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<side陽翔>
「え?花沢さんの事を詳しく?」
「何でもいい。出来たら趣味とか・・・何か知らないか?」

俺が聞いているのは以前牧野の張り紙のことを伝えてきた小坂尚人。
自分の家が花沢家と知り合いだってことで子供の時のあいつを知ってるって言っていた。だから何か情報が得られないかと思い、心とは裏腹に興味本位を装って尋ねてみた。

「花沢さんの趣味?何かあったっけ・・・ホントに社交的な人じゃなかったし、俺、男にも会社にも興味なかったからなぁ・・・」
「よくわかんねぇけど、ああいう家の子供って特殊なことしたりしてないか?ほら、噂だとわざわざ子供の時から海外でライフル使ったりとかするんだろ?日本じゃ難しいからさ」

「あぁ、美作さんね。ははっ!そうらしいな。いい腕してるって聞いたことあるな。あれ・・・そう言えば全然違うけど楽器弾いてなかったっけなー・・・えっと」

楽器・・・あの子供はヴァイオリンを習いに来てるって言わなかったか?
まさか、花沢まであそこでヴァイオリンを習ってるのか?そこに牧野を連れていったんだろうか?


「ヴァイオリン・・・とか?」
「あっ!そうそう、それだ!1回聞いたことがあるよ。まだ小学生の頃だったと思うけど、花沢さんの誕生日のパーティーだったかな?クリスマスか・・・まぁ、どっちでもいいんだけど、すげぇ上手いからってリクエストされてさ。思い出した!」

「へぇ・・・流石だな」

「でもさ、花沢さんの親父さんが大反対で嫌そうに聞いてたよ。お袋さんはそこまで反対じゃなさそうだったけど。何でも日本じゃ有名な先生付けて本格的にレッスンさせてるのはお爺さんだっけお婆さんだっけ・・・これもどっちでもいいんだけど、その人らしくてさ。親父さんが怒ってその先生、日本で演奏できなくさせたって聞いたよ。どういう圧力掛けたのかは知らないけど、息子に音楽は必要ないのに夢中にさせたってすげぇ怒ってさ。うちの親が花沢物産を敵に回せないってビビってた・・・うん、そういうことがあったな」


あの社長のやりそうなことだ。
気に入らない人間も会社もすべて排除・・・世の中自分の力でどうにでもなるって思ってんだ。

「でもさ、確か花沢さんのヴァイオリンってすげぇ高いストラディバリウスで数億するって聞いたぜ?それは手放せないから花沢さんが持ってて、あの人は基本、それしか弾かないんだって言ってた。すげぇよなー、楽器で数億。ま、興味ないけど」

「それしか弾かない?そういうもんなのか?」
「そうじゃねぇの?金持ちのすることはわかんねぇけど、音楽家って拘りありそうじゃん?俺達にはわかんねぇけど”音が違う”っての?全然区別できないけど」

それだけの腕前なら教えてもらってる訳じゃなさそうだ。
もしかしたら家で反対されたヴァイオリンをあそこでこっそり弾いてるのか?自分のヴァイオリンをあの店の2階に保管して?

考えられるかもしれない。
誰にも邪魔されずに自由に弾くんなら、あんな店の2階なんて花沢家には見つからないだろう。あそこがあいつの唯一楽しめる場所っていうなら、恋人になった牧野を連れて行ってもおかしくはない。

「小坂、悪かったな。変なこと聞いて」
「別にー。でもさ、何調べてるか知らないけど花沢さんを敵にすんなよ?大学にいられないぜ?」

「はは!そんなバカじゃねぇよ」


調べてもどうしようもないってことはわかってる。
ただ、なんで手を繋いであんな場所に向かったかが知りたかっただけ・・・認めたくなかっただけだ。

あの2人が恋人に・・・あんな場所で牧野が花沢の腕の中に入ってる姿なんて想像したくなかっただけだ。


*************


試験が始まった。

この大学の試験は3日間。1日目の今日は必須科目の英語のみ。基礎英語から聞き取りの試験と長文英語を訳していくもの、それと教授との英会話。
朝から緊張してご飯がいつもの半分しか食べられなくて、それなのに吐きそうだった。

いつもの時間に部屋を出たら珍しく花沢類も出てきてびっくりした。こんな時間に活動する彼をあまり見ないから。

「おはよう!どうしたの?早いね」
「今日試験でしょ?一応受けるし」

「あぁ!そうだよね。花沢類だけ午後からってことはないよね!」
「・・・あんた、朝から元気がいいね」

「そんなわけないじゃん。朝ご飯、いつもの半分しか食べてないから試験中にお腹が鳴るかも・・・」
「・・・ぷっ!」


階段を一緒に降りて門まで出たら「じゃあ、あとでね」って手を上げて、私は歩いて大学に行く方に足を向けた。そしたらグイッと腕を引っ張られて駐車場の方に・・・守衛さんに花沢類が「黙ってといて」って一言言うと「畏まりました!」・・・だって。
いつの間にかこの守衛さん、花沢類の言うことを聞くようになってる。

彼の車に乗るとすぐに寮を出て大学と違う方向に向かった。

「あれ?ちょっと!こっちじゃないよ?花沢類」
「・・・大丈夫。間に合うから」

「大丈夫って・・・朝だって貴重な時間なんだよ?どうするの?」
「だってお腹が鳴るんでしょ?」

花沢類は車を寮の近くのお洒落なパン屋さんに停めた。そして「勉強しときな」って言って店内へ。
外見からして高級そうなパン屋さん・・・ガラス窓からちょっと見える店内もこの時間から焼きたてのパンがすごい数並んでる。花沢類は何を選んでるのか知らないけどお店を出る時には大きな袋を抱えていた。

「どれだけ買ってきたの?うわっ、でもいい匂いーっ!」
「好きなの食べな。あんた、空腹だと思考能力なくなるんでしょ?」

「失礼なっ!でも、いただきまーす!」
「俺にも小さいの・・・」

花沢類が手渡してくれた可愛い紙袋の中からサンドイッチを取りだした。まだ挟んである卵が温かい・・・!彼には一口サイスのくるくるサンド。食パン生地に卵やツナやハムがクルクル丸めてある可愛いの!
それに別の袋にはホットコーヒーがあって赤信号になってから花沢類に渡した。

大学までは車で10分もかからなかったから駐車場に停めてから時間いっぱい朝ご飯と試験勉強。私も彼もパンを頬張りながらの会話で何言ってるのかさっぱり・・・。

「あっ!花沢類、自分の試験勉強しなくちゃ!ごめんね、当日まで私の事で振り回して」
「・・・今更言うの?昨日もあんたの勉強しかしてないのに?」

「・・・大丈夫なの?」
「うん、多分。1問ぐらい間違えてもいいでしょ?」

「1問・・・」
「終わったらラウンジにおいで。一緒に帰ろ」


流石子供の時から5カ国語話せるだけのことはある。
実はあとで聞いたんだけど国際経済学部の試験は英語で書いてあるらしい。


**


「はい、終了ー!明日は専攻科目のテストです。教室の確認、しておくように」

試験官の声が響いて今日の試験が終わった。
なんとか書けたかな?って思うけど流石に1問だけのミスじゃ済みそうもない。特待を外されない程度の成績でこの答案が戻ってきますように!って手を合わせながら回収員に渡した。

そして急いでラウンジに行ったらに西門さんが寝てた。

「あれ?西門さん・・・試験は?」
「あぁ、牧野ー・・・それがさ、寝坊しちゃって。ははっ!受けられなかったんだ」

「えっ!どうするの?大丈夫なの?まさか・・・追試?」
「多分・・・ま、いいけどさ。追試の方が1人で気楽に出来るし。類、待ってんのか?」

「うん、ここに来るように言われたからさ・・・お邪魔します・・・」


西門さんの向かい側に座ったけど落ち着かない。花沢類がいないのにこの人と2人っきりになんてなったことがないし。
だから明日のフランス語の勉強でもしようかと教科書を出したら、西門さんが面白そうにそれを奪い取った。

「あっ!何すんのよ、返してよ!明日、フランス語なんだから」
「俺が教えてやろうか?何処かわかんないところあるのか?」

「えっ!西門さん、茶道家のクセにフランス語わかるの?」
「前に言ったろ?俺はフランス語もドイツ語も完璧なの!で?・・・何処がわかんないんだ?」

「あ、じゃあさ、ここなんだけど・・・」

そう言って西門さんと顔を近づけた時、いきなり私と西門さんの間にバサッと何かのファイルが!
『国際経済思想』・・・?まさかと思って視線をあげたらご機嫌を損ねた花沢類の顔が私の真上にあった。

「あんた・・・誰に教わってんの?」
「へ?あ、あの・・・時間があったから西門さんに明日のフランス語を・・・」

「そんなに怒んなって!今勉強終わらせときゃ夜は楽しめるだろ?類」


「総二郎・・・次は許さないからね。牧野、帰るよ」
「あっ!待って、花沢類・・・!」


ニヤニヤ笑ってる西門さんを残して私は急いで花沢類のあとを追いかけた。
前みたいにすごい速さ・・・鞄を抱えて必死に走ってたら、いきなり止まった彼の背中にまた体当たりした!


「うわっ!急に止まらないでよーっ!いつもこうなんだから!」
「・・・ごめん」

「は?何が?」


「俺・・・意外と嫉妬深いかも」


・・・私の方を見ずにそう言った花沢類の耳が赤い・・・。
クスッと笑うとまた急いで車まで歩くから、私も驚いてまた追いかける。


「待ってー!花沢類」
「・・・やだ、そっちが遅い!」



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