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plumeria

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姿を変えた女の人はもう私なんか見ずに総二郎だけを見つめていた。
私を自分の後ろ側に回して彼女から守ってくれてる・・・彼は頭上の恐ろしい”鬼の目”を睨んでいた。

私は総二郎の服を握りしめて肩越しに彼女を見ていて、その赤い爪が総二郎に伸びた時、咄嗟に前に出て振り払おうとした。それに触れてしまうと総二郎を連れて行かれる、そう思ったから。


「つくし!お前は動くな!・・・いいか、隙をみてこの部屋から出ろ!」
「え?!嫌だ、そんなの!総二郎を残しては行けない!」

「俺の事はいいからここから出て誰かを呼んできてくれ。でも、走るなよ、お前・・・大事な身体なんだから」

「総二郎、どうして・・・」


総二郎は私のお腹に赤ちゃんがいるかもしれないって知ってるようだった。それに驚いて彼女から目を離した次の瞬間、彼女の手は総二郎の腕をガシッと掴んだ!

「きゃああぁーっ!総二郎、いやあぁーっ!」
「つくし、早くここから出ろっ!俺は大丈夫だから!」

『総二郎様・・・いつまでもそのような女を捕まえてないでお離しになったら?・・・その女の命は私がもらいますから・・・』

「・・・馬鹿を言うな・・・こいつの命は俺が守るんだよ!たとえそれで俺が命を落としてもな!」

『・・・そうですか。私はどっちでもいいわ・・・この世界であなたと暮らしても、私の世界にあなたを連れていっても・・・』


この人の世界に総二郎を?その言葉で総二郎の表情が一段と険しくなった。
こんなにガリガリの骨のような腕なのに、逞しいはずの総二郎の腕に爪が食い込んでいく。そこが赤いのは爪のせいなのか総二郎が傷ついてるのかわからないほどだった。

彼女の乱れた髪が総二郎の肩に着くぐらい近づいて、私は総二郎を引き離そうと思いっきり後ろに引っ張った。でも、全然動かなくて、さっき私が投げた人形がすぐ横にあったから、それをもう1度彼女に投げつけた!
でも人形は彼女を通過してしまうのに、彼女の手はしっかりと総二郎を掴んでいて離さない・・・「どうして・・・」って小さく呟いたら彼女の唇がニヤリと笑った。


『・・・何をしても無駄なこと・・・私の身体はこの世のものではない。お前の思うようにはならぬわ!!』
「きゃああああぁーっ!」
「つくしっ!伏せろっ!」

彼女は総二郎を掴んでいた手を離さずに、もう1つの手を私の顔に向けて伸ばしてきた!総二郎にが自分の身体を盾にして庇ってくれたから捕まることはなかったけど、思いっきり背中を床に打ち付けた!
その時に私の目に入った光景は、総二郎の両腕を掴んで今にも彼に噛み付こうとしている彼女の歪んだ顔・・・!

『総二郎様・・・それほど抵抗なさるのなら仕方ないですわ・・・総二郎様とこの世界で生きることは諦めて、あなたを私の世界に連れて行きましょうね・・・』
「・・・誰がお前の世界に行くか!俺はこの先もつくしとここで生きていくって決めてんだよっ!馬鹿野郎っ!!」



総二郎がそう叫んだ時、2人の向こう側に鈍く光るものを見つけた・・・。



それはあの時の鏡・・・私がハンカチで拭いてそこに置いたあの鏡!
その中にはぼんやりと人影が見えた。

嘘・・・だってそこの前には誰も立っていないのに?


彼女が総二郎を押さえ込んでその喉元に噛み付こうとした時、私はその場から急いで立ち上がって鏡の前に行き、その中を覗き込んだ。
鏡なのに私の姿は映っていなかった・・・そこにいたのは・・・知らない女の人。鏡の中から私のことを凄い目で睨み付けていた!
黒い髪の毛、赤い唇・・・青白い肌で真っ黒な瞳・・・確かに私に似てるかもしれない。

でも・・・私じゃないっ!!


やっぱりそうだったんだ・・・すべてはこの”鏡の中の私”のせい・・・理由はわからないけど呼び覚ましたのは私なんだろう。
あの時この鏡の扉を開けたからこの人の”復讐”が始まったの?


振り向いたら総二郎の喉までもう僅か・・・凄い形相で見下ろす彼女と必死に抵抗する総二郎の顔がもうすぐ重なろうとしてる!
総二郎を守らなきゃ・・・それしか頭にはなかった!


「ごめんなさい・・・もう・・・もうこんな事やめてっ・・・!!」

私はその鏡を両手で持って頭の上に高く振り上げ、そのまま勢いをつけて床に叩き付けた!!

ガシャーーーン!!

大きな音を立てて鏡は粉々に割れて、次の瞬間、『ぎゃあああああぁーーーっ!!』っと叫び声が上がって総二郎を押さえ込んでいた彼女の身体が弓なりに反り返った!
彼女の腕は総二郎から離れてダラリと力なく垂れ下がった。


「総二郎っ!!」
「つくし・・・つくしっ!」

彼女の手が離れたから総二郎はすごい勢いで私の傍に駆け込んできて、両手で身体を抱き締められた。
そして2人で彼女の方を見た。


彼女は・・・真っ直ぐ立って天井を見ていて、泥で汚れた白い着物が足元からどんどん消えて行く・・・長かった髪の毛が白くなってバサバサと下に落ちてそこでふわっと消えて、腰の辺りが消え・・・胸の辺りが消え・・・

最後に顔だけがそこにあった。
漆黒の瞳が総二郎を見てる・・・それは哀しそうでもあり、愛おしそうでもあり・・・悔しそうにも見えた。


『・・・総二郎様・・・ここにお嫁に来たかった・・・・・・あなたの所に・・・あなたの傍にいたかった・・・


その言葉を残して彼女の姿が全部・・・消えた。
床に一粒だけ涙の痕を残して・・・。


私たちのすぐ横にはもう何も映せない、砕け散った古い鏡の扉だけが転がっていた。



*********



今、何が起こったかさっぱりわからなかった。
ただ、もう1人いたつくしの正体がこの鏡の中に住んでいた女だと言うことがわかっただけ。だがそれすら信じられずにつくしを抱いたまま呆然とその部屋の真ん中に座り込んでいた。

つくしも同じ・・・震えながら俺の腕を掴んでさっきまで女が立っていた場所を見つめていた。


「・・・総二郎、どうなったのかわからないんだけど・・・終わったの?」
「あぁ・・・俺にもよくわかんねぇけど終わったんじゃないのか?」

「あの人は誰だったのかしら・・・」
「さぁな・・・でもこの家に嫁ぐ予定の女だったんじゃねぇか?西門の白無垢着てたんだから」


つくしを抱き締めてる腕にはくっきりとあの女の爪で出来た傷が残っていた。細い指の跡も・・・それを見るとこれは夢ではなかったってことか?
これまでつくしだと思って触れてきた女の正体がこの世のものではなかったと・・・そう考えたらゾッとした。


暫くしたら震えていたつくしがカクンと俺に身体を預けるように倒れてきて、その身体と頭を抱え込んで額にそっとキスしてやった。何度も「大丈夫か?」って言葉を掛けると頷きながら少しだけ微笑んだ。


「・・・助けに来てくれてありがとう・・・もう、これで私たちは・・・・・・だい・・・じょ・・・」

「・・・・・・つくし?・・・おい、つくし!」


つくしは俺の腕の中で意識を失っていた。
真っ青で血の気のない唇・・・俺は急いでつくしを抱きかかえてこの部屋を飛び出した!

マズい・・・こいつの中には・・・!


「つくし、しっかりしろ!絶対に助けてやるからな・・・誰か!誰かいないか!!」


本邸の中に俺の叫び声が響き渡った。




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次回が最終話です。
とんでもないお話しで申し訳ございません💦
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2018/08/07 (Tue) 12:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

あっはは!カオナシ・・・!!

実はですね、このお話を書いている間、ラインのアイコンをカオナシにしてたのよ!(笑)
で、イベントのグループラインで「どうしたっ?!」って言われてね。
「いま、こんな気分」って言ったら笑われたり心配されたり(笑)

普段はオカメインコの顔にしてるんで、書き終わったら戻しておきました。


ふふふ、怖かった?
ラストはもう説明のみなので・・・って1人忘れてるでしょ?(笑)


オモイダシテ・・・オモイダシテ・・・

2018/08/07 (Tue) 12:29 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/07 (Tue) 14:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

あっ!覚えてたの?ふふふ、よかった!

でも・・・ごめん。
余韻が残るかも・・・


ユルシテクダサイ・・・ユルシテ・・・

2018/08/07 (Tue) 21:44 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/07 (Tue) 22:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、ごめんなさい!

余韻残しませんっ!!完全に消し去りますっ!!

・・・ってことで、多分今あすさんが頑張ってると思う(笑)

2018/08/07 (Tue) 22:51 | EDIT | REPLY |   
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2018/08/07 (Tue) 23:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、爆笑!!

もう少しお待ち下さい。そのうち届くと思います。

2018/08/07 (Tue) 23:22 | EDIT | REPLY |   

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