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plumeria

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総二郎side



牧野が司と別れ、茶道を続ける理由がなくなった時、初めて何かを失うような気持ちに襲われた。それがどんな意味を持つのか、自分がどうしたらいいのかわからなくなって初めて、これは恋なのだと牧野への想いを自覚した。


だけど、高校時代から一番牧野から遠い距離でいた俺が、いきなり仲良くなれる訳もない。急に類やあきらみたいには、優しい言葉をかける事など到底出来ない。

プレイボーイと言われ、寄ってくる女達の扱いは慣れていても、本気の女には何をしていいのか分からないなんて、俺は今まで何を学んでいたのかと思う。



苦しくて、もどかしい。まるで役に立たない経験が足枷となって、さっきまで自由だと思っていた事全てが重しとなっていた。

前に進むべきか空気が淀んだ真っ暗闇の中で悩んでいると、一筋の光がやっとという状態で見え隠れしている。
草木を掻き分けるかのように前に進むと、ポツンと小さな火を灯す蝋燭がただ一つ。
ほんのりと照らすその小さな火は、照らす範囲も狭くて、それ以上大きくする事は出来ないし、拡げることも出来ない。
だけどこの蝋燭に宿る優しい光が、清らかな風とともに俺を包み込む。




それ以来、人が変わったと言われるくらい、俺は仕事に専念した。
面倒くさいと思って手をつけなかったことも、人寄せパンダしか思ってなかった講演会も、積極的に関わっていくと、どんどん仕事が円滑になって楽しくなっていくようになっていった。すると俺の陰口を叩いてきたうるさ型からも声をかけられる様になってきたし、家元や家元夫人ともより密な仕事の話を振ってくるようになった。



司と別れてからも、牧野は茶道を辞めなかった。
なぜ続ける気分になったのかはわからない。だけどそれが嬉しかったし、俺と牧野だけの共有時間となった茶道は、お免状を出せるまでに成長を果し、いつの間か俺の半東を牧野がこなすようになった。最初は牧野の事を胡散臭い扱いをしていた口煩い後援会連中からも、いつの間にやら可愛がられる様にまでになって、世話好きと化して牧野自身に見合い話を進めるようになっていた。




ある朝。

朝茶事を終えて支度を全て終わらせ自室に戻ろうとすると、庭先にある茶花を手入れしていたと思われる牧野が男と談笑しているのが見えた。その男は後援会連中からの紹介で来ていた白石という京都筋の男で、どうやら今回の朝茶事は牧野の事を気に入っている後援会の爺が、その男と牧野を引き合わせる為設定されたようだった。
男が牧野に何かを渡す。
まんざらでもなさそうな牧野の赤い顔が、俺の心に影を落とす。


やめろ、近寄るな、側にいていいのはお前じゃない。
今にもそう口走ってしまいそうになるのを、ギリギリのタイミングでなんとか止めた。

自分の感情を押し付けて必死な姿を見せるのも怖かったが、牧野に白い目で見られる事が一番怖かった。そして、何よりも俺の目の前で俺以外の男と手を取ってしまうのが、一番怖かった・・・。


ゆらゆらと細い火花が、立ち上る。
細くてちぎれて壊れてしまいそうだけど、
激しく燃える熱情がチラリと見え隠れしていた。



この女はきっと知らない。
欲してやまない唯一の存在であることを。






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Comments 1

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さとぴょん  

花様
お話ありがとうございましたm(__)m
つくしの中で燃える花火と
総二郎の中で燃える蝋燭の火
それぞれが静かに時を待ち
蓄えられた熱が解放される直前を
刻々と感じられるようなお話で素敵でした♥
お話ありがとうございました(*´∇`*)

2018/07/20 (Fri) 17:23 | EDIT | REPLY |   

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