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plumeria

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牧野が屋敷を出て行ってすぐ、俺は急いで部屋に戻り予め用意していた護身用の道具を手に持った。
折りたたみのナイフにフラッシュライト、小型の催涙スプレーと・・・ガスライター。

常時持ち歩いてる訳じゃないけど、牧野と何処かに行く時には念のため荷物の中に入れるようにしていた。
俺が使うと言うよりも、むしろ牧野が何かのトラブルに巻き込まれたらいけないから・・・それを本当に持ち出すことになるとは思いもしなかったけど。
そいつらをポケットに忍ばせて俺も玄関から庭に向かって飛び出した。


月は雲に隠れていて庭のすべてが闇の中・・・屋敷からの僅かな灯りで白っぽい花が所々光ってるだけ、それ以外は吸い込まれるような暗澹な世界だった。

「牧野・・・牧野、何処?返事して!・・・牧野!」

叫んでみたけど何処からも返事がない。
暫くしたら目が慣れてきて暗い庭の様子が少しはわかるようになった。


・・・カサ・・・・・・


誰かが草を踏み歩いたような音がしてハッと振り向いた。
それは俺が1番気になっていた濃いピンク色の夾竹桃の木がある方向。

目を凝らしたらその暗闇の中から牧野がゆっくりと歩いてきた。


ぼんやりと見えるその格好はさっき出て行った時と同じで変わった様子はない。怪我をしているとか乱れてるとか、それがなかったからホッとして牧野に近づいた。

「心配したじゃん。部屋に帰ろう?危ないから」
「・・・・・・」

「さっきからなんで返事しないの?拗ねてるの?」
「・・・・・・」

「牧野?どうしたの?」


俺がもう1歩近寄ろうとしたその時、牧野の後ろから着物姿の女・・・響子が現れた。
いつの時代の格好なんだ?・・・お世辞にも綺麗とは言えない着物を着ていて、何故かニヤリと笑って牧野の後ろから俺を見ている。
しかも着物には焼けたような跡がある・・・足元は裸足で土だろうか血だろうか、よくわからないけど黒く汚れていた。


その時、雲が切れて月が現れ牧野と響子を照らした。


牧野は虚ろな目をしていて意識が朦朧としているように見えた。顔も青ざめていて、唇にも色がない。
その反対に響子の目はいつもより光っていて口角を少し上げている。後ろで咲いている夾竹桃の花が風に揺れると響子の長い髪もふわふわと空気に漂うように揺れた。

牧野は何も喋らなかったけど響子の方が俺に話しかけてきた。


『ふふ、類さん・・・やっぱり来てくれたのね』

「・・・どういう事?これがあんたの言ってた可笑しな行動って事?真逆な反応じゃない?」

『ふふふ、そうね・・・でも、ああ言わないとこの子から目を離すかもしれないでしょう?』

「あんた、巫山戯てんの?それならそれでもいい・・・朝になるのを待たずにもう今からここを出るから」


牧野を連れて帰ろうと腕を伸ばしたとき、響子の腕で何かが光ったような気がして足を止めた。
何が光ったのかと彼女の腕を見たら、その手に握られているのは尖った木の枝・・・?先が矢のように削られた枝を1本持っていた。
その先端が月明かりで何故か光って見えたんだ・・・木の枝のはずなのに!

そして牧野に向かって手招きのような動きをしたら牧野はゆっくりと響子の前に行った・・・瞬き1つせずにまるで操られているかのように・・・。


「牧野・・・どうしてそっちに行くんだ!牧野!」

『この子はあなたの声なんて聞こえないの。私の声しか聞こえてないのよ。私の血を口にしたから・・・』

響子の血?・・・まさか今日の夕食の時、最後に食べさせていたデザートのことか?
牧野がケーキの上に乗っていた真っ赤な実は何かと聞いていた。それは響子が育てた大事なハーブの実だと・・・。


『そう・・・あれはね・・・私の血で作ったものなの。あれを口にした人間は私の声しか聞こえなくなるの。だからこの子は私の声を聞いてここに来てるのよ。もう私のいいなり・・・類さんの声は届かない・・・』

「牧野に俺の声が聞こえないなんてことはない。あんた、バカじゃないの?こんなことで俺達の間は壊れたりしないけど」

『そうかしら・・・でもね、残念だけど本当なの。見てるといいわ・・・』


響子は自分の手に持っていた枝を牧野に持たせた・・・・・・何をする気だ?

だけど急にここで俺の身体も動かなくなった。
まさか金縛り?・・・だけど意識ははっきりとしてる。目の前の2人のことははっきりと見えていた。


「どうする気?牧野に何かしたらあんたのこと・・・許さないけど」

『・・・この子は邪魔なのよ・・・何度あなたに頼んでも最後までやってくれないからこの子が自分でやるのよ・・・』

「俺に頼んだ?あの声・・・やっぱりあんたが俺に指示してたの?ずっと嫌な声が聞こえてたんだ」

『そう・・・あの夜も今日の湖も・・・お願いしたのに毎回この子が邪魔するから・・・』


俺達がこんな話をしていても牧野はその枝を持ったまま、何処を見ているかわからない目でゆらゆらとそこに立ってる。
今自分が見ている光景が現実なのか夢なのか・・・完全に雲がなくなって今度は昼間のように月明かりで眩しくなった。

その光は牧野を照らし、響子の顔を夜の庭に一層白く浮き上がらせる。


『それじゃあそろそろ・・・お嬢さん、その枝で自分の心臓を刺しなさい』
「・・・なんだって?」

『ほほほ!その枝で心臓を刺しなさい。大丈夫、少し苦しいけどすぐに楽になるわ・・・』
「馬鹿なことを言うな!牧野はそんなことはしない・・・!」

そう言ったのに牧野の腕はその枝を持ち上げ自分の身体の前に持ってきた。
その枝を両手で持ち、尖った先を自分の胸の上にピタッと置いてる・・・そこまでの流れはスローな動画を見るようだった。


「・・・牧野!やめろ!」
「・・・・・・」

「牧野!しっかりしろ、牧野っ!!」
「・・・・・・・・・」


『言ったでしょう?この子にはあなたの声は聞こえないのよ・・・さぁ!刺しなさい!自分の心臓を!!』


響子がこれまでで1番大きな声を出した瞬間、牧野が自分の手を大きく上に動かし、勢いをつけて振り下ろした!!


「牧野ーーっ!!」





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2018/09/02 (Sun) 11:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんばんは!

あれ?怖いですか?そこまで怖くないと思ったんですが?
今から類君が闘うんですよ♥だから怖くないですよ~!

あぁ・・・あの問題作ですか(笑)
早く記憶から消していただけると嬉しいです(笑)

私は甘くて程よいジョークの聞いたシーンは好きですが、決してあのように過激なものは普段のお話では書きません!
イベントって怖いですねぇ・・・言われたら書いちゃうとあたり(笑)

いやいやいや、多分もう書きません!

どうかお許しくださいませ(笑)

2018/09/02 (Sun) 18:43 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/03 (Mon) 09:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは

ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっーっ!!

逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!!(爆)


あ、それ?
ご想像にお任せします(笑)あっはは!

2018/09/03 (Mon) 11:29 | EDIT | REPLY |   

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