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plumeria

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「・・・牧野、顔よく見せて?」
「どこか痛い?沢山あった傷はよくなったわ。ここにもね・・・ずっとガーゼをつけてたんだよ?」

花沢類の額を撫でようとしたらその手を彼の右手が止めて、そのまま引き寄せられた。
私の顔は彼の目の前に・・・でも、寝不足でクマは出来てるし、肌は荒れてるしで見せられたもんじゃない。

「あのさ・・・お化粧もしてないし、そんなに見ないでよ・・・恥ずかしいから」
「・・・綺麗だよ?いつもと同じ・・・よかった、ホントに牧野だ」

「花沢類は痩せちゃったよ。早くご飯食べられるようにならなきゃ・・・」
「牧野の作ったもの・・・それがいいな」

彼の手がまた私の頬を撫でて、さっきよりよりもはっきりした口調で会話をした。
本当に目覚めてくれたんだ・・・これは夢じゃないって思うと涙が溢れた。

**

花沢類と少しだけ話をした後、私はすぐにお医者様を呼んでお母様に連絡をした。
大勢のお医者様と看護師が詰めかけた特別室から1度出されて廊下で待ってるとお母様が慌てて駆け込んできた。
綺麗な髪を振り乱して、顔に汗を浮かべて。

「牧野さん!牧野さん・・・類は?類が目を覚ましたって・・・今はどうなってるの?!」
「お母様、今は先生達が検査しています。大丈夫・・・私、ちゃんと話しました。彼、ちゃんと言葉を話しましたから」

「記憶は?記憶はあるのね?牧野さんのこと、覚えてたのね?」
「はい、名前を呼んでくれました。お母様、彼はもう大丈夫です。もう少し待ちましょう?安心してください」


お母様はすぐ傍の椅子に倒れ込むように座り込んで、もう目から涙が溢れていた。
ハンカチを差し出すと震える手で受け取って、それで目元を覆った。私はお母様の背中を何度もさすって花沢類の検査が終わるのを待った。

暫くしたらカラッと扉が開いて、看護師が数人、色んな医療器具を片付け始めて最後にお医者様の部屋にお母様が呼ばれた。


私はすぐにでも彼の顔が見たくて許可が出たからすぐに部屋の中に飛び込んだ。

彼のベッドの周りは色んなものが外されてすっきりしてる。
まだ自分で起き上がることが出来ない花沢類はそこに寝たままだけど私に向けて右手を伸ばしてくれた。


「・・・牧野、ここに来て・・・」

小さな声で私を呼んでくれたから急いで傍に寄ってその手を握った・・・今度はちゃんとその手に力があって、指を私の指と絡ませてくれた。たったこれだけのことがどれだけ嬉しいか・・・私は絡ませた指を自分の口元に持っていって何度もその手の甲にキスをした。

「・・・こっち、骨折したんだって?動かないから驚いた。両手で・・・抱き締めたいのに」
「そこだけの骨折なんて奇跡なんだよ?他はなんともないから大丈夫・・・すぐに直るわよ」

「ね・・・俺が出来ないなら、牧野がしてよ」
「え?何を・・・花沢類?」

2週間も意識不明で寝ていたからふらつくのに、花沢類は身体を起こそうとして顔を少し歪ませながら背中を動かした。慌てて私が肩を支えたら右手で私に捕まって、なんとかベッド上半身を起こした。
そして1度大きく深呼吸したら「身体が鈍っちゃった・・・」なんて頼りなげに笑った。


初めて見る・・・弱った花沢類。
自然と私の両手は彼の身体を抱き締めた。彼の肩に顔を乗せて、彼も私の肩に顔を乗せて・・・右手だけ私の背中にそっと当ててる。

「花沢類・・・温かい」
「・・・牧野の方が温かいよ」

「もう大丈夫だよね?もう・・・寝てもちゃんと目を覚ましてくれるよね?いつでも会えるよね?」
「・・・大丈夫だよ。あんたがいるんなら、俺は何処にも行かないから」


**********


早く牧野に会いたかったのにやたら続く検査・・・聞かれることに簡単な返事だけして彼女がここに入ってくるのを待っていた。
そして医者がこの部屋を出て行ってすぐに飛び込んで来たのは・・・泣いた後の顔の牧野。

・・・また、そんな顔してる。俺が右手を差し出したら走って傍までやってきた。

情けないけど牧野の力を借りなきゃ起き上がれないほど身体が痛くて、それでも起きて抱き締めたかったから少しだけ無理をした。片手しかあんたの身体を包めないなんて・・・それでも牧野の髪の中に顔を埋めると安心した。


戻って来たんだって・・・牧野の所に戻れたんだって、温かい身体がそれを確信させてくれた。

「もう大丈夫だよね?もう・・・寝てもちゃんと目を覚ましてくれるよね?いつでも会えるよね?」
「・・・大丈夫だよ。あんたがいるんなら、俺は何処にも行かないから」

「絶対だよ・・・もう雨の日も晴れの日もだよ?毎日・・・会いたい」
「ん・・・ねぇ、話があるんだけど」

起きた早々こんなこと言うなんて・・・って思うけど、あの日言えなかった言葉をここで言おうと思った。

牧野を胸に抱えたまま顔も見えない。
抱き締めてる右手の力が少し強くなって、牧野の吐息で俺の心臓が熱くなってる。


「俺・・・フランスに行くことになったんだ」
「・・・え?いつ・・・から?」

「いつだろう・・・事故のことで予定は変わったかもしれないけど、多分すぐに・・・だと思う」
「・・・・・・」

「離れないって言ってくれたよね?牧野・・・」
「・・・うん、離れたくない」


「じゃあさ、フランスに一緒に行こう」


牧野からの返事が来ない・・・その代わり俺の背中に回ってる手の指がグッと背中に押し当てられてる。
だからもう一度、耳元で囁いた。


「一緒についてきて欲しい・・・あんたのこと、この先はずっと俺が守るから」

小さく、ホントに小さく頷いて、啜り泣くような声だけが部屋に響いた。
そんな牧野の身体を離して、今度は右手で頬を撫でた。くすっ・・・そんなに泣かなくてもいいのに。


「あの時と同じ思いなんてさせない。だから・・・俺を信じてくれる?もう恋なんてしないって言ってたけど、俺と始めようよ・・・新しい恋ってヤツ」

「・・・花沢類、私も言ってもいい?」
「NOって答え以外なら」

「私ね、気が付いたの。耳が聞こえなくなった時・・・私、あいつとの恋が終わったことが悲しかったんじゃなくて、あなたに恋してたのに、2度と恋をしないって傘の中で叫んだこと・・・あれを後悔してたんだって。前の恋はちゃんと思い出に変わっていたのに、あなたから逃げて怖がってたんだって。雨の音を聞くと、あなたに恋をしちゃいけないって気分になってたの。でもね、最近は雨が恋しくて恋しくて・・・花沢類に会えるから嬉しくて堪らなかったの。毎日が雨だったらって・・・そう思うようになったの」

「・・・じゃあ、もう雨は怖くない?」
「怖くない。花沢類がいなくなる方が怖い・・・この手が私から離れる方が怖いよ」


「離れないよ。もう・・・離さない」


初めて牧野にキスをした。
少しお互いに震えてるね・・・それが牧野にも伝わってるのが情けなかったけど。



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次回最終話です
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2018/07/16 (Mon) 11:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは~!

はははっ!定番の記憶喪失(笑)
長編だと書けますがやはり短編だと無理ですよね!

実はこのお話も予定の2倍を超えております。本当は7話だったんですがねぇ・・・なんでかな?


最後にトラブル・・・(笑)本当ですよね、自分でも思いますわ!

はい、事件もトラブルも得意ですっ!!
苦手なのはラブラブですっ!キリッ!



今日も暑いですよね・・・私の所は31度ぐらいですが京都の子供は38度超えたーっ!って叫んでいました。
叫んだら余計暑そうなので静かにすればいいのに。

でも若いんでしょうね、昨日は琵琶湖に遊びに行ったらしいです。
滋賀県も38度ってなってたけど・・・。

みわちゃん様も十分にお気をつけ下さいね♥
お気遣いありがとうございました。

2018/07/16 (Mon) 11:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/07/16 (Mon) 22:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

そうね・・・イケメンってのは点滴の栄養だけでも美貌は保てるんですよ。
美容液入りの点滴(特注品)かもしれません。
何日間も髪洗わなくてもさらさらで、お風呂に入らなくてもすべすべで。

えぇ、自分が入院したときは見舞客が1番恐怖でしたね(笑)
すっぴん見せるわけにはいかんのに自分は動けない・・・。
「お願い、来ないで!」って何度頼んだことか。


うちの娘はこの前入院したときに毎日お風呂に入れないって知って、途中からは外出許可もらってアパートのお風呂で髪を洗っていました。
その時は流石、年頃だねぇ・・・って感心しましたね。


短いお話しでしたが、次回の最終回も宜しくです♥

2018/07/17 (Tue) 06:18 | EDIT | REPLY |   

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