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花沢類の口元には酸素マスク、右腕には点滴、左腕は包帯が巻かれ、ベッドの横には心電図を始め色んなモニタリング機器が並び、それらが小さな音を立てていた。病衣の胸元からは数本の管が伸びてて額にはガーゼが当てられてる。首にも包帯があった・・・体中にはそんな傷が沢山あるんだろうか。

顔は・・・額以外にはそんなに傷らしいものはなかった。
すごく綺麗な寝顔のままそこに横たわっていてそれが逆に怖かった。このまま・・・目を開けないんじゃないかって思わせるほど綺麗なんだもの。


ゆっくり近づいて真横まで行った。
彼の右腕だけが布団の腕に出されてて、そこを触ろうとしたけど自分の手が震えて前に出ない。そしたら加代さんが私の手を持って花沢類の手の平に重ねた。


温かい・・・そう思った瞬間、涙がポトポト落ちて彼の手を濡らした。


そして椅子を出されてそこに座り、彼の顔を覗き込んでその手を強く握った。

「花沢類?私・・・来たよ?ねぇ、目を開けなよ・・・パスタ作って待ってたんだよ?どうして・・・どうして、こんな・・・!」

握った手を自分の頬に当てて指を絡めた・・・その温かさは私を救ってくれたけど、今度は声が聞きたいよ?その目が見たいよ?花沢類・・・いつもみたいに「お待たせ」って言ってよ!

声を押し殺して泣いていたら加代さんがそっとハンカチを出してくれた。それを受け取って流れる涙を拭いたけど、次から次へと溢れてきて止まらない。自分の心臓が引き千切られるような気がして息をするのがやっとだった。


「・・・類様はいつもあなたのことをお話しでした。高校生の時でしたかしら・・・あなたが道明寺様とお付き合いされていた頃からですわ。でも、いつも嬉しそうに、楽しそうに・・・笑顔が素敵な子がいるって。会うことがあったら加代もきっと好きになるよって。ご自分の彼女でもないのに、まるで恋人のようにお話しされるので私も牧野さんも事をよく知ってるような気になりましたの。ですから先ほどあなたを見たらすぐにわかりました。あぁ、この人だって・・・」

「花沢類が・・・私の事を?」

「はい。類様はお小さい頃からご両親様が忙しいのでお1人が多かったのはご存じですか?私がずっとお育てしたので気を許しておいでなのです。あなたに恋をされてるんだって・・・そう感じていました。そんなお顔でお話しでしたから」


花沢類の手を持ったまま、私は加代さんの方を見た。
加代さんも椅子を持ってきて花沢類の足元の方に座り、そこから我が子を見るような目で彼のことを見つめた。この人も随分泣いたんだろう、必死に笑顔を作ろうとしてるけど目の下が腫れてる・・・それに今頃気が付いた。

「現在ご両親様はフランスに滞在中で、急ぎの要件を済ませたらここにいらっしゃいます。本当はここにはご家族しか入れないのですが、私がご両親様に頼んであなたの面会の許可をいただいたのです。あなたがいてくれた方が類様は喜ばれるでしょうし、意識の回復も早いかも、そう思ったのですわ。ごめんなさいね、無理を言ったのに来ていただいて」

「無理じゃありません!私は・・・私は彼がいないと・・・!」

「・・・そうですか?ありがとう・・・類様が起きてればいいのに。今の一言、すごくお喜びになったのにねぇ・・・」



続いて加代さんは事故のことを教えてくれた。

私のアパートに来る途中、交差点の1番前に花沢類の車は停まっていたらしい。そこに右側の道から大型トラックが猛スピードで走行し、何処かにぶつかった後で交差点に進入、真っ直ぐ彼の車に向かって突っ込んできたと。
花沢類が車を動かして移動する時間も当然無いし、避ける事は不可能だった。ただ、完全に真っ正面から来ると思ったトラックが寸前で少しスリップして彼の車のフロント部分に大型トラックの側面が当たる感じになって正面衝突にはならなかった。

でもそこは猛スピードの大型トラック、それだけでも彼の車の前面は大破した。
直接輸入車で左ハンドルだったのが幸いしたのか、奇跡的に怪我そのものは酷くはなかった。左腕は骨折したもののそのほかは大きな怪我はなく打撲程度。ただ何処かで頭を打ち付けたのか意識を失った状態で車から運び出されて病院に入り、腕の手術がすぐに行われたけど意識の方が戻らない。

「CTなどで確認しても脳に異常はなさそうでした。あとはご本人が目を覚まされてお話しが出来るか、記憶がちゃんとあるかどうか、手足が動かせるか、目が見えるか・・・それを確認しないことにはどうにもわからないのです。今はまだ事故から数時間・・・このぐらいの時間は目が覚めないこともあるようですが、このままずっとだと・・・それは医師にも予測できないんだそうです」

「意識が戻らないって事もあるんですか?それって・・・ずっとこのままって事?」

「そうです。何故意識が戻らないのかって言われてもわかりません。検査数値では異常はなくても、実際そのまま意識が戻らずに・・・というケースもあるそうです。私は信じませんけどね・・・類様はこう見えて強いから。きっと目を覚ますと思うんです。目を覚ましたときに傍にいるのは大好きな人の方がいいでしょう?だからあなたに来ていただきました。牧野さん、どうか類様のお傍にいてあげてください。類様の口からあなたにちゃんと言葉を伝えられるように・・・お願いします」


私が握ってる彼の手は、この日動くことはなかった。
私は一晩中その手を離せなくて、時々彼の頬を撫でながら朝まで過ごした。


「花沢類・・・私はあなたが目を覚ますまでここにいるよ。今度は私が傍にいる。約束するよ・・・」



次の日、私は会社に休暇願いを出した。

もしかしたらこのまま退職になるかもしれないと思ったけど、そんなことはどうでもよかった。
この人の傍を離れることは出来ない。何よりも大事な人だから・・・目を覚ますまで何日でも、何ヶ月でも、何年でも・・・もしかしてそれが一生って言われてもここを動くことは出来なかった。


花沢類はその日の夕方特別室に移された。

そこには私用のベッドも用意されたけどそこに横になる気はなかった。彼の手を握ったまま祈り続けた。
私のものは加代さんがすべて準備してくれてその日の夜はお屋敷に戻っていった。

広い部屋には二人きり・・・昨日から降り続いてる雨は止む気配なんてなかった。今日も窓に激しくぶつかって雨音を響かせる。
その音を不思議と怖いと思わなかった。

たとえ目を閉じていても私の横に花沢類がいるから。


「花沢類・・・今日も雨が降ってるよ。でもね、私は大丈夫。だから心配しないでね」


柔らかい彼の髪を撫でながらそう声をかけた時、バタバタと足音が聞こえてバン!と、この部屋のドアが開いた。
驚いて彼から手を離し、入り口を見たら花沢類そっくりの女の人が泣きそうな顔をして立っていた。そしてベッドに寝ている彼を見るなり小走りで近寄って、その身体に縋り付いて泣き出した。

「類!類・・・!目を開けて、類・・・どうして起きないの?ねぇっ!類・・・!」


お母様だ・・・この人は花沢類のお母様だ。それはすぐにわかった・・・あまりにも似てるんだもの。
綺麗な色の髪も、薄茶の瞳も白い肌も・・・顔の形なんてそっくり。すごく綺麗なお母様だった。

骨折した左手の包帯を撫でながら、酸素マスクを少し外して頬にキスなんてして心電図のモニターを睨んで額のガーゼを触りながら・・・小さな声で何度も彼の名前を呼び続けた。

私はその光景を見ながら何も言えなかった。



私の所に来たりしなければこんな事故には遭わなかったのに・・・そう言われてる気がして。




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2018/07/08 (Sun) 11:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

水香様、こんにちは

あぁっ!こっちまで・・・(笑)ごめんなさいっ!

勿論顔は大丈夫です!そこは何があっても死守します!
ちょっと腕1本だけポキッと・・・あ?それでもダメ?すみません~💦

病室イチャイチャ・・・イチャイチャしてませんって!
まだ出来ない出来ない、類君寝てますから。

起きる気があるかどうかはわかりませんねぇ・・・類君だもん。


短編ですからもうすぐ終わるんで、悩まずに待っててください。
(待たせてばっかり・笑)

2018/07/08 (Sun) 11:34 | EDIT | REPLY |   
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2018/07/08 (Sun) 13:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

はい、再開してみました。このまま何も起こらなければいいんですが・・(笑)
色々とご心配いただきありがとうございます。

家族の方も無事退院しまして普通に戻りましたが、京都ですので今回の大雨で大変だったようです。
幸い近くに川もありましたが被害はなかったみたいです。

でも、地震、入院、大雨と続いて疲れてる様子・・・母は心配ですわ・・・。


そして、類君は両方のお話しで大変なことに💦
大変申し訳ございません!!

なんとか両方のお話しを早く明るい方向へ戻さねば・・・!!
頑張りますので応援宜しくです(笑)


イベント♥
楽しんでいただけたら嬉しいです。

初めての合同企画です。類書き作家さんが頑張って総ちゃんを書いたり、その逆だったり。
私は・・・えぇ、どっちでもいいんですけどね。

短編が苦手なのに短編集・・・事件が起きないとお話しが書けない私には苦しい日々でした。
1話なのにねぇ・・・それが書けないとは。
あっという間に書いてしまう他の作家様に必死でついていきました(笑)

サイトは9月までありますのでゆっくり読んでくださいね!

今日はありがとうございました。

2018/07/08 (Sun) 17:26 | EDIT | REPLY |   

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