FC2ブログ

plumeria

plumeria

海面ギリギリの所で牧野と渚沙の手が絡み合う。
凄い水飛沫を上げながら牧野は必死に抵抗するが、信じられない力で海の中に引き込もうとする渚沙の執念・・・それが牧野を少しずつ海の中に沈めようとしている。

牧野が船から落ちないように身体を抱きかかえて足を踏ん張ったが、俺の力が加わっても渚沙の方がそれを上回っていた。

「牧野!!足を、足を何処かに引っ掛けろ!!」
「いやあぁーっ!わかんない!わかんないよぉ!助けて!おっ、おち・・・もう落ちるーっ!」

「落とさせはしない!牧野、踏ん張れ!」
「美作さんっ!もう・・・だめぇ!!」


牧野の腰を持っていたけど、必死に服を掴んで肩まで辿り着き、そしてやっと牧野と並んで船の端にしがみついてもう1度海面を見た。そこにはあの崖をよじ登ってきた時と同じ顔の渚沙がいて、俺の顔を見るとまたニタリと笑った。

勿論渚沙は海の中・・・半分以上身体を船からはみ出してる牧野はもう限界に近かった!



『・・・許せないの。この子・・・あきら君の側に近寄り過ぎる・・・そこは私の場所なのに・・・』

「なんの話だ!渚沙・・・もう止めろ!何があったのか知らないがもう止めて自分の世界へ帰れ!」


『・・・そう、あきら君は知らないのよ。私との約束を破ったから・・・だから私はあんな目に遭ったのよ』

「約束を破った?俺が?・・・その話が既にわからない!何の約束だ!それに牧野が関係あるのか!」
「美作さん、何の話をしてるの?!私、もう・・・もう、腕が・・・!!」


牧野の手首を掴む渚沙の手が・・・骨張ったあいつの手がどんどん海の中に俺達を引き摺り込んでいく。このままだと牧野が危ない、そう思った瞬間、牧野から離れて海に飛び込んだ!
その時に海の中の渚沙を抱きかかえて牧野から離し、振り返って牧野に叫んだ!

「必ず戻るから牧野は操縦席へ入っとけ!!」
「いやあぁーっ!美作さん、美作さんっ!」

「心配すんな!このぐらいで牧野を独りにしないから。渚沙と話をするだけだ」

海から顔だけ出してそう言うと牧野は泣きながらクルーザーの手摺りを掴んでる。
次の瞬間、今度は渚沙が俺の腕を掴んで海の中に引き摺り込んだ!



当然何の装備もないから海の中に入れられたら息が出来ない!苦しさのあまりゴホッと息を出すとそれを見て渚沙が嬉しそうに笑った。
その顔は俺の20センチぐらい前・・・血まみれだった渚沙の顔は今度は綺麗な少女の顔になっていた。

その顔も優しくて可愛くて、ここで再会したときのような笑顔・・・俺も海の中なのにそれをはっきりと見ることが出来た。



『嬉しい・・・あきら君の方から私を選んでくれたのね?』

「そうじゃない・・・牧野を助けたかったからだ。あの子は俺の宝物だ。こんな海の底に沈めるわけにはいかない」

『・・・宝物?それなら私の方が先にあきら君の宝物だったはずよ?思いだして・・・あなたは私にそう言ったのよ』

「悪いけど思い出せない。渚沙・・・もうお前はこの世の人間じゃないはずだ。どうして彷徨ってる?何がお前を苦しめてる?俺は渚沙と一緒に行くことは出来ないけどお前がどうして欲しいのかがわかれば助けてやれるかもしれない」



何故話なんか出来るんだ?
何故海の中なのにこれほどはっきりと見えるんだ?

何故・・・俺は息をしていないのに普通にしていられる?


少し上を見たら船底の影が見える。そのまた上からゆらゆらと太陽の光が宝石のように輝いているのも見える。
それなのに正面を向くと髪を海水に揺らしながら微笑む渚沙がいる・・・・・・俺は今、どうなってる?


目の前を派手な魚が通った。小さな水疱がいくつも俺の周りにはあって自分の髪の毛も海水に漂っているのがわかるというのに・・・。



『・・・思い出させてあげる・・・そして私のことを教えてあげるね・・・』


海の中で渚沙の目が光った、その瞬間、俺の脳裏に子供の頃の光景が蘇って来た。



これはいつだ?・・・子供の頃、ここに来た最後の・・・
そう、あの時の・・・俺と渚沙か?



**



夕日が沈む海を見ながら灯台の上の展望台にいる。まだ8歳か9歳か・・・そんな歳の俺。
隣は渚沙だ・・・俺よりも随分小さくて幼い顔の渚沙だ。

2人ともガキなのに・・・俺は生意気に渚沙の手を握ってる。


『明日、あきら君、東京のおうちに帰るの?ホント・・・?』
『うん、お父様の仕事の関係でそこまで長くはいられないから。家庭教師も来るしね』

『かていきょう・・・し?何する人?』
『勉強教えてくれる人。1日に3人ぐらい来るんだ・・・すごく嫌なんだけどね』

『ふう~ん・・・渚沙、わかんない。島にはそんな人居ないよ?』
『・・・居なくてもいいんだよ。面倒だからさ』


空はどんどん紫色に変わって海の向こうにオレンジの光の帯が広がってる。一番星が綺麗に光ってて、それを指さしながら最後の夜を2人で楽しんだんだっけ・・・。


『ねぇ、あきら君は来年も来るの?渚沙、お迎えに行くよ』
『多分来るんじゃないかなぁ・・・頼んだらお母様が連れて来てくれると思うけど』

『じゃあさ、約束しようよ!えっとね、今年と同じ日になったらお船が来る港で渚沙が待ってるから絶対に来てね?』
『うん、わかった。必ず来るよ』


指切りなんてしてる・・・1年先の事なんてわからないのに『必ず』なんて言葉を出して。
でもガキのクセに俺、すごく真剣な顔してないか?


暗くなったから手を繋いだまま並んで歩いて渚沙の家まで送っていった。
その家の前まで来たら立ち止まって、俺は渚沙の両肩を持ってる・・・渚沙はその時も可愛い顔で俺の事をジッと見ていた。


『・・・大きくなったら渚沙、東京においでよ。俺の家・・・いつも一緒がいいと思わない?』
『あきら君のおうち?渚沙、あきら君のおうちに住むの?』

『そう!楽しいと思うよ。お父様とお母様みたいに仲良く暮らせると思う・・・だめ?』
『ううん、だめじゃないよ!渚沙、あきら君が来るの待ってるね。来年もその次もその次も!それで大きくなったらその時はあきら君と一緒に帰るの』

『じゃ、これも約束だよ?』
『うん!約束する!』


『約束するときはこうするんだよ。お父様がいつもしてるから・・・』


小さな俺は渚沙を抱き寄せてそっとキスしてた。
それがキスだなんて思わない渚沙は驚いていたけど、俺はすごく真面目な顔で・・・渚沙に約束のキスをしていた。


それさえも・・・覚えてはいなかったけど。




d33d3ff36c4f410c9fcbd0f08acc1fd6_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 10

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/04 (Thu) 13:09 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/04 (Thu) 13:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

そう!!愛のためにわざわざあのあきらが海の中に飛び込む!
たまにはそういうあきらもいいじゃございません?

確かに海には「なにが浮いてるかわからないから」って理由で絶対に入りそうにないけど。

私も自分の家の周りが海だけど、海には入れません(笑)
潔癖じゃないけど海だけはねぇ💦

昔、泳いでいたら何かが浮いてて、よーく見たら人の○○○だったんですよ(笑)

それで2度と入れなくなったの。


岩場で貝を捕ったりするのは平気ですけどね。
泳ぐことはもう出来ないな(笑)


と、言うことであきら君には頑張っていただきましょうっ!!

2018/10/04 (Thu) 18:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんばんは!

あらっ!怒ってる~💦
あきら君ったら困った人ですよねぇ!

まぁ、子供時代のこんな話はよくあるけれど、流石にチューはないですよね♥
そこはラブラブな両親が居るから真似てるんですねっ!
(でも、8歳とか9歳で?もう少し下だったら可愛いけどなぁ・・生意気な年頃ですよね?)


しかし、えみりん様の家に渚沙ちゃんが居たとは(笑)
可愛がってあげてくださいねっ!ちゃんと4つとも咲きますように♥

うちの実家には昨日行ったら真っ赤なのが咲いていました。
思わずドキッとした(笑)

いかんいかん!思い出してしまう・・・。

2018/10/04 (Thu) 18:53 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/04 (Thu) 19:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんばんは~!

あきらきゅん(笑)困った人ですよね~💦
多分、ご両親がイチャイチャしてるからこの程度は普通だったんですよ。ってことにしてください(笑)

「お嫁さんになってね」とは使っていないところが子供ながらある意味ズル賢い(笑)


あはは!優勝しました?
書きながら背中が寒かったです・・・ホントに!

このお話もあと2回・・・あきらきゅん、渚沙を鎮めてくれるでしょうか?


総ちゃんの方は・・・こんな展開で申し訳ない。
反省しますがもう変えられないので(笑)突っ走らせていただきます!

類君の方は・・・このまま穏やかに終わるのか?(笑)
最後の爆弾のスイッチが入るのか?


plumeria、読者様のお怒りを買う10月になりそう・・・(笑)

2018/10/04 (Thu) 22:54 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/04 (Thu) 23:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、爆笑っ!!

「う」ですよ。思い出すじゃないのっ!!(爆)

2018/10/04 (Thu) 23:51 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/05 (Fri) 10:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。


うちの子は1回だけあります(笑)
しかも旦那と入ってるとき!大笑いしましたが、旦那は大騒ぎでした!

しかもそういう時、赤ちゃんって気持ちいいのか機嫌がいいんですよね(笑)


あのね、多分だけど・・・もう時間が経ってたんですよ。
ふやけたような形になっていました。

なんでわかったかというと・・・近くに汚れたおむつも漂流していたのですっ!!!

思い出したじゃーん!!(爆)

2018/10/05 (Fri) 11:58 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply