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plumeria

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「うわっ・・・流石沖縄!この時期まだ気温が高いんだね。夏は東京より気温が低いし、過ごしやすいのかもね~」

那覇空港に着いたらこの土地のいいところを探そうとしてるみたいに独り言を言ってバスターミナルのほうに向かった。
1人でバスに乗る方が好きだけど、何処に行くのかもわからないから仕方がない。
花沢の人が見つけてくれるんだろうと思って適当に突っ立っていたら1人の男性が近づいてきた。

怖そうな顔でもなく比較的若い人・・・背格好は岡田さんみたいだったけど表情は穏やかで優しそうな人だった。

「失礼、牧野さんですか?」
「はい・・・えっと、花沢・・・の?」

「はい。本社総務からの連絡で、牧野さんが到着されたら新居に案内するようにと言われてきました。私は高橋と言います。花沢物産の観光関連の子会社の者ですけどね。さぁどうぞ、こちらです」

「・・・ありがとうございます」


観光関連の子会社・・・じゃあ、この人は知らないんだろうな、私がここに来た理由なんて。

だからなのか凄く明るく楽しそうに私を車まで案内してくれた。
それを悲しいとは思わなかったけど、こんなに温かい場所に来たのに同じように明るい顔が出来ない自分が嫌になった。


少し歩いたら広い駐車場が見えて、リムジンじゃなくて可愛らしい大きさの車を指さされたからそれには安心した。
またあんな黒塗りの車に乗せられたら嫌だなって・・・なんとなくそう思っていたから。

「お荷物は?」なんて言うから「何もありません。送りましたから」って答えると、それに質問もしないでニッコリ笑ってくれた。
人懐こい可愛い人だなって・・・そんな事を思いながら後部座席に座ると車はすぐに空港から出て行った。



南国特有の木が沢山ある。
米軍基地があるからかしら、外人さんが沢山いる・・・英語の表記が多い気がする。

東京の人達よりまだ夏の格好の人が多い・・・高橋さんの話だと関東より平均気温が5度以上高いんだそうだ。


「名護の方にある大学に入られるんですって?東京にも沢山大学はあるのに南の島の方がいいんですか?」

「え?名護・・・そ、そうなんです。人があんまり多いと気疲れしちゃって大変だから温かい土地でのんびりしたくて」

「あっはは!そういうものなんですかねぇ。私は大阪から沖縄に来てるんですが、もう慣れたけど初めの頃は人混みが恋しかったですよ」

「そうですか・・・恋しくなるかもしれませんね」


もう既に恋しいけど。
今すぐ飛んで帰って類の胸に飛び込んで、お昼を一緒に出来なかったことを謝りたいけど。

晩ご飯のメニューを考えながら午後の講義を受けて、お買い物して帰って、我儘な類のために時間のかからない料理を作るの。それを考えたら恋しくて恋しくて・・・もう、それすら考えなくてもいい私の頭の中は真っ白だった。


沖縄自動車に入って車は本島の北に向かった。
私が住む名護はどんな街なんだろうって思ったけど聞く気にもならなかった。名護の中でも奥まった所・・・人があんまり来なくて寂しい感じでもいいな。

類の情報が届かないところ・・・彼が私を見つけられないところがいい。
そうしないと私が期待してしまう。彼が現われないかと夢を見そうだったから出来るだけ田舎で、出来るだけ静かなところがいい。



道路の向こう側に青い海が見えた。

この時期でもサーフインする人が見えたし、遠くてわからなかったけど泳いでる人もいるみたい。高橋さんに言わせたら、もう夏の海の色じゃないらしいけど都会暮らしの私には充分南の島の青い海だった。

こんな気分で来ていないなら「海で遊ぼうよ!」って大はしゃぎだったかも。
それを彼ならすぐに言うこと聞いてくれて私をあの海の中に連れて行ってくれるんだろう・・・。


「あぁ!ダメダメ、そんなこと考えちゃダメなのよ!」
「は?どうかしましたか?」

「あっ・・・なんでもないです。ごめんなさい」


もうすぐ夕方だ・・・類にバレてしまう。
あの人はきっと悲しんで、そして怒ってる。

そんな思いをさせたのは私・・・あれだけ誓ったのに逃げた私のせいだ。
電源を入れることが出来ないスマホを握り締めて、車の窓にコツンと頭を当てたまま・・・私は”何処”に向かうのだろう・・・。



************



俺が車から降りたら守衛は驚いて持ち場に戻った。
詰所に行くといつもなら外に立っている彼がその中に入っていて、俺が近寄ってくるのを恐れている、そんな風に感じた。

窓の前まで行くと出てくるように指で合図・・・それを見て深い溜息をつき、観念したかのように詰所から出てきた。


「あんた・・・何か知ってんの?牧野が寮を出て行ってるの、職務上見てるよね?」
「は、はい。牧野さんが寮を出て行かれたのは見ています。午前中・・・でした」

「そう・・・牧野、誰と出ていった?それとも1人?」
「お、お1人です」

「へぇ、1人・・・じゃあ、最近この寮を誰かが訪ねてきてるよね?当然あんたは見てるはずだ。それが仕事だからね」
「・・・いえ、私は何も」

俺の目なんて見ずに何処か遠くを見ながら曖昧な返事をする。
身体の横に付けている手の先が握られたり広げられたりと忙しない。それは彼が隠し事をしている証拠・・・おそらく口止めされているんだろう。


「でも誰か来たなら監視カメラに映ってるよね。それを見ればわかるからいいや」
「・・・は、はい?!」

今度は管理人室に向かって今と同じ話をすると、まだ怯えている管理人から嘘のような話が飛び出した。


「じ、実は・・・監視カメラは故障中でして、この1週間作動しておりません」
「3階についてる花沢の小型カメラは?」

「あれは早々に取り外すようにと奥様から言われまして今は撤去されています」

「監視カメラって故障して1週間も放置するものなの?・・・もういい、わかった!」


この答えで動いたのが花沢だとわかる。
監視カメラはわざと止めさせたんだ。それか俺に聞かれたらそう答えろと言われているか・・・だ。

このまま自宅に戻って確認してやる!そう思って、今入れたばかりの車を再びガレージから出した。そして寮を出ようとした時に守衛の男が車に向かって走り寄ってきた。
必死の形相・・・真実を話そうと思ったのか覚悟を決めたような顔で帽子を取って頭を下げた。


「花沢様・・・!申し訳ございません!」
「なんであんたが謝るの?もういいよ、わかったから」

「はい、あの・・・実はここに来られたのは花沢社長、ご本人です」


「え?父さん・・・父さんが直接?」


その言葉には正直驚いた。
あの父さんが直接こんな所に出向いた?そこまでして牧野を俺から離したかったのか?

どんな大企業の代表者でさえ父さんにアポを取ることは難しいのに・・・だから、来たとすれば秘書だと思っていた。
社長の言葉を牧野に伝えただけだと・・・たとえそうであっても恐怖だっただろうに。


それなのに父さんが・・・

牧野はどれだけ恐ろしかっただろう。
フランスでも2人が話す機会はなかったから初対面に近かったのに・・・。


「何故牧野さんを訪ねてこられたかという理由などは本当に聞かされておりません。内密に、とだけ言われておりました。そのあと花沢社長は秘書の方も車に残したままお1人で牧野さんのお部屋に入られました。お話しされたのは1時間ぐらいです。
類様がお帰りになる少し前にここを出られましたので・・・残念ですが入れ違いでした」

「牧野の部屋で2人だけで・・・」

「はい。そして本日、牧野さんの荷物を引っ越し業者が取りに来まして、その後に花沢家のお車が牧野様のお迎えに来ました。それには秘書の方しか乗っていなくて社長はいらっしゃいませんでした。
牧野さんは私にも笑ってお世話になりました、と・・・明るくしておいででした」

「牧野、笑ってたの?」

「悲しそうに笑っておいででした。花沢家が関わっているとは伝えないでくれと・・・類様が苦しむから自分が勝手に出て行ったことにしてくれと言われました」


如何にも彼女らしい出て行き方だけど・・・そこで全てを知った時の俺の姿は考えてくれなかったの?

牧野・・・あんたがいなくなって俺が1人で生きていく意味ってあると思ったの?



牧野に電話をかけてみるけど電源は切られたまま。
だからメッセージを送った・・・『あんた、今何処にいるの?』

無機質な文字は俺の気持ちを彼女の心の中に届けてくれるだろうか・・・。





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2018/10/13 (Sat) 00:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

あっはは!あきら、いないいない!もう帰りましたから!(笑)
渚沙ちゃん・・・怖いわぁ!

「つくしちゃん。今度は違う人を選んだの?じゃあ、あきら君を返して・・・」

ぎゃあああーっ!!


岡田さん?間違ったっけ?
フランスで運転してた人、岡田さんだったですよね?(誰が書いたんだっつーの!)

疑わずに書いたけど調べてみます(笑)
どうしよう、違ってたら(笑)


花沢探偵事務所、始動します!
頑張れ、類君っ!!(笑)

2018/10/13 (Sat) 08:03 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/13 (Sat) 08:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます

meimeiさま、おはようございます🎵

はい、頑張りますよ!
あ、やっぱり好きですか?ふふふ、良かったです。

挑戦したいけど(笑)浮かばないですよ。
まだ終わってないですからね。

クリスマスにしようかな?とは考えております。
また、そのうち(笑)


期待せずにお待ちくださいませ♥️

2018/10/13 (Sat) 08:29 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/14 (Sun) 15:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

あっはは!岡本にすればよかったね!
岡田は・・・実は私の苦手な人の名字です(笑)

そうしたら忘れないのでね・・・ふふふ。

嫌いキャラ=苦手な人の名字。

2018/10/14 (Sun) 18:07 | EDIT | REPLY |   

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