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その女の人は私を見てニヤリと笑った。
そして右手を私の方に差し出して手招きするように指を動かした・・・それはすごくゆっくりとした動きで、まるで催眠術でもかけられてるかのように意識がぼーっとしてくる。

何度も頭を振ってこの人の手を見ないようにしたけど、今度は少ずつ私の方に向かって歩いてきた。


『・・・その身体、私にくれない?私ね・・・ずっと身体を交換してくれる人を待っていたの・・・冷たい世界で・・・』

「なに訳わかんないこと言ってるの?・・・そんな事出来るわけないでしょう!」

『簡単なの・・・私があなたの心臓に手をかければ、そのままその身体は私の中に入ってくるから・・・だから目の前に来て?ほら・・・早く・・・私ね、早く本物の温かい身体が欲しいの・・・』

「嫌だ・・・来ないで!近寄らないでよ!」

白い顔の中で赤い唇がニヤリと上を向いた・・・その目は光を映してないのか真っ暗で闇夜みたい。彼女は足音もなく私の前にやってきて、あと1メートルって所で両手を私に伸ばしてきた。
この手に触れてはいけない・・・手を出して止めようとしたけど慌てて引っ込めて急いで後ろに下がった。

でも彼女はニヤリと笑ったまま私が逃げた方向に身体を向けてくる・・・足は見えるけどそこに体重を感じなかった。
まるで宙に浮いてるみたい・・・暗い部屋の中で白い手がまた私の首の方に伸びてきた。

「いやあぁーっ!!来ないで・・・来ないでぇっ!!」

すぐ傍にあった人形のようなものを投げつけたけど、彼女は避けもせず、その身体を通り抜けて後ろに飛んで行った。
更に目を細めて笑みを浮かべる・・・不気味なほど赤い唇から白い歯が光った・・・。

『無駄よ・・・あなたは封じ込められていた私の魂をこの世に出してくれたんだもの・・・その身体も頂戴・・・いいでしょう?』

「な、何のこと?あなたの魂なんて知らない・・・私はあなたのことなんか知らない!!」

『知らなくてもいいの・・・さぁ、私と入れ替わって?私ね・・・もう400年近く閉じ込められていたの・・・だからもう1度明るい世界に戻りたいの。今はね・・・ほんの少ししか出歩けないの・・・この身体だと長くは日の光を浴びられないの・・・』

「だからなんの話をしてるのよ!!400年ってなに?・・・日の光って、明るい世界って何よ!!」


『・・・総二郎さんは私のものよ・・・ちゃんとした身体になってもう1度抱いてもらうの・・・』

「・・・なんですって?」


そこまで言うと彼女の目が急に恐ろしいものに変わった。
今まで笑っていた唇もキッと結ばれ、大きかった瞳は吊り上がったように・・・光を映してなかったはずなのに今度は赤く光った!


『さぁ!その身体を私に差しだせ!!』
「きゃああぁーっ!総二郎、助けてぇーっ!!」


その時、廊下をすごい音をたてて走ってきた人がいて、この部屋の扉に手をかけた瞬間名前を叫ばれた!


「つくし、大丈夫か!つくし!!」
「「総二郎!!」」


同時に総二郎の名前を呼んだその人は、また私そっくりに変わっていた。



************



その部屋に入るなり目に入った光景に驚いて身体が動かなくなった。

今・・・俺の名前を呼んだのはどっちだ?

同じサマーセーターを着て同じスカートで、同じ髪型・・・そして同じ顔、同じ瞳・・・つくしが2人いる?
2人は向かい合って争っていたみたいで、片方が掴みかかろうとしていたのをもう片方が防御しようとしている・・・まさにその場面で俺が飛び込んだようだ。
だから2人共が動きを止めて俺を泣きそうな顔で見ている。

その表情もまったく同じ・・・背の高さも体つきも何もかもが同じで、一瞬どっちが本物のつくしなのかこの俺ですらわからなかった。


「なんだ・・・どうなってるんだ!・・・つくしは・・・!」

「私がつくしよ!総二郎、わからないの?私よ!」
「違うわ・・・私がつくしよ、総二郎!騙されないで、この人は私のニセモノよ!」

「何言ってるの!総二郎はあんたなんかに騙されないわ!ちゃんと私がわかるはずよ!」
「あなたはつくしじゃないわ!総二郎に話しかけないで!」

「ちょっと待て!!何がどうなってるんだ!つくし、俺の所に戻ってこい!」


目の前で言い争いをしているが、その声もまったく同じ。

それでも冷静になれば見抜けるはず・・・喧しいほど高鳴る心臓の音を抑えながら、必死で2人を見比べていた。
「戻って来い!」の一言で右側にいたつくしが俺の方に来ようとしたのを左側にいたつくしが腕を掴んで止めて、今度はそっちが俺に走り寄ろうとするのをもう1人が止めた!

「いやあぁーっ!離してぇ!」
「いやよ、離さないわ!総二郎に近づかないで!」

どっちの手を引き寄せればいい?流れてくる汗が俺の頬を伝って床に落ちた。
つくしが人を掴んで振り回すか?いや、そのぐらい必死だとしたら?俺のところに戻るために無我夢中ならそれもありか・・・!

「助けて、総二郎、この人から私を助けて!」
「違うわ、この人じゃないわ・・・私がつくしなの!総二郎!」

「いやああぁーっ!退いてよっ!!」

俺に近づいてきたつくしが後ろから引き留めていたつくしを突き飛ばした時に、倒れ込んだ方が自分の腹を抱え込んで庇うのを見た。
激しく打ち付けた肩や背中よりも、すぐに両手で自分の腹を押さえて覗き込むように見ている。


その時にそれが本当のつくしだと思った。
自然と自分の腹を守ろうとした・・・そこに大事な命があるからだ!


「つくし、大丈夫か、つくし!!」
「・・総二郎?!」

すぐ目の前にいた女を無視して倒れているつくしに近寄り抱き抱えたら、俺の胸にしがみついて震えていた。
その身体を抱き締めて背中をさすってやって「心配すんな、もう大丈夫だ!」って声を掛けたら小さく何度も頷いて涙を流してる。

逆に俺が無視した女は呆然とそこに立っていて、その顔はあっという間につくしの面影を手放した。
つくしを抱き締めたままそいつを見ていた俺は、目の前で起きたその女の変わりように驚いて声を出すことも出来なかった。


つくしと同じ服は熔けるように消えて行き、ぼーっとした光に包まれたかと思うと真っ白な着物に変わった・・・まるで花嫁衣装のような着物。
でもあちこちが汚れていて襟元も大きく開け、帯は今にも解けそうなくらい崩れていた。
着物の袖口と胸のあたりに飛び散ったようについている黒ずんだ染みは・・・まさか血の痕か?

よく見たらその着物には西門の紋がある。そんなものを着た女が何故現れる・・・?震えるつくしを抱き締めている俺も指先が震えてる。
これは夢じゃないのか、と何度も目を擦り首を振って正気に戻るつもりが何の変化もなく、白く光る女は俺の目の前で睨み付けていた。


『・・・どうして?どうしてその女を選んだの?・・・総二郎様・・・』


今度はつくしと同じ長さだった髪がズルズルと伸びていって床に着くほどになった。
つくしと同じ肌の色をしていたのに青白く変わり、それなのに唇だけ真っ赤・・・ガリガリに痩せた細い腕と指先には赤く光る爪。

その爪の先からポタリと落ちたのは・・・赤い色をしていた。


『・・・私の事を忘れたわけじゃないでしょう?・・・私、今日あなたの妻になるんだったのよ?・・・総二郎様・・・』


「総二郎・・・総二郎、怖い・・・!」
「つくし、お前は俺が守ってやるからジッとしてろ。目を閉じとけ!」


『その女を私に頂戴?・・・そうしたら私はあの日と同じように人間の身体に戻ってあなたのお嫁さんになれるの・・・』


その女は俺に薄笑いを浮かべながら近寄ってきた。
足は前に出してるのに音1つ立てずに・・・土で汚れた着物から白い足が見える度にゴクリと喉が鳴る。


もう俺達の座り込んでいる目の前に来た。
そして真上から俺とつくしを見下ろしている。


『総二郎様・・・相変わらず美しいのね・・・』




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2018/08/06 (Mon) 12:55 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/06 (Mon) 13:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

ありましたね~💦
子供の母親でしたっけ?離した方がホントの母親ってやつ。
総ちゃんを引っ張るんだ・・・総ちゃんなら逆に両方引っ張って逃げそうですけどね。

「2人ゲット!」とか言いながら・・・。

でっ!やめてくださいよ、想像するじゃないですか!
そんなステップ踏んで近寄ったら3人でダンスが始まりそうだ!(笑)

総ちゃんのツーステップとか考えたくないんですけど・・・。
(うちの子、バレエ習い始めた時、ツーステップ出来ませんでした・笑)


お人形さん・・・ごめんなさい💦あれは意味ないです!
さとぴょん様の鬼ちゃんの方は意味があるんでしょうけど(笑)
日本人形って夜見たら怖いですよね・・・私も田舎にあったんですかその人形がある部屋には行けませんでした。

どこに行っても見られてるような気がしてですね・・・。
人形と目が合ってしまうんですよね。

焼き物の人形は大丈夫ですけどねぇ・・・。


そう言えばうちのひな人形、5人囃子の1人の手首がなくなってるんです。
怖くないですか?・・・その折れた手首・・・どこに行ったんだろう。




2018/08/06 (Mon) 16:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

めい様、こんにちは。

いつもありがとうございます。
あはは!怖くないですよ~!もう総ちゃんが来てくれたので安心でしょ?
つくしちゃんも区別できたし!

後は・・・謎解きだけです。後2話ですから宜しくです!

2018/08/06 (Mon) 16:17 | EDIT | REPLY |   

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