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陽翔が由依さんとあの日、この店を見に来ていた?
私たちがここでご飯を食べてる時にこの2人はそれを見ていたの?

どうして?どうしてそれだけのことでこの店を燃やそうと思ったの?


陽翔は何も言わない由依さんに代わってこれまでの事を私と類の前で話した。
試験前、私と類がこの店に入るのを偶然見てしまった由依さんが私たちが付き合い始めたんだと陽翔に教えたこと。
それを確かめようとした陽翔が大学を休んでまでここに来て類のことを橋本さんに尋ねたと・・・。


「・・・牧野が花沢のことを好きだとは言ったけど付き合ってるとは言わなかったから、どうしてこんな店に手を繋いで入るのか、ただそれが知りたかったんだ。そんな関係になったのかと・・・マスターはなにも教えてはくれなかったけど」

「嘘をついたわけじゃない。本当に陽翔と話をしたときには付き合ってなかったのよ。そのすぐあとなの。わざわざ報告しなくてもいいと思っただけよ」

陽翔の背中側から私がそう言うとほんの少し顔を向けたけどすぐ元に戻した。
だから陽翔の表情はわからない・・・今、どんな顔をしてるんだろう。震えてるのは手だけじゃなくて身体全体が小刻みに揺れてる気がした。

「ただ、ここがヴァイオリン教室をやってるってことはわかった。子供がレッスン時間を確認に来たからな・・・それで、あんたのことを小さい頃から知ってるって言った同級生にヴァイオリンが弾けるって聞いたから・・・あんたがここで牧野にそれを聞かせてるんだって思った」

「・・・俺が家でヴァイオリンを弾けない理由を知ったわけ?」

「そうだ。あんたの父親が唯一の趣味を取り上げたからあんたは弾き場所を失ったってな。だから、ここはお前にとって特別な場所なんだろうって思った。そして牧野は・・・お前の特別な場所に入れる関係になったんだって。・・・だから、もうここには来ないつもりだったのに、俺がお前らの後をつけてここに来た時に由依までが確認しに来てたんだ」


陽翔の説明はそのあとも続いた。

由依さんは初めにここの2階で私と類が身体の関係を持ってるんだって陽翔に伝えたこと。それを信じたくなかった陽翔がヴァイオリンのことを調べて、そしてもう私のことは諦めて由依さんとも別れると告げたこと。
『何が起きてももう2度とお前を抱かない』・・・陽翔はそう言って由依さんと別れ、その日の夜・・・ここが火事になった。


「お前達がすごい勢いで飛び出したのが部屋にいてもわかったから何が起きたのかと思ってベランダから確認したら花沢が慌てて車を出した。その時に何処かから白い煙が上がってるのが見えて、それがこの店の方向のような気がしたんだ。
まさかって思った・・・でも、由依ならやりかねないって気もあって急いでここまで走ったんだ。そしたら・・・想像通りだった」

そこまで話しても由依さんはまるで他人事・・・震えている陽翔に比べると腕組みして口を尖らせて、私たちの事を鬱陶しいと言わんばかりに大きな溜息をついていた。


許せない・・・本当に由依さんがしたのなら許せない。

ここには沢山の思い出があったのに。お金じゃ買えない大切な物があったのに・・・それを2度と触れることが出来ないようにしたのが彼女なら絶対に許さない!

私が由依さんの方に行こうとしたら先に動いたのは類だった。
少しだけ片手を上げて私の動きを止めた。


************


「齋藤、お前達がこの店の前に来たのは試験終了日の午後ってこと?」

「え?あぁ・・・そうだ」

由依というこの子のこれまでのやり方は知能犯って言うより思いつきの無計画・・・だからなにも証拠を残してなくても誘導尋問に自分から簡単に喋ってしまうタイプだと思った。
それなら喋らせてしまえばいい。牧野が少し感情的になってるみたいだから前に出るなと合図をして、俺がその子に近づいていった。


「あんた、この辺りの人通りが少ないからって油断したでしょ。あんたの写真持って徹底的に調べ上げたら目撃情報なんていくらでも出そうだよね。特にこの建物の周辺を確認してる所なんてさ・・・意外と目立つってわかってる?」

「・・・そんなわけないわ。ここのビルの裏だってフェンスと植木で見えないもの。目撃情報なんて出ないわよ」

「派手な格好してたらそれだけで記憶に残ると思うよ?」

「あの日は目立たない格好してたのよ。陽翔が警戒するから・・・だから特徴も何もないわ」

既にここで自分が建物の”裏”を調査したことを自分で話してるのに気が付いていない。
ここの建物の裏側が出火元だとは報道されてない。放火と断定してないし調査中だからこの情報は止められているはずだ。
勘のいい齋藤はここでもうピンと来てるようだった。

そして数日前の自分の服装も覚えてる人間はそんなにいない。いるとしたらその日が特別だったか、余程変わったことがあったか・・・目立たない格好だったから都合が良かったともとれる言葉。


「警察も誰がやったかわからないから調査が手間取ってるけど、1人の人間を特定したら調べるのは早いと思うよ。その日、何を何処で購入して、何時に何処を歩いて、そして何処に消えたか・・・このあたりの防犯カメラを全部調べたら何処かに映ってるかもしれないよね」

「そんなわけないわよ。調べたらいいわ。何処にも映ってないから」

「あぁ!計画的に防犯カメラを設置してある場所を避けたってこと?」

「・・・その手に乗らないわよ。私はその日、家から出てないもの。火のつけようがないわ・・・馬鹿馬鹿しい!」

「2階のドアの前・・・天井見た?防犯カメラがあったんだよ。多分データは管理会社に飛んでると思うけど」

「あんな場所につけてどうすんの?何も置いてないじゃない。そんなの嘘に決まってるわ」


俺と彼女のやりとりを齋藤と牧野は黙って聞いていた。
特に齋藤は俺の方なんて1度も見ないで彼女の表情だけを睨んでいた。2階になにも置かれてないだなんて、そこに行った人間しかわかんないのに簡単に答えてしまう。

動揺してないように見せかけて内心は不安で混乱してるんだ。
自分の言葉がおかしくてもそれを冷静に分析出来てはいない。


「実はもう調べてるんだよね。あんた、この先にあるコンビニの前を通ってるよね。火災がおきた15分後・・・結構急ぎ足で歩いてるところ、見させてもらったよ」

この言葉に咄嗟に驚いたように由依は反応した。

「何言ってんのよ。そんな所は歩いてないわ!私がここから帰ったのは・・・!」


そこまで言って自分の口を塞いだ。
私がここから帰ったのは・・・その道じゃない、そう言いたかったのか?


「その店の前を歩いてないなら何処を歩いてた?それに灯油なんて今の時期に購入したら珍しいから覚えられてるかもね」

「・・・バカじゃないの?灯油だったらこんなに燃えないわよ。試してみたらいいわ、すぐに消えるから」

「へぇ、試したんだ!なんのために?普通の人間はそんなこと試さないよ?」


ここでも由依は顔色を変えた。
確かにcantabileはガソリンをまかれた痕跡があるってことはわかってる。

ガソリンと灯油の違い・・・それは燃え方じゃなくて引火点だ。
引火点とは物質が揮発して空気と混ざって可燃性になる最低温度のこと。要するに物質に火を近づけた時に周りの空気が何度くらいだったら空気ごと燃えるのかということだ。しかも引火点ギリギリの場合は1度は引火しても火はすぐに消えてしまう。

ガソリンの引火点は-40℃以下、灯油は40℃以上
つまりガソリンは気温が-40℃という酷寒の地でも火を近づけるだけで炎が上がる。

灯油で火事を起こそうとしても40℃以上が続かないと引火してもすぐに火は消える。だから揮発性が高くてこの性質を持つガソリンの取り扱いは厳しく規制されてる。


「試したんじゃないわ・・・常識として知ってただけよ」

「まぁ、それでもいいけど。ガソリンって普通に買えないから車から抜くのが殆どだよね。あんたのことを警察に話して知り合いを当たれば誰かが自分の車からガソリン、抜いてるかもね・・・それでもいいんだね?」

「・・・!!」


全部自分で喋ってるんだ。
齋藤も牧野も聞いてる・・・後は警察でこの続きを喋ればいいと思ってスマホを手に持ったら牧野が俺の後ろから飛び出して由依に掴みかかった!


それは今まで見たことがない牧野の怒りだった。





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2018/07/14 (Sat) 03:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、おはようございます。

あはは!
あっさり自分で話しちゃって・・・!

こんなの類君にしてみたらチョロいもんですよね♥
もう落ち込んでる場合じゃないのでね~💦

目を覚ませ!類君!(あ、寝てるのは”雨”の類君かっ!💦)

もうねぇ・・・初めは由依ちゃんにどんなバツを与えようかなぁって思ったんですが、文字に出来ないようなことばっかりが浮かんでくるので(私の印象ガタ落ちを防ぐために)このぐらいで止めておきました。
もう由依ちゃんは表舞台から去ってしまうので新たな問題を類君に頑張って解決していただこうかと思っています。


雨・・・はい!今日は「雨」の日ですね!
こっちはもうすぐ終わります。

11時をお待ちくださいませ♥(・・・過ぎてるかな?笑)

2018/07/14 (Sat) 09:16 | EDIT | REPLY |   

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