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響子の声が響いたあと、牧野は自分の手に持った枝を大きく振り上げた。

「牧野ーーっ!!」

そう叫んだ時、それまで金縛り状態だった身体が動いた!
急いで持ってきたナイフを取り出して、刃先を出さないまま牧野の持っている枝に向かって全力で投げた!

コントロールなんて考えてる時間はない!万が一牧野の身体に当たったら・・・そう思ったけど、このままだと本当に自分の心臓を突き刺してしまう!
それだけはさせられない・・・!月明かりの中で投げたナイフは光りながら牧野の手に向かった。

そして運良く枝を弾き飛ばした!
その時の衝撃で牧野は「あっ!」と、小さく声をあげてその場に倒れ込んだ!


「牧野・・・牧野ーっ!!」

庭の草花の中に倒れ込んだ牧野の傍に走って行って、ぐったりしている身体を抱き起こした。身体は温かくてちゃんと脈もある。それを感じた後で思いっきり抱き締めたら俺の胸の中で意識を取り戻した。

「・・・ん、うん・・・?あれ・・・類、どうしたの?」
「牧野!気が付いたの?!」

「気が付いた?・・・あれ?ここ・・・旅館の庭・・・何でこんな夜に庭にいるの?」
「ごめん、説明はあと!急いでこっちにおいで!」

牧野を抱きかかえると急いで響子から離れようと身体を反対側に向けた。でも、響子は俺の行こうとしてる方向に移動していて既に目の前に立ちはだかっていた。
その顔は恐ろしく歪んでいてさっきまでの妖しい笑みなんて何処にもない。

「きゃああぁーっ!な、なに!!誰っ?!いやあぁーっ!」
「あれが響子の正体だよ!やっぱりここは普通の旅館なんかじゃないんだ!」

「えぇっ?きょ、響子さん?あれが・・・響子さんなの?」


牧野を背中側に回して響子と向き合った。

月明かりで俺達の影が地面に出来てる・・・それなのに響子の下には影なんてなかった。
彼女の身体は浮遊しているようにも見えて背中に汗が流れた・・・まさか本当にこんな現象を見ることになるだなんて思いもしなかったから・・・。


「・・・勝手に招待状を送ってきたのは俺達の命を狙いたかったからなのか?」

『ふふっ、そうよ。正確に言えばあなたが欲しかったの。でもあなただけを誘っても来ないかもしれない・・・その子の言うことなら聞くと思ったから利用したの。だけどその子は要らないから消して欲しかったのに・・・』

「どうして俺を欲しがる?どうやって牧野のことを知ったんだ?!」

現実の世界の話を異次元の亡霊に聞いている・・・頭の中がパニックになってて言葉を出しながら唇が震えた。

この女性は一体誰だ・・・響子という名前にも何1つ覚えがなかった。
その見たこともない響子に何故命を欲しがられる?


『・・・その子が軽井沢にあなたの写真を送ったでしょう?偶然その写真がここに飛んで来たの・・・私の魂が彷徨っていたこの場所にね。村の誰かが風で飛ばしてしまったのかしらねぇ・・・でも、嬉しかったわ。またあなたの顔を見ることが出来て・・・』

「また?俺はあんたに会ったことはないよね・・・あんたそのものを知らないんだから」

『私の世界に来ればすぐに思い出すわ。写真を見たとき本当に嬉しかったの・・・迎えに来てくれたような気がして。だから街まで行って写真を送ったその子を突き止めて・・・ここにあなたを誘導したのよ』


「・・・うそ、本当にあの写真が原因なの?そんな・・・」


牧野は驚きすぎてその後の言葉が出なかった。ガタガタ震えながら俺の服を掴んでて歯までカタカタ鳴らして・・・。

「牧野、大丈夫だから。あんたは俺が守ってあげるから離れないでよ」
「・・・う、うん・・・わ、わかった・・・」


『・・・その子を守るの?・・・そんな事をしたらどうなるかわかってるの?』

もう1度響子は大きく手をあげた。
さっきと同じようにその手が白く光ったかと思えば再び矢のような枝が浮かび上がってきた。そして俺に向かって叫んだ。

『またあなたは他の女を選ぶの?こんな所に私を残したまま・・・また他の女を選ぶの!!』

「何の話だ!選ぶも何も俺には牧野しかいない!」

『いいえ、あなたは私を迎えに来ると言ったわ・・・!だからこの時間にここで待てと・・・私はずっと待っていたのに・・・!』

「それは俺じゃない!俺は誰も迎えになんか行かない。牧野は傍にいるんだから!」


響子の顔がどんどん鬼のように変わっていく・・・もう初めて会った時の美しい顔は何処にもなく、顔半分が焼け爛れたように皮膚が引き攣ってる・・・その中で赤い瞳だけが光った!
その手に握られた枝は更に太さを増していき、それをまともに受けたら間違いなく命を落とすだろうというぐらいにまで大きくなった。

気のせいだろうか・・・響子の後ろに赤々と燃え盛る炎の残像が見える。


重力を感じさせない枝を響子は高々と持ち上げていた。
そして勢いよく振り下ろしたら枝は俺達の方に向かってひゅんっ!と飛んできた!

「きゃあああぁーっ!」
「危ない、牧野!!」

わずか数メートルの距離で投げられたから殆ど避ける事は出来ない!それでも牧野を抱えて横に飛び退いたらその枝は俺の左頬を掠めて後ろに消えていった。
当たってはいないけど掠めたところがヒリヒリする・・・まさか、毒でもあるのか?


『次は避けられない。あなたは私と同じような苦しみを味わった後で・・・私の世界で一緒に暮らすのよ・・・』

「あんたと同じ苦しみ?どういう事だ・・・この枝はなに?」


『・・・ふふふ、これはね、私の分身・・・夾竹桃の枝なの。その全身に毒を持つ・・・夾竹桃のね・・・』

「夾竹桃の・・・毒?」


もう1度同じ動きを繰り返したら夾竹桃の枝は彼女の手に中に再び現れた。
今度は初めから大きな枝のまま、響子はまたそれを自分の頭上高くあげた。

赤い唇がニヤリと笑う・・・その奥にある夾竹桃の大木が風もないのにザワザワと揺れ出した。
そして濃いピンク色の花びらがこの庭全体を覆うように渦を巻いて飛び交う、その真ん中で牧野を抱き締めたまま疼くまっていた。


ただ花びらが舞っているだけなのに息苦しくなってくる。
牧野も咳き込んで俺に縋りついてる。はぁはぁと荒い息づかいが聞こえて来て、牧野を支える俺の手に力が入った。

こんな所で牧野を傷付けるわけにはいかない・・・!。



『・・・これで最後・・・あの日から今日まで・・・随分長かったわね、透さん・・・』

「・・・透?それって・・・」


今まで俺の事を「類」と呼んでいたのに、この場になって初めて呼び名を変えた。

「透」とは・・・俺の曾祖父の名前だ。




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2018/09/04 (Tue) 11:46 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/04 (Tue) 15:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは

あっはは!そりゃ関係してないと命狙わないでしょうっ?!(笑)
イケメンってだけで取り憑かれたら総ちゃんも類君も命がいくつあっても足りませんわっ!

西門は400年あるから古い話が使えるけど花沢家・・・歴史がないから困るわぁ、こんな場合。
いや、もう書きませんけどね(笑)

あと2話だったかな?
平和に終わると思うんだけど・・・でも、怖くないよね?(笑)

2018/09/04 (Tue) 18:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは

ご心配ありがとうございます。
はい、なんとか無事ではあるようですが周辺で被害は出てる模様・・・生きてるので一安心です♥
(油断したら外に出ますからね・・・)

さとぴょん様も充分にお気を付けて下さいね。
しばらくは風が強いと思うので。

2018/09/04 (Tue) 18:06 | EDIT | REPLY |   

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