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plumeria

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今朝の牧野の様子が気になって、昼休みも行けないと言われたのに音楽堂の非常口に行ってしまった。

そこでいつも牧野が渡してくれたパックの珈琲を初めて自分で買って1人で飲んだ・・・いつもは美味しく感じたのに今日は全然味がしない。

ただ甘いだけでなんの感情も湧かない。
独りってこんな感じだったかと今更考える・・・ほんの数ヶ月前まではこれが当たり前だったのに、いつの間にか右隣にいる温かい存在が掛け替えのないものになってる。

俺の腕をとる牧野が自分の支えになってる。


カタン、と何かの音がして、牧野が来たのかと思って笑って振り向いたけど・・・ただ風で小枝でも飛んで来たのかドアなんて開いてなかった。
それでもしばらく見つめてしまう。
そのドアが開いて「やっぱりここにいたんだ!来てよかった!」・・・なんて牧野の声が聞こえてきそうで。



どうしても顔が見たくて外国語学部の校舎まで行くことにした。
教授の部屋かもしれないけど沢山やる事があると言っていたから誰の所かわからない。教室に行けば誰かが知ってるかもしれないと思ったから。

そして牧野の教室に行くと廊下にいた女子生徒に牧野を呼んで欲しいと頼んだ。


「え?牧野さん・・・今日いたっけ?」
「ううん、今日は大学に来てないみたいですよ?朝から姿を見ていませんし」

「来ていない?でも今日は朝一番に小島教授と話があるって言って早くに寮を出たんだけど。それに昼には来年の学科相談があるって・・・」

確かに牧野はそう言った。
それにイタリア語の弁論大会の時間を確認するからって・・・今日は1日中忙しいってそう言ったんだ。

俺と話してる女子生徒2人は顔を見合わせて不思議そうだった。その瞬間・・・凄く嫌な予感がした。


「それこそ小島教授なら来週までアメリカの大学に研修で行ってるし、来年の学科選択って来月中に決めるぐらいの日程なんで相談とかはまだ・・・何かの間違いじゃないですか?」
「それに牧野さん、弁論大会も急に辞退してさ、有川君が選ばれて大騒ぎしてたから・・・」

「え・・・辞退した?」

「突然だったんです。一昨日だったかな?教授も今更って怒ってたけど牧野さん、弁論大会の時にはもうここにいないからって・・・確かそんなことをイタリア語を選択してる子が言ってたような気がするんですけど」

「有川君なんかもう少し早く言えよ!って牧野さんに怒って怒鳴ってたわよ?すごく頭下げて謝ってるところ見ちゃったもん。花沢先輩、仲が良かったのに知らなかったんですか?」


弁論大会の時にはもういない・・・牧野が大学にいないってこと?

まさか・・・・・・!!



そのあと急いで寮に戻った。

あきらにも教授にも何も言わずに、午後の講義なんかどうでもいい・・・!
牧野に何かがあったと思って急いで車を飛ばして寮に戻り、ガレージにも入れずに寮の前で車を乗り捨て入り口に飛び込んだ!

「花沢様・・・!」

守衛の声が聞こえたけど答えてなんかいられない!
もの凄い勢いで3階まで階段を駆け上がった!

302号室の前に立ちドアを開けようとしたけど鍵がかかってる。
その時に俺の行動を見ていた管理人が後を追いかけてきて、3階の階段を上がりきった所で息を切らしていた。


「なに?・・・ねぇ、何があった?」


「あ、あの・・・それが」
「なんなの?牧野・・・中にいるんだよね?」

「えっ、それは・・・その」


「はっきり言えよ!!牧野はどうした!いいから早くこの部屋を開けろ!!」

俺の怒鳴り声なんて聞いたこともないから管理人はビクッと肩を竦めた。でもその手には鍵が握られていた。
それが何を意味するのか・・・背中に嫌な汗をかき、手が震える。

グッと握った拳の中で爪が掌に食い込んだ。


管理人は無言で俺の前に立ちカードキーを翳すとガチャ、と音がして牧野の部屋が開いた。

「牧野・・・!まき・・・」


すぐにドアを全開して中に飛び込んだ俺の目に映ったのは・・・何もない部屋だった。


綺麗に布団をたたんだベッド、何も入ってない本棚。
空の食器棚に締められたカーテン・・・牧野のものは何1つ、この部屋には残されていなかった。

「空き部屋」の302号室の中に俺は1人、ポツンと立っていた。


微かに残る彼女の香りだけが俺の周りにある。
そいつらが俺に『探さないで』って言ってるような気さえした・・・。


「じ、実は牧野さんは今日、大学を辞めて寮を出るからと・・・私はそれしか聞いてないのです。その他のことは何も・・・」

「・・・花沢なの?これ、仕組んだの」

「申し訳ございません、私には何も申し上げられません」



これだったのか・・・最近牧野の様子がおかしかったのは。


俺から離れろと言われたのか。

邪魔だとか家柄の問題とか・・・花沢には迎えられないとか。まさか・・・また金でも渡された?
そうしないと今度は俺を外国に移すとでも言われたの?

牧野・・・俺がそんなことすると思ったの?


あれだけ2人で頑張ったのはなんだったの?将来を夢見て励まし合って、それを勝ち取って日本に帰ったんじゃなかったの?
そう思ったのは俺だけだった?俺の気持ちとあんたの気持ちは一緒だと思ったのは思い上がり?


「牧野・・・何処に行ったの?」

「存じ上げません。私は鍵を受け取って挨拶されただけで行き先などは何も・・・」

「どうやって行ったの?1人でここの荷物を全部運べないよね?」

「・・・小さなトラックが来ていたようです。おそらくそれで引っ越しをしたんではないでしょうか」


このあと何を聞いても管理人は「知らない」を繰り返すばかり・・・牧野の行き先については何もわからなかった。

この部屋を出て俺に何度も頭を下げながら階段を降りて行く。
それを真っ白な頭で見ていたら守衛が3階を見上げているのに気が付いた。

あぁ、車の移動か・・・正面玄関前に乗り捨てたから。


今度は一段一段・・・まるで地獄にでも落ちて行くかのような気分で階段を降りて、自分の車をガレージに移動させた。
そして運転席に座ったまま今朝の牧野の事を思い出した。


一緒に行くのを断ったのは引っ越しの支度をするため?
1度出ていったのに自分の部屋に入り込んで息を殺して座ってたの?

俺が部屋を出て行くとき、あんた・・・自分の部屋でそれを聞いていたの?それ、泣きながらじゃなかったの?


どう考えても牧野1人で進められる事じゃない。
誰かが牧野に接近したんだ。

でも、誰がいつ?俺達はいつも一緒にいたのに、牧野を1人にさせたことなんて・・・。


そう考えたとき、あの日しか思いつかなかった。
牧野が俺に甘えて離れなかった日・・・先週の中頃、お爺さまのヴァイオリンを俺1人で取りに行った日。


牧野が初めて大学を休んだ日の前日・・・もう、大学で学ぶことが出来ないとわかっていたからどうでも良くなっていたんだね。


その時、車のサイドミラーに守衛の姿が映った。
持ち場を離れてまで様子を伺いに来るなんて今まで1度もない。


彼は何かを知っている・・・そう確信して俺は車から降りた。





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2018/10/12 (Fri) 00:26 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/12 (Fri) 06:50 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/12 (Fri) 08:00 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/12 (Fri) 09:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/12 (Fri) 10:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

あらら、清四郎、待ってるかもよ?(笑)
怖いわぁ・・・オカルトで書いちゃいそう!!

家具電化製品がすべて備え付けだったからねぇ・・・お引っ越しも簡単なんですよね。

あぁ、お引っ越しと言えばうちの子がもうすぐお引っ越しかも・・・。
花沢社長、つくしの引っ越しじゃなくてうちの子の引っ越ししてくれたらいいのに・・・。

考えたら疲れちゃいます・・・。

貧乏人だから自分で全部梱包しなきゃ!💦

2018/10/12 (Fri) 13:50 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

コメントありがとうございます。
はい、類君すぐに動き出しますけど簡単にはいかないかも?

そんな馬鹿な!ってこともあるかもしれませんがハピエンに向けてラストスパートです!
応援宜しくお願いします♥

2018/10/12 (Fri) 13:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

爆発・・・類君の爆発・・・なんとなくすごく冷静に動きそうな感じですけどね(笑)
怒るイメージがないのでたまには爆発させてみたいですよね。

怒鳴ったり何かを破壊したり蹴り飛ばしたり・・・すれば強そうですけどねぇ!
策士なので何かのスイッチをポチッとするぐらいしか浮かばないですけど。

見守っていただけると嬉しいです♥

2018/10/12 (Fri) 13:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは。

寒くなりましたね~。私の所も17度ぐらいしかありません。
秋のお話を・・・って考えていたらもうすぐ冬になりそう(笑)

類君、遅かったですか?(笑)
まぁ、つくしちゃんを信じていたので仕方ないですかねぇ。

諦めずに追いかけていただきたいと思います。
類パパは・・・やっぱり放っておきましょうかね!

悪者は必要なんですよ・・・どんなお話も悪者と障害で成り立っていますから(笑)

2018/10/12 (Fri) 14:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

KAORI様、こんにちは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
初めまして・・・ですか?

楽しんでいただけているなら良かったです♥
ふふふ、総ちゃんのコメディタッチ💦アホなお話が多くて申し訳ございません!
エロ格好良く書きたいのですが、何故かヘタレになります・・・ははは!

ラスト前の急な出来事に驚いておいでなのですね?

もうねぇ💦こんな展開ばっかり思いつくんですよ。困った人でしょ?(笑)
残り僅かですが、2人の努力が無駄にならないように頑張りますので、応援宜しくお願い致します。


2018/10/12 (Fri) 14:08 | EDIT | REPLY |   

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