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次の日は牧野の稽古だったがこの時間を利用してお袋と親父に自分の気持ちを伝えようと茶室に招待した。
茶を点てるのは勿論牧野・・・これを話した時には「無茶言わないでよ!」と、本気で怒ってたがそんなもの聞いちゃいられねぇ。

正式な発表なんてものはいつでもいい・・・って言うか司が落ち着くまで出来るわけがねぇから先でも構わないが、知っててもらわないと見合い話がバンバン来る。
それを阻止するためにも両親には早めに話をしておかないと、そう思ってのことだ。


少し早めに西門に戻って牧野に着物を着せてやった。

どうせならきちんと作ってやりたかったがなんせ急な事、馴染みの呉服屋の既製品だがそこでは最高級だった訪問着を上から下まで全部揃えた。
牧野は金額を見て卒倒したが、マンションを1つ買うつもりだったからそれに比べたら安いもんだ。


長襦袢に着替えるからと服を脱がせようとしたら悲鳴をあげられた上に部屋から追い出され、やっと許しが出たらピンク色の長襦袢姿でモジモジしてる。

その方が色っぽくて俺を煽るんだけどって・・・うっかり着物を着せるどころか長襦袢を脱がせようとして引っぱたかれた。


「何しやがんだよ!冗談じゃねぇか!」
「どこが冗談よ!いっ、今、紐解こうとしたでしょ!見たんだからね!」

「・・・ちっ!そんなとこだけ目聡いな。わかったわかった、後ろ向け!」
「着物着せてくれるんでしょうね?いきなり飛びついたら・・・蹴るわよ!」

「・・・恐ろしい事言うな、お前」

渋々着物を着せて帯を締める。
どうしても後ろから手を回すから牧野を抱き締めるみたいな感じになるんだけど、その度にぎゃあぎゃあ煩いから喧嘩になって、志乃さんが慌てて飛んで来たほどだ。

「このお屋敷でそんな声が響いたことはございませんから」・・・確かにそうだと2人並んで軽い説教を喰らった。


「お前、茶の手順は5年も習ってるんだから大丈夫だろうな?」
「多分。帛紗捌きは苦手だけどなんとかなると思う。茶筅、上手く回せるかしら」

「基本中の基本で悩むな!」
「師匠が巫山戯てばかりだから上達しなかったのよ」

「お前が俺に見惚れて手が疎かになってたんじゃねぇのか?」
「・・・うっ・・・」


そんな事を言いながら茶室に向かい、準備が出来たから2人を呼んだ。
親父もお袋も改まった感じではなく普段の着物姿。前もって簡単に話はしていたから牧野の茶を楽しむために来てくれた。

「本日はお招きいただきまして・・・まぁ、我が家だから堅苦しい挨拶は止めておこうかな。では牧野さん・・・気を楽に」
「は、はい、お家元。まだまだ未熟ではございますが精一杯の気持ちを込めて点てさせていただきます!」

「もうお身体はいいの?着物、キツくない?」
「はい、大丈夫です。もう痛みもありませんから」

2人は牧野にリラックスさせようと、普通ならしないこんな会話をしてこいつを和ませてくれた。


そして牧野が亭主座に座り、2人は興味深そうにこいつの点前を見ていた。
手順はまずまず・・・多少緊張してぎこちないけど湯を注いで茶筅で、って時に湯が跳ねて畳を汚し「うわっ!」と声をあげた瞬間お袋が噴いた。


「ど、どうぞ・・・」
「頂戴いたします」

親父、お袋って順番に茶を出して、2人はお互いに顔を見合わせて笑った。


「牧野さんらしい優しいお茶ですな。結構なお点前でしたよ」
「あ、ありがとうございます!」

「ほほほ。お稽古は続けなければなりませんけどね。お仕事の方もどうやら変わるんですって?」
「それは西門さんが・・・」

ここで牧野が俺の方に視線を向けたから末客座に座っていた俺は立ち上がって移動し、牧野の横に座った。
そして両親と向かい合って、ここでは次期家元としての挨拶をした。

「家元、家元夫人、本日は忙しい中こちらにお呼び立てして申し訳ございませんでした。実はお2人にお願いしたいことがございます」

俺の言葉に牧野まで姿勢を正して畏まり、真っ赤になりながらも真剣な表情になった。
親父とお袋も同じく・・・和やかではあるけれど俺達の方を見る目が鋭くなった。


「只今茶を点てました牧野つくしですが、私は彼女と将来を共にと誓い合い、現在真剣に付き合いをしております。今すぐに、というわけではございませんが、このことをお許しいただけますでしょうか。
まだまだ未熟な部分がありますのは5年間教えた私の指導が足りぬもの、今一度気を引き締め、この西門のことを教えていこうかと思っております。いかがでしょうか」

「・・・1つ聞くが道明寺家とは?問題なく終わっておるのかな?」

「道明寺の事でしたら婚約解消は問題なく終わらせてありますが、この件においては司本人とは話をしておりませんのでどう考えるかは判りかねます。よってお許しいただけましても正式発表は落ち着いてからで・・・そう考えております」

「あら!待てるの?総二郎さん」


「・・・多分?」


*************



西門さんが改まって話し始めるからこっちも緊張してお2人を前にして両手を膝の前で揃えた状態で彼の話を聞いていた。
それなのに「多分?」って返事でガクッときて転けそうになり、これをきっかけに全員が姿勢を崩して素に戻った。

ずっとこのままの姿勢で話し続けるのかと思っていたから助かったけど。


「・・・ってなわけで、牧野を西門に入れようと思うんだけどどうだ?やっぱり後援会の爺さん達が煩いかな」
「そりゃすんなりはいかないんじゃないか?特に佐川様は本気だしな」

「佐川?あぁ、あの佐川さんね」

今度は完全に家族会議のようになって西門さんとお家元は足まで崩して話し始めた。家元夫人は側にあった茶菓子を器に入れて「食べましょ、牧野さん」だなんて言ってニコニコと・・・。
意外と庶民的なのね?って驚きながらお茶菓子をいただいた。

「佐川様も神楽様も後援会では大御所だ。そこのお嬢様がお前を狙ってるから油断は出来んが、牧野さんにそれなりの後ろ盾がつけば文句はなかろうがなぁ・・・母さんはどう思う?」

「そうねぇ、仁美様も玲子様もお綺麗で聡明な方だけど仲良くお話出来るタイプじゃないから気が張るのよね。その点牧野さんなら毎日が楽しそうだしお屋敷が明るくなりそうだわ。私は反対は致しません。むしろ総二郎さんが真面目になるのならそれが1番ですものねぇ!」

「・・・いつも真面目だが?」

「牧野さんの前で昔の話をしましょうか?」
「・・・・・・」

西門さんをジロッと睨んだら反対側を向いた・・・まぁいいわ、後でじっくり聞くから。
廊下に控えていた志乃さんが番茶を持ってきてくれて、それを飲みながら話は進んだ。


「そうだな・・・茶の方は総二郎がもう少し厳しく教えていかねばな。筋は悪くはないが次期家元の妻となるにはまだまだ・・・それに華道と着付けも教え込まないと使用人の手前示しがつかんからな」

「そうね。着物を1人で着られないと困るわね。お花も正面玄関は宗家の人間が生けるものと決めてるからそれなりに出来ないといけませんわ。後ろ盾でしたら私の実家・・・そうね大叔父様にお願いしましょうか?」


なんだかよくわからないけど私の”後ろ盾”というのには皇族の血を引くというお母様なのご実家筋の「月代家」がつくことになったらしい。

「それなら後援会長も文句ないだろう!」とお家元も納得。
「そのうち挨拶に行かなきゃな」と西門さんも超ご機嫌。

「忙しくなるわねぇ!数年先でも宜しいけどお部屋だけはすぐに改築しましょうね、それとお着物も西門の紋付きで揃えなくてはねぇ。楽しみだわね、牧野さん」

「はっ?はぁ・・・はは、そうですね」と何となく他人事の私。


ここで西門さんは今住んでるマンションの話を両親にバラして、しばらくはそこで暮らすと報告した。「相変わらずFXなんぞに手を出しておるのか!」とお家元に怒られていたけど知らん顔してお茶を飲んでるし。
家元夫人は「今度遊びに行ってもいい?」なんてお茶目な顔して笑ってた。



お話がすんだら私の手を取ってお茶室を出て、今日も帰るのは私たちのマンション。


「買い物はすんのか?それとも何処かで食うか?」
「だって着物だよ?こんな格好でお買い物?」

「そうか・・・じゃ、寿司屋でも行くか!」
「うん、行こう!」


今日も1つ進んだのだろうか。
西門に受け入れてもらって私の心は随分軽くなった。

隣を歩く彼も笑顔・・・この距離感にずっと憧れていた私は幸せだった。




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2018/09/29 (Sat) 13:34 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/29 (Sat) 13:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

今回も家元夫妻は「話のわかる人」設定なので安心でしょ?

うんうん、良かった良かった!
着物着てお寿司・・・回転寿司じゃないところには今までに3回ぐらいしか行ったことがない(笑)
テレビで豪華なお寿司見たら食べたくなる~!

私、あんまり食に欲がないんですがお寿司は好きなの。
でもマグロはダメだけど。

住んでるところが港町だからお寿司屋さんは多いんだけど・・・専ら出前寿司です。
あぁ、食べに行ってみたいなぁ・・・。

2018/09/29 (Sat) 14:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

ドキ・・・(笑)
そんな予感する?(笑)

流石だなぁ!

2018/09/29 (Sat) 14:29 | EDIT | REPLY |   
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2018/09/29 (Sat) 15:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様 こんにちは!

あっはは!この疑問、お二人目(笑)

みんな私が事件好きだから安心できないのね?ふふふふ、そうですねぇ、どうだろ?
この時までは・・・うんうん、この時までは幸せだったのかも(笑)


台風・・・さっき25号が発生しましたよ?
また同じようなコースだって・・・嫌ですねぇ。

子供の住んでるアパートが修理終わったばかりなのに・・・。
大丈夫かしら?

我が家はそうでもないんですが気温が低くなって寒い💦
急に長袖になったから体調が・・・💦

それでなくても色々と気忙しいのに~・・・滅入っちゃいますね!はぁ・・・💧

2018/09/29 (Sat) 17:56 | EDIT | REPLY |   

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