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類がさりげなく問いかける質問に答える由依さんを呆然と見てるだけだった。

でも、その内容がだんだんと彼女の仕業だと確信させるもので、終わりの方は我慢が出来なくなっていた。

私がここに類と入っただけで、
ここが私たちの大事な場所だとわかったからって・・・

それでどうして何もかも無くしてしまおうとするの?この店には何にも変えられない大切な宝物があって、それをどんな想いで守ってきたと思ってるの?そんなの・・・絶対に許せない!!

類のお婆さまのだと思われる燃えたヴァイオリンは道路の端にそっと置いた。
そして私はまだ話してる類の横を通り過ぎて由依さんの方に向かった。

急に類の後ろから私が来たから驚いたのかもしれない・・・由依さんはハッとした顔で私の方を見て腕組みを解いた。
類の口からも一瞬私の名前が出たけど、それを聞いて止まってるほど気持ちに余裕はなく、目の前まで行くと私は右手を大きく振り上げた!そして・・・

バシッ!!

「きゃっ・・・!何すんのよっ!!この女、よくもこの私を・・・!」

生まれてから今まで、誰の顔も引っぱたいたことなんてなかった。
そんなに人を憎んだこともないし、大っ嫌いになった人もいなかったし、恨んだりしたこともなかった・・・でも、この人だけは許せなかった!
どんなに睨まれたって、たとえこのあと殴られたって構わない。私は初めて人を憎いと思った。

だから思いっきり平手で引っぱたいた後で、今度は逆の手でもう1度叩いた!由依さんはそれを両方ともまともに受けて蹌踉けたけど、まだ気持ちが収まらなくてその襟元を掴み上げようとしたら後ろから類が私の身体を止めた!

「牧野!・・・もういいからやめな。今度はあんたが傷害罪になる」
「・・・離して、花沢類・・・離してっ!!」

「落ち着いて・・・後は警察に任せるんだ!」
「嫌だ!!この人だけは許さない・・・どうしてよ、どうしてこんな事したのよ!私が憎いなら私に向けなさいよ!卑怯者ーっ!」

「・・・牧野っ!」
「許さない、許さない・・・!ここは私だけの大事な場所じゃないわ!もっと・・・もっとここを愛して大事に守ってきた人がいるのよ!その人の宝物がなくなってしまったのよ・・・返してよ!全部元に戻して返しなさいよ!」

出来ないことをわかってて怒鳴り散らす私の声は、静かだったこの辺りに響き渡った。


陽翔も私の前に出てきて両方の肩を押さえ込んでる。
後ろから類に、前から陽翔に止められたけど、それでも由依さんに向かって手を上げようとする私を2人は必死に止めていた。
由依さんはその光景を見て凄い目で私を睨み付け、持っていた鞄で陽翔の背中を打ち付けた!

「なんなのよ!殴られたのは私なのに、なんで陽翔までその女にしがみつくの・・・陽翔!!」
「陽翔はあんたの持ち物じゃないわ!いい加減にしなさいよ・・・何がしたいの?あんた、自分の好きな人をこんなに苦しめて楽しいの?!」

「あんたに何がわかるのよ!!私たちみたいな親に裏切られた子供はね、自分たちで仲間を見つけて生きていかなきゃいけないのよ!それが私にとっては陽翔なの・・・毎日バカみたいに笑ってるあんたにはわかんないのよ!」


「・・・自分勝手な理屈で陽翔を縛り付けて、なんの関係もない店を燃やして橋本さんを絶望に陥れて・・・それであんた、何が手に入るの?なにも入って来ないし、なにも残らないわよ・・・余計に辛い過去が残るだけじゃない!」

類が私を押さえる手の力が強くなる。
陽翔はそれを感じて私の肩から手を離した・・・そして由依さんの方に目を向けた。


「・・・確かに俺は自分の親のことが信じられなくて自暴自棄になって、お前に逆らいもせずズルズルと関係を続けた。でも、1度だってお前と自分が仲間だとか、そこに愛情があるとか思ったことはない。ただ、その時の自分が何もかも忘れるために由依を利用しただけだと思う。それは俺の弱さだから謝らなきゃいけない。悪かった・・・って思う」

「・・・・・・陽翔?」


「・・・もう本当に終わりにしよう。由依・・・お前は自分から俺がいなくなったから、牧野からも大事なものを全部取り上げてやろうと思ったんだろう?お前、そういう人間だからな。でもこれは許されることじゃない。全部警察で話せよ」


誰かが通報したんだろうか・・・遠くからパトカーの音が聞こえた。



************



「離してよ!私は関係ないんだってば!こんな店の火事になんの関わりもないんだって!!・・・離せーっ!!」
「大人しくしないか!話は署で聞くから!」

「・・・陽翔、あんたのせいよ!あんたが全部悪いのよ!聞いてんの、陽翔ーっ!」
「騒ぐな!こら、静かにしなさい!」

誰かが呼んだパトカーに由依は乗せられてcantabileの前から消えて行った。
これから先は警察の厳しい取り調べが始まって、自分のしたことを全部話す羽目になるだろう。


今、ここで由依から聞いた話を残った警察官に教えて「後は宜しく」と捜査を頼み、俺はそこに踞ってる牧野の所に行った。
全身真っ黒で煤だらけ・・・牧野を後ろからとはいえ抱き止めていた俺も当然汚れてる。目聡い警察官には「何をしたんだ?」と睨まれ、ここに忘れ物を探しに来たがわからなかったと嘘をついて誤魔化した。

立ち入り禁止現場に無断で入ったことだけは牧野も随分と怒られたけど、黙って持ち出したヴァイオリンはずっと隅の方に隠したまま話を出さなかった。
だから最終的には見つからずに、警察が全員帰った後にそれを再び抱きかかえた。

まるで自分の宝物を持つみたいに。


そして齋藤もまだこの場にいて、俺達の事を見ていた。
自分の行動からこんな事件を起こさせたことに呆然としてるのか、こんな牧野の姿を見たことに驚いているのか・・・何も言わずに焦げたヴァイオリンを抱える牧野を見てる。


「齋藤、お前に1つだけわかったことを教えといてやる。齋藤工業のこと」

「父さんの会社の?なんだ、今更謝る気か?」

「信じるかどうかはお前次第だけど、あの時の真実はね・・・」


俺は齋藤に自分が調べた内容を教えた。

齋藤工業を花沢の子会社から切り捨てさせたのは緒方透、今の父親の計画だったと。
実の父親の会社は当初生き残るリストに入っていたのに、緒方薬品を切り捨てさせないように裏金で子会社を助け、わざわざ齋藤工業を身代わりにしたこと。
緒方薬品は緒方透の弟の会社であり、薬品会社を守ることと齋藤工業を潰すことは同時に計画された。その裏にどんな思惑があったかは本人に聞かなくてはわからないけど・・・そう言うと全身を震わせて驚いていた。


「花沢は確かに下請け会社にまでは救済措置をしなかったけど、お前が言うみたいにその会社を選別したわけじゃない。俺の父親が非情な人間だってのは否定はしない。でも、この件には関わってはいない。何処から得た情報か知らないけど、真実って意外と正しく伝わらないのかもね。弁護士だっけ?全然役に立たなかったって・・・そいつの今はどうなってるか調べてみた?案外緒方が絡んでるかもね・・・俺はそこまでは調べなかったけど」

あとは自分が調べてどうするか決めればいい。
もし母親も倒産に関わっていたら悲劇だけど、それも真実なら受け止めるしかない。

もしかしたら、そこまでわかった方が齋藤は自分の道を見つけられるかもしれない。


「牧野、帰るよ・・・そんなに汚れて」
「・・・類、私・・・私・・・」

「うん、持ってきてくれてありがとう・・・嬉しいよ」


そう言うと今度は声を上げて泣き出した。
ここを失った罪は2人で背負って行こう・・・その言葉に肩を震わせた。




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2018/07/15 (Sun) 11:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

ゆか様、こんにちは!

あら(笑)生温いですか?
でもこれ以上したら逆に犯罪になりますからね~💦

類君、まだ学生なんでそこまでは……。

あきらなら(笑)そうね!あきら君に頼めば良かったかしら!

いや、あんまりヤバイのとか書けませんから(笑)!

ぼちぼちラブ度を上げていきますよ?
頑張りますんで応援宜しくです♥️

2018/07/15 (Sun) 12:08 | EDIT | REPLY |   
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2018/07/15 (Sun) 22:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

あはは!本気で怒るシーンはあまり書かないので難しかったです。
怒るときはギャグの時ばっかりで・・・ははは。

これで由依ちゃんが表舞台に出てくることはなくなりました。
これからは第二部的感じでお話しが少し変わってきます♥


ランキングですか?
なんでですかねぇ・・・?

私のブログはインポイントは元々上がらないような感じにしてるので何があったんでしょうか?(笑)
時々見てるのはアウトポイントの方だけです。
それもプレッシャーになるのであまり見ないんですけどね(笑)

てか、実はブログ村自体を理解しておりません(笑)
お話しをアップしたお知らせ的なイメージで見ています。ははは!

でも、気に掛けていただけて嬉しかったです!
ありがとうございました。

2018/07/16 (Mon) 07:49 | EDIT | REPLY |   

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