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フライト時間が来て飛行機に乗り込んだら牧野の顔が歪んだ。

「・・・なんで?なんで私までファーストクラスなのっ!?こんなのいいのにーっ!いくらかかるのよ、もうっ!」
「いいじゃん。そのためのカジノだろ?日本に戻ったら精算して残りをやるからスマホ買えよ?」

「スマホ買えるぐらい余るの?」
「1500万もありゃ元金引いて税金払って飛行機代払っても釣りはあるだろうよ」

司のプライベートジェットに乗ったことがあるから設備については特に驚くことはない。むしろ航空会社のファーストクラスなんて道明寺所有の飛行機に比べたら狭いもんだ。

足まで伸ばして寝られるシート、23インチの個人用モニターにイタリアのラグジュアリーブランドとコラボしたアメニティキット。おまけにわざわざリラクシングウェアつき。ドレスが気になるなら着替えろって言うと首をブンブン振ってた。
持ってこられたのはおしぼりにアロマオイルが施されたもので、それを手に持った時だけやけに嬉しそうだった。

・・・おしぼりが1番嬉しいってところが牧野らしい。


「絵葉書も出せるぞ?くくっ・・・豪華な空の旅してるって司に出すか?」
「いやだよ!なんでわざわざ怒らせるような葉書を出すのよ!西門さんこそ飲み屋のお姉さんに出せばいいじゃないの!」

「あれ?そんなにムキになっちゃって。別れた男に照れてんのか?それとも俺にヤキモチか?」
「バッカじゃないの?知らないっ!」

牧野は自分のスペースに入って俺の顔が見えないところに引っ込んだ。


そして飛行機はロスの空を飛び立った。
これから10時間かけて羽田へ・・・また日本での生活が始まる。



***********



・・・羽田に着いて再び起きた時差呆け。飛行機を降りるときからもうクタクタだった。
でも今度は1人じゃないし日本だから迷子の心配もなく、何故か元気な西門さんに支えられて入国手続きを終えた。

時差呆けしないの?この人達・・・それとも外国なんて慣れてんのかしら。


「あれだけ機内食を食うからだろうが!体調考えてから食えよ。俺が何にも食わせてないみたいで恥ずかしいだろう!」
「だってぇ・・・美味しかったんだもん」

「飲めないくせにワインまで飲みやがって!」
「だってぇ・・・花沢類を思い出したんだもん」

「ルイ・ロデレール クリスタルか?・・・類が作ったワインじゃねぇし!」


お土産なんて買ってもないから荷物は手荷物だけ。すごい速さで歩いて行く西門さんの後ろを必死に追いかけていた。
優しいんだか冷たいんだかわかりゃしない。少しは後ろを気にしてよーって心の中で叫びながら、彼の後頭を見失わないように足をフル回転させた。

その時、私の後ろから何処かで聞いた声がした。


「あれ?君、ロスの空港にいた子だよね?なんだ、同じ飛行機だったの?」
「え?・・・あぁ!あの時の・・・」

その声が聞こえたのか、先を歩いていた西門さんも立ち止まって振り向いた。
それはロサンゼルス空港で隣に座ってきた色黒のイケメン・・・名前は知らないんだけど。

まさか羽田でも会うとは思わなかったけど、あの時と同じように馴れ馴れしく私に近づいて話しかけてきた。ロスでは眠たかったって言うのもあって気にはしなかったけど、やっぱりかなり格好いい。
自分の顔が熱くなったから、多分・・・今、真っ赤なんだろうな。

「奇遇だね、2回も会うだなんて。俺は竹本秀一。こう見えて医者なんだけどね。君の名前は?」
「は?あぁ、私は牧野つくしと言います。あの、大学生で・・・うわあっ!」

そこまで言うと急に後ろから西門さんが私の腕を引っ張って自分の後ろ側に回した!
その勢いで転けそうになったけど、西門さんが両手で抱き留めてくれたからこれだけの人前でパンツを見せずにすんだ・・・ってか、西門さんのせいだけど!

キッと睨んだけどそんな私を無視して、西門さんはむしろ竹本さんの方を睨み付けていた。

「名前を聞いただけでそこまで睨まなくてもいいだろう?余裕のないお坊ちゃまだな」

「うるせぇな・・・こいつは俺の連れだって言っただろう?イチイチ声なんかかけてんじゃねぇよ!」
「ちょっと西門さんっ!」

「・・・西門?あの茶道の?あぁ・・・なるほどね、君か・・・噂に聞く次期家元ってのは」

「それがどうした。わかったんならさっさと消えな・・・生憎俺達は元気なんで医者に用なんてねぇから」

「・・・ははっ、わかったよ。それじゃね、牧野さん・・・だったっけ?」
「あっ!はい・・・さようなら!」

竹本さんって言うのかぁ・・・お医者様ってモテるんだろうなぁ、って彼が去って行く後ろ姿をぼーっと見ていたら西門さんに思いっきり頭を叩かれた!
「いったぁ!何すんのよ!」って叫んだ時にはもう西門さんもスタスタ反対方向に歩いていた。

なんなのよーっ!!この男はっ!



西門さんは迎えが来てるんだろうから私はさっさと公共の交通機関でアパートに戻ろうと思ったけど、「ついてこい」って言うからそのまま彼について空港を出た。
そこは日本を出る時に降ろしてもらった場所、西門さんはそこを通過して駐車場の方に向かった。

「ねぇ、まさかここに車駐めたままなの?もう何日も経ってるよ?」
「こんな所に駐めたままにする訳ねぇだろ?こっちに持ってきてるはずだから・・・あぁ、あそこ!」

西門さんが指さした方を見たら、あの派手な赤い車が路肩に停まってた。そしてその横には男の人が立っていて、彼に気が付いたのか深々と頭を下げてる。

そこに行ったら無言で車のキーを受け取り助手席のドアを開けられた。
「乗れよ」って小さな声が聞こえたから急いで乗り込んで、彼は迎えに来てくれた人と少しだけ会話してから運転席に乗ってきた。


「んじゃ、帰るか。牧野、今度の稽古だけど・・・お前、茶道続けるのか?」

「・・・え?あぁ・・・そうか。そうだよね」

道明寺と別れたんだもん・・・私がお茶を習う目的はなくなったんだよね。
西門さんは私の返事は待たずに車を発進させた。


しばらくは何も会話をせずに走って、それまで気分が悪かったのにそれも忘れて私はこれから先の事を考えた。
西門にはもう5年も通ってる。お茶は嫌いでは・・・ない。金曜日は待ち遠しい日だった・・・はず。

それでももう理由がなければ行く必要がないし、忙しい西門さんを師匠にしてるから逆に迷惑なのかもしれない。私のお稽古がなければ他に有意義な仕事が出来るもの。
この人はそのぐらい忙しい人だもんね・・・。


「ねぇ・・・やめちゃったらさ。もう西門さんとは会わないかな・・・」
「そうだな。牧野次第じゃね?時々なら今まで通り飯ぐらいは付き合ってやるぜ?」

「時々・・・今までもご飯は年に数回だよね。そうか・・・そうだなぁ・・・」
「別にやめろって言ってねぇんだけど?嗜みとして通うなら今まで通りの時間をとってやるから来ればいいじゃん」

「・・・行ってもいいの?私・・・もう道明寺とは無関係の女だけど?」
「俺は今までも司の女だから茶の指導をしたわけじゃねぇけど?」


そこで会話は終わった。
だんだん近づいてくる私のアパート。窓の外が見慣れた景色に変わってきた頃、自分の感覚とは随分ズレた夕焼けの空になっていた。

細い路地にまたこの不似合いな車が入っていく。
この道をどんどん奥に進めば私の住んでる古びたアパートがある。

やがて閉め忘れたカーテンが途中で止まったままの窓が見えてきた。
なんだ、もう着いちゃったんだ・・・っていうのが正直な気持ちだった。またあの狭い部屋で1人っきりの生活が始まる。夢の世界は終わってしまった・・・って。


西門さんは迎えに来てくれた所で車を停めて、私は自分でドアを開けて車を降りた。


「色々ありがとう。今度の金曜日は取り敢えずお稽古に行くね。その時にこれからどうするか話そうよ」

「・・・牧野が決めればいいって。俺は日本から出て行かねぇからずっとあそこにいるんだから」

「あはは!そうだよね、私たちだけは日本を出て行かないよね!」

「・・・まぁな」


別れる時ぐらいは笑おうと思って空元気を出して歯を見せたら、西門さんの目が急に険しくなった。
それに驚いて私は思わず口を塞いだ。


「牧野・・・お前の部屋に誰かいる・・・」
「・・・へっ?」



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2018/08/11 (Sat) 12:55 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/11 (Sat) 14:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

あらら!それじゃ今まで結構モヤモヤした?ごめんなさいね♥
喧嘩の時に「やり過ぎじゃないか?」って結構言われたのであまり喋らない総ちゃんにしてみた。

でも、ドンドン喋り出して(笑)
最近じゃ感情出してると思うんだけど。

竹本君、要注意人物登場しましたね。医者っていうだけで何かやらかしそうでしょ?(笑)
お楽しみに~♥

頭叩く・・・あはは!愛情です!


そして部屋には何がいるんでしょう・・・それはね・・・ふふふふふふ。

2018/08/11 (Sat) 19:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様 こんばんは。

コメントありがとうございます。

急に変わってしまいましたね、申し訳ありません💦

新しい人も出てきました。
この人は何かと絡んできます。お楽しみに~!
いい人かどうかはまだわかりませんが。

で、オカルトじゃありませんから(笑)
あれは終わったから!もう書きませんのでご安心を♥

これから総ちゃんが押してくる・・・はず!!
期待して待っておきましょう!

2018/08/11 (Sat) 21:03 | EDIT | REPLY |   

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