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ローラン会長に一礼して客間を出ようとした時「お待ちなさい」と呼び止められた。
振り向いて彼女を見ると、俺達の方に身体を向けて先ほどと同じ厳しい目を向けていた。

「もう少し話があります。ルイさん・・・お座りなさい」

「・・・わかりました」

牧野に「もう1度話がしたいって・・・」、そう言うと静かに頷いて俺の後ろをついてきて元のソファーに座った。

使用人に頼んでお茶のお代わりを用意させ、牧野には小さなケーキまで。
勿論それに飛びつくなんてことはしなかったけど、この動きを見ても脅しにかかるわけではなさそうだ・・・どんな話が出るのかと俺までが緊張した。


「ローラン会長、どのようなお話しでしょうか?」

「はっきり言いましょう。私はルイさんとアリスの婚約には賛成です。アリスの気持ちは確かめてはないけれど、あなたと話してみて感じたの。その若さで随分と強い意志をお持ちのようね・・・そして頭も良さそうだわ。だからこの話は悪いとは思わない。
あなたにはそこに恋人がいるけれど・・・申し訳ないけど時間をかければアリスのことを愛していただけると思うわ」

「アリスさんは素敵な女性だとは思います。でも、恋愛感情は持てない・・・何度も言いますが、私がここにいる牧野つくしを裏切ることはありません。それを承知で話を進めても悲劇が起きるだけです」

「それは今時点での気持ちでしょ?人の心はわかりませんよ。特に相手が魅力的な女性であれば男性はそのうち惹かれるもの。アリスは私がきちんと育てた子ですからどこにも問題などないわ。愛にも努力が必要な時もあると思わなくて?私たちのような立場の人間はね」


まさかこのままローラン会長が強引に話を纏めようと言うのか?
これが1番恐れていたことだけにここに来たのは早過ぎたか、と焦った。

ただ表情には自分の感情を出さず、自分の決心が揺るがないという姿勢は見せなくてはならない・・・掌にかいた汗をローラン会長に悟られるわけにはいかなかった。


「それにアリスと結婚したらあのヴァイオリンは自然とあなたのものになるわ。私の命などそう長くなはい。いずれあのヴァイオリンはアリスに譲ろうと思っていたと言ったでしょ。ローランにはヴァイオリンを弾く人間なんていないけれどそれなりの価値があるものですからね」

「会長、私はあまり事を荒立てたくないのですが、今のようなお話しをされるようでは早急に弁護士を立てますが?
故意で焼失させたわけではないことは立証できます。そしてここにあるヴァイオリンは私の祖母のもので間違えられて保管されていることも証明出来る。然るべき手順を踏めば返還請求に応じなくてはならないでしょう」

「そうかもしれないけどこちらにも焼失させられたという精神的被害を訴えることも出来る。そして金銭弁償はいらないからあのヴァイオリンを代償としていただきたいと正式に申し込んでもいいのよ」


流石・・・この人相手だと時間がかかりそうだ。
企業人としての会話でもないのに凄い緊張感・・・これが事業関係の話し合いなら完全に飲み込まれそうだと思えた。


「個人的に言えばアリスとルイさんが結婚してくれたらマサユキさんの血がローランに入ることになる。それが私の望み・・・かもしれないわね」

「そのようなことはあなた以外の誰も望んでいない。ご自分だけの願望でお孫さんの人生を操るようなことはお止めになったらどうですか?」

だんだん語気が厳しくなってくる俺達に牧野は会話がわからなくても危機感を感じたんだろう、俺の服の袖を引っ張って「何の話?」と小さな声で聞いてくる。
その腕を上からそっと押さえて「大丈夫、もうすぐ帰れるよ」と言うことしか出来なかった。


ローラン会長はその様子を見て、やはり哀しそうに牧野を見た。
もしかしたらお爺さまに似ている俺に縋る牧野が遠い日の自分と重なったのかもしれない。


「そうね・・・確かにローラン家の事は今でも私のひと言で最終的には何でも決められるわ。私がこの婚約を了解したらそれはローラン社の意向としてみんながそれに従うでしょう。ハナザワに拒否権はなくなるかもしれない・・・それほど大きなミスをしているようだからね。でも、ルイさんがハナザワを捨てるとなればこの婚約自体が成り立たないわね」

「そういうことです。あなたが権限を行使しようと私の両親がどう動こうと、私が花沢を捨てれば婚約など成立しません」

「でもね、そう簡単に家など捨てられませんよ?それはあなたのご両親も言ってるでしょうけど、あなたの個人的恋愛感情で世界中にいる社員の生活を狂わすことなど出来ないでしょう。それほど大企業の後継者というものには重責があります。
そして、後継者が不在となった会社は内部から問題が起き、不正が始まる・・・経営者家族は個人とはいえ、その殆どが社のためにあるようなものです。私もそうやって生きてきましたからね」

「どれだけ非難されても私は・・・私の愛する人だけを守りたいと思いますが、それは傲慢な考えでしょうか」

「そうです。その考え方は変えなくてはなりません。ルイさん・・・私と賭けをしませんか?」


「・・・はい?賭け、ですか?」


************


<sideローラン会長>

本当によくマサユキさんに似ている。

瞳の色もこんな風だった・・・あまりにも綺麗な瞳だったから吸い込まれそうな気がしてよく覗き込んでは赤くなって、嫌がるあの人の傍から離れなかったわね・・・。

綺麗な奥様がすぐ傍にいるのにわざとベタベタして・・・それを1度も嫌な顔を見せずにユキエさんは笑っていたわね。

ルイさんはあのユキエさんに育てられたのね。
だからこんなにも穏やかで一途で・・・恋人には優しいんだわ。

出来たらルイさんとアリスを結婚させて、マサユキさんの血を受け継いだ曾孫を抱きたい・・・でも、それが若い人達の夢を壊すことになるのよね・・・。


「ルイさん・・・私と賭けをしませんか?」
「・・・はい?賭け、ですか?」

「そうです。先ほども言ったでしょう?ローランの中では私の意見は絶対です。今度開かれる私の誕生日パーティーで、あなた方のリサイタルをお願いしたいわ」

「リサイタル?私と・・・彼女でですか?それが賭け?」

「そうよ。あなた達は恋人でしょう?息のあった所を見せていただきましょう。それでローランの幹部達全員から賛辞と拍手をもらい、私がその演奏を聴いて感動したならあのヴァイオリンを無条件でお返しします。
演目は私が決めさせていただこうかしら。その場のリクエストもあるかもね。そしてミスは許しません。リサイタルとは言え私との賭けですから」

「お待ち下さい、音楽をそのように利用するのはお断りしたい!」


ふふふ、やっぱりそう言うわよね。マサユキさんがここにいても同じように怒るでしょうね。
怒ったときの顔もそっくり・・・私が纏わり付いて困らせたときもそうやってよく怒ってた。でも、そのお顔も私は好きだったのよ、マサユキさん。


「ルイさん、そこで正論だけを唱えてもダメな時があるんです。それは会社経営でも同じ事。たとえ持ち出された話が理不尽であっても、応じれば自分に得がある場合は利用するのです」

「利用・・・ですか?」

「この賭けに応じて2人が頑張れば、このお嬢さんがハナザワに認められるかどうかは別にして、ルイさんはローラン社からは解放される。その時に両社で起きている問題もこの私が間に入りましょう。どうせ息子は私に介入して欲しくないから黙ってるだけでしょうからね。わざと大きな事を言ってハナザワを困らせているのかもしれないし」

「でも、彼女のピアノはまだそのような水準ではありません。数年前に少し習った程度でコンクールの経験すらありません。人前で弾かせても緊張するだけです」

「そんな事は問題ではありません。それに、そのような大舞台をものともせずやり遂げられたら、ハナザワのご当主にも響くものがあるのではなくて?功を奏して認めて下さるかもよ?」

さぁ、ルイさん。あなた達の本気を見せていただきましょう。
そこのお嬢さんもルイさんのためにどれだけ努力が出来るか・・・そして作り上げたものは人の心を動かすか。



マサユキさん・・・貴方の悪戯かしら。
こんなに年をとってから”貴方”と会えるだなんて。


昔は意地悪をしたけれど、今回は・・・褒めていただけるかしらねぇ。



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2018/09/01 (Sat) 00:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/01 (Sat) 04:36 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/01 (Sat) 08:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

爆笑!!ジルベールです。

一瞬アルプスの少女ハイジを思い出しました(笑)
そうね、隠し芸とか一発芸とかね!

牛乳の一気飲み対決!類君対ジルベール。つくし対アリス!
つくしちゃんの優勝だよね~!

椅子取りゲーム!!絶対に1番負けは類君だよねっ♥動かなそうだもん!

類「そんなに急いで座らなくてもいいじゃん。空いたとこに座ればさ・・・」
つ「それじゃあゲームにならないのよ、類!」

なんか楽しいゲームはないかなぁ~・・・。




2018/09/01 (Sat) 17:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは。

あはは!そうですね、すぐには弾けませんよね。

原作のつくしちゃんのイメージでピアノなんて無理っぽいけど、このつくしちゃんはそこそこ弾ける設定なのでリサイタルに挑戦!となりました。
きらきら星変奏曲を最後まで弾けるのはそこそこ上手な方だと思います。
既にそこが「つくしちゃん」っぽくないんだけどね(笑)

そこは妄想の世界なので・・・ははは!許してください!



2018/09/01 (Sat) 18:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは!
遅くなってすみません💦

ふふふ、まりぽんさんのご意見は私と全部一緒!すごーいっ!(笑)

妄想ですよ、妄想(笑)いいじゃないですか!

私は手が大きかったのでピアノには向いてるらしかったんですが、エレクトーンの方が好きだったのでそっちにしました。
何と・・・コンクールってのがあって、私、当日逃げ出したんですよ(笑)

先生に叱られてそれで辞めました。
だって出たくなかったのに無理矢理だったんですもの。

そんなに上手じゃなかったですしね。人前で弾くなんてとんでもないって思って。
もうその時の事は余り覚えていませんが、母親が先生に謝ってましたねぇ(笑)

つくしちゃんには逃げずに闘って欲しいと思います(笑)

2018/09/01 (Sat) 18:29 | EDIT | REPLY |   

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