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plumeria

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『・・・これで最後・・・長かったわ、透さん・・・』
「・・・透?それって・・・」

透というのは俺の曾祖父の名前、それを響子が口にした時、手に握っている夾竹桃の枝を振り下ろそうと彼女の手が大きく動いた!何故か笑っているようにも見える響子の顔・・・その赤い瞳がカッと光った瞬間、夾竹桃の花びらが竜巻のように響子の身体を取り巻く。

殆ど歩くことが出来ない牧野を抱き締めて、もう避けられないと身を屈めたその時、横から凄い勢いで飛び込んで来たヤツがいた!
今度は誰が来た?!伏せていた顔をあげたら・・・そこには若い男の横顔があった。


『やめろ!姉さん、もうこんなことはやめるんだ!』
『・・・・・・誠司?!退きなさい!!』

『・・・こんな事をしたらいつまで経っても俺達はこの世界から離れられない!もういい加減に自分を解放しろ!』
『煩い!退かないのならあんたも一緒に消してやる!!』


それは響子の弟、誠司の姿だった。
こいつも・・・響子が姉と言うならこいつも”この世の人間”ではないのか?

誠司は俺達と響子の間に入って両手を広げて庇ってくれた。こいつにもやはり・・・影は出来ていなかった。
そして月灯りで金色に光った瞳は確かにこの世のものとは思えなかった。

チラッとその目が俺の方に向けられた。


『・・・あんたに頼みがある・・・』
「頼み?・・・何をしろって言うの」

『・・・姉さんの後ろの木を燃やしてくれ!あの木がなくなったら姉さんはこの世界にいられなくなるはずだ!』


響子の後ろの木・・・?
周りの木よりもひと回り大きなあの夾竹桃の木を燃やせって?響子はあの夾竹桃の分身ってこと?


よくはわからなかったけど、牧野に動かないようにと念押しして忍ばせていたガスライターを取り出した・・・でも、こんなものであの木を燃やせるんだろうか。
でも、やるしかない・・・牧野を助けるためならやらなきゃ!


『さぁ!私のところに戻っておいで!!』

その声が辺りに響いたと同時に木の枝は俺達の方に向かって凄い速さで飛んできた!
牧野を横のバラの植え込みに突き飛ばして身体を隠し、俺は牧野と反対側に向かって走った!飛んできた枝は誠司が跳ね返したが、すぐに響子の手には次の枝が浮かび上がり、連続して俺の方を目掛けて飛んできた。

シュッ!と俺の髪の毛を掠めて後ろに消えていく・・・!そこら中に植えられている花を踏み倒すように走って響子の後ろの木に向かった。
いくつかの枝は俺の足元に突き刺さり、逆に顔面を目掛けてくるものは身を屈め、響子と夾竹桃を両方見ながら手に持ったガスライターのスイッチを握った。

もっと近くで・・・もっと近くでつけなきゃ!
もうすぐ目的の夾竹桃に辿り着くって時に響子の『その木に近寄るな!』と言う叫び声を聞いた!


『そろそろ遊びはお仕舞い・・・この枝からは逃げられないわ!!』

響子の甲高い声がしたと思ったら、月に向かって伸ばしたように見えた手には今までで1番大きな枝が現れ。その先は異様なほど光っていた!

『透さん・・・私は信じていたのに!・・・信じていたのに!!』
『姉さん、やめろ!!』

「俺は透じゃない!!あんたの恋人は俺じゃない!!」

『あなたの恋人は私だけよ!!』


響子の腕が振り下ろされ、その枝が凄い光を放って真っ直ぐ俺の方に飛んできた!

もう避けられない・・・身体が固まって動けなくなり、俺はその光を見つめた。間違いなく・・・俺を射貫く!!


そう思ったとき、ドンッ!!と、大きな音がして俺の前に飛び込んで来た誠司が身体でその枝を受け止め、こいつの身体を突き抜けた枝の先は俺の額の真ん中に当たる寸前で止まった。

驚きすぎて声も出せなかった・・・。
響子は表情を変えずに再び腕を高く上げ、次の枝をその手に持とうとしている。


『何をしている・・・あんたは早く火を・・・火をつけろ!!』
「・・・お前、その枝・・・」

『・・・俺はもうこの世の人間じゃない・・・姉さんを連れて俺らの世界に戻りたいだけだ・・・早く・・・早くしろ!』


夾竹桃はもう目の前だった。
誠司が身体に枝を刺したまま、俺を庇うように両手を広げて響子と対峙している。

ここで迷っている場合でも固まってる場合でもない・・・俺は響子の手に新たな枝が現れた瞬間に飛び出して夾竹桃に火をつけたガスライターを投げ付けた!


『・・・そんな事はさせない・・・その木を燃やしてなるものか!!』

響子の声がまた響いてその腕から枝が凄い速さで飛んできた。
無我夢中で近くの植え込みに飛び込んでその枝を避けたら、そいつは夾竹桃の木に向かって飛んで、俺が投げたガスライターの本体を突き破った!

次の瞬間、漏れ出したガスにライターの火が引火して一気に炎が噴き出し、その火は夾竹桃を巻き込んであっという間に広がっていった!


『ぎゃああああーっ!火が・・・火が・・・私の身体が燃える!』
『姉さん、これでいいんだ!もうおとなしくしろ!』

『いやあああぁーっ!私は透さんが来るまでここで待つと約束したのよ!透さんが迎えに来るって言ったのよーっ!!』


夾竹桃が真っ赤な火の中で踊るように燃えていく・・・少し離れた場所で同じように苦しみながら響子の身体が赤くなっていった。
まるで彼女まで燃えていくように・・・その足元から赤い炎の色は消えて行き、恐ろしく歪んだ響子の顔が最後に煙となって闇夜に消えた。

消える瞬間・・・赤い涙が一粒溢れ地面に落ちていった。
それと同時に響子の最後の声が聞こえた・・・『透さん・・・』と。


気が付いたら誠司の身体も半分以上が赤い炎に包まれてて身体に刺さった枝ごと消えてゆく・・・。

「あんた・・・助けてくれてありがとう。牧野を救ってくれて・・・」

『・・・これで姉さんは・・・自分の世界に帰れるんだ・・・これでいいんだ・・・・・・これで・・・


誠司の顔が最後に微かに笑った。笑いながら彼も・・・煙の中に消えて行った。




「ゴホッ・・・ヤバい、夾竹桃の煙には毒性があるんだった。牧野を・・・牧野を連れて逃げなきゃ!」

夾竹桃が囂々と燃え上がり、もの凄い煙が屋敷中を包んでる。
この煙は吸えば死者が出るほどの猛毒だ!早くここから移動しなきゃ・・・!

倒れている牧野のところに行って身体を抱きかかえたけど、その時点で俺にはもう力が残っていなかった。


「牧野・・・・・・ごめん、動けない・・・もう・・・」



夾竹桃の炎が俺達を包み始めた。
それを薄く開けた目で見ながら・・・俺は意識を手放した。




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余談ですがガスライターってこんなのです。
100円ライターじゃないです・・・(いや、ホントに念のため)

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Comments 4

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2018/09/06 (Thu) 12:32 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/06 (Thu) 15:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは

あはは・・・ですよね~!
ここで燃やすってのは最初から決めてたんですが問題は火元・・・どうやって燃やすよ?ってなりまして。
いきなり類君が木の棒を擦りまくって発火させたらギャグでしょうしねぇ・・・。

マッチじゃつかないしろうそくも変だし・・・煙草・・・吸ってる場合じゃないし!

そこで調べて出たのがアレ。
キャンプとかで使うものらしいですが普通の100円ライターのデカいヤツ!

なんかね、スイッチ入れたら手を離しても燃えてるんですって!


めっちゃ無理矢理な展開でむしろ笑えるんですが(笑)その代わり怖くはないでしょ?
次回が最後です。コメントありがとうございました!

2018/09/06 (Thu) 16:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは!

も、盛り上がった?それはよかった!(笑)

あはは・・・そうね、意識が飛んじゃった・・・(笑)
でも亡霊もいなくなったからきっと目が覚めたら大丈夫・・・だと思うんですが。

謎解きは次回です♥
お楽しみに~!

2018/09/06 (Thu) 16:08 | EDIT | REPLY |   

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