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「もう少し丁寧に拭けよ・・・荒っぽくないか?」
「じゃあ看護師さんにしてもらえばいいじゃないの!我儘言わないで!」

西門さんが入院してから1週間が過ぎた。

まだ車椅子じゃないと部屋からは出られないけど特別室のトイレには自分で行けるようになったし、食事も食べられるようになった。

内臓疾患じゃないから吐き気さえ止まれば食べて体力回復に務めなければって事で栄養価の高い食事が用意された。
でも、こんなに美味しいご飯が出されるのに私の味噌汁が飲みたいって我儘を言い出し、仕方なくここの厨房の隅っこで西門さんのために味噌汁を作ることに・・・。

「大変ですねぇ」なんて栄養士さんや調理師さんに言われながら鰹節を削ったわよ!


そして今は何故か私が身体を拭く「清拭」ってヤツをさせられてる。

西門さんが病衣の前を肌蹴けさせて私の前に上半身裸になって、そこをタオルで丁寧に・・・イチイチ指示するから真っ赤になりながら彼の身体を拭いていた。

「これってさ、ちゃんと医学的意味があるって聞いたことあるよ?本当は私がするのってダメなんじゃないの?」
「そんな事ないって。だいたい患者が気持ちよくならないといけねぇんだろ?だから・・・ほら、続き!」

「もうっ!ま、前側ぐらい自分で出来るでしょうに!私が拭くのって背中側じゃないの?」

「嬉しいだろ?」
「嬉しくないっ!」

見たことない訳じゃないけど、まさか裸の西門さんの身体を拭くとは想像してなかったから目のやり場がない。

それに腕を拭いているとあの時についた沢山の傷があって気になるし、そこをジッと見てると「心配ねぇって!」て笑ってる。
背中にも鉄パイプで殴られた内出血がまだあるし、少し拭いても「痛ぇっ・・・」って小さな声が漏れるから慌てて「ごめん!」って言うとニヤけてる。
「わざと言ってるの?!」って怒ると「もっと優しくして?」って楽しそう。

ヒビが入ったかも、と思っていた腕は幸いにも打撲で終わってて、これだけやられたのに骨折なんてものはなかった。
それにはT大付属病院でもここでも驚かれて「普段から身体を鍛えてるですねぇ!」って看護師さんの目がハートになってた。


「足も拭くの・・・よね?」
「当たり前だろ?腹に包帯があるから足こそ手が届かねぇし」

「・・・・・・」


男の人の生足にしては凄く綺麗・・・なんてことを思いながら拭いていたら「もっと上もだろ?」って言い出したから、それ専用のタオルを投げ付けて隣の部屋に逃げた!
ま、まだ1度だって「その関係」になってない私になんてこと言うのかしら!

「失礼なヤツだな・・・投げるか?普通」
「起き上がれるんだから自分でしなさいよ!馬鹿っ!」

「自分でやっても気持ち良くねぇもん」
「・・・家元夫人、呼ぶわよ」

この言葉には流石に嫌な顔を見せた。



西門さんが起き上がれるようになってから病院に警察官が事情聴取に来た。

良平さんの怪我については正当防衛が認められるだろうという話や、その時の状況を再確認されていた。
淡々とそれを説明してるけど思い出したらゾッとする・・・私にも車に押し込められたときの状況をもう1度聞くから説明したら、初めてそれを聞く西門さんは再び激怒して厳罰を要求していた。
森本君はあのあとからずっと拘留されてるらしく、今度こそ自宅に戻るのは難しいと言われてホッとした。

西門さんは「西門うちには優秀な弁護団がついてるから問題ねぇよ!」って笑い飛ばし、この件を「絶対、世間に流すな」と逆に警察の人を脅す勢いで話してた。



それからまた1週間が過ぎた日に抜糸が行われ、この頃には歩くことも可能になっていた。
身体を傾けて歩くから「みっともねぇ!」を繰り返しながら私の肩に掴まって廊下を歩く。看護師さんからは素人の付き添いは危ないからと注意をされるけど全然聞く耳を持たない。

だから私の方が「すみませーん!」と謝りながら彼の歩行訓練は続いた。


そして2週間後に退院・・・転院から3週間が過ぎてようやく病院から西門のお屋敷に戻った。

仰々しくお迎えが来たら西門流の誰かが入院してることがバレるかもしれないって配慮で、こっそりタクシーを呼んで正面玄関じゃない出入り口から出ていくことに・・・。

そこは車寄せまで誰にも見つからないように工夫されてて盗撮も出来ない厳重な警備がされていた。西門家はいつもここから出入りしているそうだ。
確かにお寺で修行してるはずの次期家元が女の子連れて病院から退院・・・そんな事がバレたらとんでもない記事が世間に出回りそうで怖かった。


ここでも院長先生は勿論、手の空いてる先生が勢揃いしてお見送り。
美人の看護師さんが私が居るにも拘わらず、西門さんにすっごく大きな花束を渡して握手まで・・・。

西門さんはそれをポイッと私に投げて、自分はポケットに手なんか突っ込んで、既にジーンズ姿で何事もなかったかのようなスマートな立ちっぷり。
お礼も言いそうになかったから私が代わりに皆さんに頭を下げた。


「どうもお世話になりました。ありがとうございました」

「いえいえ、流石若宗匠です。普段から身体を鍛えておいでだから治りが早くて宜しゅうございました。ただし臓器に影響はございませんでしたが無理は禁物です。激しい運動はまだお控えくださいね」

激しい運動・・・凄い言い方だけど、それって・・・そういう意味だよね?前にも私の時に聞いてるぐらいだから自分の事なら尚更聞くよね?
恥ずかしくて真っ赤になりながら西門さんの後ろに隠れたら、彼の方が先生に直接確認したから驚いた!

「で、いつ頃から許可が出んの?ってか俺、もう殆ど問題ねぇけど」

「でもまだ腹部に力を入れたら痛みが出るでしょう?その痛みがある間はお止めください。傷口が開くことはないでしょうが、内部の方で縫い合わせている箇所がありますからね。またここに戻りたくはないでしょう?」

「痛くない程度ならいいのか?」

「・・・若宗匠、そんな理由で入院されたらお家元が嘆かれますよ。ご両親のお気持ちもお察しください」

「わかった。加減すりゃいいんだな?」
「西門さんっ!!もう帰ろうっ!」


苦笑いのお医者様達と顔を赤くする看護師さん達にもう1回頭を下げ、西門さんの腕を掴まえてタクシーに投げ込むようにして病院を後にした。
タクシーの中でも「何すんだよ、怪我人だぞ?」って言うから「怪我人なら怪我人らしくしなさいよ!」って口喧嘩。

運転手さんが困った顔で西門までの道を急いでくれた。



***************



久しぶりに自分の家に戻ったが、俺は寺での修行中って事になってるから正面から出入りするわけにも行かず、ここでも裏口からこっそり母屋に戻った。

「若宗匠、お帰りなさいませ。すこし遠回りではございますが本邸から見えると困ります故、こちらから・・・」
「あぁ、わかってる。気を遣わせるな」

「とんでもございません。ご両親様は私室でお待ちでございます」

古弟子の1人だけが出迎えてくれてそう言われた。


もう普通に歩けるから牧野を連れてスタスタと廊下を歩き、親父とお袋が待ってる部屋に向かった。
こいつは母屋には殆ど入ったことがねぇから今日も腰を屈めてオドオドしてる。「堂々と歩け!」って言ったら慌てて姿勢を正してたけど、顔は思いっきり引き攣ってて笑えた。


「親父、お袋、開けるぞ」

母屋だからここは家元、家元夫人としてではなく親父とお袋。
簡単に声だけかけてドアを開けると、2人は「あら、もうそんな時間?」なんていいながら湯呑みを片手に平然としていた。

「総二郎さん、お帰りなさい。身体はどうなの?もう歩いても平気なの?」
「おぉ!総二郎、なんだ、顔色も良さそうだな」

「あぁ、心配かけたな。もう普通に歩けるから問題はねぇよ。仕事、任せっきりで悪いな」

牧野も俺の後について部屋に入ると、俺の怪我が自分のせいだと思ってるから申し訳なさそうに俯いていた。

「牧野さんもごめんなさいね、総二郎さんのせいで大学もお休みしてるんでしょ?そっちは大丈夫なの?」
「は、はい、大学の方は問題ないです。もう単位も取ってるし、卒業までどうしても受けなきゃいけない授業はないので・・・」

「総二郎のお守りも大変だったろう?私たちが忙しかったせいで申し訳なかったね」
「とんでもないです!お家元、私の方こそごめんなさいっ!」

「牧野が謝ることねぇって。自分の女を守るのは男の役目だからな。お前が大怪我してねぇんだから良かったんだよ」

親父達の前だったけどそんな言葉を出したら、また赤くなって俺の背中に隠れた。



その後は親父達と向かい合って座り今後の仕事の打ち合わせを簡単にしたが、修行と銘打ったからには急いで復帰しなくてもいいって話になって、俺にはもう1ヶ月臨時休暇が与えられた。

ニヤリと笑った俺を何故か恐怖の目で見る隣の牧野・・・既に何かを察したのか俺から微妙に離れてやがる。


「でもさ、寺での修行になってるんだから都内でウロウロするのも万が一見つかったらやばいよな?」

「あら、何処かに雲隠れでもするの?」

「そうだなぁ・・・そうするか!な、牧野」
「えっ!私まで雲隠れするの?!」


「それじゃ2人で決めなさいな」ってお袋のひと言でこの部屋を出て自分の部屋に向かった。
何故か俺の足取りは超軽いのに牧野の動きは超鈍い。

真っ青な顔して隣を歩くから「楽しみだな!」って言うと、諦めたような深い溜息が返ってきた。




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2018/10/11 (Thu) 13:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

ホントにねぇ(笑)
看護師さんが読んだら怒られそうな内容ですよ。
いかんいかん、病院のことを書くのに巫山戯過ぎちゃ(笑)


あはは!加減出来るんでしょうかね?
しばらくは二人っきりの修行生活ですのでね♥

リハビリがてら頑張っていただきましょう!

あ、でも本当に修行もするのよ?真面目な部分も多少はあります!
多少はね・・・ははは。


2018/10/11 (Thu) 14:13 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/11 (Thu) 15:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

Aria様、こんにちは。

ふふふ、面白い家元夫人は好物です♥
冷たくすると西門家を書くのが大変なので・・・。

あっはは!雲隠れ中・・・いやいや、私はその系統は苦手なのでイマイチ上手く書けません。
童話のようなものしか書けないので期待はしないように・・・。

ただ総ちゃん書きの宿命のようなものなので(笑)仕方なくです。

出来たらすっ飛ばしたいですけどねぇ・・・。
一部読者様に怒られるので頑張りたいと思います!!(笑)


コメント、ありがとうございました。

2018/10/11 (Thu) 17:53 | EDIT | REPLY |   

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