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「どうかしたの?そんな面白い格好でブランコに乗って」
「・・・え?あっ!花沢さん・・・どうしてここに?」

急に後ろから声を掛けてきたのは花沢さんだった。
今日も超爽やかにスーツ姿でニコニコ笑ってて、その格好を見てもお仕事中じゃないのかしら?って思ったけど秘書の姿もなくて1人だった。

「どうしてここにって言うか、その前の道を車で通りかかったら派手な日本人形がブランコ漕いでるから驚いちゃって。だって見てごらん?この公園冬なんだから殆ど色らしい色がないのにその振袖でしょ?どれだけ離れてても気が付いちゃうよ」

「あぁ・・・ですよね。だって脱ぐのに時間がかかるんだもん。そんなことより早く逃げたかったのよね」

「え、逃げるって?確か今日じゃなかった?総二郎との記者会見・・・会場には見に行けないけどテレビで楽しもうと思って今から急いで帰るところだったのに」


花沢さんはクスクス笑って私の隣のブランコに座った。
足が長すぎるからスゴく変・・・思わずその姿に笑ったら「あんたの方が可笑しいって!」って怒られた。

「あんた・・・その足元どうしたの?振袖にスニーカー?」
「・・・だって裏口から走って出てきたんだもん。草履は玄関だったし・・・取りに行ったら見つかるし、それに草履だと走れないし」

「走らなきゃいけない事情でもあったの?って言うかさ・・・色んな人が見てるからこのままだと西門にすぐ見つかると思うけど」
「うそっ!ヤバい・・・花沢さん、逃げよう!!」

「えぇっ!俺が逃げるの?やだよ、総二郎に殴られるじゃん!」
「総二郎なら私の方が殴りたいぐらいだからいいのよ!さぁ、行くわよ、車はどこっ!」

「・・・む、向こうに」


私はブランコからひょいっと降りて花沢さんの手を引っ張って車の方に急いだ。
そして「あそこ!」って言われた黒の高級車に2人で乗り込んで公園から移動してもらった。そしたらすぐに西門の着物を着た人が数人走ってきて、私は慌てて後部座席のシートにガバッ!と倒れ込んだ。

「花沢さん!西門の人が来たわ!ちょっと見てて・・・ねぇ、まだいる?」

「まだいるって・・・この車が走ってるんだから公園はもう過ぎちゃったけど、あちこちに着物着た人が走ってるのが見えるよ?もう少し伏せとく?・・・って、そんなにマズいことしたの?」

「私じゃないわ!総二郎が悪いのよ!」

「総二郎が?またなんで・・・」


・・・よく考えたら後部座席で伏せてるけど思いっきり花沢さんの膝の上だった。
そして彼は何も考えてないんだろうけど私の肩に手を置いてトントンと軽ーく叩いてる。いや、子供じゃないんだから。幼稚園のお昼寝みたいになってるのは何故だろう・・・。

それにこの体勢・・・総二郎のことを言えないぐらいめっちゃヤバい気がする。それを気にし始めたらスゴく恥ずかしくなった。
だって花沢さんの身体の方に顔を向けたら・・・いや、向けちゃダメだよね。

「あ、あの・・・花沢さん、ありがと。もう・・・起きようかな」
「そう?うん、もう西門の人はいなくなったしね。で、どうする?何処に行けばいいの?」

「何処に・・・?何処だろう」

「・・・ぷっ!」


そんなものわかってたらそこに行くわよ!わかんないから公園にいたんじゃないの!
お金もないし電話もないし・・・今からどうしたらいいのーーっ!


***********


リビングのテーブルには東京の地図、俺の横には親父とお袋。その向こうには泣きそうな志乃さんと呆れ顔の和真。
腹が立つことに原因となった隼人と赤ん坊は暢気にこの部屋の隅のソファーで寝っ転がって遊んでいた。時々泣くから気が散るのに、赤ん坊相手に怒鳴ることも出来ずに能天気な親子を睨んでいた。

「まだ誰も帰ってこないのか!手の空いてるヤツは屋敷の隅々まで探してくれ!」

「キャッキャッ!」
「おーっ!そんなにパパが好きかぁ?誠太郞、お前は逞しくてデカい男に育てよ?パパみたいになー!」

「・・・何処かから見かけたって電話は入ってこないか?念のため近所でつくしが出向いたことがある屋敷に問い合わせてくれ!」

「パブー、ブブー」
「もしかして腹が空いたのか?うーん・・・ここじゃ飲めないから料理長に頼んでミルクもらおうか?な、誠太郞」


「隼人、喧しいっ!!どうでもいがその子を連れて早く帰れっ!
気が散って仕方ねぇんだよっ!馬鹿野郎っ!!」

「ふぎゃあぁぁぁぁぁーーっ!!」

「お前、最低だな!こんな可愛い子に向かって・・・!あぁ、わかったよ、帰るよ!・・・じゃあなっ!」


何が最低だっ!俺に言わせたらこんな日に赤ん坊連れて来たお前が1番最低だっ!


とにかく煩い親子がいなくなってから部屋はより緊張してきた。
腕組みしてる親父、頬杖ついてるお袋・・・とても目出度い行事を控えている一家の姿じゃなかった。

そしてつくし捜索隊が活動を始めてから30分、本邸の廊下を走る足音が聞こえ始めて俺達は椅子から立ち上がった。

「総二郎様、北側の道では誰も振袖姿の女性を見た人はいません!」
「総二郎様、同じく東側の大通りでも誰も見てないそうです!」

「・・・わかった、他を探してくれ!お袋はホテルに電話して会見予定時間を1時間遅らせろ!志乃さんは各方面に同じ連絡を!」
「わかったわ!」
「畏まりました!」

まるでリビングが警察の特別捜査本部のようになっていた。
俺はそこで弟子達が持って来る情報からつくしの行きそうな場所を割り出そうと思ったが・・・・・・全然わかんなかった。
1時間遅らせたとしても探す時間はあと2時間ぐらいしかない・・・ホテルには最低でも30分前には入らないと・・・!


「総二郎様ーっ!!目撃情報がありました!」

「なんだと?何処でだ!」
「南側の総合公園で振袖の女性がブランコに乗っていたとっ!」


「・・・は?ブランコ?」


なんだそりゃ!なんであいつはそんな所で暢気にブランコで遊んでるんだ?
いや、想像はつく・・・中途半端に話を聞いて勘違いして、我慢出来なくなって裏口から逃走、でも何も持ってないから何処にも行けずにそんな場所で俺達が迎えに来るのを待ってるってわけだな?

全く・・・どーして毎回あいつはっ!


「わかった、すぐに迎えに行く。どうせ飛び出たのはいいが戻りにくくなったんだろう。お袋も志乃さんも誤解が解けたら問題ないことだからあんまりつくしを責めるなよ?俺があとで言い聞かせるから!」
「・・・偉そうに言うけど総二郎さんの素行が悪いからこうなるんじゃないの?」

「お袋、俺に対する小言も会見終了後にしてくれ。とにかく行ってくる。誰か、案内を!」

つくしがいるっていう公園まで道案内をさせようと思ったら、情報を持って帰った弟子が息を切らしながら続きを話した。

「いえ、総二郎様・・・それが牧野様は急に現れたイケメンの男性に連れられて何処かに行ったそうです!と、言いますか目撃情報に寄りますと牧野様が手を引っ張ってイケメン男性を車に乗せたように見えたと・・・」

「なんだと!つくしが他の男と車で?!」
「はい、黒のリムジンのようだったと!」


「・・・黒のリムジン?」


今度は何処の誰だっ!この辺りを黒のリムジンで彷徨くヤツ・・・思い当たるのはあいつらしかいねぇじゃねぇかっ!

俺は急いであきらに電話をかけた。

「あきらか?お前今何してんだ?!・・・1人か?2人か!答えろ!!」
『は?総二郎何言ってんだ?俺は今会議で大阪だけど。何かあったのか?お前、今日は婚約会見だろう?』

「・・・悪かった、またな!」
『えっ?!おい、なんだよ、そう・・・』


・・・って事はあいつかーーっ!!



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