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<フランス・花沢邸>


「類の具合はどうなんだ?」

「あなた・・・あまり変化はありませんわ。食事も全く摂れませんしどんどん痩せてしまって・・・本当にどうしたら
いいのかしら。やっぱりこの結婚がこの子をあんなに追い詰めてしまったのかしら・・・」

「今更言っても仕方ないだろう!あの時は受け入れるしかなかったんだ。類だってこの家の跡取りとしての自覚
ぐらいはあっただろう!この世界は政略結婚なんてのは当たり前だ!」

「でも、ああやって寝たきりの状態が続いてるのよ?父親としての心配はなさらないの?こうなっても類は誰も
自分の部屋に入れようとしないのよ?お医者様以外は私にだって出て行けって・・・」



今日もあの人達が俺の事で話してるのが聞こえる・・・今更なのに。

牧野・・・もう1年が過ぎてしまったね・・・

まだ総二郎と暮らしてるって信じられないけど・・・でもきっと気持ちは変わってはないはずだよね?

早くこっちでもケリを付けて牧野を迎えに行かなきゃね・・・
俺も結構仕事頑張ってさ・・・花沢も随分と元に戻ったんだよ?

「早く・・・会いたいな」


牧野・・・俺はずっと夢を見てたんだ・・・あんたと暮らす夢をさ・・・

寂しかった子供時代になんの思い出もなくて、広い家に使用人だけの生活と強制的にさせられた勉強。
司とあきらと総二郎と・・・あいつらと出会ってもこの寂しさはなくならなかったな。
学校で1人じゃないってだけで、何にも興味がなかったから誰ともどこにも行かなかったし。

牧野と出会ったからだよ?生きてて良かったって思ったのなんか。
だからさ、牧野だけは絶対にもう誰にも渡さないんだ。例えそれが総二郎でも・・・

だって、牧野は俺を選んでくれたんだから。総二郎じゃなくて俺を選んだんだよ?
俺は今でも牧野だけを愛してるんだ。

「邪魔をしてるのは・・・総二郎だよ。そんなこと、許さない」


ーーーーマキノ、ハヤクアイタイナーーーー


******

<西門邸>

昨日の牧野の様子がずっと気になっていた。
記憶がなくなる前までに見せていたあの表情を久しぶりに見たから・・・あの後もいつもなら1日の出来事を
報告に来るはずなのに、俺の部屋には来なかった。

今朝もいつもの時間に来なかった。
志乃さんに聞いたら少し風邪気味だから朝食を食べられなかったと・・・それが本当なのかどうか、いつもなら
確かめに行く俺がそれをしないことに、志乃さんも不思議そうな顔をする。

牧野の顔をまっすぐ見る自信がなかった。
もしかしたら記憶が戻っているのかもしれないと感じるんだ・・・今までになく。
その不確かな感覚を、確信に変えたくなくて・・・今は牧野を避けていた。

そんなこといつまでも出来るわけがないのに、俺はこんなにも臆病な人間だったのか?そう思うと自分自身に腹が立つ!
こんなんじゃ、今日の仕事に障りが出る・・・落ち着かせるために茶室に向かった。

そして誰も来させないよう弟子に言いつけて、1人で茶を点てて自らそれを飲み・・・心を静めた。


しばらくの時間を茶室で過してから、今日の仕事先へ向かうため準備をしていた。
今日は仙台から客があり、新しく作る茶道教室の打ち合わせをする。
見本となる教室を見るために本邸ではなく、外で会うことになっていた。

支度をする俺の後ろで微かな音がした・・・牧野がそこにいる。見なくても気配でわかる。


「総二郎、話があるんだけど時間つくってもらえるかな・・・」

そう言ってきた牧野の声がいつもと違う。
とうとうその時が来たんだと直感的に悟った。その声を聞いただけで牧野の顔を見ることが出来ない。
背中を向けたまま話す俺の事をどう思うだろう。

「今日は夕方から仙台支部の連中と会食があるから遅くなるかも知んねーな・・・」

「そう。すごく遅いのかな?私だったら何時でもいいの。待ってるからあんまり飲まないでもらえたら・・・」

「そんなの、約束は出来ないけど・・・大事なことか?明日じゃダメか?」

みっともないのはわかってるけど牧野の話を聞く時間を延ばそうとした。

「出来たら今日がいいの。寝ないで待ってるから。無理を言ってごめんね」

滅多にそんな事言わないお前が話す内容なんて、想像しただけでわかっちまうよ。
もし、俺の想像通りだったらどうするつもりだ?素直に受け入れられるのか?


結局一度も牧野の顔を見ずに屋敷を出た。
今日の帰りを早くするか、それとも嘘をついてでも伸ばすか・・・まるでガキのするような小細工も考えた。

それでも明日になったら聞かされるわけだ。

覚悟を決めて、会食を切り上げて早めに帰る決断をした。
会場からの帰り道で何となく牧野の好きなチーズケーキを買った。

話の内容がわかってるだけに少しでも重い空気にならないようにしたかった。
こんなもんでそうなるかはわかんないけど、この時は頭の中で自分のこの先の姿を想像していた。
こんな時に限って車もすんなり帰ってしまうんだ・・・渋滞もせずに。

そして、牧野は門まで俺を出迎えに来ていた。


「ただいま・・・早かっただろ?」

「お帰りなさい。総二郎・・・無理を聞いてくれてありがとう」


今、俺はどんな顔してお前の前に立ってるんだろうな・・・。せめて情けない顔になってないといいけどな。
門の入り口でどのくらいの時間牧野と向かい合ってただろう。


「話があるんだよな・・・今からちゃんと聞くよ。これ、お前好きだっただろ?」

ケーキの箱を手渡すと嬉しそうに受け取った。
そんな顔されたら今からの話がいい事のような錯覚をしてしまうじゃねーか。


部屋に入るとそのケーキの箱を開けて、こんな時間なのに食べる準備をしている。
最後だからそんなに頑張ってんのか?思わず出そうなその言葉を飲み込んだ。

「ここのケーキが人気あるって知ってたの?しかも、このチーズケーキってね、いつも夕方にはないのよ?
今日は奇跡だね!ありがとう、総二郎」

「別に知ってたわけじゃないけど会食がその店のすぐ近くだったんだ。それも最後の一つだったからやっぱり奇跡か?」

「ふふっ・・そうだね。総二郎はお酒飲んでるの?もう何もいらないの?」

「今日は飲んでないから・・・この前のワインの残り・・・あったよな?」

そう言うとワイングラスを二つ並べて、自分の前にケーキを置いて・・・
なんだか深刻な話が始まる雰囲気じゃないが、もうそろそろ俺の方から切り出してやるよ。



「牧野、話があるんだろう?俺の方は覚悟が出来てるから話せよ」


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Comments 2

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2017/04/11 (Tue) 13:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花様、こんにちは🎵

泣かんといてくださいね?
何があっても❗たとえ、総二郎がとんでもないことになっても。
総二郎が泣いたらどうします?
見たくないですよね。でも、私、大好きなひとをたまに奈落の底に突き落とすことがあるんですよね…。

ドキドキさせてすみません。
明日もぜひ、お立ち寄りくださいませ。
お待ちしております。

今日はありがとうございました❗

2017/04/11 (Tue) 16:20 | EDIT | REPLY |   

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