FC2ブログ

plumeria

plumeria

その日の夜、美作さんは何も話さなかった。
あの灯台の崖の上で何を見たのかも、どうして急いでこの島から出たいのかも教えてくれなかった。


私が晩ご飯を作っても、いつも言ってくれる「美味しい」のひと言さえない。黙って食べて、しかも半分ぐらいで「ご馳走様」って止めてしまった。

「もういいの?美味しくなかったかな・・・ごめんね?」
「いや、そんなんじゃないよ。牧野の飯はいつも美味いよ。ただ今日は食欲がないだけ・・・俺の方こそごめん。先に言えば良かったな」

「ううん、じゃ、残ったものは明日の朝ね」

残ったおかずを小さなお皿に移してラップをかけて冷蔵庫に。
その作業をしながら美作さんを見たら難しい顔して窓の外の暗い海を見ていた。私もチラッと見たけど、月明かりで白波が光ってる・・・白い砂浜も浮かび上がるようで綺麗だった。

夜の散歩に行きたいな・・・そう思ったけど言える雰囲気じゃなかった。


「ねぇ・・・夜の風は気持ちいいよ?窓開けない?」
「いや、開けたくない。牧野、悪いけど窓は閉めてて」

「・・・はーい」

私には本気で怒った顔なんて見せたことはないけど、美作さんはあの人達の中でも怒らせたら1番怖いって花沢類が言ってたのを思い出した。暴れるわけでも暴力を振るうわけでもないけど、

『あきらだけは怒らせないようにしてるんだ、俺達・・・』


今の美作さんはその一歩手前のような気がして私の方がヒヤヒヤした。



お風呂も2人で一緒に入ったけど、ここでも何故か彼は緊張してる。
いつもなら側に来ないでって言っても離してくれないのに、真横にいるだけで言葉さえ出してくれなかった。

「ねぇ、少し日焼けしたかな?もしかしてTシャツの跡がついてる?」
「ん?いや・・・そうでもないよ」

「あっ、ここが少し赤くなってる!美作さん、何か虫に刺されたんじゃない?痛くない?」
「え?あぁ・・・何ともない」

お湯の中でわざとそんな会話をしてみたけど軽い反応で、しかも私の日焼けあとなんて見てもくれなかった。


こんな美作さんは初めて・・・。
彼が今、何を考えているのかがわからなくて自分が情けなくなった。相談もしてもらえないなんて・・・それって私のことは本気じゃないってことなのかなぁ、そんな風に思えてくる。


バスルームから出たら少しは甘い会話にもなるかな?って期待したけど、やっぱり難しい顔してベッドに腰掛けていた。
だからそっと隣に座るとやっと私の顔を見て笑ってくれた。

「ごめんな・・・すこし考え事しちゃってさ。悪かった・・・」
「ううん、大丈夫。でもさ、私じゃ相談相手にならないのかな・・・聞くだけならいくらでも聞けるよ?」

「相談相手なんて言うなよ。大事な恋人なんだから・・・」
「じゃ、どうしたらいい?どうしたら美作さんの心配事が減るの?」

「そうだな・・・今日はずっと抱き締めたまま寝てもいいか?このままでさ・・・」
「いいよ、私がずっと抱き締めてあげようか?ふふっ!寝ちゃったらわかんないけど」


「あぁ・・・俺が離さないから牧野は寝てていいよ」


************


寝てしまった牧野を抱き締めるようにして両腕の中に入れ、俺は寝ることなんて出来なかった。


あの渚沙の顔を見てしまったから・・・。
半分だけ血に染めた顔で笑いながら、狙っているのは明らかに牧野だった。

一体何があったんだろうかと想像はするが悍ましい光景しか思い描けない。まだ8歳の渚沙に誰かが・・・だが俺がいない時の話だからいくら考えてもわからない。
いや、考えたくないのかもしれない・・・あまりにも恐ろしすぎて。


わかったのはもうこの世にいないと言うこと。
その魂がいつまでもこの土地で彷徨っていて、理由はわからないが牧野を自分の世界に連れて行こうとしているってことだ。


「・・・ん、・・・うん・・・みま・・・さ」

牧野が小さな声で俺の名前を呼んだ。
何の夢を見てくれてるんだろう・・・可愛らしい寝顔を覗き込むと柔らかそうな唇が俺を誘ってるように見えた。


今すぐに牧野を抱いて一緒になりたい・・・こんな時なのに自分の中で疼くものがあって堪らなく切ない。
せめてキスだけでも・・・と、軽く唇に触れた瞬間、ガタン!と大きな物音がした!

その音に俺がビクッと反応して身体を起こしたから、腕の中にいた牧野も驚いて目を覚ました。

「えっ・・・な、何の音?」
「ごめん、起こしたな。牧野はここにいろ、バスルームの方だ。ちょっと行ってみる」

「美作さん、やだ、1人にしないでよ・・・怖いよ」
「・・・・・・」


牧野も不安になってるんだ。
毒の差し入れにハブの森・・・そして俺の態度を見て怖がるのは当たり前か。それに確かに別荘の中とはいえ、部屋に1人にさせるのは危険かもしれない。

仕方なく寝ぼけたような牧野を片手で抱えるようにしてバスルームに向かった。


「何かいるの?蛇じゃないよね?美作さん」
「あぁ、蛇は物音を立てないからな」

「やだぁ!変なこと言わないでよ」
「静かに・・・別に誰かがいる気配はないから」

俺のローブを凄い力で引っ張りながら腰を屈めてついてくる。そんな牧野を後ろ側に隠しながらバスルームの前まで行くと、そこの窓が開いていた。

前に石が投げ込まれた窓・・・何故だ?閉めていたはずなのに。


そして床を見たら一昨日投げ込まれた同じ石がそこに落ちていた。これも外に投げ捨てたはず・・・牧野に見せないようにして片手で拾ってみたらやっぱりあの時と同じ、血の跡のようなものがついた石だった。


サワッ・・・と風が入ってきた。

その風に誘われるように顔を上げたら・・・窓の向こう側にニタリと笑う渚沙が立っていた!

「うわああぁっ!」
「きゃああぁーっ!なになに?!」

「牧野、目を閉じろ!」
「いやあぁーっ!」

今まで後ろに回していた牧野の身体を前に持ってきて俺の胸に顔を埋めさせ、渚沙の方を見せないようにした。
こんなもの、牧野が見たら卒倒してしまう!あまりにも恐ろしい形相の渚沙がニヤニヤ笑って俺達を見てるんだから!


俺は持っていた石を渚沙に向けて投げ付けた!
その石が渚沙に当る直前、その姿はフッと消えた。


「はぁ、はぁ・・・」
「み、美作さん、何があったの?外に何かいたの?」

「いや・・・なんでもない。ごめん、見間違い・・・かもしれない」
「え?見間違いー?!ホントに?」


「あぁ・・・なんでもないよ」


そう、あの窓の向こうには人は立てない。地面が・・・遙か下にあるんだから。


この後、牧野はもう1度眠りについたが俺は朝になるまで一睡もせずに牧野の横にいた。
渚沙に・・・牧野を連れて行かれないために。




hibiscus-3260264__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/09/30 (Sun) 11:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: キャ~~!

えみりん様、こんばんは~!

って、そこーっ?!(笑)
まさかのそれとは思いませんでした!

名前つけてあげてくださいね(笑)渚沙ちゃん……まさかの渚沙ちゃん。

階段這い上がってきますよ~💦窓の外に立っちゃうよ~💦
もしかしたら花びらから血が出てるかも……。

いや~んっ!!怖いっ!

植木鉢にお札でも貼っておいてください(笑)


2018/09/30 (Sun) 20:53 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/09/30 (Sun) 23:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

あっはは!夜に・・・(笑)
何気にあきら君のオカルト、怖く仕上がったので夜はいけませんでしたね(笑)

10月も偶数日に更新しますので(あと4話かな?)明るいうちにどうぞ♥

すみませんでしたねぇ💦
私がドタバタしたので更新が遅れまして・・・。


台風、大丈夫でしたか?
次のヤツが来ないといいんですけどねぇ💦どうぞお気を付けて・・・。

2018/10/01 (Mon) 07:42 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply