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美作さんがイギリスに行き、花沢類がフランスに行き、西門さんと2人で日本に残った。
大学生活がやっと静かになったような気もするけど私の気持ちは以前より騒々しくなった。


殆ど毎日会っていた頃に比べてその時間はかなり少なくなった。
お稽古と部活動があるときだけ・・・しかもそれは茶道に絡んでのことだから世間話なんて殆どしない。

話しがしたい・・・どんなことでもいいから2人っきりで話しがしたいって思うけど心とは裏腹になんとも思ってないような素振りをしてしまう。
目が合いそうになるとすぐに顔を背けて、手が触れそうになると私の方が先に引っ込める。
それをニヤリと笑いながら西門さんも知らん顔・・・憎らしいほど綺麗な顔で彼も私から遠ざかる。



4月、5月と過ぎていって6月。今にも梅雨入りが発表されるんじゃないかって時だった。
茶道部の講師で来てくれていた西門さんが帰るとき、窓の外を見たら雨が降り始めていた。


「あっ、やだ。降り始めちゃった」
「雨か?こりゃもう梅雨入りだな」

「そうだねぇ・・・鬱陶しいね」

したい会話は天気のことなんかじゃないけど・・・なんて思いながら今日使った道具を片付けていたら、西門さんが私の横にやってきて窓から空を見上げた。
もう夕方遅かったし雨が降るぐらいだから雲も黒っぽくて薄暗い。

「・・・今から雨が強まるかもしれねぇな。あとどのくらいで片付けが終わる?」
「え?あぁ、結構な数だからね。でも30分ぐらいかな?西門さん、何かあるなら先に帰ってもいいわよ。片付けぐらい1人で出来るから」

「いや、そうじゃなくて送ってやるよ。さっさとやろうぜ」
「・・・う、うん」


この人の車になんか乗った事がなかった。
だから余計にドキドキして、茶筅を湯通ししてるのにやり過ぎてふにゃふにゃにしたり、帛紗を畳んでるのに重ねすぎて全部倒したり「どんだけドジなんだよ!」って怒鳴られながらアタフタして片付けてた。

だから予定よりも10分遅くなって西門さんをイライラさせた。
怖い顔して茶道教室の入り口で腕組みして立ってて、呆れたような顔で最後の黒文字の容器を引き出しにしまう私のことを睨んでた。

「ごめん!鍵を返してくるから」
「・・・車、正面に回しとくから急げよ」

「は、はい!」


何よ・・・!別に頼んだわけでもないのになんでそんなに偉そうに話すのよ!
先に帰ればいいってちゃんと言ったのに、勝手に残ったの西門さんでしょ?ってブツブツ言いながら事務所に走っていき鍵を保管庫にしまって、今度は息を整えながら正面玄関まで急いだ。


そこに見えたのは彼の赤い車・・・恐ろしく綺麗に光ってる彼の愛車。
バイクの後ろに女は乗せないって聞いたけど、車の助手席にも乗せないって美作さんが言ってたけど・・・な。

近づいたら窓が静かに開いて「早く乗れ!」ってまた命令形。ここまで来るとやっぱりムカつく!って口を尖らせて助手席のドアを開けて乗り込んだ。


あっ、この香り、西門さんの・・・


車の中は彼のフレグランスの香り・・・勿論運転席にいるんだから当たり前だけど、いつもと違う空間の狭さに胸が高鳴った。

「そんじゃ、帰るか」って言葉と同時に静かに走り出す車。
外見だけ見たら爆音で走りそうだったのに、意外にも恐ろしく静かな車内に緊張しまくった。

「なんでそんなに固まってんだよ」
「へっ?あ、あの・・・西門さんの運転する車、初めて乗るから!」

「そうだっけ?あぁ、そうかもな。この車に乗った女はお前が初めてかも」
「うそっ!その話、本当だったの?」

「多分そうじゃね?基本、女を送ったり迎えに行ったりしねぇ主義だから」
「・・・そうなんだ」


何故かホッとする自分と、それを見て笑う彼。心の中を見透かされたような気がして慌てて窓の外に視線を向けた。
女性は乗せないって言う席に私は乗ってるんだもん・・・しかも彼からの申し出で送ってもらってる。

これはどういう意味なんだろう?
女性の「括り」に入ってないのか・・・それとも私のことは「特別」なのか。いや、特別扱いされたことはないから女性だと思われてないのね?なんて自虐的発想に落ち込んだ。



「来週の部活動、俺行けないから」
「は?そうなの?何処かに行くの?」

「あれ?知らなかったのか?」

乗ってから5分ぐらいして西門さんが言い出したのは来週の講師欠席の事だった。
しかも驚いたように私に「知らなかったのか?」って・・・西門さんが休む理由を知るわけないでしょ!って顔をしたら、正面を向いたまま説明してくれた。


「来週、イギリスに行くんだよ。あきらの結婚式があるから」
「美作さんの?もう式まで挙げちゃうの?」

「そうらしい。出会って半年なのにな。マジであきらがそんな結婚するなんて思わなかった」
「ホントだよね。へぇ・・・式の日取りまでは聞いてなかったな」


この時「結婚した後に恋をするかも」って言った、悲しそうな笑顔の美作さんを思い出していた。


この後は在り来たりの会話でアパートまで・・・着いた時には雨が酷くなっていた。
車を降りようとした時に横を見て「お茶でもどう?」なんて言おうかと思ったけど、私の顔を見ていなかった西門さんに何も言えなかった。部屋に誘うなんて、本当は出来なかったりもするんだけど。


「ありがとう、助かったよ」
「あぁ・・・別にいいけど、それよりさ」

その言葉にドキッとしてドアを開けようとした手が止まった。
それよりさ・・・ってなに?まさか彼の方から「お茶でも飲ませて」なんて言わないわよね?って、自分に都合のいいことを思ったりして運転席に目をやった。


「な、なに?」

「牧野、もう少しいいアパートに引っ越さねぇのか?ここ、大丈夫なのかよ。どんなセキュリティーがあるんだ?防犯カメラとかあんのか?」

「はぁ?!あるわけないでしょ!そんなアパートに引っ越せる余裕があるならあれだけバイトしないっつーの!」

「泥棒とか痴漢とかに狙われそうだし、建ってるだけでも不思議なほどボロいじゃん。働くようになったら考えろよ?一応お前も女なんだから」
「余計なお世話よっ!ふんっ・・・じゃあね!」

「くくっ!お疲れさん!」


一応女で悪かったわね!有り難いことに「括り」には入ってたんだ?
自慢じゃないけど泥棒に入られても盗られるものは何もないし、痴漢にだって遭ったことはないわよ!どうせ見た目が子供ですよーだ!

さっきまで乙女チックに頬を染めてたのに、今度は腹を立てて顔が真っ赤になっていた。
でも、部屋に入ったら真っ先に窓に近寄って彼の車が走り去るのを見てしまう。


戻ってこないかな・・・なんて、ほんの少しだけ思いながら。



**



2週間後、今度は私が西門にお稽古に行った時、お茶室で師匠を待っていたら時間よりも少し前にスッと障子が開いた。

いつものように着物姿で凜々しい西門さんが手に何かを持ってる。
それはお茶室には似つかわしくないカラフルな包装紙で包まれたもの・・・なんだろうってキョトンとしたら私にそれを差し出した。

「お前に土産」
「・・・は?お土産?」

「言ったろ?イギリスに行ったから」
「あぁ、そうか!」

「可哀想に・・・あきらが泣くぞ?お前からの祝いも渡してやったからな」
「あはは!ありがとう」


そうだった・・・西門さんに美作さんの式の話を聞いたからすぐにお祝いのフォトスタンド、渡して欲しいって頼んだんだった。
そして西門さんのお土産は紅茶と国章が描かれたティーポットとカップのセット。ロイヤルブルーが綺麗な、如何にも高そうなカップで手が震えた。


まだ稽古には少し時間があるからってスマホで結婚式の写真も見せてくれた。

真っ白なウエディングドレスの花嫁さん・・・美作さんが言ってたとおり綺麗な人だった。
同じく白いタキシードの美作さんも何処かの国の王子様みたいに格好良かった・・・凄く素敵だった。


2人並んで笑顔の写真。
道明寺の顔も見えて、花沢類の悪戯っぽい笑顔に笑った。どれを見ても幸せそうな笑顔が溢れてた。

「西門さんの写真はないの?」
「俺のスマホに俺が映る訳ねぇだろ?類か司が撮ってるかもしれねぇけどな」

「そうなんだ・・・見たかったな」
「俺を?こいつらと変わんねぇ格好してるだけだ。実物見てるんだからいいんじゃね?」

「はは!そうだけどさ・・・あれ?」


花沢類と道明寺を撮ったと思われる写真の後ろに入り込んだ美作さんの表情・・・それだけは何故か悲しそうに見えた。
隣に居る花嫁さんは嬉しそうなのに、空を見上げてる美作さんは逆に泣いてるのかと思うぐらい・・・何故、そう見えたのか私には判らなかったけど。

だからつい・・・言葉に出てしまった。


「美作さん・・・結婚したかったのかなぁ・・・」
「・・・え?」

「本当に望んで結婚したのかなって、何となく思っただけ」


「牧野、あきらのことが気になるのか?」
「・・・は?」

急に低くなったように感じた西門さんの声に驚いて顔を上げたら、少し怖い目をした彼が居た。
今まで見たことないような、眉を顰めた彼の口から思いもかけない言葉が出た。


「お前・・・あきらのこと、もしかして好きだった?」





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2018/11/27 (Tue) 15:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは。

あきら君・・・そうですね。
本当は結婚したくてしたのではないので、ふとした時にそんな表情になったんでしょうね。

総ちゃんはつくしちゃんに惚れてますのでね(笑)
思いっきりジェラシーじゃないですか?

確かにつくしちゃんは何も考えずに言ってるのかも?(笑)

あきら君がお好きなわんこ様には辛いお話かもしれません。ごめんなさいね💦

2018/11/27 (Tue) 16:05 | EDIT | REPLY |   

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