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plumeria

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牧野を庇うようにして自分の後ろに回した。何かが窓の外にいるような気がしてならなかった。
さっきまで静かだったのに、急に吹き始めたものすごい風に牧野は怯えていた。

「総二郎!何が起きたの?すごい風が・・・!窓が割れそう!」
「わかんないけど・・・さっき何か聞こえなかったか?誰かの声が外から・・・」

「え?私は聞こえなかったけど・・・」

不思議そうな顔で牧野が窓の方を見た。確かに聞こえたんだ。今度は俺に話しかけてきたのか?

鳴り止まない風の音と窓がガタガタと揺れ動いているその窓の向こうを2人で抱き合ったまま見ていた。

そしてそこに現れたものは・・・


「総二郎・・・人が立ってる・・・」
「あぁ、今度は俺にも見えるよ。確かにあれは・・・」


窓の外、雪が積もっている庭の真ん中に、1人立ったままこっちを見ているのは・・・・・・類だ!


牧野も俺も息を飲んだ。牧野を抱く腕に思わず力が入る。

雪の庭の中で白いセーター姿の類は、その茶色の髪を靡かて俺達の方を睨み付けてた。
今まで見たこともない類のその顔は青白く、穏やかだった瞳は怒りの色に変わっていた。

そこから動くことはなく、ただ部屋の中の俺たちの方を見ている・・・いや、俺だけを睨んでいるんだ。
類から眼が離せなかった・・・一瞬でも眼を反らせたら牧野を連れて行かれそうな気がした。


『総二郎、捨ててしまったんだって?あれは牧野に贈ったドレスなのに?』

類が話しかけてきた。それは声なのかどうかもわからなかったけど、類の「声」が聞こえた。

「類!お前フランスにいるんじゃなかったのか!」

『どこにいてもいいじゃない。・・・さぁ、総二郎。牧野を返してもらうよ』

「お前はもう牧野を守ってやれない。いい加減に解放してやれ!牧野は俺を選んだんだ!」

そう言っても冷たい表情を変えずに片手を牧野に差し出した。
牧野の方は窓の外の類を見ながらも、俺の腕にしがみついてて離れる気配はなかった。
むしろ恐怖のあまり震えていて、その場に座り込んだまま動けなかった。

『牧野?そこじゃないよ?こっちに来て。俺の所まで・・・』

牧野に話しかける類は冷たいながらも笑顔だった。凍りつくような笑顔で更にその手を伸ばしてくる。
吹き止まない風の中、類は少しずつ部屋に近づいてきた。
まさか、このまま入ってこれるのか?俺は牧野の身体を類から隠すようにして両手で頭から覆った。
俺の胸元の服を握り絞めるように掴んでいて、声には出してないが泣いている。

『牧野、迎えに来たんだ・・・あんまり時間がないから・・・早く来て?』

類の姿はもう窓のすぐ前まで来た。本当にこのまま擦り抜けて入ってきたら・・・
その時に牧野が突然叫んだ!

「いやあああっ!!類っ!もう、こんなこと止めてぇっ!!」


牧野の声にびっくりして一瞬類から眼を反らした。

そして、次に窓を外を見たときにはもうそこに類の姿はなかった・・・。
そして、さっきまで吹いていた風もピタッとなくなりそれ以前の静かな庭に戻った。
あれだけ揺れていた窓も、木に積もっていた雪にも何の変化もない・・・すべてが、時間さえも止まったように思えた。



「総二郎・・・類は、類はどうしたの?何処に行ったの?」

「もういない・・・元々あいつはフランスにいるんだ。日本にはいない。」
「でも、今そこに類が・・・」

「そうだな・・・確かに類はここに来たんだ。お前を迎えに来たって言ってたから、あの時に外に出てたら
本当に連れて行かれたかもしれねーな・・・」

これ以上は何をどう考えても説明なんて出来ない。
俺たち2人が幻覚を見て、幻聴を聞いたに過ぎない。こんなことは誰も信じないだろう・・・。
これが今まで牧野を苦しめてきた原因で、そして解決方法は俺たちの方にはないって事だ。

やっぱりそうだったんだな。
記憶のないときは牧野の中で思い出そうとする気持ちが見せた類の姿かと思ったけど、そうじゃない。
類の方が牧野をずっと誘導してきたんだ。自分を思い出させようとして。

そんな事が本当に起こるのかどうかなんて証明も出来ないけどな。

「牧野。もう大丈夫だから心配すんな。たとえ類が現れても今日みたいに俺が守ってやるから」

「でも、これは類が救われないと治らないんじゃないの?総二郎がいないときにはどうしたらいいの?」

「ずっと一緒にいたらいいさ。・・・牧野、俺も一つ確認したいことがあるんだけど聞いていいか?」

牧野はもう思い出しているはずだ。
何故自分が離れに向かうのかを、そこに何があるのかを思い出しているはずだ。


「お前、ずっと何かを探しているって言ってたろ?忘れ物があるんだって・・・それは何だ?」

牧野の表情が変わった。

「もう隠さなくていいから話してくれないか?それが何か原因じゃないのか?」

牧野の眼から一粒涙がこぼれた・・・それを指で拭いてやってその顔を手で覆った。

「心配すんなって。お前がまだ類の事を思ってたときにしたことだろう?そんな事で俺は何も変わんないから」



「離れの横の桜の木の下に・・・類が初めてくれた指輪を埋めたの・・・ドレスを処分してって言ったのにその指輪は
捨てられなかったの。どうしても、出来なかったの・・・どこかで類を待っていたのかもしれない。それを総二郎に
知られたくなかった・・・。何度も類の声で、その指輪を掘り返しに行ったのよ。でも、それも出来なかった・・・」

「そうか・・・。わかった。それは帰ったら俺が掘り出してやる。その後のことはまた考えような」

悲しそうな顔なんてしなくてもいいさ。
それだけお前はそん時、類の事を想ってたんだろうから・・・悔しいけど俺はそんなのもう何年も見てきたんだ。
今は牧野は俺の側にいるんだから、これからの方が長いんだから気になんてしねーよ。


その日はただ牧野を抱き締めて眠った。
それはあの離れで過していた時のように、俺の腕にしがみついて牧野は寝息を立てていた。

今は何の音もしないこの屋敷の中で牧野の鼓動だけを感じていた。


ーーーーアトモウスコシデ、アエルネ・・・マキノーーーー

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Comments 6

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2017/04/15 (Sat) 12:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

W様、こんにちわ!

切ない事ばっかりで申し訳ない・・・
まさかそんなに皆さんに怖い思いやら切ない思いやら
させてしまうお話になるとは思いもせず・・・。

きっと総二郎が類を助ける・・・はず?
私は昔、狐が憑いてるって霊媒師さんみたいな人に
言われました。先祖が猟師をしてたからだって。
ホントかいなって今でも信じてはいません。

でも、類になら取り憑かれてもいいなっ!

もう少しなのでヨロシクお付き合い下さいませ。

いつもありがとうございます。



2017/04/15 (Sat) 14:01 | EDIT | REPLY |   
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2017/04/15 (Sat) 14:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こ、こ、こんにちは‥

えみりん様、

落ち着いてください!
大丈夫ですよ。何回もいってますけど類ですから!
雪合戦はしませんでしたね。

あと何回くるかなぁ。楽しみに現れるのを待っててくださいね。オカルトっぽくなってきたかな!

あと、少し頑張りますから‼

今日もありがとうございました‼

2017/04/15 (Sat) 15:05 | EDIT | REPLY |   
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2017/04/16 (Sun) 00:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

S様、落ち着いて下さいませ!!

これ、そんなに怖かったですか?おっかしーなー?
色んな方からそうコメントいただくのですが、類が怖い?類だから怖い?

皆様、頭の中で想像してるんですね?もちろん私もですけど。
類が氷の微笑で窓の外に立ってるなんて・・・!永久凍土の世界ですよ!
出された手を触ったら自分も速攻凍りつくぐらいの!

もう少しだけお付きあい下さいね?

今日はありがとうございました!

2017/04/16 (Sun) 08:22 | EDIT | REPLY |   

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