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病院で目を覚ましたらもう西門さんがいなかった。
いつここを出ていったのかも気が付かなかった・・・手を伸ばしたら私の隣はもう冷たくなっていたから随分前なんだろうか。

確か始発で京都に帰るって言ってた・・・顔を動かして時計を見たらもう7時半・・・なんだ、とっくに新幹線に乗ってる時間じゃん。

「起こしてくれたらいいいのに・・・あいたたた!やっぱり少し痛いなぁ・・・当たり前か、手術したんだから」

右側のお腹をさすりながら少し身体を起こしたら、すぐ側の机の上に何枚かの書類がある。
手を伸ばしたら届きそうだったからそれを取って読んでみた。

「入院申込書・入院保証書」に「病衣使用確認書」「個人情報保護に関する同意書」・・・他、色々。


入院保証書には「診療料金等支払者」、「連帯保証人」及び「身元引受人」を記入しないといけないのに、よく見たらそこの「身元引受人」ってところ・・・その他にも保証人欄も支払い者の ところにも『西門総二郎』って綺麗な字で書いてあった。

「うわっ・・・いつの間に?み、身元引受人・・・私の?」

たったそれだけの事なんだけど彼の字を見てドキドキする。続柄の所、「恋・・・」って書きかけてやめたのね?そりゃそうだわ、こんな所に「恋人」って書く人いないもの。

その名前を指でなぞっていたら看護師さんが部屋に入ってきた。


「あら、もう目が覚めてましたか?気分はどうですか?」
「あ・・・少し吐き気がします。お腹もちょっとだけ痛いかな・・・」

「まぁ、昨日の夕方に緊急手術ですから当たり前ですけどね。でも腹腔鏡下での手術ですから負担は軽い方ですよ。開腹してないから痛みも早いうちになくなると思います。痛みが酷くなければ今日の午後にはもう自分で歩きましょうね」

「はい、わかりました。あの・・・えっと」

「あぁ、ご一緒にいた方ですか?朝の6時前にはここを出られて夕方また来るから頼むって言われてました。よくわからないけど転院するんでしょ?それでも書類は必要だから後で書いておいて下さいね」

ハッと見たら酸素マスクは私の首にぶら下がったまま・・・それを見て見ぬフリして外してくれて点滴ももうしなくていいからって抜いてくれた。心電図モニターも部屋からなくなって、体温と血圧を測られて傷口をチラッと見られた。


「ホントに最近のお若い方は無茶なことをするから・・・」
「は、はい?」

「夜中に看護師が巡回に来るってわかってるでしょうに、特別室だからって添い寝しなくてもいいでしょうって事です!驚きましたよ、ホントに・・・いくら内視鏡で傷が小さいからっていってもお腹の中にも傷は出来てるんですからね?」

「あっ!す、すみません」


そう言えば西門さんがベッドに入ってきて抱き締められたまま寝ちゃったんだっけ?・・・それをこの人に見られたの?
言われた瞬間、恥ずかしくなって身体中が熱くなった。

「私も長く看護師してるけど初めてです。ホテルじゃないんですからね?わざわざセカンドベッドまで手配させたんですからそこで寝たらいいのに」
「ほ、ホントですよね・・・」

「情熱的な彼氏であなたも嬉しいでしょうけど・・・やはりここは病院ですから」
「か、彼氏・・・?はぁ、なったばかりですけど」

「後で担当医の先生の回診がありますからね。お食事は初めに水分からですが流動食がお昼には出ますよ。夕食はまだよくわからないからお知らせしますね」

「はい・・・ありがとうございました」


回診・・・竹本さんが来るのかな?
西門さんが何か言ってたけど、竹本さんと何か話したのかな・・・まさか怒鳴ったりしてないよね?

お腹の傷口を摩りながら、まだ身体が怠かったからもう1度枕に頭を沈めたらそのまま寝てしまった。


**


「おはよう、つくしちゃん。まだ眠たい?」

その声で目が覚めた。
ちょっとだけ目を開けたら白衣の竹本さんがニコニコしてベッドの横に立っていて、その横にはさっきの看護師さん。今朝聞いた回診の時間か、そう思って目を擦った。

でも、看護師さんが急に身体に掛けていた布団を剥ぐって病衣を捲ったから、途端に恥ずかしくなってアタフタしてしまった!


「そんなに身構えないでくれる?今はご近所さんじゃなくて医者として来てるから。傷口見なきゃここから出してあげられないよ?」

「あっ!ご、ごめんなさい。昨日はご迷惑かけました。あの・・・西門さん、何か言ったんですか?」

「・・・彼?うん、俺が執刀したことが気に入らないから怒ってたけど。昨日の話はまだ聞いてないの?」

「はい、夜遅くに目が覚めて怒られて・・・で、今朝は私が起きる前に京都に戻ったみたいだから・・・」

「京都?・・・あぁ、なるほどね」

竹本さんが私のお腹に触る・・・その時に西門さんが激怒してる顔が頭に浮かんで冷や汗をかいた。それにやっぱり恥ずかしい・・・まだトイレに行けないからおむつして管が入ってるし。
そんなところを知り合いに見られるなんて・・・って、竹本さんの顔を見ないように目を瞑った!

クスクス笑うのは彼の方・・・この人はお医者様だから気にはしないんだろうけど、こっちは見られる事に慣れてないから仕方ないじゃん!


「傷口は僅か5ミリぐらいのものが2箇所だからこの先も目立たないと思うよ。彼氏が見落とすぐらいわからないからね」
「はっ?か、彼氏?」

「うん、西門君なら知らん顔してくれるんじゃないの?」
「えっ!そんな話までしたんですか?」

「・・・詳しいことはあいつから聞いてよ。で、あいつの主治医の所に転院だって?警戒心強いよね」
「は・・・はぁ」

淡々と話す竹本さんは私にそんな事を言いながらもカルテに何かを書き込みながら視線を合わせようとはしなかった。
そして看護師さんに今日の指示をしながら椅子から立ち上がった。


「それじゃもうこれで俺と会うことはないと思うから元気でね。もしマンションで出会ってもお互いに知らん顔って事で」
「・・・知らん顔ですか?」

「そう、知らん顔。あぁ、それともう俺に返事しなくてもいいよ。その事も西門君が知ってるからさ」

「・・・竹本さん」

ここでやっと私の顔を見てくれた。
ちょっとだけご近所さんの顔して、ほんの少し照れたような表情は気のせいだろうか。

「医者なのにつくしちゃんのことをきちんと見てなくてごめん。あのビーフシチュー、凄く美味かった・・・今朝、食べてきたよ。今更言うのも変だけど、つくしちゃんのエプロン姿、可愛かった。ああ言うの、俺の理想でね・・・」

「美味しく出来てました?あは・・・良かった。自信がなかったの、調子が悪かったから・・・」

「今度は彼に作ってやって?俺だけが知ってたらまた怒るだろうからさ」


最後は凄く爽やかに・・・1番初めにロスで見たような笑顔で竹本さんは病室を出て行った。



****************


<京都>
「あぁっ!若宗匠、帰ってこられないのかと思いましたよーっ!」
「アホか!仕事に穴を開けるような男じゃねぇよ!」

始発で京都に戻り、タクシーを飛ばして爺さんの屋敷に着いたのは10時前。それから着物に着替えて茶花の用意をして掛け物まで揃えても、この俺なら時間に余裕はある。

そいつらをさっさと片付けて牧野の所に戻らないと・・・。
まだ全然色んな事を話せてねぇから多分今頃パニックになってベッドの上でアタフタしてんだろう。


竹本と桜子のことも、祥一郎と真由美のことも、ネックレスのことも・・・俺とのこれからも全部。


「お客様がもうお見えです。ご準備お願いいたします」
「わかった。すぐに行く」

今から茶会だというのに頭の中は牧野の事ばかり。
こんな雑念ばかりでどうすんだ?って首を振りながら控えの間を出た。


「若宗匠~!!帛紗も扇子もお忘れです~!あのっ、廊下にお花が落ちてますけどー?・・・若宗匠ー!!」




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2018/09/23 (Sun) 13:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

続柄・・・恋人(笑)通用するんでしょうかね?


私の旦那、子供の入院の時に連帯保証人で自分の名前書くんですが、患者から見ての続柄だから「親」とか「父」なにの「本人」って書いてました。

あんたが入院するんじゃないだろうがっ!って怒ったら???ってなっていました。


竹本君が善人になったかどうか・・・ははは!つくしちゃんの前ですからねっ!
総ちゃんがいたら変わるんじゃないかしら?

総ちゃんから自分の事を聞かされるだろうから「知らん顔して」って言ったんですよ、きっと。
(いや、書いたの私だけど)


カレーね!実は私はカレーを食べないので我が家のカレーは旦那がつくって旦那が全部食べます。
だからノータッチなの。

でも、それ言ってましたね、「前の日のカレーはそのままだと危ない」って。
だから最近は大量に作らないで小さい鍋でチマチマ作ってます。

そりゃいいんだけど、その時は私が食べるものがないのよね~。
実は今日もカレーでした。私は雑炊だけ・・・だって、食べられないんだもん(笑)

2018/09/23 (Sun) 21:49 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/23 (Sun) 22:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、それ、聞く?(笑)

うちのお母さんのカレーが普通じゃなかったから嫌いになったの‼️

だって、うちのお母さん、さらさらの味噌汁みたいなカレー作ってたのよ‼️(爆)

で、子供のときに美味しく感じなくてね~💦
お父さんがそうしないと食べなかったらしいんです。


なんかね(笑)

さらさらのカレーって………
吐いた時の嘔吐物の感じに似てるのよ……

なので口にすると気持ち悪くなるの(笑)


旦那はちゃんと普通なのを作りますよ。だから、目の前で食べられても平気(笑)
スープカレーってあるじゃないですか。初めて聞いた時は『絶対無理‼️』って思った………


シチューは大丈夫‼️(笑)
お母さん、シチューは普通に作ってくれたから!
ただ、シチューの時もご飯の横にかけてたから、そういうもんだと思ってましたが。

やっぱり変な家族かも!(笑)

2018/09/23 (Sun) 23:23 | EDIT | REPLY |   

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