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西門さんが手術室に入ってからしばらくして病院に警察の人が来て、状況説明を求められた。

家族の控え室だったけど、その隅にあった個室を借りて家元夫人と私と警察官の4人・・・私はこの中で自分の病院を出て拉致されたところから西門さんが倒されるまでの経緯を話した。

家元夫人には大雑把に話していたけど、ここで初めて細かい所まで聞いたものだからまた泣き出して、警察の人は逆に慰めていた。

「徳永良平という男は頬骨と鼻骨骨折でしたが、まぁ・・・これは状況からして正当防衛が適用されると思います。西門総二郎さんから話が聞けるようになったら、また詳しいことを聞きましょうね」

「はい・・・」

「当たり前ですわ!総二郎さんにあんな怪我をさせておきながらうちに非があると仰るの?!そうでもしなきゃ2人がどうなっていたかわかりませんわ!」
「奥様、お、落ち着いて!」

大泣きだったのにいきなりハンカチを握り締めて立ち上がり、キッと睨み付けた家元夫人に警察官はビクッとして両手を出して「座ってください!」と・・・慌てたのはお弟子さんで、走り寄ってきて家元夫人を宥めていた。


「森本哲也の方ですが、保釈中の犯行ですから今回は厳罰になると思います。唆したのはどうやら徳永らしいのですが、誘拐と監禁、それに傷害事件、これも殺人未遂に相当するものですからね」

「さっ、殺人・・・!!」
「家元夫人、あの、西門さん生きてますから!」


犯行動機は徳永良平って人の彼女が西門さんのことが好きになったためにフラれたっていう実に驚くような内容だったけど、本当のところはわからないと言われた。
以前から暴力を振るっていたらしく、相手の女の人は何度も警察に駆け込んでるらしい。

もしかしたらその女の人も良平さんから逃げたくて、無関係な西門さんの名前を出しただけかもしれないと。その人の現住所がわからないから捜索中で、見つかれば真相がわかるだろうと話してくれた。


森本君は西門さんのせいで捕まったっていう逆恨み・・・ついでに私へのストーカー行為も止められなかったらしい。
もう住んでいないのにあのアパートの回りをウロウロしたり、大学に顔を出したのも私を見るためで、西門さんを倒したあとは・・・それ以上は考えたくなくて思考を止めた・・・。

「手術が終わるまで私たちも別室で待機します。怪我の様子も医者から聞かなくてはならないのでね。あなたの怪我は首だけでしたか?手足を縛られたんでしょう?そっちに傷はありませんか?」

「はい・・・ガムテープでしたから。何度か転けましたので軽い打ち身だけ・・・でも、大丈夫です」

「なにか不安なことはありますか?」

「不安なこと・・・?」


監禁罪の刑罰は3ヶ月以上7年以下の懲役、そんな事もチラッと聞いたけど確かに森本君がまた保釈されて私の前に現われたら・・・そう思うと怖かった。
だけど今回は傷害事件も加わっているし家族が見放してる部分もあるから、弁護士がどういう形で選ばれるのかわからない。拘留期間は最大だろうし、その後も保釈されずに身柄を警察に拘束される可能性もあると言われた。

私がその事で震えていると家元夫人が「あなたは西門家が守りますよ」・・・そう言ってくれたので、今度は私がその場でわんわん泣いてしまった。


最後に西門さんのバイクは警察に保管してあるからあとで引き取りに来るように言われ、家元夫人が何度も頭を下げていた。
事情聴取が終わったのはもう夜の10時・・・西門さんの緊急手術が始まって2時間ぐらいが過ぎていた。


**


お弟子さんが何か少しでも、と持ってきてくれたのは和菓子とお茶。
何にも食べたくなかったけど確かにお昼から何も口にしていない。家元夫人からも「今日の夜は長くなりそうだからいただきましょうか」と言われ、それを口の中に入れてお茶で流し込むようにして食べた。

ゴクンと飲み込むと喉の傷がチクッとする・・・さっきまでの光景が蘇って来て胸が痛くなる。


「いつ頃終わるのかしら。手術時間、どのぐらいかかるって言われたかしらねぇ」
「・・・・・・」

「牧野さん?」

家元夫人が私に話しかけていたようだけど、私の耳にはその言葉は入ってきていなかった。
『成功したご褒美はつくしちゃんだよ』・・・さっき言われた竹本さんの言葉を思い出していた。


どういう意味?
成功したご褒美が私・・・こんな状態でも竹本さんは何故そんな事を言ったんだろう。

私のことなんてどうでも良かったんじゃないの?西門さんのお兄さんのことを逆恨みして、西門さんと私の仲を邪魔しようとして、西門家に変な対抗心燃やして・・・でも、全部過去のことになったんじゃないの?

マンションだって出ていくんでしょ?
もし出会っても無視してって言ったじゃない。最後はすごく爽やかな笑顔で別れたのに・・・。


「牧野さん・・・大丈夫?傷が痛むの?」
「はっ?いえ、私は全然!切ったって言っても僅かです。ごめんなさい・・・」

「いや、謝らなくていいんですけどね、あなただって被害者ですもの。完全な逆恨みでしょう?ストーカーがいただなんて知らなかったからびっくりよ!総二郎さんも知っていたなら護衛をつけるとか考えなかったのかしら!」

「い、いえ!そんな・・・西門さんはずっと守ってくれていたんです。私が油断したんです・・・私がいけないんです」

様子がわからなくてみんながイライラしてしまう。
お弟子さんまで部屋の中を歩き回ったり、何度も西門に電話したり・・・溜息ばかりで落ち着かなかった。


それから1時間ぐらい経った時、お家元が出先から電話をかけてきて、これまでの事情を説明するために家元夫人が控え室を出て行った。
それと同時に手術室の看護師さんが「西門さんのご家族の方は?」と控え室に入ってきた。

「予定通り終わりましたよ。どうぞこちらに・・・」
「あ、あの!どうだったんでしょう?無事ですか?」

「その説明は今から執刀医がします。手術そのものは成功してますから安心してください」

手術が終わったばかりの西門さんはまだ手術室にいると言われた。麻酔の覚め具合などを確認したら集中治療室に移動、そこでしばらく容態を見て変化がなければ病室へ・・・看護師さんの説明はここまでだった。


手術室の隣、説明室と書かれた小さな部屋に入ったら、術衣が汗で変色してる竹本さんが座っていた。
カルテに何か書き込みながら私に座れと指図してきた。


真面目な顔で書類と向き合うこの人は、さっき私にあんな言葉を出した人と同一人物だろうか。
それを疑うほど目の前の彼は”医者の顔”だった。


「・・・よしっ、と。無事に終わったから安心していいよ。すごく運のいいヤツだよね・・・急所は外れてるし内臓に損傷はないし・・・サバイバルナイフで切られた割には傷口も意外と綺麗だったし・・・って事で、成功だね」

「・・・はぁ、良かったぁ!・・・もう大丈夫なんですね?」

「出血が多かったけど輸血なしでなんとか終わらせたから、貧血でしばらくは起き上がれないかもね。ふらふらして倒れて違う場所怪我されても迷惑だし」

「・・・迷惑って・・・その言い方、どうにか出来ないんですか?一応患者なんだから!」

無事だとわかると今度は竹本さんの言葉にカチンとくる。
これ以上は聞かなくてもいいと思って席を立ったら、私の方に顔を向けてニヤッと笑った。


「手術前に言ったこと、覚えてるよね?」


その言葉にビクッとした時、家元夫人がこの部屋に駆け込んできて竹本さんは「チッ」と舌打ちをしたけど、また元の医者の顔に戻った。

「あの!総二郎さんは・・・総二郎は大丈夫ですか!先生、手術は?どうなりました!?」
「落ち着いてください、お母様ですか?」

「はい!そうですわ、総二郎の母です!」
「いま、そちらのお嬢さんにも説明をしたんですがもう1度しましょうね。どうぞお座りください」


竹本さんは家元夫人に私にした説明よりは詳しい話をしていた。
レントゲンや手術中の画像も交えて詳しく・・・でも、私はもうそれを聞かずにこの部屋を出た。

竹本さんの顔を見ることか出来ない・・・。


廊下の椅子に座っていたら看護師さんが西門さんを集中治療室に移動させたと教えに来てくれた。
少しの時間なら会うことも出来ると・・・だから急いで2階の集中治療室に向い、彼に会いに行った。




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Comments 4

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2018/10/07 (Sun) 12:38 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/07 (Sun) 14:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様・・・爆笑!!やめてくださいよっ!!

あっはは!ちょっと想像してしまったわ!!
そして鼻は痛いわ~💦

竹本、鏡見ながら自分で処置しそう(笑)

うちの兄貴がそれ、やられたことがあるんですよ。
昔、超ヤンキーだった頃に(笑)

カッコンなんて可愛いもんじゃなかったみたいだけどね~💦


そしてこの人の真意は?(笑)ははは!どっちでしょ!

2018/10/07 (Sun) 14:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。


大変長らくお待たせしました。
ホホホ・・・この病院シーンが終わったら・・・纏めてお届け致します。

あと3日ぐらいでしょうか?
長いことの「待て!」、お疲れ様でございました。

2018/10/07 (Sun) 14:33 | EDIT | REPLY |   

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