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西門さんの呻き声が聞こえて急いで枕元まで顔を近づけたら、その目が薄らと開いた。
そしてジロッと睨まれた!

「いてぇ・・・!お前、キ・・・ズの上!」
「きゃああぁーっ!ごめんなさいっ!!」

「いい根性・・・してんな、覚悟しとけ・・・よ」
「いやいや、あっ、もう1回寝たら?寝た方が早く回復するかもよ?」

これは手術後だからこうなのか、それともやっぱりバレてる?一瞬の出来心・・・いや、まさかね?

「誤魔化すな・・・!」

「あっ、いや、だから何もしてないってば!断った、断ったよ?聞こえてたんでしょ?」
「・・・クソ馬鹿・・・野郎!1回は・・・目の前に行っただろ・・・い、てぇ!」

「えっと、確かに行ったけど初めからそんな事する気なかったもん!大丈夫、何も起きてないから!看護師さん呼ぼうか?」
「いや、呼ばなくていい・・・それより・・・」

西門さんは私の方に顔を傾けて「マスクずらして」って言った。マスクしてる方が逆に苦しいのかと思って少しずらしたら、包帯だらけの腕が伸びてきた。
そして力なく私の頬に指を当てて「お前は・・・大丈夫か?」って聞いてくれた。

そんなこと言われたらまた涙がでちゃう・・・それをサッと拭いて彼に笑顔を向けた。


「うん、私は何ともないよ。首の傷なんてすぐに治っちゃうよ。もう何処からも出血してないし身体も痛くない。西門さんが守ってくれたから私は大丈夫だよ・・・ありがとうね」

「そう・・・か。じゃ、俺に・・・褒美くれ・・・」
「は?西門さんもご褒美強請るの?」

「早く・・・」

・・・聞いていたならご褒美はキス?こんなに大怪我して手術したばかりなのに目が覚めていきなりそれ?
流石西門さん、「転んでもただでは起きぬ」ってこういうことを言うのかしらね。

どうしようかとオロオロしていたらまた眉が歪む。指でチョイチョイって催促されて・・・覚悟を決めた。


そうよ・・・他に人がいるわけじゃなし、西門さんに顔を寄せてそっと1秒ぐらいのキスをしたら「それじゃダメ!」って怪我人のクセにとんでもない言葉が返ってきた。
だからもう1度、今度は・・・頑張ってほんの少しだけ舌を入れてみた。

そしたら西門さんがそれに応えるかのように私に舌を入れ込んできたから慌ててまたそれに反応して・・・気が付いたら重傷の彼に抱きつくようにして唇を重ねてた。

ちょうどその時、廊下を歩く看護師さんの話し声が聞こえてきて慌てて彼から飛び退いた!


「・・・ははっ、許して・・・やるよ」
「あっ、もう!ちゃんとマスクしてなさいよ、私と違って怪我が酷いんだから!」

「くそっ・・・また延びた・・・」
「ん?なにが?」

「お前・・・のこと、今日帰ったら・・・絶対に抱いてやろうと・・・思ってたのに」
「・・・ばっ、馬鹿っ!こんな時に変なこと思い出さないでよ!」


また目を閉じて西門さんは眠ってしまった。
私はその横で彼の手を握りながらその寝顔を朝までずっと眺めていた。

ほんの少し、私も残念だったよ・・・そう言ったら後が怖いから絶対に声には出さないけど。



**



次の日の朝には西門さんは目をぱっちり開けて随分会話も出来るようになった。
でも痛み止めの点滴が続いていて吐き気が酷く、まだ身体を起こしたり長い間話したりは出来なかった。

それでも転院だけは譲れねぇって我儘を言って、午後から救急車で西門の病院に移動することになった。
アメリカ行きの準備でもう回診には来ないって言ってた竹本さんがそのために呼び出されて、昨日が最後だって言われたばかりなのに再び私たちの目の前に・・・しかも今日は怖い顔して仁王立ちしていた。

「ホントに無茶なことを言う患者だ!医者の言うことが聞けないんだから転院でもなんでもしてくれていいけど、はっきり言って今は動かさない方がいいんだ。自分の身体を見てそう思わないか?ドレーンだってまだ外せないのにそんなものくっつけて出て行く気か!」

「・・・うるせぇ。お前が執刀医ってだけでムカつくんだよ・・・!早くここから出せ!・・・うっ、ゴホッ!」
「西門さん、あんまり喋らないで!」

酸素マスクは外れたけどまだ点滴が2本も繋がってる。
あまりに吐き気が酷ければ痛み止めを中止してもいいけど、傷が深いから激しい痛みが襲ってくるだろうって、何故か竹本さんは嬉しそうに話していた。


「まぁ、本当にこれで最後になるだろうけど、次からはもう少し軽めの怪我にしとけ。夜中にあんな手術は厄介だ。特にお前みたいな家の人間は後が面倒だからな」

「・・・自分で選べるんならこんなとこに来るか!くっ・・・もう回診、終わったんだろ?早く・・・出ていけ!」
「西門さん、言い過ぎ!竹本さんはちゃんと手術してくれたんだから!」

「腹の中にメス忘れてたらごめんな?」

「たっ、竹本さんっ!!」
「アメリカだろうが何処だろうが行っちまえ!くそっ・・・!」


西門さんの暴言を楽しんでるようにも見える竹本さんは笑いながら病室を出て行った。
多分本当にこれが最後・・・振り向かずに遠ざかっていく後ろ姿に頭を下げて見送った。いつか彼にも素敵な恋人が現われますように・・・そう願いながら。



午後からは家元夫人もやってきて西門さんのお引っ越し。

救急車を正面に付けさせてストレッチャーでガラガラ運ばれて、ちょっとした段差でも傷に響くようで悲痛な顔して乗り込んだ。その時には院長はじめいろんな科の部長先生達が勢揃いして頭を下げ、家元夫人がそれに答えていた。

この大袈裟な転院の方がマスコミにバレるのでは・・・って思うんだけど。


救急車にはT大付属病院の看護師長が引き継ぎのために同乗してて、私と家元夫人が車内の椅子に並んで座った。そして西門さんが手を伸ばすから急いで掴もうとしたら家元夫人に先を越され、彼の手はお母様の手で握られた。

目を閉じてるから私だ思ってるのか彼もギュッと手を握り返してる。
まぁ・・・西門さんがそれでいいなら別に構わないけど。



私が2週間前まで入院していた病院に着いた。

すぐに西門さんはあの特別室に運ばれていって、ここの病院の先生達の診察を受け、看護師長さんから引き継ぎをされていた。
その間家元夫人と私は奥の部屋で珈琲タイム・・・思ったより気さくで面白い家元夫人で助かった。


「西門さんのお仕事・・・結構詰まってたんじゃないんですか?」

「え?あぁ、ほほほ!まぁね。ああ見えて茶道に関しては本気だから後援会の皆様に可愛がってもらっててねぇ。そのおかげでお仕事は順調なのよ。だから復帰するまでは誰かが代行しなくちゃいけないから大変だわ」

「あの、世間にはどう伝えるんですか?暴漢に襲われたとか?」

「いいえ。急遽本人の申し出でお寺に修行に行ったことにするわ。それだと誰も文句を言わないし、若宗匠とはいえ総二郎さんも若いからそれも通用するのよ」

「はぁ・・・お寺に修行ですか」
「そうそう、修行ね!」


この病院の先生の診察も終わって申し送りも終わるとお医者様達はこの部屋から出て行った。
また私と家元夫人と西門さんだけ・・・家元夫人はまだ青白い彼の頬を撫でながら「よかったわ・・・」を繰り返していた。

「それじゃ、ここも牧野さんに頼んでもいいかしら。私がついててもいいんだけど、あとは回復を待つだけだって言うしね。お家元を残したままお屋敷を留守にした事がないから私も不安なの。お願いできる?」

「勿論です。私、ここについてますから家元夫人はどうぞご自宅でゆっくりしてください」

「ありがとう・・・じゃ、そうさせてもらうわね。お家元のお仕事が終わったらすぐに連れてくるわ」

「はい。わかりました」




家元夫人が帰ったらやっと2人になった。

少しだけ熱があるから汗をかいてる。
その額をハンカチで拭きながら・・・そっと唇を重ねてみた。ホントに軽く、気が付かれない程度に。


「・・・ダメ、やり直し・・・」
「はっ?!気が付いてたの?!」




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2018/10/10 (Wed) 12:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

あっはは!♥マークが11個も!
まだ全然何もしてないのに~💦

それだけ「待て」が長かったって事ですね?ごめんなさいっ!!

これから解放していきますので、まぁ・・・ボチボチ。


総ちゃんもさとぴょん様も同じ状態なのね(笑)

つくしちゃん、身体が保てばいいけど・・・困りましたね💦

明日の出だしもなかなか・・・(笑)お楽しみにね♥

2018/10/10 (Wed) 20:10 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/10 (Wed) 22:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

オレンジ****様 おはようございます。

おぉっ!コメントありがとうございます!

竹本センセ喜んでいると思います♥
竹本君にお怒りコメントが来る度に「君にも応援してくれてる人がいるよ・・・」と呟いておりました。

そうですね(笑)
竹本再び・・・書けるかなぁ?(笑)

そんな嬉しいこと言われたらすぐに調子に乗りますからね、私!
頭の隅に置いておきますね♥

2018/10/11 (Thu) 07:34 | EDIT | REPLY |   

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