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plumeria

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数日が過ぎたけど、西門さんからは電話もなかった。
アメリカに行く前はこんなの普通でお稽古以外で話すのは1ヶ月に1回、よくて2回・・・だけど、最近は毎日のように会っていたから何故かこの連絡がないのが気になった。

いつ来てもいいようにお部屋の掃除もしてたけど、毎晩ドキドキするだけでドアが開くこともなかった。時々玄関の様子を見に行く自分の行動にも頭を捻るけど、気が付いたらそんな事をしていた。

西門さんのマスタールーム・・・入ったこともないけど、そのドアの向こうが凄く気になる。何度か開けてみたくてドアに手をかけたけど開けられなかった。


私に干渉しないで・・・そう言った後の西門さんの驚いた顔が頭から離れない。

なんであんな事言ったんだろう。
それになんで彼はあんなに怒ったんだろう・・・私はどうしてこんなに寂しいんだろう。

1人分作るつもりのおかずが2人分になるのは・・・どうしてだろう。



私はその後もコンビニでバイトを続けていて竹本さんには2回ぐらい会った。
その2回とも私のレジで買い物をして少しだけ話をした。この前の食事のお礼となんでもない天気の話とか仕事が忙しいとか暇だとか・・・。
でも、不思議とネックレスのことは聞けなかった。

「今日は顔色はいいみたいだね。あれから具合は悪くなってない?」
「はい!大丈夫です。食欲はイマイチですけどこの暑さですもんね、みんなそうでしょ?」

「そうだよね。病院も熱中症患者で溢れかえってるからつくしちゃんも気をつけてね。俺が夜勤の時に運ばれてこないでよ?ホントに忙しい時は外科の医者も呼ばれるんだよね。ほら、お年寄りが倒れた時に腰を強打したりしてね」

「塩分、水分しっかりとって頑張ります。ふふっ、私は運ばれないようにしますけど、独り暮らしだから誰にも気が付いてもらえませんね!竹本さんもお仕事大変ですけど頑張って下さい」

「独り・・・俺と同じだね」

は?・・・って目を合わせたらニコッと笑われた。
「じゃあ、またね」って片手を上げてコンビニを出て行く。擦れ違いで入ってきた看護師のお姉さんが「竹本先生♥」って声をかけたらその人達には照れた顔を見せて急いで横断歩道を渡っていった。

あら、照れることもあるんだ・・・ってその後ろ姿を見ていた。

『付き合ってくれない?』、そう言った言葉の返事は要求しない。でも・・・待ってるのかなって少し気になる。



「牧野さん、竹本先生とお知り合いなの?」
「えっ?」

そう言ってきたのは一緒にバイトをしている里恵ちゃん。肘でグイグイ押しながら竹本さんの後ろ姿を見て聞いてきた。

「うん。住んでるマンションが同じだから顔を知ってるだけだよ」
「格好いいよね~!凄く腕のいい先生でさ、人気あるんだよね。最近よく来るなぁって思うんだけど彼女と別れちゃったのかな?」

「あぁ・・・今はいないって言ってたよ」
「へぇ、そうなんだ!凄く綺麗でモデルさんみたいな彼女だったのよ?グラマーで色っぽくて2人が歩いてるとドキドキしたもん。別れたのかぁ・・・で、もしかして牧野さん狙いとか?」

「そ、そんなことないと思うよ?」

グラマーで綺麗でモデルみたいで色気がある・・・何処かでそんな子、見た事あるような気もするけど、まさかね・・・。
もう1度お店の外を見たけど、もう竹本さんは見えなかった。

ズキッ・・・


「あれ?またお腹が痛い・・・最近多いなぁ。どうしたんだろ」

また痛くなった脇腹を押さえて仕事を続けた。


**********


その週の金曜日。

結局あの日からひと言も口をきいてない。もしかしたら今日は志乃さんに代わってるかもしれないと思ってどんよりしたままお茶室に向かった。

今日は昔と変わらない、可愛くもなんともない格好でポニーテールなんて考えもしなかった。すれ違うお弟子さんに「いつもの牧野さんに戻りましたねぇ!」なんて笑われたけど、軽い愛想笑いで通り過ぎた。

そしてお茶室に行って今日の師匠が来るのを待っていた。


でも、時間になって来てくれたのは西門さんで志乃さんじゃなかった・・・完全に志乃さんが来ると思い込んでいた私はそれに驚いて頭を下げることも忘れていた。

「・・・師匠が入ってきたのに挨拶もなしとはどういう事だ?言葉ぐらい喋れねぇのかよ」
「はっ!あ、ごめん・・・じゃなかった、失礼しました!ほ、本日も宜しくお願いします!」

「なに慌ててんだよ、変なヤツだな・・・」
「・・・申し訳ありません。何となく今日は志乃さんかな?って思っていたもので・・・」

「この前の事で稽古がしにくいとでも思ったのか?仕事とプライベートは切り離して考えてるからあんなことで稽古をやめたりはしねぇよ。お前が望むんなら別だけど?」

「・・・いえ、このままで結構です」


私のドキドキとは反対に今までと全然変わらない西門さん・・・相変わらずお稽古の時はニコリともせずに釜の前に座り、湯の沸く音だけが茶室に響いてた。
そしていつも通りにお稽古は進み、私の目はこれまでと同じように西門さんの動きに釘付けだった。



「今日もありがとうございました。また来週お願い致します」
「・・・そうだな。来週は冷茶でもしてみるか?本来は稽古に入れないんだけどたまには変わった趣向で茶に触れてもいいかもな」

「冷茶?冷たいの?」
「そうだ。氷で出来た瓶掛の上に白磁の瓶を置いて冷水で抹茶を点てる。この季節しか出来ない点前だ」

「へぇ!面白そう・・・はい!やってみます。ご指導宜しくお願いします」


両手をついて挨拶をし、茶室を出ようとした時に西門さんの方に顔を向けた。
彼は道具を片付けていて、いつもは何かを言ってくれるのに言葉どころか私に顔も見せてくれなかった。

それが少し寂しいような気がして・・・この前の事を説明した。


「あの・・・さ。この前の事なんだけど」
「・・・え?」

西門さんが手を止めて私の方に顔を向けた。今日は無表情なまま・・・いつもの笑顔はまだ見ていない。

「あんな言い方してごめん。竹本さんとエントランスで出会っちゃってご飯食べに行こうって言われてさ・・・。断ったんだけど、もう腕を掴まれてマンションから連れて出られて、すぐにタクシーも来たから乗っちゃってね・・・」

「・・・あぁ、その事か」

「うん・・・でもね、普通にご飯食べて帰っただけで何もなかったし、自分たちの自己紹介みたいなので終わったの。干渉しないでって言ったのはね、また西門さんに怒られると思ったから咄嗟に言葉に出ただけで・・・えっと、その・・・」

ここまで話したら西門さんがスッと立ち上がって私の横に来た。
それはほぼ真横・・・今まで寂しいって思っていたのに今度はあれ?って思うぐらいの距離に立たれて焦った!


「俺に怒られる?また男に隙を見せたから?」
「そ、そんなつもりはないけどいつもそう言うじゃん。だから、それを言われたくなくて・・・つい」

「何もなかったってのは本当か?」
「何も・・・なかったよ?」

「正直に言え。何処か触られねぇと香りなんて移らねぇと思うが?」
「かっ・・・髪を触られた!!」


西門さんの目がやっぱり怒ってる。
「それが油断ってんだ!」っていつもは静かな茶室で彼の怒鳴り声が響いてお弟子さん達を驚かせた。

そして私の髪を西門さんの手がぐしゃぐしゃっとして「次から気をつけろ!」って・・・”友達”としての心配なのかなぁ?

でも私は全部を話せなかった。
本当はおでこにキスされたんだって・・・西門さんには知られたくなかったから。




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2018/08/31 (Fri) 15:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

頭ぐしゃぐしゃ(笑)
後ろからスコーン!ってのじゃダメですか?(笑)

ふふふ、中々いい線ですよ?
この設定じゃわかっちゃいますよね(笑)

問題は竹本の本心・・・さて、つくしちゃんに本気なんでしょうか?
それとも西門に何かあるのか?

反省した総ちゃんはいつ・・・いつ告るのか!!(笑)

なんだかサスペンスの予告みたい。

2018/08/31 (Fri) 23:46 | EDIT | REPLY |   

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