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奥日光に来てからの毎日は1対1のお稽古が続き、穏やかな・・・と言えば穏やかな時間が流れた。
ただ師匠だからと厳しくされる反面、突然我慢出来なくなって所構わず襲いかかる・・・いや、抱き締めてくる総二郎にも慣れてしまった。

「今日は着物で茶を点てようか。自分でも着れるようにならないとな」
「・・・それはいいんだけど、今までそう言って最後まで着たことがないよね?1番初めは長襦袢で既にその先に進めなかったし、次はせっかく帯までいったのに結んだ途端解いたよね?」

「・・・そうだっけ?覚えてねぇわ」
「思い出しなさいよ!」

「着物の襟元から手を入れるの、夢だったんだよな・・・」
「碌でもない夢だよね・・・」


それでも着物を出して小物を揃え、1人で帯を結ぶ手前までは出来るようになった。
まだ帯だけが結べないから総二郎が締めてくれて、今日はどうやらお稽古に進めそう・・・彼も久しぶりに着物を着ると言って先日持ってきてもらった着物に袖を通した。

少し青みがかった薄緑の紬の袷。黒地に白い模様が少しだけ入った帯を締めて、誰もいないのにちゃんとアクセサリーを外して茶室に入ってきた。

やっぱり格好いい・・・今度は私の方が彼に見惚れて動けなくなってしまった。



「ね、今日は総二郎のお点前を見学してもいい?久しぶりにその姿を見るから何だか嬉しくて」

「くくっ、そうか?じゃ、久しぶりに本格的に点てるか」
「うん!宜しくお願いします!」



茶道というものは「茶事」をするための稽古だと総二郎は言う。

茶事とは『自分の親しい人を招き、自分の好きな道具を使って食事をさしあげ、濃茶薄茶でもてなして主客ともに真心の交わりを楽しむ』こと・・・言葉ではわかる気もするけど、今の私はそこまでの動作や立ち居振る舞いがまだまだ「真似」であって楽しめてないって言われた。


「・・・それって総二郎は子供の時からやってるからわかるの?私、楽しんでるつもりなんだけどまだまだ?」

「俺もまだ完全に習得なんてしてねぇって。茶の道は一生修行って言われるぐらいだからな。茶が美味く点てられても茶花で失敗したり、それこそ菓子で満足できなかったり・・・でも、客は喜んだりってのがあってさ。
全員が満足できる茶事なんてそうそう出来ないもんだ。いつか親父を唸らせるぐらいの茶会をするのが夢だけど」

「私・・・大丈夫かな。出来ると思う?」

「まずは稽古を続けることだ。形だけが綺麗なヤツはいくらでもいるけど、どのぐらい心が入れられるかって話だから、そこははっきり言ってお前次第だな。でも、俺が上達するためには俺自身の内面が充実してないと無理・・・だからそれにはつくしが必要だからお前の存在は重要ってことかな」

「へ?えっと・・・じゃ少しは役に立ってるんだ?」

「ははっ!まぁな。じゃ、今日は茶事のメインの濃茶から薄茶までの後座をしよう。少し胃の中に何か入れとけ」


茶事の流れは炉に炭をくべて釜の湯を沸かす初炭に始まり、懐石(食事)、中立ち(休憩)、濃茶、後炭、お開き前の薄茶と続く。

普通なら食事がおもてなしだけど茶事の場合のメインは濃茶・・・濃いめのお茶を空きっ腹に入れると胃に悪いって意味と、その方がお茶を美味しくいただけるって事で軽めの食事をしてから濃茶をいただくことになっている。
ここでは茶懐石はしないからひとつだけお茶菓子を口にして茶席に戻った。


濃茶の時間・・・茶室の空気はピンと張り詰め静寂の中でその作法は続けられる。余計なお喋りはなく、亭主は全神経を一碗にそそぎ、客の集中も亭主に注がれる。

お湯の沸く音と、総二郎の動作の時の衣擦れの音、畳を躙る音だけが聞こえる。
私はその凜とした彼の横顔と美しい所作を見ながら、まるで別の世界に入ったかのよう・・・。

スッと差し出された茶碗を取り、一口いただいたときに総二郎が言葉を出す。


「お服加減はいかがですか」
「結構なお点前でございます」


そのあとの薄茶になってはじめてこれまでの流れのことを主客で語り合い和やかに終わる・・・久しぶりに総二郎のお点前をじっくりと細かく見た私は、この先の自分の姿を想像して怖くなった。

「どうした?なんでそんな顔になってんだ?」
「・・・ううん、何でもない。なんでもないけど・・・自信ないなぁ、なんて・・・」


着物の袂で目元を拭った。
そんな私を抱き締めてくれて、優しく笑いながら「少しずつだ・・・」、そう言ってくれる彼に縋って泣いてしまった。



*************



つくしの稽古は毎日少しずつ進んでいった。
茶道は勿論、茶花とは別の華道の基本、着物も一番簡単な帯の結び方なら出来るようになった。

ただし困ったのが書道・・・本来漫画文字のこいつは小筆を持たせたら何にも書けなくて笑った。


「だーかーら!なんでそうなるんだ?どうしてここの線が丸くなるんだ?」
「だってぇ!いつもこうやって書いてるんだもん!」

「西門って文字がデブってるだろうが!もっとスッキリ品良く書けねぇのかよ!」
「・・・なんでこんな固い名字なのよ。他の文字で練習できないの?」

「文句言うな!お前が書く回数が1番多いのがこれなんだよっ!」


午後から『西門』だけでも100回ぐらい書かされてすっかりやる気のなくなったつくしは小筆を口と鼻の間に挟んで俺に猛抗議。それを机の反対側に座ってる俺は腕組みして睨み返す・・・まるで子供の喧嘩みたいに書道の時だけは上手くいかなかった。

確かに意外と小筆文字は難しい・・・それは判ってるが西門では案内状は亭主の手書きが原則。
つまり、俺が忙しいときはつくしが書かなきゃいけねぇんだから大事な仕事って訳だ。


「いいか?硬筆と同じ感覚で持つなよ?毛先の様子をその都度確認しながらだ。これも茶道と同じで一生もんの稽古だから完成品はないと思えよ?毎回自分で正しい筆遣いを探していく感じだ」

「探せなかったら?」
「口答えすんのか!」

書きながら何度も筆を整えるのは本来間違ったやり方。毛束が縺れる時点で筆遣いがおかしいのだと言えばまた肩をガクンと落とした。


「だからな、そうならないように筆を運んでいく練習をするんだよ。そうじゃないと文字の連続性が途切れてしまうんだ。筆が連続して動くことによって文字の立体感が生まれるからな。奥行きってのかな・・・そんな感じだ」

「だって紙の上じゃん」
「また口答えすんのか?」


ガタガタ言うから仕方なくつくしの後ろに回って右手を重ねながら教えていくと、それはそれで真っ赤になって恥ずかしがる。
今更照れてどうすんだよ!って言っても「だって耳に息がかかる・・・」そう言われたらつい・・・。

「・・・かけてないつもりだけど?」
「かっ、かかってるもん!わざと近づいてるもん!」

「だってここまで来ないとお前が真面目にやらねぇんだろ?」
「・・・ま、真面目だよ!ホントに真面目にしてるし!」


重ねた右手が震えだして汗ばんでる。
少し悪戯気分で指を滑らせたら肩を竦めて「止めて・・・」なんて色っぽい声で抵抗なんてして。


「・・・やべ、もう無理」
「え?あっ、うわああぁっ!んっ・・・」

小筆なんて半紙の上に投げ出してそのまま後ろから抱きついて唇を奪った。
服の上から胸を揉んでたらつくしもだんだん声が変わる・・・自分からも手を伸ばして俺を求めるような仕草をするから、その手を掴んで股間に当てたらゆっくりと動かして俺を刺激するようになった。

「欲しい?」なんて耳元で囁いたらすげぇ真っ赤な顔して俺の胸に顔を埋めた。

それって・・・「返事」だよな?


ここまできたら我慢なんて出来ねぇからつくしを抱き上げて別の部屋に・・・そして陽が高いうちから抱き潰してつくしは完全ダウン。
夕食の支度をしないといけない時間になっても「腰が立たない!」なんて言って布団の上で唸ってた。


「書道だけは志乃さんの方がいいな。稽古になんねぇわ・・・」
「・・・そうだね。毎回こうだもんね」





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濃茶は茶杓でお抹茶を三杓×人数で点てたお抹茶。
一碗に複人数分のお抹茶を一度に点て、薄茶に比べてねっとりとしているそうです。

薄茶は茶杓でお抹茶を一杓半入れて点てたお抹茶。
薄茶は一人に一服ずつです。

ねっとりとしたお抹茶・・・確かに胃がやられそう💦
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2018/10/19 (Fri) 09:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

あらら、そうなの?ごめんなさいね💦
今度から注意します。今までなかったよね?(笑)

まさかそんな事とも思わずに(当たり前だけど)・・・。

でも、この総ちゃん、多分本気で怒ってはないと思うんだけどね(笑)
そこをすっ飛ばして読んで下さい。


そのあとに美味しい部分があって良かった!(爆)




2018/10/19 (Fri) 11:58 | EDIT | REPLY |   

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