」

「だからってお前も四王司にくっつぎすぎ!誰が耳元まで近づけって言ったよ!・・・あぁいうの、2度と許さねぇからな!」
「あはっ!総二郎までヤキモチを・・・うっ、痛ぁ、頭が・・・!」

私が頭を抱えたらすぐに総二郎が髪を撫でてくれる。
ほんのちょっと困った顔で笑いながら・・・。

見たら総二郎も寝る格好をしてたから私がお布団を少し上げたらそこにすっと入ってきてくれた。


「お酒臭い?・・・ごめんね、総二郎」
「くくっ、そんなに匂わねぇよ。お前が少しの酒で酔っただけだろ?もう誘惑なんて言葉を使うなよ・・・俺が焦るから」

「あれ?じゃあ総二郎を誘惑しようかな?」
「ばーか。俺にはそんなの効かねぇよ。誘惑される前にお前に落ちてるんだから・・・」

流石に2日連続の緊張する茶事で私たちは昼間同様完全ダウン。
結局このまま朝まで布団の中で手だけ繋いで爆睡した。


でも、ちゃんと感じてる・・・隣にある体温と寝息。
大事な人が横にいる、温かい腕が私を抱き締めてる・・・優しい香りが私を包んでくれていた。



**********



次の日の野点は西門の京都支部の連中を爺さんの屋敷に集めてそこの庭で行うもの。
特に緊張するものでもなく、俺が京都に来ているからやるだけであってつくしの事もまだ正式発表前だから何も言わない。ただ、昨日の宴席での一件があるから既にバレバレだけど。

つくしは今日も初夏に似合う着物を着て俺の手伝いをするだけ。
まだ野点の経験はないが、念のため朝飯の時に簡単に説明しておいた。

「野点ってのは言葉通り外で茶を点てることだけど、これに関しては絶対にやらないといけない作法ってのはないんだ。自然の景色を見ながら行うから茶花も生けないし、もちろん掛け物もない。俳句や和歌を詠むって時もあるけど今日はそれもないし。
揃える道具は茶道具だけ。移動式の釜戸を準備するからそこで湯を沸かしていつも通りに茶を点てる。客との会話も比較的自由だから気は楽だ。ま、俺の後ろにくっついとけ」

「うん、わかった。茶棚を用意するのね?お道具の準備と片付けぐらいが私のお仕事?」
「俺の面倒みとくのがお前の仕事」

そう言うと真っ赤になって怒り出す。「朝から何言ってんのよ!」って叫んだ声で、また志乃さんが血相変えて飛んできた。

「今度は何事です!朝からそんな大声出すなんて・・・牧野さん、今日の野点はとにかくおとなしくなさい!いいですね?総二郎様のお側を離れないように!総二郎様、よーく監視してくださいませね!それと逃がさないでくださいね、あとが大変ですから!」

「志乃さん・・・」

やっぱり志乃さんはつくしの事を野生動物扱い。
まぁ、仕方ないかって2人で顔を見合わせ笑った。


そして着物に着替えて一乗寺に向かい、1番初めはやはり爺さんへの挨拶から始まる。
もうこれで3度目だから気は重たくなかったが、つくしの昨日の醜態を詫びなきゃならない。少々困ったような顔をしたつくしを連れて爺さんの部屋に向かった。ま、もう謝るのに慣れてしまったからいいんだけど。

「おはようございます。お爺さま、昨日の宴席でのご無礼、再度お詫び申し上げます。お先に失礼して申し訳ありませんでした」
「お、おはようございます。お恥ずかしい所をお見せして申し訳ございません。お酒が弱いくせについ飲んでしまいまして・・・ご迷惑おかけしました!」

「おはようさん。ははっ!面白かったのぅ、総二郎。お前が選んだ人は西門では迎えたことがないような女子じゃの。これからが楽しみじゃわい。今日はのんびりしておきなさい。この野点は総二郎をこっちの人間に会わせるためだけのものじゃからな。酒は飲まんから安心おし」

「は、はい!出されても飲みませんから!」
「だから出ねぇよ!」

「仲がいいのぉ。まぁ、これも総二郎が言うように時代の流れかの・・・お前さん達はそのまま楽しくやっていくがいい」


爺さんはつくしの事を少しは気に入ったんだろうか。
今日は随分と機嫌よく迎えてくれた。


不思議なヤツ・・・こいつの笑顔はいつの間にか味方を増やすんだよな。
たった3日間でこの偏屈じじぃを笑わせたんだ。


「お前、ある意味大物だな」
「え?京都に来てから太った?」

「そういう意味じゃねぇよ・・・」

野点の準備をしに2人で並んで庭に向かう。
息苦しかったこの屋敷の空気が柔らかく感じるのは俺だけなのかな。



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