FC2ブログ

plumeria

plumeria

エレベーターが最上階に着いた。
座り込んでいたけど急いで立ち上がってヨロヨロしながら部屋の前に行き、ドアを開ける前に深呼吸をした。

竹本さんにおでことはいえキスされて、そのまま西門さんの部屋に入れない・・・気分を落ち着かせようと思ってそんな事をして、小さな声で「よし!」と呟いて鍵を開けた。

「・・・あれ?」

そこで見たものは西門さんの靴?
男物の靴が玄関に揃えられててドキッとした。

「嘘・・・来るなんて聞いてないよ・・・?」


急いでリビングに行ったけどそこには誰もいなかった。照明もついてないし物音も聞こえない。
もしかしたら前みたいにこの近くで会食があって、ここに寝に来たんじゃないかしら・・・そう思ってマスタールームに行こうと振り向いたら・・・!


「・・・バイト、遅かったんだな」


マスタールームに繋がってるドアが開いてて、そこに西門さんが壁に凭れ掛かるようにして立っていた。
かなり機嫌が悪い・・・眉を寄せて腕組みして、いつもの角度で見られてるけど目つきが怖い。口元が笑ってない・・・私の背中に汗が流れた。

「西門さん・・・びっくりした。来てたんだ・・・お、教えてくれたら良かったのに!」

「質問に答えろよ。バイト、何処で何やってんだ?こんな時間まで働いてたっけ?」

「・・・たまにはやるのよ。時給・・・そう!夜の方が時給いいしね!」


「へぇ・・・病院で出来る夜のバイトがあんのかよ」
「・・・え?」

病院・・・なんで病院って言葉が出るの?もしかして・・・知ってるの?マンションから出る所を見られた?
竹本さんに引っ張られてタクシーに乗るところ・・・それともその前から?ううん、それなら止めてくれるはず。

西門さんを見たまま固まっていたら彼の方がゆっくり近づいてきた。いつもなら後ろに下がる私だけど今日は身体が震えて反応出来なかった。
どんなにキツい言葉でもいつもならその瞳は優しかったもの・・・それなのに今は凄く怖かったから。

そして真横まで来たらふわっと私の耳元に顔を近づけたから肩を竦めて目を瞑った!

西門さんの香りが・・・いつもの香りが私の心臓を壊しそうなぐらいドキドキさせる。
またこの前みたいなキスをされたら倒れるかもしれない!なんて自分に都合のいいように考えていたら、彼の口から出た言葉は全然違っていた。

「・・・知らない匂いがする。何処の男だ?」

「・・・はっ?」

「誰といたんだ?今まで・・・こんな時間まで何処で何してた?」

知らない匂いと言われてさっきのおでこのキスを思いだして、顔を逸らして西門さんから離れた。
無意識に額に当てた手・・・それを西門さんはちゃんと見ていて、私のその手首をガシッと掴んだ!

「きゃっ・・・何すんの?痛いじゃないの!」
「・・・じゃあ言えよ。誰と何処にいた?で・・・髪でも撫でられた?」

「そ、そんな事なんで西門さんに言わなきゃいけないのよ!」
「俺には言えねぇ事したのかよ」

「何もしてない!でも、西門さんには関係ないでしょ?と・・・友達だからってそこまで干渉しないでよ!」

西門さんの驚いた顔・・・なんでそんな顔するの?って今度は私が驚いて目を見開いちゃう。
そしてゆっくり離された手はまるで宙に浮いたみたいにそこで固まった。


「・・・悪かったな。干渉しちまって。・・・帰るわ」

「か、帰るの?ってか、どうしてここに来てたの?」

「ここは俺のマンションだ。それこそいつ来ようが牧野には関係ねぇだろ?誤解のないように言っとくけどゲストルームには一切入ってねぇからな!」


この言葉を出される時は私の顔すら見ていなかった。

背中を向けられて言われることがこんなに寂しいとは思わなかったけど、私は追いかけてちゃんと説明することが出来なかった。「実はね!」って話してしまえばいいのに・・・付き合ってくれって言われたことを西門さんに知られたくなくて言葉にならなかった。

言わなければ問題ないんだろうけど、ついて行っただけで「お前のそういうところが隙だらけって言ってんだよ!」って怒られる。それだけならいいけど彼の質問に自分が上手に答えられる自信がない・・・西門さんは多分、私の嘘なんて全部見抜いちゃう。
さっきみたいに・・・。

『良かったじゃん。付き合ってみれば?』・・・もし、こんな言葉が返ってきたらと思うと怖かった。
言わないってわかってても怖かったから。


廊下を歩く足音が遠くなって、そのうちガチャってドアが閉まった音がして・・・部屋はシーンと静まりかえった。
そしてエレベーターに続いて2度目・・・私はその場に座り込んでしまった。


「あ・・・まただ・・・お腹が痛い」

チクチクと脇腹が痛む・・・さっきまで平気だったのに・・・。
右手でお腹を押さえて左手を首元に当てた。


「ない・・・あれ?なんで・・・」


西門さんにもらったダイヤのネックレスが私の首にはなかった。
ご飯を食べてるときにはちゃんとあったのに、いつ何処で落としたんだろう・・・。

どうしよう・・・私の宝物なのに。


痛み出したお腹をさすりながら、情けない自分の行動に悔し涙が出た。



***********



西門さんには関係ないでしょ?友達だからってそこまで干渉しないでよ!

くそっ・・・すげぇ腹が立つ!

「何が関係ないだ?干渉するなだ?・・・何にもわかってねぇのか、あいつ!」

部屋のドアを閉めてエレベーターの前まで行ったら怒りが爆発して、そこにあった観葉植物を思いっきり足で蹴飛ばした!
そいつは横倒しになって廊下の端の方まで転がって行った。

どうしてここに来てたの?

・・・自分に会いに来たとは思わねぇのか!鈍感女め!!


イライラしながら最上階まで来たエレベータに乗り、そこに僅かに残った香りにビクッとした。

それはさっき牧野から微かに香ったフレグランス・・・それがこのエレベータに残ってるってことはやっぱり竹本と今まで一緒だったってことか。
まさか本当に髪を触られるぐらい近づかせたのか?それとも強引に・・・キスでもされたのか?

1階に着くまでが随分長く感じられる。
ムカつく香りを吸い込みたくもなくて息を止めていた・・・頭の中で少し前のエレベーターの中を想像しながら。

エレベータが1階に着いたらそこで降りて地下の駐車場に向かった。
まさかこんな気分でここを出て行くとは思わなかった・・・普通を装って飯を食いに行くつもりだったんだから。

俺の車も今日はここから動かないもんだと思ってた。
2人で飯食って酒飲んで・・・この前みたいに部屋に泊まって会話が進めば・・・そう思ってたのに!


愛車のエンジンをかけて爆音を響かせてマンションを出た。


出てすぐの交差点、そこに差し掛かった時、マンションの対面の歩道にやけに派手な女がいて目が止まった。

「あれ?桜子・・・か?」


通り過ぎる時にチラッと見たら、それはやっぱり桜子だった。
牧野が今でも連絡取り合ってる1つ年下の三条桜子・・・何故あいつがこのマンションを見上げてるんだ?

ここにいることを桜子には教えたんだろうか・・・それなら行けばいいのに、そんな雰囲気じゃなかった。


あいつにしては切なそうな哀しそうな顔・・・それが桜子らしくなくて頭の隅に残った。





pocket-watch-598039__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/08/29 (Wed) 15:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

こういう総ちゃん、好きなのね?爆笑っ!!

そうなのよ~!!この壁に縋って「・・・遅かったな」ってのが書きたくて追いかけさせなかったのーっ!!(笑)

目が超怖い(笑)いやんっ!ここ好き~!!(自分で言うな、自分で!)
で、怒って怒って怒って髪の毛クンクン(笑)どんな匂いだったのかしらぁ?

確かに喧嘩になったけど、ここでショックを受けて帰るヘタレ総ちゃんっ!(笑)


いや、これから総ちゃんに変化が出てくるはず・・・きっと!

桜子・・・何気に登場(笑)
こんな役目の桜子も珍しいですね、確かに!

2018/08/29 (Wed) 21:37 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply