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夜中なのにナースステーションに無理を言って牧野を特別室に移動させた。
「西門」って名前はこんな時には便利がよくて、渋っていた看護師長も最終的には聞き入れてくれて、俺は牧野について特別室に入っていた。

時間はもう10時・・・始発で京都に戻らなきゃいけないからそれまではこの部屋で過ごすことにした。
看護師が持ってきたのは入院に関する必要書類と誓約書。手術承諾書に身元引受人の書類。

「本日は手術当日ですし、私たちが時間を決めて巡回しますからお付き添いはなくても大丈夫ですが・・・」
「いや、ここにいるから気にすんな」

「では、もうそろそろお話しが出来る状態になると思うので、目が覚めたらこの書類を記入するようにお伝えいただけますか?」
「あぁ・・・わかった」

「でも・・・やはりここは・・・」
「何のために特別室にしたと思ってんだ?誰も入れたくねぇからなんだけど」

看護師長はこのひと言で病室を出た。


牧野はまだ酸素マスクをしていて点滴も続いてる。青白い顔して目を閉じて、それでも手を触れば温かくてホッとする。
薄い布団が掛けられてるから少し捲ってみた。

点滴の針が刺さってる白くて細い腕・・・薄っぺらい胸には心電図モニターのコードが数本。


「・・・ムカつくがあいつの家に行ってたから腹膜炎にならずにすんだのかもな。・・・ったく、1人の時に倒れたらどーする気だったんだ?この馬鹿野郎・・・!」


また布団を戻して今度は髪を撫でた。
その時に小さなノックの音と共に桜子が入ってきた。


「あら、お邪魔でした?」
「・・・わかってるんなら帰れ」

「言われなくても先輩のお顔を見たら帰りますわ。どうです?目を覚ましました?」
「まだ寝てるよ。全身麻酔だから起きたら苦しいだろうな・・・可哀想に」

「嫌だわ、西門さん。そんなに好き好きオーラ全開にしなくてもいいんじゃありません?ここに完全失恋したての女がいるんですから!」
「・・・知るか!そんなこと」

クスクス笑いながら俺の反対側に行き、牧野の顔を覗き込んでやっぱり頬を撫でてる。
こいつまでいきなり布団を捲ったかと思うと腹の辺りを出しやがった!この俺でもしなかったのに・・・!

「おい・・・何してんだよ!」
「だって傷痕が気になりません?先輩のことですから言っても見せてくれませんよ?寝てる今しか確信できませんもの。見たくないなら目を閉じてて下さいな」

「いや、そうじゃなくてなんで桜子が確認するんだよ!」
「あら・・・自分以外の人間が先輩のお腹を見るのがそんなに嫌ですの?私たちは女同士ですから温泉にでも行けば素っ裸見ますけど?」

「だからそうじゃなくて!俺のいる場所でお前が見るな!」
「じゃあご一緒に」

「・・・・・・」

桜子がそーっと病衣を捲るとそこにはガーゼしかなかった。
しかも2ヶ所で思ったより小さい。開腹手術じゃなくて腹腔鏡下手術か?・・・その傷よりも白い肌の方が気になってつい・・・目が違う所に。


「西門さん、何処見てるの?」
「はっ?・・・いや、別に。牧野が目を覚ましたら面倒だから布団掛けとけ!」


**


「それじゃあ、私はもう帰りますわ。後は宜しく、西門さん」
「あぁ、俺も明日の朝、始発で京都に行くけど仕事が終わったらすぐに戻ってうちの主治医の病院にこいつを転院させるから」

桜子は少しだけ牧野に会えたら安心したようですぐに帰ると言い出した。
その時の顔は昔の桜子に戻っていて、さっきまでの未練がましい部分は消え去っていた。

スッと立ち上がるとウインクなんてして廊下に向かう・・・その後ろ姿に声をかけた。

「桜子、話・・・出来たのか?」
「話?秀一さんとですか?」

「・・・他に誰がいるんだよ!」

「ご心配なく!さっきの会話を聞いて踏ん切りがつきましたわ。どうかしてましたわね、私としたことが。私の情報から先輩を利用しようとしただなんて許せません。ふふっ・・・またいい男を見つけて素敵な恋をしますわ」


・・・そんな事言って目の下が赤くなってんぞ?
柄にもなく失恋して泣いたってか?お前にもそんな可愛い部分があったとは驚きだ。

「今度は俺達が驚くようないい男、掴まえて来いよ。そんなヤツがいたらだけどな」

「あら!そんなの決まってますわ。今まで以上に磨きをかけて極上の男性を連れて来ますから、楽しみにしててくださいね!
じゃまたね、西門さん。1人になったからって欲情しないでくださいよ?」

「馬鹿言うな!・・・病人には手を出さねぇよ!」


パタンと特別室のドアが閉まってまた牧野と2人になった。



そのすぐ後、牧野が薄らと目を開けた。
そして横に座ってる俺を見て、酸素マスクの下から籠もったような声を出しやがった。

「・・・あれ?」
「やっと目が覚めたか・・・おい、苦しくねぇか?」

「なんで?・・・なんで・・・西門さんがここにいるの?」
「なんでって・・・お前、電話しただろうが。折り返したらお前が腹抱えて倒れたって聞いたんだよ!」

「・・・私、えっと・・・あれ?」
「虫垂炎だってよ。上手いこと俺には隠しやがって・・・いつから痛かったんだよ」

「あぁ・・・虫垂炎・・・なんかそんなこと言われた気がする。う~ん・・・痛くなったのはあの日だよ・・・あの日・・・ほら」
「あの日?わかるか、そんなんで!」


とにかくまず先にナースコールを押した。

数人の看護師が来て牧野と話をして朝まで酸素マスクと点滴は続くと言われた。
「何かあれば呼んで下さいね」のひと言でまた2人きりにされ、牧野は全身麻酔の後だから吐き気が多少あるようだった。


「お前、なんで竹本の部屋に行ったんだよ。隙を見せんなって言っただろう!」

俺がこの言葉を出すと気分が悪い中、もっと顔を歪めて布団の中に潜ろうとしやがった。少しは悪かったと思ってんだな?
腕組みしたままだから俺が怒ってると思うんだろう、牧野は眉をハの字にして困った表情・・・誤魔化そうとしたのか「いたたた!」なんて呟きながら反対側を向こうとしたから「逃げるな!」って言えば向きを元に戻した。

「自分から飯を作りに行ったとか言うなよ?何があった・・・言ってみろ」
「・・・怒らない?」

「怒るかどうかは聞いてからだ!あいつの部屋に行ったらどうなるか、わかんなかったのか?」
「・・・だってビーフシチューの材料があるけど作れないから手伝ってって言うんだもん・・・」

「そんなもの無視すりゃいいだろう!襲われたらどーすんだよ!」
「・・・だって・・・もしものためにスマホは持ってたよ?西門さん・・・そうなったら助けに来てくれるでしょ?」

「・・・俺は京都にいたんだよ。仕事で急に行くことになったからな。お前の電話は京都で知ったよ」
「え?きょう・・・と?京都から・・・ここに来たの?」


「あぁ、そうだ」
「・・・どうして?」


どうしてって・・・どうしてって理由は1つしかねぇだろうよ!この鈍感女!!

やっぱり1番許せねぇのはこいつだな!


「じゃ、聞くがお前のもしもの時はなんで俺なんだよ」
「・・・そ、それは・・・その」

「・・・何だよ」
「えっと、今私の居場所を1番よく知ってる、と・・・友達だから?」

「友達?・・・いつまで友達すりゃいいんだ?」
「い、いつまで?いつ・・・までだろう。えっと・・・来年アパート見つけるまで?」

「あぁーっ!もういい!!」


もう話してるだけでイライラする!何だってこいつはこんな時でも素直じゃねぇんだ?お前がそんなだから・・・そんなだから俺が折れるしかねぇってことか?
くそーーっ!こんな色気もクソもねぇ病室で、病衣着て点滴してる女にこの俺が・・・!


我慢出来なくなって椅子から立ち上がり、牧野の口元の酸素マスクをグイッと引っ張って外した。

「うわっ!なにすんのーっ?!」
「喧しいっ!!」


そしてびっくりしてるこいつの唇に・・・キスをした。




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2018/09/21 (Fri) 17:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様、こんばんは!

あっ、わかりました?(笑)
そうなんですよ、怒られそうですけどね。

ふふふ、だってそんな感じがないでしょ?まぁまぁ、たまにはいいじゃないですか!
こういう総ちゃんがいたって・・・ダメ?(笑)

あぁ、それは・・・どうでしょうかね。
まだ私にもわかりません。誰かやるのかな?(笑)

もし、あるときには是非是非!遊びに来て下さいね~♥
待ってまーす!

2018/09/21 (Fri) 19:33 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/22 (Sat) 23:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

ここにも懐かしい人が!(笑)
そんなに強烈でした?あの登場の仕方・・・かなり無理がありましたけど(笑)

私がアキレス腱の手術しても、その後大怪我して手術しても酸素マスクってした事ないんですが、
子供が足の手術をしたときには酸素マスクしてました。

何故かすごく悔しかったんですよね(笑)
私の時代にはなかったのに・・・!って。


言わせてもらえばそんなに簡単には外れないのかもしれません。
子供がつけてるのを見たときには結構きつめに装着されてました。

総ちゃん、それを外すなんて流石だわ(笑)ほほほほほ!


初めの頃の余裕、既に何処にもありません(笑)

2018/09/23 (Sun) 07:20 | EDIT | REPLY |   

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