dernier amour~最後の恋~(20)

牧野を駐車場から安全な場所へ連れて行こうとしたけど、興奮して泣き叫んでばかりで動かなかった。

「いやぁっ!!触らないでっ!」
「牧野っ!俺たちだから大丈夫だって!」

「やだぁっ!向こうへ行って!!触らないでっ!」

誰になにをされたのか、この状況では聞くことも出来ない。
ただ、あの教室の荒れ方だとかなり抵抗したんだと思うけど、それを確認していいのか戸惑った。


「牧野を見つけてここに来たけどずっとこの状態なんだ。だからここで落ち着くの待ってたんだけど・・・」

「何があったのかは知らないって事?」

座り込んで膝を抱えて泣いている牧野を取り囲むようにして、あきらの話を聞いた。

「俺もよくはわからない。ただ、そこの中庭を歩いてたら偶然数人の男が見えたんだ。それが学生じゃないって
事はわかったから何事かと見てたら、男達の間にチラッと黒い髪が見えて・・・思わず牧野だって思って追いかけたら
この駐車場に来たんだ。はっきりしないが3人は確認できたけどな」

「3人?女の子相手に3人で?外国人かどうかわかった?」

「いや、何も言葉は出さなかったからな。それに俺が助けたわけじゃない。多分牧野が抵抗して自分で逃げたときに
ちょうど俺が走ってきたから、慌ててあいつらは逃げたんだろうよ」


そうしているうちに牧野は落ち着いてきて、涙で濡れた顔を上げた。
どこかで怪我をしたんだろう、少しだけ腕から血が出ていて汚れていた。


「類・・・類・・・っ!」

俺を呼んだからもう大丈夫かと思って、座り込んでいる牧野を抱き上げた。

「もう大丈夫だよ。ごめんね・・・怖い思いをさせて。ほら、2人もいるから安心して?」

牧野は俺の首に両腕を巻き付けてしがみついてくる。
こんな状態なのにごめんね・・・自分の中で呟いた。
話を聞かないとけないから、このままここの駐車場に花沢の車を持ってこさせて、その中に4人で乗り込んだ。
後部座席に座らせて、俺は牧野の肩を抱いていた。牧野も俺の胸に顔をうずめている。


「牧野・・・もう、うちの車の中だから大丈夫だよ?」

「ごめんなさい・・・心配かけて・・・」

「牧野が謝ることじゃないだろ?あんたのせいじゃないって。でも、何があったのか話して欲しいんだ」


牧野は俺たちの顔を交互に見ながら話し始めた。

総二郎に忘れ物を取りに行くと伝えて、フランス語の教室に行った。そこはもう誰もいなくて牧野は忘れ物をもって
教室を出ようとしたときにいきなり前後のドアから2人の男が入ってきた。
びっくりして机や椅子で抵抗したけど逃げることが出来なくて窓から飛び出した。当然男達は同じく窓から飛び出て
逃げる牧野を掴まえるために追いかけてくる・・・そしてすぐに捕まってしまった。

両手を後ろで掴まれて、口を塞がれたため声を出せず、身体ごと持ち上げられて駐車場に連れて行かれた。
身体を降ろされたときの一瞬に、抱えていた男の臑を蹴り上げて男が手を離したすきに走って逃げようとした。

でも、身体が上手く動かなくてもう一度捕まりそうになったときにあきらの声が響いた。
男達はあきらの声で牧野を諦め、車で逃走した・・・

・・・途切れ途切れだったけど牧野は一生懸命思い出しながら話してくれた。途中で何度も泣きながら。


「声は・・・?聞かなかったの?」

「喋らなかった・・・一言も・・・」

「何か気が付いたことはなかった?何でもいいんだ・・・匂いとか持ち物とか」

「わかんない・・・何も覚えてない。とにかく逃げようってそれだけで必死だったから・・・」


説明しながら今は泣くのを必死に堪えている。

「もうわかったよ。泣いても大丈夫・・・ここには俺たちしかいないから」

そう言うと牧野は俺の服に顔をうずめてまた泣きだした。こうしてると本当に小さい牧野の姿・・・。
どれだけの恐怖だったのかと思うと、その時間を作ってしまった自分が情けなくて腹が立った。
総二郎とあきらがいたけど、牧野の全身を抱えるようにして抱き締めた。


「類、俺たちはまた道明寺の方を調べてみるよ。今日はもう牧野を連れて帰れ。1人にはすんなよ」

「わかってる。頼んだよ」

総二郎とあきらはもう一度司と連絡を取るらしい。そっちは2人に任せることにした。


運転手に頼んでマンションに向かわせる。ここのセキュリティーは万全だ・・・しばらくはやっぱりここかな。
せっかく1人暮らしを初めて自分自身を取り戻すって頑張っていたのに・・・。

「俺のマンションに向かうよ?今日はそこで一緒にいよう。だから心配ないからね・・・ずっと俺がいるから・・・」

「・・・類・・・手を握ってて・・・」

「手を?・・・いいよ。こうしてたら安心する?」

冷たくなった手を握ってやると、そのまままた目を閉じた。まだ微かに手が震えてる・・・。
マンションに着く僅かな時間、牧野の身体と手をずっと離さなかった。

******

マンションに着いてから、念のためすぐに配置させた警備担当者に厳重警戒の指示を出す。

牧野を車から降ろしたけどまだ自分では歩けそうになかったから、もう一度牧野を抱きかかえて自分の部屋に向かった。
牧野はもう泣いてはいなかったけどあまりの事に疲れ切ったのか放心状態だった。
小さい声で何度も「ごめんね」を繰り返すんだ。

そんな牧野に俺も何度も「心配ないよ」って言葉を返すけど、牧野の眼はほとんど開いてない。


部屋に入るとやっと安心したのか、自分で歩いてリビングのソファーに向かった。
そのまま倒れ込むように崩れ落ちて、気を失ったかのように眠ってしまった。
腕の傷を手当てしたかったけど、それよりもこのままそっとしておく方がいいような気がしたから毛布をかけて
その横に座って牧野の顔を見ていた。涙の後が消えてないその顔を・・・。


「ごめんな・・・守ってやるって、あんなに言っておきながらこんな目に遭わせて・・・」

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