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plumeria

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「ただいまー。
うわっ、あつっ!!」

玄関ドアを開けると熱気が外へと溢れ出した。
靴を脱ぎ、もわっとした室内を通り抜け、つくしはガラス戸の鍵を外し窓を開ける。

室内よりは少し涼しいが生温かい風が部屋へと流れ込んでくる。


リーン…リリーン…リーン………


軒下に下げた風鈴が涼やかな音を生み出している。
つくしはゆっくりと風鈴を仰ぎ見た。

そこにあるものは何の変哲もない風鈴。
けれどそれはつくしの心を温かくする。





それは先日の事。


スーパーでつくしの目はそれに釘付けになっていた。

『盆踊り大会』

今時の若者には興味も湧かないような昔ながらの盆踊りだ。
つくしとて、踊りたい訳ではない。
そのポスターの片隅に書かれている『屋台』という文字に惹かれ足を止めていたのだ。

場所はアパートから程近い、そこそこ広い公園。とあれば、屋台もそこそこの数が出るはず…。

だったら普通にお祭りや花火大会に行けばいい。
そう思うだろうが、彼にその日の予定を尋ねれば悉く全滅。
更に言えば、申し訳なさそうに謝る彼を見たら何も言うことも出来ない。

結局予定が合わず、どこにも行けずじまいでいた。



「わー、結構人いるんだね~!」

「おいっ、転ぶから走るなよっ。」

駆け出そうとするつくしの腕を総二郎が掴む。

「それに…浴衣着てんだから、ちょっとはおしとやかにいこうぜ?」

ニヤリと笑う総二郎につくしは小さく「ごめん」と呟く。
そんなつくしの手を取り総二郎は再びゆっくりと歩き出す。

ぽうっと総二郎を見上げながら歩いていたつくしだが、念願の屋台に近づけば意識は自然とそちらに向かっていた。

「で、つくしちゃん?
手始めは何にすんだ?」

たこ焼き、焼きそば、りんご飴、綿菓子…。
目移りしているつくしに笑いながら尋ねる。

始めこそ食べ物の屋台に夢中だったつくしだが、そのきらきらと輝く瞳には目当ての物とは全く違う別の物が映り込んできた。


リーン…リリーン……


熱帯夜に響く音はどこまでも涼しげで、つくしの興味を惹きつける。

「くくっ、珍しいな?
行こうぜ。」

気づいた総二郎はつくしの手を引き歩き出した。

「どれがいいんだ?」

「うーん…迷っちゃうな~。
ねぇ、どうせなら、お揃いにしない?
私の部屋と総の部屋に飾ろうよ?」

日頃わがままを言うことのないつくしの可愛いお願いを総二郎が断るはずもない。

「じゃあさ、つくしが俺の選べよ。
で、俺がお前の選ぶから。」

「いいの?
うわー、ありがとう!」

つくしは青と白を基調とした朝顔柄の風鈴を選び、総二郎は桔梗の風鈴を選び、互いに贈りあった。

その後はいつもの食欲が顔を出し、数件の屋台を梯子する事になる。

涼しげな音を奏でる風鈴を片手に、つくしは終始ご機嫌な様子で屋台を満喫していた。





「つくしちゃん?
俺の存在忘れてね?」

はっと振り向くとニヤリと笑う総二郎がいる。

し…しまった…!!
いたんだった!

「思い出に浸るより実物のがよくね?」

つくしの考えなどお見通しとばかりに総二郎はつくしの背後に立ちふんわりと抱きしめ、風鈴を見上げる。

「エアコンも捨てがたいけど、やっぱりこの音いいな。」

「うん。」

「俺のも同じようになってるんだろうな。」

「そうかもね。」


リーン…リーン…


2人を見守るように風鈴は優しい音を奏でていた。





fin






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Comments 4

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スリーシスターズ  

Gipさん、こんにちは。
風鈴を見て、夏祭りに行ったことを思い出すつくしちゃん。
夏祭りと言えば屋台!
屋台と言えばたくさんの心踊る食べ物!
でも今回は風鈴の屋台に目がいきましたも総二郎くんも珍しいなって言うくらいですもんね。
すごく目がキラキラしていたのかもしれませんね♪
お互いの選んだ風鈴がお互いの部屋に飾られていて、鈴の音を奏でてる。
それだけでも同じ時間を共有しているような感じがして、幸せを感じられるんですよね~♪
もちろん実物の総二郎くんと幸せ噛み締めるのもいいですが、ささやかな思い出に浸りながら幸せ噛み締めるのもいいですよね♪

2018/07/22 (Sun) 16:05 | EDIT | REPLY |   
Gipskräuter  
スリーシスターズ サマ

こんばんは~!
コメントありがとうございます♪
お祭りと言えば屋台ですよね~!
個人的には食べ物より金魚掬いとかの方が好きです(*´ω`*)
当然つくしちゃんのお目当てはたくさんの食べ物だった訳ですが…。
涼しげな音に誘われてしまったんでしょうか?(笑)
今のお祭りにも風鈴って売ってるんですかね~?
小さいながらもその音に心惹かれたのは…いつの事だったか…(笑)
この日は一緒にいた二人ですが、離れている時こそ想いが募って距離も近づく…のかな(///ω///)♪
お付き合いくださりありがとうございました(o・ω・)ノ))

2018/07/22 (Sun) 18:35 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

お互いの風鈴を選び合うっていいですよね♡
つくしは朝顔
総ちゃんは桔梗かぁ~♡
思い出も懐かしいけど
総ちゃんにバックハグされながら
風鈴の音色をきくなんて
これ以上のしあわせはないですよね♡
子どもの頃、夏になると風鈴屋さんが
たくさんの風鈴を屋台の車にぶら下げて売りに来ていました。
一斉にいろんな音を鳴らすのにとても美しくても大好きでしたが
大人になると、ひとつの風鈴が静かに鳴らす音に風情を感じますよね。
Gip様♡優しい気持ちになれるお話(*^^*)
ありがとうございました♡

2018/07/24 (Tue) 23:16 | EDIT | REPLY |   
Gipskräuter  
さとぴょんサマ

コメントありがとうございます♪
うふふ♪
羨ましいですよね~(〃ω〃)
代わってもらいたい……なんて言ったら白い目でぎろりと睨まれそうなので…やめときます(笑)
やっぱり子供の頃ですか…。
これ子供の頃の記憶を頼りに書いたんですよー。
今は大きなお祭りに行かないとないんでしょうね…残念…。
ひとつもたくさんもどちらも好きです~♪
この暑すぎる夏こそ軒先に吊して涼みたい&癒されたいものです…(*´ω`*)
お付き合いくださりありがとうございました(o・ω・)ノ))

2018/07/25 (Wed) 21:22 | EDIT | REPLY |   

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