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plumeria

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ジリジリと太陽に焼かれてる・・・そんな気がして目を開けた時、目の前には牧野が俯せで倒れていた。

ハッと身体を起こしたらクルーザーの上で、横を見たら朝と同じ穏やかな青い海が広がっていた。
周りには誰もいない・・・船も泳いでいる人も。
小さな波の音だけが耳に入ってきて、岸の方に顔を向ければうちの別荘が遠くに見える・・・クルーザーはさっき停めたところから動いてないない。

すぐに牧野に近寄って身体を揺すると「ん・・・」と小さな声が漏れた。
よかった・・・意識があるようだ。そう思ったら今度は海の方に目を向けた。

その海は何事もなかったかのように青く綺麗なままで、牧野が喜んでいたカラフルな魚たちも沢山泳いでいる・・・南国の透き通った美しい海そのもので何の影もなかった。


「なんだ・・・夢でも見たのか?いや、でもあれは・・・」

俺の手首には確かに人に掴まれたような指の跡がある。それはさっき渚沙に掴まれた場所と同じ。その時の感覚もまだ手に残っている。海の中で見た渚の顔を思いだしてゾクッとした。


やっぱり夢ではなくて俺は渚沙に引き摺り込まれたんだ。
でも・・・じゃあ、どうしてクルーザーに戻ってるんだ?


自分でも何が起きたのかよくわからなくて手首の痣と海の中、そして牧野の顔を交互に見ながら呆然としていた。
頭の中には海の中で渚沙から聞いた話がそのまま残っている。8歳の渚沙に起きた不幸と、その身体の行き先も・・・覚えている。

今、俺達がいるこの海の真下に渚沙は眠ってる。


「・・・ん、うん・・・あれ?・・・ここは・・・」
「牧野、目が覚めたか?何処か痛めてないか?」

「・・・美作さん?あっ、海に落ちたのに・・・そっちこそ大丈夫?渚沙さんは?渚沙さん・・・どこに行ったの?」

牧野からも渚沙の名前が出た。
夢でも何でもない・・・渚沙は俺達の前に姿を現したんだ。


「渚沙はもうこの世にはいないんだよ。牧野、信じられないかもしれないけど・・・あいつはもう10年も前にこの海の下に沈んでるみたいだ」

「・・・え?10年前・・・海の中?」


牧野も呆然として自分の目の前のキラキラした海を見ていた。


**


この後俺達は別荘に戻り、渚沙の家に向かった。
そして、今起きたことを話したが当然信じてはもらえなかった。

だけど渚沙の母親が何かを思い出したように父親を小突き、ヒソヒソと耳打ちをすると父親も驚いた顔をした。


「何か思い出しましたか?」

「あ、いや・・・そう言えば渚沙がいなくなったすぐ後にこの島の若者が1人、崖から足を滑らせて命を落としたのを思いだして・・・。今、坊ちゃんが言われた灯台の崖ですがね、なんでそんな所から落ちたのかと皆で話したんですよ。
その若者はちょっと・・・何というか、心の病のようなものを患っていてねぇ・・・」

母親がそんな事を言って口籠もると続きを父親が話し始めた。


「仕事もせんと日中ウロウロしてばかりで、誰かと出会っても逃げてしまってろくに口もきかん男だったのでね・・・何か思い詰めて自分から飛び込んだのかと思ったが・・・」

「その男が渚沙をってこと?顔の左側に黒い痣のあるヤツだったが・・・」

「あぁ、ありました!・・・目の横の方に大きな痣が・・・なんで坊ちゃんが知ってるんで?」


渚沙が見せてくれたから・・・そう言っても信じはしないだろう。
その男は自分のした事を悔いて自ら同じ場所で飛び降りたのだろうか。1人の少女の未来を奪ったことへの悔恨の念からそうせざるを得なかったのか。


「それがね、頭を傾げたのがその男の首にハブが噛み付いたままだったんですよ。周りは海なのになんでハブが?って・・・そうお巡りさんも言っててね。あれも不思議な事故でしたわ」

「そうそう・・・その人のお通夜の時には小型船に火がつけられて大騒ぎになって・・・渚沙がおらんようになった夏だったからよく覚えてますよ」

「船に火・・・?」

「はい。原因不明ですわ・・・小さな船で火元になるようなものは何もなかったですからねぇ。小型と言っても船には金がかかってるから息子が死んだ上に船までなくして・・・気の毒でしたよ」


それを聞いたとき・・・その男は自ら懺悔したのではないと思った。
渚沙が自分の仇を自分で討ったんだ。同じようにハブを使って自分と同じ苦しみを味わえと。



その日の夕方、美作からのヘリがこの島に到着した。

うちの大型ヘリでは時間がかかるからと司の家から借りたらしい。
流石道明寺財閥の大型ヘリ、アメリカの軍用ヘリよりも性能が良くて、ひとまず沖縄に着陸して給油した後に一気に東京まで戻ることが出来た。


「・・・渚沙さん、可哀想だったね」
「あぁ、そうだな。まさかそんなことが起きてるなんて知らなくて・・・きちんと供養しなくちゃな」

「うん、そうだね」


俺の腕の中にいる牧野の身体は温かい。
あの海の底で触れた渚沙の冷たさを思うと・・・あの子の行き場のない思いを少しでも早く救ってやりたかった。



東京に戻ったらすぐに海底調査の出来る会社に依頼して美作のプライベートビーチ沖を調べてもらった。
数日後、海底から朽ちたケースが発見され、そこから白骨化した遺体が出てきて警察の調べが進んだ。

それは勿論渚沙・・・10年ぶりに渚沙は地上に戻ってきて両親の待つ自宅に戻った。
その後、納骨なして建てられていた渚沙の墓に入れられ親族による供養が行われた。俺の言ったことが本当だったのかと両親は泣きじゃくったが、今となっては加害者もこの世にはいない。

しかも現実世界では転落死した男の犯行だと立証も出来ない。
渚沙の死の真相は永久に謎のままとなった。


その供養の日、俺と牧野もその島を訪れ線香を上げて手を合わせた。
安らかに眠れと祈りを込めて。



ごめんな、渚沙。

子供の口約束とはいえお前が待ってるのに来てやれなくて。
自分の家の賑やかさの裏で、お前がそんな目に遭ったことをこんなに長い間知りもしないで・・・。

この先は小さかった頃のお前の笑顔を思いだして、来世で幸せになれるように祈るよ。


渚沙・・・本当にごめんな。



**



それから1年後、俺と牧野は結婚することが決まった。

何事も自分たちでやりたいという牧野の願いを聞いて、自分たちで披露宴のプランを立てることにしたから初めての打ち合わせに出掛けた。


「楽しみだね、みんなでワイワイ出来る披露宴がいいなぁ!」
「出来るだけ希望は叶えてあげるけど、あいつらが無茶しそうで嫌だな。気が付いたら新郎の席に座っていそうだし」

「あっはは!そうだね、あり得るかも!」
「笑い事じゃないって・・・そうなったら俺、披露宴の途中でもお前を抱えて飛び出すかもしれないぞ?」


そんな会話をしながらホテルのウエディングコンサルタントの事務所に行くと、支配人が出てきて奥の応接室に通された。
「間もなく担当者が参りますので」と言われ、牧野とカタログを見ながらあれがいいとかこれがいいとか。

その時、カチャッとドアがいて1人の女性が入ってきた。


俺と牧野はその人を見て・・・カタログを床に落とした。



「初めまして、美作あきら様、牧野つくし様。
私はお2人のウエディングプランナーとして担当させていただきます、島田渚沙と申します。
なんでもお気軽にお尋ねくださいね・・・私は決して約束を忘れたり、破ったりは致しませんから」









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2018/10/08 (Mon) 11:53 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/08 (Mon) 13:41 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/08 (Mon) 13:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様・・・こんにちは~💦

あはは、なんて恐ろしい(笑)
それ自体がオカルトです。私には無理です~!

一瞬ね、書こうかなぁって思ったんですが、彼は怖がるのか、気が付かないのか、逆ギレするのか?
それが全然わからない・・・(笑)

普段書かないから想像すら出来ないんですよね・・・これが。


しかもこのあきら君で読者様にドン引きされるってわかっていたから、これ以上のものはもういいです(笑)


プランナーの挨拶(笑)
あっはは!本当ですよねっ💦その台詞怖いわ~!

会社の子が結婚したときに担当した人が素晴らしくいい加減な人で、訴訟まで発展しましたよ。
「約束が違います!」って言葉、何回会社で聞いただろう。

一生の想いでの結婚式が悲惨だったらしく半年ぐらい泣いてましたねぇ・・・。


隣の彼もこんな展開ですがラスト前です♥10月中には終わります(確か予定では)
Motion・・・これから大変な展開になります(笑)ごめんなさいっ!

2018/10/08 (Mon) 17:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは。

怖かったですか?ごめんなさいね💦

子供を悲劇の対象にしたので気が引けたのですが・・・。
これで2度とこんなお話には手を付けまいと心に決めました!

ご不快な部分があったかもですが、優しいコメントありがとうございました。

2018/10/08 (Mon) 18:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。


あっはは!これで船上ウエディングだったら怖いよねぇ(笑)

「こちらの青い海からはたまに人間が飛び出て参ります。引き摺り込まれないように気をつけてくださいね・・花嫁さん」

きゃああぁーっ!お話が続いちゃうーっ!!

「本日のお酒はハブ酒でございます」

ぎょええぇーっ!!飲めないーっ!!


うちの娘は約束破るのがとっても上手です。
「お父さんには内緒よ?約束だからね?!」・・・何故か全部バレてます。

2018/10/08 (Mon) 18:15 | EDIT | REPLY |   

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