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ローラン家はパリから少し離れたベルサイユに邸宅を構えていて、観光名所かと見紛うような造りだった。
そこに着くと大袈裟に作られた門が開き、車は中に進んで行った。

そしてまるで古城のような玄関の前に停めると中から執事のようなスタイルの男性が出てきて俺が座っている席のドアを開けて深々と礼をする。

「ハナザワ様でいらっしゃいますね。お嬢様がお待ちでございます。どうぞ、中にお入りくださいませ」

「・・・・・・」


案内されて入っていくと豪華な内装に囲まれた奥の広間で、可愛らしいピンク色のドレスに身を包んだアリスが待っていた。

会食の時にも感じたけどやはり美しいんだろうと思う。
元々癖毛だろうにそれを巻いてボリュームを出し、上品なヘッドドレスを付けている。アクセサリーはパールで統一してピンク色のドレスにはよく合っていた。

昼間のパーティーだからカクテルドレスで膝までのもの。そこからすらっとした綺麗なラインの脚が伸びていて白いハイヒール・・・その立ち姿は上品な薔薇のようだ。

そして俺を見ると軽くお辞儀をして顔を赤らめた。

「お待たせしたようですね、申し訳ありません」
「いえ・・・まだ両親もここにおりますわ。時間は大丈夫じゃないかしら」

「それよりも挨拶の方が先でしたね。お誕生日おめでとうございます。これは私から・・・気に入っていただけると嬉しいのですが」
「まぁ、ありがとうございます。見ても宜しいですか?」

「どうぞ・・・」

・・・って言っても俺は中身は知らないんだけど、母さんの見立てなら大丈夫だろう。

アリスがプレゼントの箱のリボンを解き、ネックレスを見て嬉しそうに笑った。自分の首元に当て、近くにあった鏡で確認しながら決まり文句のように俺に聞いてきた。

「今日のドレスにはどうかしら・・・こちらに替えてみたいのですけどルイ様はどう思われます?」
「このドレスの色にはパールの方がお似合いです。これはまた次の機会に付けていただけたらいいですよ」

「そう?・・・じゃあそうしますわ」

照れながらネックレスを箱に戻し、もう1度俺に礼を言ってからすぐ横のテーブルにプレゼントを置いた。


その時、奥の方から現れたのはローラン社長夫妻。
こちらも正装で夫人の方はうちの母さんを上回る派手さ・・・主役は娘じゃなかったのかと呆れてしまうほどだった。

「おぉ、ルイ君。今日は宜しく頼むよ。あまりこのような席に慣れていない子だからしっかりサポートしてやってくれ」
「・・・やはりお写真で見るより素敵だわ。それにお母様によく似ていらっしゃる・・・ほほほ、男性にしておくには勿体ないぐらいですわねぇ」

「お母様、失礼ですよ・・・」


このローラン社というのはこの社長が3代目ぐらいの若い企業だ。
夫人はフランス貴族の血を引く家柄の出身のはず。それなのに少しばかり品のない言葉と振る舞いにがっかりしたが、そんな事も俺には関係ない。

この連中が俺の家族になることはないんだから・・・そう思えば無関心でいられる。
ただし機嫌を損ねるな、と言う母さんからの指示もあるから無碍にも出来ず、取り繕った笑顔だけを向けた。

「私としてはもう少し逞しい風貌に憧れるのですが、どうもすべてが母に似てしまったようです。実は私も日本で殆どこのようなパーティーには出た事がありません。できる限り・・・と言うことでお許しください」

「いや、まだ出会って間がないのだから無理は言わないよ」

「・・・ありがとうございます」


ふと、アリスを見たら彼女は何処かをじーっと見つめている。
何処を見ているんだろうかと視線を辿ったら・・・ローラン社長の後ろに立っている男だった。

俺より少し上だろうか、ここにいるということは社長秘書・・・?それにしては若いような気もする。
俺の視線にアリスが気が付いたのか、パッと顔をそらせて気不味そうに手を摺り合わせた。横目でその様子を見て、また男の方に視線を向けると彼も切なそうにアリスを見ている。

俺は滅多に他人のこういうのを気にしないんだけど。へぇ・・・そう言うこと?


「ジルベール、車の用意は?」
「はい。もう出来ております。表に回しますか?」

「頼む。アリスはルイ君と先に行きなさい。我々は別の車でホテルまで向かうから」

「・・・はい、お父様」
「それではお先にお嬢様をお連れ致します。後ほど会場で・・・」

ジルベールと呼ばれた男はあの様子では秘書見習いの運転手って事か。
アリスは1度だけ後ろを振り向いて両親とジルベールの姿を確認した。その顔は・・・アパルトマンに残してきた牧野と重なった。


***********


類が出掛けてから少し経って、ドアのベルが鳴った。

「S'il vous plaît, attendez un moment・・・(ちょっと待ってください)」


彼が帰ってくるはずがない・・・今度は誰が来たんだろうと恐る恐るドアを開けたらそこにはまた岡田さんが立っていた。
あの日と同じように無表情で冷たい瞳。今日は手には何も持っていなかったけど、車はアパルトマンの目の前にエンジンを掛けた状態で駐めている。

「あの・・・類ならもう出掛けましたよ。随分前です・・・ここにはいませんよ?」
「そうでしょうね。私はあなたをお迎えに来たのですよ、牧野さん」

「は?私・・・をですか?私は類が帰ってくるまでここから出るわけにはいきませんけど」

もしかしたら強制的にここから追い出す気なのかと急いでドアを閉めようとしたら、岡田さんはガシッとドアを掴んで止めた。
その強引さに驚いて身構えたら岡田さんはその場で次の言葉を出した。

「牧野さんには今日のパーティーに来ていただきたいと副社長が仰っているのですよ。類様のお母様です。その方の指示ですので類様から叱られるということもありませんよ。どちらかと言うと花沢家のご命令ですので従った方がいいかと思いますが?」

「え?類の・・・お母様の?」

「そうです。あなたにも是非来て欲しいとの事です。この世界を見てお勉強して欲しいと思っていらっしゃるのでは?そのぐらいの覚悟がないと類様のお側には居られないという意味だと思いましたが?」

「そ・・・それなら類に連絡を・・・」

私は部屋に入って類に電話しようと思った。
でも、その時に私の手首を掴んで岡田さんがグイッと引っ張った!

「なっ、何をするんですか?痛い・・・離して!」
「類様へのご連絡は困ります。もうパーティーに向かわれているのでね」

「ちょ、ちょっと!・・・嫌だ、離して!」
「・・・あまり抵抗されるのは類様にとっても良くないと思いますよ。あなたの立場は良いわけじゃない・・・ご両親様のご機嫌を損ねないようにするには大人しくすることです」


まだ家の事も何もしてないのに・・・!
お掃除、途中なのに!

私は岡田さんに無理矢理駐めてあった車に乗せられて、すぐにその車はアパルトマンから遠ざかった。
サンダルでTシャツでジーンズで・・・殆どお化粧もしてないのにこんな私がどうやって大企業のパーティーに出るの?
これって・・・意地悪じゃないの?

車の座席の1番隅で小さく踞るように座って、自分の膝の中に顔を埋めていた。
周りの風景なんて見たくもない・・・類がいないのになんで1人でこんな車に乗ってるの?
今から何処で何をされるの?どんな言葉を浴びせられるの?


・・・類、助けて・・・!!



「牧野さん、着きましたよ。さぁ、降りて」

そう言われて顔を上げて窓の外を見たら、街中なのに緑に囲まれた邸宅があった。
日本のように広い敷地じゃなかったけど如何にもヨーロッパのビルといった感じの歴史を感じるような建物。

そこで降ろされ、岡田さんに連れられてお屋敷の中に入ったら、そこはもう別世界だった。
外の少し古めかしい感じとは反対に、ゴージャスで光り輝くシャンデリアが眩しい・・・そこら中にある調度品は類の寮の部屋でも見たようなものだった。

そして吹き抜けの階段から降りてくる1人の女性。


ゴールドのドレスを着た上品で綺麗な人は類にそっくりだった。
この人がお母さん?・・・あまりにそっくりで美しくて・・・その少し悲しそうな笑顔が出会ったときの類に見えて息を呑んだ。


「あなたが・・・牧野つくしさん?」

「・・・はい。初めまして・・・牧野つくしと申します」


コツンコツンと階段を降りる音がお屋敷に響いた。
その音が1番下まで降りてきて、今度は真っ直ぐに私の方にやってくる・・・。


類と同じ目が私を見ている。




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2018/08/15 (Wed) 10:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

ちょっとーっ!仕事人呼び過ぎ(笑)
そんな事したらヤバいって!

そうかぁ・・・階段から出てきたら悪女なんだ!気にしてなかった(笑)
何となく大きな家の御夫人は螺旋階段とか降りてくるイメージだったんですよね。

絵柄は違うけど宝塚も毎回階段降りてくるから(笑)

平坦な道は歩かないって思い込みがございました。


岡田・・・こいつは白アスパラで(笑)

関係ないけど子供が普通のアスパラを料理に使ってて笑ってしまった。
これが白くて大きかったら・・・食べられたかなぁ?(笑)


お盆、終わりましたねぇ。
子供が明後日京都に帰ります。寂しくなるなぁ・・・(泣)



2018/08/15 (Wed) 23:12 | EDIT | REPLY |   

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