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plumeria

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響子が教えてくれたという湖は確かにこの「ネリウムの館」の前の道路の向こう側、ほんの少し歩いたらその姿を現した。
話通り小さくて木々に囲まれているから屋敷の2階からも見えない。

鬱蒼と茂った木の間にある遊歩道を歩いて牧野と2人でそこまで散歩に来ていた。


水の色が緑色に近いブルーで透明度がすごい・・・美しいと言えばそうなんだけど、引き込まれそうな気がして寒気がした。
桟橋があって、その端まで行って眺めたら結構先の方まで湖の底が見えていた。名前もわからない魚が泳いでて牧野はそれを踞って見ながら大きな声で俺を呼んだ。

「うわあっ!見て見て!類・・・結構大きいのが泳いでるよ?ほら・・・ほら!あそこ!」
「・・・そんなに大声出してたら逃げちゃうよ?静かに見なよ」

「だってーっ!!あぁっ、この真下には小さいのが大群で泳いでる・・・赤ちゃんかなぁ?」
「牧野、あんまり覗き込んだら危ないよ?落っこちたら結構深いと思うよ、ここ」

「大丈夫だよ~!」


不思議だったのはここにはボートもあるわけじゃ無いのに桟橋だけがあること。
ログハウスのような休憩所もないし、ベンチなんて気の利いたものも無い。まったく自然の中にある湖で散歩コースもない場所なのに・・・。
誰か釣りにでも来るのかな・・・なんて考えながら湖を見ていた。


『・・・ふふふ・・・類、彼女・・・湖に入りたいみたいよ・・・』


・・・え?今、誰か何か言った?



*********



やっと類が部屋から出てくれたことが嬉しくて響子さんから聞いた湖にやってきた。

そこまで大きくはないけど本当に水が透き通ってて綺麗・・・湧き水だって教えてもらったけど、中心の方は青と言うより緑色で空の雲も湖面に映ってた。

こんな綺麗な湖なんて初めて・・・私は類が散歩に付き合ってくれたことと、湖の美しさに舞い上がって大はしゃぎだった。

「だってーっ!!あぁっ、この真下には小さいのが大群で泳いでる・・・赤ちゃんかなぁ?」
「牧野、あんまり覗き込んだら危ないよ?落っこちたら結構深いと思うよ、ここ」

「大丈夫だよ~!」

私は類の注意なんて聞かずに桟橋の1番端まで行ってそこに座り込んで、身体を前に乗り出して湖の中を見ていた。
そこには私も映ってて、ついでに空も映ってて、そして黒く小さな魚の陰が沢山見えていた。
まるで私に寄ってきてるみたい・・・手を伸ばしたら掬えないかな?なんて思って両手を湖に伸ばした。

「あっはは!ダメだぁ!届かないや・・・やっぱり魚を手で捕るなんて無理だよねぇ!」

「・・・・・・無理だよ」


あれ?類の声が低くなった?
振り返ったら類は今までと違って真面目な顔になってた。私が言うこと聞かないから怒ってるのかな?でもこのぐらいじゃいつも怒らないよね?


「あっ!ほらほら・・・底の方に木が沈んでる・・・凄いなぁ。腐らないのかなぁ?」

「・・・・・・さぁ」


あれ?まだ怒ってるの?
また振り向いたら類は足音もしなかったのに私のすぐ後ろまで来ていてやっぱり無表情だった。何処を見てるんだろうって思う瞳は私を通り越して湖を見てるみたいな気がした。

「類ったら大丈夫?あっ、わかった!私がこの場所を代わってあげないから怒ってるんでしょ!ちょっと待ってね、もう1回湖を見たら代わってあげるね!」

私がまた湖面を覗き込んだとき、私の顔と空の間に類の手が映った。
それは左右に広げていて今にも私の身体を掴もうとしてるみたい・・・そんな類の手が湖面に映った!


「・・・類?」

振り向いた時に見たものは・・・私の真上で両手を大きく振り上げてる類の姿!その顔にはまるで感情がなくて真っ白で・・・一瞬、類じゃないみたいに見えたけど、巫山戯てるのかと思ってわざと大声を上げてみた。

「あははは!!類ったら何してるの?そんなので脅したってダメだよ!私をここから落とすことなんて出来ないでしょ?」



「・・・えっ?あ・・・あれ?俺・・・」

「なぁに?どうしたの?ふふっ、類に演技は無理だって!怖くなんかないもん!」

「あ・・・ごめん。俺、何してんだろ」
「自分でやっておいて何言ってるの!さっ、じゃあ旅館に戻ろうか?それとも散歩続ける?」

「・・・ううん、戻ろう」


類の腕を持ってこの湖から離れた。
でも・・・本当は凄く怖かった。類は・・・本気で私を突き落とそうとしたように見えたから。



********



牧野が大声で笑った時にハッと我に返った。
その時の俺の両手は大きく広げてて、今にも牧野を捕まえようとしてるみたいに指先を曲げて攻撃的だった。

何をしようとしたんだ?今・・・俺は何で牧野の真後ろまで来てた?少し後ろにいたはずなのに。
それに何でこの手は・・・いや、この後に何をしようとした?まさか・・・牧野を湖に落とそうとした?

そんな馬鹿な・・・俺がそんなことをする訳がない。


でもぼんやりと誰かの声を聞いていたような気がする。
その声は前にも聞いた声・・・夜の庭で、あのベッドの上で・・・あの声と同じだったような気がする。


『・・・もう少し前に出て・・・類、ほんの少し押すだけで彼女は自分の好きな場所に行くことが出来るわ。彼女・・・この湖が好きみたいよ?』

そんな事をしても俺は牧野を助けるに決まってる。それに牧野ならこのぐらいの深さは・・・


『私が湖の中から彼女を引っ張ってあげる・・・すぐに類の視界から彼女は消えるわ・・・大丈夫・・・大丈夫よ、類・・・』



そう・・・誰かがそう言ったから前に出て・・・それで手が勝手に・・・。



でも、牧野の声で自分が取り戻せた。
今、俺の腕を掴んでくれてる牧野が夢の中から戻してくれた・・・何故かそれにホッとして、自分の行動にまた汗をかいた。

得体の知れない何かに自分が操られてるってことは何となくわかる・・・わかるからここから早く離れたかった。
横を歩く牧野の顔を見たけど・・・半分作ったような笑顔をしてる。それに俺の腕を掴んでる指が震えてる。

牧野は・・・感づいてる。



『・・・類、また途中でやめちゃったのね・・・』


「誰だ!!」

背中の方からこえが聞こえた。
大声を上げて振り向いたけど・・・そこには誰もいなかった。

また生温い風がサワッと吹いてきて俺の髪を揺らす・・・その風が通った時、女性の笑い声のようなものが聞こえた。


「・・・類、やっぱり変だよ。どうしちゃったの?類・・・」


今度は牧野が泣き出した。
俺の腕からゆっくりと手を離し・・・両手で自分の顔を覆って牧野が・・・泣いてる。




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2018/08/29 (Wed) 15:30 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/29 (Wed) 16:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

うんうん、はよ帰ろう!

帰らんとヤバいよね!うんうん・・・え?帰らない?


マジで?類・・・どうする気?

2018/08/29 (Wed) 22:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんばんは!

全然気にしてませんよ~♥
マニアックとか可愛いもんです。私なんか変態に足を突っ込んでますから!キリッ!

言われて考えたら・・・やっぱり漫画の類君を想像しながら書いてるかも。
一年前の「迷い猫」は完全に漫画の類君が頭にいましたね(笑)

たまたま今は類君感謝祭みたいになってるので困るでしょ?

夜中にシリアス来てお昼にオカルト来て夕方変態が来て・・・ほんと、申し訳ないです💦

まぁ、気持ちを色々と切り替えて楽しんでくださいませ!

2018/08/29 (Wed) 22:30 | EDIT | REPLY |   

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