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「あっ!履歴書持ってきたんだった!茶道会館に出さなきゃ」

お稽古が終わって帰るときに思いだして鞄から封筒を出した。
前の時も持ってきてたけど色んなことがあって出し忘れて持って帰っていたから。

「それじゃ、またね!」
「それ渡したら門の前で待っとけ。送ってやるから」

「え?いいよぉ!西門さん、お茶以外のお仕事もあるんでしょ?それ片付けちゃいなよ」
「お前に俺の仕事の進行具合を心配されるのはまだ早い。いいから履歴書渡したら表で待っとけよ。俺も着替えてくるから」

「・・・はーい」

心配するのはまだ早いってどういう意味よ!
わかってるけどさ・・・そんな心配しなくても西門さんは仕事を遅らせたことなんてないって。ただ送らなくても大丈夫って言いたかっただけなのに・・・。


お茶室を同時に出て廊下を突き当たりまで並んで歩き、私は右手に彼は左手に無言のまま別れた。
ほんの少し歩いてから振り向いたら西門さんはスタスタと母屋の方に向かって歩いてく。そしてピタッと止まったからどうしたのかと思ったら、私の方に向きを変えた!

「何してんだ、急げって言ってるだろうが!もう館長が帰る時間だぞ!」

「うわぁっ!それを早く言いなさいよっ!」

なんで私が立ち止まったのがわかったのかしら?!
小走りで茶道会館まで走ったら本当に館長さんが鍵を閉めて帰るときだった。だから急いで履歴書を手渡して「宜しくお願いします!」と頭を下げた。

「はははっ!若宗匠が言った通りだ。本当に元気で明るい人だねぇ!来年から茶道会館も楽しくなりそうだ」
「え?西門さん、私のことを何か言ってたんですか?」

「とてもいい子がいるから是非にって家元夫人を通してね。例のお屋敷との繋がりのあるお嬢さんだから、他の企業で辛い目に遭っては可哀想だからってね。西門なら守ってやれるから面倒みて欲しいって、そんな感じだったそうだよ」

「・・・そんなこと言ったんですか?西門さん」

「私も若宗匠がそんな心配するなんて余程・・・あぁ、いやいや、何でもないよ。それじゃ、ありがとう。時々は会館にも顔を出すといい。現場の下調べとしてね」

「はい!そうします」


道明寺の事なんか気にしない会社に内定決まってたの知ってるくせに。
ただ竹本さんにあんな事言ったから仕方なかっただけのくせに。

でも、もしかしたらこれが本心なのかと思うと・・・少し・・・いや、結構嬉しかった。


それが済んだら急いで玄関まで行き、正面の門を出たところで西門さんを待っていた。
程なくして白壁の向こうからいつもの赤い車が来て私の真横で停まり、内側から助手席を開けられた。「乗れよ」って声が聞こえたから急いで乗り込んでシートベルトを締めた。

「館長まだいたか?」
「うん、丁度帰る時間だったみたい。ドアの前で出会って間に合ったよ」

「何か言ってたか?」
「・・・時々下見がてら顔を出しなさいってさ。それだけ」

「・・・そっか」


そして車は走り出し、大通りに出ると彼のマンションに向かった。
夏も終わりの方だから陽が暮れるのが少し早くなったなぁ・・・なんて、オレンジ色から紫色に変わりつつある空を見上げながら季節が流れてくのを感じてた。


「牧野、腹減ったから何か作ってくれよ」

「・・・は?マンションで?」
「それ以外の何処で作るんだよ。家飲みしようぜ?」

「・・・えっと、じゃあ買い物する?少ししか食材がないからさ」
「わかった。いつものスーパーでいいんだな?」


西門さんが「いつもの」って言うのはマンションの近くの超お洒落な高級食材が揃ってるスーパーのこと。私がいつもチラシをチェックしてる安売りの所じゃない。
でも、それを言えるはずもなく車は高級スーパーの駐車場に入っていった。


スーパーに入っても西門さんがカゴを持ってくれるってことはない。
片手をポケットに突っ込んで指で自分が欲しいおつまみを指図・・・私がそれをポンポンカゴに入れていった。
「何が食べたいのよ」って聞いても「お前が作れるものでいい」・・・それって1番困るんだって知らないのよね?

「西門さん、昔っから私が作ると貧乏料理って言ってなかった?そんなのでいいの?」
「あぁ・・・腹が減ってるから何でも美味いだろ?ワインはあるよな?」

「私は1人で飲んだりしないわよ。西門さんが飲んでないならあるんじゃないの?」

適当に入れていったら最後の方はカゴが一杯になって、「よいしょ!」って持ち直したらそこでやっと「持ってやる」って私の手から取ってくれた。

実に似合わない・・・買い物カゴと西門総二郎。

「プッ!くくくく・・・」
「・・・何だよ。遅いってか?」

「ううん、ありがと。助かる」

多分、これが照れくさくて今まで黙ってたのね?私に顔を見せないようにしてレジに向かうからその後ろをクスクス笑いながらついて行った。
そしてお財布を出そうとしたら「恥かかすな!」って西門さんが払ってくれて、周りをキョロキョロしながら袋に食材を詰めていく。

それでも車までは西門さんが全部荷物を持ってくれた。


************


「このマンションの唯一気に入らねぇのが地下からエレベーターがないってことだよな・・・防犯の意味があるらしいがマジで面倒だ!」
「何言ってるの!運動だと思えばいいでしょ?階段ですぐじゃん!」

ブツブツいう西門さんと並んでエントランスのエレベーター前まで行った。
ここでも重たい方を西門さん、軽い袋1つは私が持ってエレベータが降りてくるのを待っていた。

「何作るんだ?」
「えっとね、海老とパプリカの塩炒めとね、牛肉のしぐれ煮でしょ。それとね・・・」

2人でそんな話をしてるときに階段を上がってきたのは・・・竹本さん。
今日も仕事明けなのかスッキリとした格好だったけど疲れてるみたいだった。彼も私たちを見て1度立ち止まって・・・でも、すぐに近づいてきて私の横に立った。

「やぁ、こんばんは。よく会うね、つくしちゃん」
「こ、こんばんは。お仕事帰りですか?」

「まぁね・・・今日も西門君が一緒なんだ?仲のいい友達だね」
「今日は西門さんのお稽古を受ける日だったので私の方が彼の家に行ってたんです。その時に飲もうかって話になって・・・それでなんですよ」

「あぁ!家で飲むんだ?彼のマンションだもんね。気は楽だよね」

「・・・・・・」

竹本さんは言葉を出すのに西門さんは一切口を開かない。
おまけに竹本さんを見ようともしないし、当然挨拶もしない。

私の頭の中には竹本さんに返事をしていない『俺と付き合わない?』って言葉が浮かんで、それをここで言うんじゃないかとヒヤヒヤしていた。

その時エレベーターが降りてきてドアが開き数人の住民が中から出てきて、全員が出たら竹本さんが先に乗り込んだ。
片手でドアを押さえて「どうぞ?」ってニッコリ笑ってくれたけど、急に西門さんが乗ろうとした私の手を引き寄せて自分の身体の後ろに私を回し、ジロッと竹本さんを睨んだ。


「俺達は後で上がる。あんた、先に1人で行けよ」

「そこまで警戒するんだ?最近の男友達ってのは親切なんだか有り難迷惑なんだかわかんないね」

「・・・うるせぇ。早く閉めろ!」


西門さんの身体で竹本さんが殆ど見えない。ドアが閉まる一瞬だけ顔が見えたけど、その時の目はかなり怖かった。
エレベーターのランプはどんどん上がっていって23階で止まった。

それを見てからもう1度エレベーターのボタンを押した。


「・・・お腹空いてるって言ったクセに余計な事しちゃって。どーしてこんなことすんの、馬鹿じゃないの?」
「喧しい。俺はあの男が気に入らねぇ・・・理由はそれだけで充分だ!」


どうでもいいんだけど、さっき引っ張られた腕・・・まだ西門さんの手が触れてるところが凄く熱かった。



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2018/09/01 (Sat) 17:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは

わかる~・・・私も昨日修正してるときに館長って打ったら浣腸になったもん(笑)
何回浣腸って打ったんだか!!

全部りおさんのせいですっ!(笑)


そうそう、自然と口からダダ漏れ総ちゃん!で、気が付いてないの。
如何にも今から・・・って感じでしょ?

総ちゃん、反省したからねぇ・・・もうそろそろ・・・

ってところで、はい!竹本さん来ましたぁ!(笑)
爆弾投下するのかな?

総ちゃんを苛めて遊ぶplumeriaですから♥

2018/09/01 (Sat) 18:39 | EDIT | REPLY |   

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