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牧野が元気よく走っていって、転けなきゃいいけどって思った矢先に悲鳴を聞いた。

やれやれ、俺のお姫さまは言うこと聞かないお転婆だから・・・って少しカーブしてる道を進んだら案の定座り込んでいた。
でも、そこで見たのはもう1人の女の子・・・こんな子がこの島にいるんだ?って思うほど綺麗で、島の子とは思えないほど肌が白くて驚いた。

長い髪に麦わら帽子・・・その子が姿勢を起こして俺の方に向き直ったときに思い出した。

「・・・あきら君?」

「あれ?もしかして・・・渚沙?」


渚沙は俺が小さい頃、よくここにバカンスで来ていた時に遊んだ女の子。2つ年下で牧野みたいにお転婆で大声ではしゃぐ元気な子だった。
顔は渚沙そのものなのに雰囲気は全然違ってる。おとなしそうで淑やかなお嬢様のような立ち姿だった。


「久しぶりだなぁ!それに感じが変わったんだな、渚沙」
「あはは・・・あきら君ったら何年ぶりだと思ってるの?いつまでも子供じゃないんだから変わるわよ!」

「ははっ!そうだよな・・・でも、綺麗になったじゃん。見違えたよ」
「そう?嬉しいな。この島にはそんな気を遣ってくれる人なんていないから」

牧野は俺が渚沙と話してるのをキョトンとして聞いていた。
転けてしまったから膝がまた赤くなってる・・・俺が溜息をついたら「ごめんなさーい」って舌を出した。


「渚沙、紹介するよ。俺の恋人の牧野つくし。まだ付き合って半年なんだけどね」
「あきら君の・・・彼女?」

「牧野、この子は俺が昔ここに来た時に遊んでた島の子で渚沙って言うんだ。確か牧野の1つ下だよ」
「そうなの?宜しく、渚沙さん!」

「・・・えぇ、宜しくね、つくしさん。暫くここにいるの?」

本当に大人っぽくなって驚いた。女の子は暫く見ないとその変化に驚くことはよくあるけど渚沙の変化には正直焦った。
たまに俺に向ける視線が艶っぽくて、まるで煽ってるかのよう・・・都会の夜に出会う女よりゾクッとした。

でも、俺が戸惑ってるのがわかるとすぐにふふっと昔のように笑う。


「今日は何処に泊まるの?あきら君の別荘?」
「あ?あぁ・・・確か掃除してくれてるはずなんだ。ここでは牧野と2人でのんびりしたいから手伝いの人も断ったしな。1週間ぐらいの予定かな。ここの海は最高だから遊ばせてやりたくて」

「そうなの・・・仲がいいのね」
「そりゃ俺が牧野にベタ惚れだからね」

俺がそんな言い方をしたら恥ずかしいから背中に隠れてしまう。
それが可愛くて渚沙の前だけど振り向いて抱き締めると大声で抵抗して俺の腕の中から逃げようとした。

「やだぁ!美作さんったらくすぐったいって!」って困ってるのか喜んでるのかわからない牧野は笑いながらしゃがみ込んで、その時に帽子が飛んで行った。

「あっ・・・帽子」
「待ってな、取ってくる」

牧野の帽子を取りに行って戻ろうとした時、渚沙が牧野を見る目に驚いた。


しゃがみ込んでる牧野を上から睨み付けるようにして見ている。
麦わら帽子の中のその目は今までのものとは違ってて白い手は硬く握られて震えていた。


見間違いかと目を擦ったら、今度は心配そうに牧野に手を伸ばす渚沙を見た。


あれ?今のは俺の見間違いか?



*************



美作さんの別荘は南の島の家特有の屋根瓦で石垣を高く積み上げられていた。旅行のパンフレットでしか見たことのない光景で、その石垣の向こうには南国の花が色鮮やかに咲いていた。

「この石垣は台風が多いこの地方では風が直接家に吹き付けないための工夫だよ。庭に木が多いのもそれと同じ意味で防風林ってわけ」

「へぇ、そうなんだ。確かに夏は毎年台風が来るもんね」

「そう、屋根瓦も漆喰で固めて風で飛ばされないように重しの役目をしてる。だから家の中の柱の数は多いんだってさ。重い屋根を支えなきゃいけないから。で、軒を低くして風を屋根の上で流すように工夫されてるんだ」

「風との闘いなんだね!」

そんな別荘の中は綺麗に片付けられていて、家具なんかもウォーターヒヤシンス素材のソファーにベッド。窓際に置かれてる丸い椅子も同じ素材でカラフルなクッションが置かれていた。
観葉植物にはフェニックスやパキラが置いてある。数日間のバカンスなのに随分とお洒落に飾ったくれたみたい。

それに私たちが自炊するって言ったから、ちゃんと食材の準備がされていた。
中には見たこともない野菜があったけどなんとかなりそう・・・それを確認していたら美作さんが後ろから抱き締めて来た。

「あれ?・・・どうしたの?」
「ん?何でもないよ。こういうの・・・憧れてたからさ」

「そんなにくっついたら暑いよぉ!汗かいてるよ?」
「じゃ、一緒にバスルームで汗を流そう?」

「うわあああぁーっ!」


美作さんはここでも私を抱き上げてバスルームへ・・・そこでシャワーを浴びながら彼からのキスの雨・・・。

まだ明るいのに・・・そんな事もお構いなしに2人共が濡れた身体に指を滑らす。
優しい指が首にも背中にもお腹にも・・・壁に押しつけられて彼からの愛を全身で受け止めていた。


「つくし・・・ね、名前で呼んで?やっぱりダメ?」
「・・・え?名前?・・・うん、そう・・・だね」

「ほら・・・今ここで言って?」
「・・・あ、あきらって?ヤだ、やっぱり恥ずかしいよ」

「言わなきゃ止めない。つくし・・・」

唇を塞がれたら言いたくても言えないって・・・それでも美作さんのキスは激しくなるばかりで、彼の片手が私の足を持ち上げようとした。

その時、ガタン!と大きな音がしてバスルームの近くの窓から何かが投げ込まれた!
私から離れた美作さんが音のした方に顔を向けて、私は誰かに見られたかと思って悲鳴を上げてしまった。

「きゃああぁーっ!な、なに?!なにか落ちた!」
「牧野、大丈夫だからここで待ってて」

美作さんはバスルームのドア付近に置かれていたバスローブをサッと羽織って音がした窓側に向かって行った。

私も1人が怖くなったから急いでバスローブを羽織って彼の後を追うと、廊下で美作さんが何かを持って立っていた。
そして次には開けていた廊下の突き当たりの窓を見てる・・・でも、眉を顰めて不思議そうだった。


「美作さん、何の音だったの?」
「・・・ん?これが落ちてたんだけど・・・どうやって投げ込んだんだろうって思ってさ」

「これって?」

手に持っていたのは随分大きな石・・・美作さんの掌でやっと持てるぐらいの石だった。もし頭にでも当たったら大怪我しそうなゴツゴツした表面にゾクッとする。

これをどうやって投げ入れたのか・・・確かに投げられた窓から外を見たら大きな木が目の前にある。
その木と窓の間にはこの別荘の地下に行く階段があって人が立つことが出来ない。

この窓に何かを投げるとしたら・・・何処から?木の向こうから・・・それとも横から?
廊下の窓だから幅は僅かに50センチぐらいで、石は真っ直ぐ投げ入れられたとしか思えないと美作さんは言った。

「どうして?横からって事はないの?コントロールが良かったら・・・」
「いや、横から投げたら廊下の壁に当たるはずだ。なのに何処にも傷がない。この石が落ちていたのは窓から真っ直ぐのライン上だ・・・木の向こうからは無理じゃないかな、枝が張ってるしあれだけ茂ってたら見えないだろうに・・・」


よく見たらその石には黒い模様があった。
まるで血の跡のような・・・黒い模様だった。




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2018/09/12 (Wed) 13:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは!

あはは!私もあきら君は書ける方じゃありません。

類君と総ちゃんが半々で現われちゃうので難しい・・・。
でも、あきら君って作家様の中でも嫌いって言う人はいないんですよね。

強いて言えば特徴の問題でしょうかねぇ・・・いい人っていう漠然としたイメージだけなので中々書きにくい。

私の中ではエレガントな総ちゃんって感じで書いてます(笑)


あきら君の格好いいお話、本当は憧れます。でも・・・時間がない(笑)
1日3話毎日は無理だわ・・・💦ごめんね、あきら君!


あっ!私も浮気ではありません!念のため!

2018/09/12 (Wed) 17:07 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/13 (Thu) 11:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

爆笑っ!!そこーっ?!

いやいや、始めてたらあきら君、止めないっしょ!
そしたら石投げ込んだヤツが「あれ?」ってなるって!

そしてまた石投げいれて、それでもあきら君が止めないからまた投げて。

美作の別荘石ころだらけですよ・・・怖いわぁ!

散々遊んだ後であきら君が石拾いするところを想像してしまいました(笑)



でね・・島にはそんなもの売ってないと思います。残念だけど。

2018/09/13 (Thu) 21:06 | EDIT | REPLY |   

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