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plumeria

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「どうしても今日中にここを出たいんだ!手段なんかどうでもいい、帰れるように手配しろ!・・・そんな事はわかっている!いいな、頼んだぞ」


朝から美作さんの怒鳴り声が聞こえる。
昨日の夕方にも頼んでいたけど都合がつかなくて明日じゃないと帰ることが出来ないって言ってたのに、どうしてまた急いでるんだろう。
やっぱり昨日の夜、見間違いだなんて言ってたけど何かあったんだろうか。何回聞いても私には「心配ない」ってそれしか言ってくれないけど・・・。

私は朝ご飯を食べながらそんなイライラした美作さんの後ろ姿を見ていた。



窓の外・・・今日も天気が良くて海が綺麗。波の音を聞くと身体がウズウズしちゃう。
ここに来てから4日目、まだ海では全然泳いでいなかったから・・・。

せっかく買った水着、出番がないのは悔しいじゃない?
どうせ早く帰るなら最後のお願いで美作さんに海に行きたいと強請った。当然、眉間に皺を寄せられたけど。


「え?・・・海?どうしても行きたいのか?」
「うん!ホントは泳ぎたいけどそれがダメなら砂浜で足だけでも!ダメ?・・・ねぇ、ダメ?」

「・・・あんまり行きたくないけど」
「だって、ほら!せっかく買った水着が泣いちゃうよ?それともあの水着着て東京のプールで泳いでもいいの?」

「それは絶対にダメ!牧野の水着なんて他の男がいるところで披露してどうすんだよ!」
「それじゃお願い!ね?・・・少しでいいから!」

何度も何度も、何度も頼んでも首を縦に振ってくれない・・・それが悲しくてポロッと涙を出したら、慌てて「行くから!」って言ってくれた。

ちょっと演技しちゃった・・・優しい美作さんはこういうのに弱いから。
だけどやっぱり心配みたいで落ち着かない。我儘だったかなって反省したけど、青い海の誘惑に勝てなかったのよね。



何処かに電話して手配してくれたのは小型のクルーザー。

水着に着替えて海で遊んでいたら遠くの方からそのクルーザーはやってきた。
そして操縦していた50歳ぐらいのおじさんにでさえ私の水着姿は見せられないと彼の背中で隠されたから「心配しすぎじゃないの?」って怒ったら真面目な顔で言い返された。


「そんなに可愛いのに他の男が見たら惚れるからダメなの!」
「そんな事ないよぉ!誰が見たって子供みたいな体型だもん。美作さん、そっちの方が恥かしいんでしょ?」

「牧野はわかってないんだよ。自分にどれぐらい魅力があるかってこと・・・心配もするさ」
「え?あっ・・・やだ、美作さんったら」

「くす・・・ホントはこのビキニの紐、解いてしまいたいけど我慢してるんだぜ?」
「うわっ!ヤだ、ダメダメ!こんな海の中でっ!」

ははっ!って笑って彼は私をクルーザーに乗せてくれた。良かった、少しは気分が浮上したみたい・・・ようやく笑顔が見られたからホッとして、彼が持ってきてくれたラッシュガードを水着の上に羽織った。


「ねぇ、それはそうと美作さん、こんな船操縦できるの?」

「当たり前だろ。俺達の中で免許持ってないのは類だけじゃないかな。試験が面倒臭いって行かなかったから。今はネットで受講できるから少し勉強すりゃ2級小型船舶操縦士免許は簡単だよ」

「へぇ、そうなんだ!西門さんとか海のイメージがないのにね」
「日焼け出来ないからね。俺も日焼けは嫌だな。牧野もせっかく肌が綺麗なんだからあんまり焼くなよ?」


ちょっとだけ沖の方までクルーザーを出してくれて、プライベートビーチのギリギリラインで停めてくれた。そこでも結構下の方まで魚が泳いでるのが見える。
カナヅチだからここで泳ぐことは出来ないけど、キャアキャア騒ぎながら海の中を覗いていた。

「うわっ!カラフルな魚がいるよ、ほらほら、見て、美作さん!」
「はいはい、お姫さまはあんまり見たことがないだろうからよく見てな。落ちるんじゃないぞ?掬い上げるの大変だから」

「金魚みたいに言わないでよ~!落ちませんよーだ!」
「ちょっと計器見るから操縦席に入るぞ」

「はーい!」


彼が何かしてる間、私は少しでも底の方が見えないかと目を凝らして海の中をじーっと見ていた。
時々通る影は魚のもの?黒っぽいものが沢山動くのが面白くて、海の青さが綺麗すぎて手を伸ばして波を触ろうと必死だった。


その時・・・クルーザーに下の方にわりと大きな影が見えて、それがだんだん大きくなってきた。

何だろう?大きな魚・・・まさかサメ、じゃないよね?
ここはプライベートビーチなんだからサメ避けぐらいしてるよね?

そう思いながらゆらゆらと上がってくるような影を見ていた。
それはまん丸くてなんだか人の髪の毛が広がってるみたい。


人の・・・人の髪の毛?

黒っぽかった影の真ん中が白っぽく見えてきた。
私はそれが何なのかわからなくて目が離せなくなっていた。まるで真ん中の白いの・・・顔みたい?


「み・・・まさかさ・・・ん、ちょっと来て・・・」

そう言ったけど私の声が小さかったのか美作さんは操縦席から来なかった。
そのうちだんだんわかってきた。これは・・・人の顔だ!しかも見たことのある顔・・・これは、これは・・・!


これは渚沙さんだっ!!


そう思った時、海の中の彼女の目がキラッと光って海面まで上がってきた!

「きゃああぁーっ!いやあぁっ!」

声と同時にバシャッ!っと大きな水しぶきが上がった!
そして私の悲鳴が響き渡った瞬間、渚沙さんが私の手首を掴んで海の中の引き摺り込もうとした!

「牧野、どうした!」
「み、美作さん、助けてぇーっ!」


凄い力・・・!

私は渚沙さんに引っ張られてクルーザーから身体がはみ出し、慌てて掴まれてない方の手でクルーザーの縁の手摺りを握って身体を止めた!
美作さんも操縦席から飛び出して私の身体を抱き留めて、そして同時に海の中を見て「渚沙!!」って大声で名前を呼んだ!


『あきら君が悪いのよ・・・私との約束を忘れたから。悪いのはあきら君だよ・・・』


「渚沙、もう止めろ!!牧野は何の関係もないだろう!・・・何故牧野を狙うんだ!渚沙、手を離せ!!」
「いやあぁーっ!落ちる、落ちるーっ!!」

「牧野、絶対に離さないから頑張れ!」



『・・・忘れられた者の悲しみを思い知ったらいいわ・・・私はね・・・ずっと覚えていたのよ・・・』


海の中の渚沙さんがそう言った時、顔の半分に真っ赤な血が流れた。
それが青い海を黒く染めていく・・・渚沙さんのニヤリと笑った顔にゾッとしながら必死でクルーザーにしがみついていた。




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Comments 4

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2018/10/02 (Tue) 11:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは!

爆笑っ!!類君のコメントからの急変に驚いてしまいました(笑)

そうね、そうね!行かなきゃいいのにね💦
鈍感なつくしちゃんですから許してくださいっ!

もうこれで最後だから!渚沙の登場、これで最後だから!
(・・・あれ?ほんとかな?)

確かに毎回怖い登場ですよね・・・あはははっ!ごめんなさーいっ!

2018/10/02 (Tue) 14:23 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/02 (Tue) 21:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

千花様、こんばんは!

あら、ほんと!言われてみればそうですね(笑)
綺麗な石だなぁ、ぐらいにしか・・・。

2つだったらホントにそうですね!

こんなお話なのに面白いコメントありがとうございます(笑)

2018/10/02 (Tue) 22:05 | EDIT | REPLY |   

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