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「お前・・・あきらのこと、もしかして好きだった?」

横でそう言った時、牧野はすげぇ驚いた顔して俺の事を見た。
それは図星って顔じゃなくて「まさか!」って言いたそうな顔・・・当たってるならすぐに真っ赤になって分かり易いのに、この時は顔色1つ変えなかった。

「バカじゃないの?そんなことないわよ」
「へぇ・・・あきらの心の中まで解ってるって言いたそうな感じだったけど?」

「そうじゃないよ・・・急すぎるから驚いただけ。本当は西門さんみたいにまだ遊びたいんじゃないかなって思ったのよ!」
「俺が遊んでる?そんな訳ねぇだろ?真面目に茶をしてるってのに。さ・・・稽古に入ろうか」


「・・・はい。宜しくお願い致します」


俺もこの写真を撮った時に気が付いた・・・あきらの何だか諦めたような表情。
手前に移ってる2人に気を取られて気が付かないかと思ったのに・・・こいつ、しっかり気が付きやがって。


あいつはこれからゆっくり時間をかけてお前の事を忘れるんだよ。
そんな言葉は勿論出さねぇけど・・・な。


そして俺は牧野に自分の気持ちを伝えるタイミングを計っていた。
会う度にそれが今なのかそうじゃないのか・・・焦りはなかったが毎回獲物を狙ってる獣のようで、探りを入れてる自分のことが可笑しかった。



*****************



あっという間に梅雨が終わり、暑い夏が来て、やがてそれも終わって秋の初めの頃。

彼等がいなくなった寂しさも忘れて西門さんと2人なんだなって事が普通に思えてきた時・・・大学に姿を現す西門さんは余計注目を集めるようになっていた。


茶道部では西門さん目当ての女子生徒が殆どだから補佐をする私の事は当然邪魔者扱い。1年生だろうが自分をお嬢様と自負してる子からはあっさり無視されるし、同級生で色々と知ってる人からは嫌みと嫌がらせ。
西門さんが私に話しかけようものなら、すぐに騒動を起こして自分たちの方に西門さんを呼ぶ始末。

「総二郎様ぁ!この方がわたくしにお湯を!」
「まぁ!そちらが私の柄杓の前に手を出すからですわ!お作法が悪いのはあなたでしょ?」

「・・・そのぐらいにして手を見せてください。あぁ、少し赤くなってますね。手当をしないとせっかくの綺麗な手が可哀想ですね」

西門さんの表向きの言葉。
それでも言われた方の女の子は我先にと自分の手を西門さんに差し出す・・・その度にチクッと私の心に針が刺さる。

「牧野、薬を」

そのひと言で今度は女の子の目つきが変わって私を睨み付ける。
私になら手当なんてしてもらわなくていいとばかりに手を引っ込めるから、苦笑いでその場は終わる。


「西門様、この後は何処かに行くんですの?まだお仕事があるんですか?」
「私の父が1度お会いしたいって言ってましたわ。良かったら我が家にいらっしゃいませんか?」

何とも不真面目な茶道部が終わると今度は西門さんの取り合いになる。
講師として来るようになったからって1度もこんな誘いを受けたことなんてないんだけど、お嬢様達の猛攻は収まらない・・・断られるのがわかっていても彼の周りには色んな香りのする女子生徒で身動きが取れない程だった。

だからいつも1人でお道具を片付ける。
何十人もの茶道具を集めるだけでもひと苦労なのに、誰1人手伝おうという人もなく彼に纏わり付く。

この光景を見たくなくていつも背中を向けて1人黙々と動いていた。


「申し訳ないがこの後も仕事です。さぁ、もうお帰りなさい。陽が暮れるのが早くなりましたから気をつけて」

西門さんがそう言うとお嬢様達は渋々と茶道教室を出て行く。当然私の事なんて無視だ・・・誰1人挨拶だってしやしない。
そんなことはどうでもいいけど・・・って最後の1人がドアを閉めたら大きな溜息が出た。


そしてここには西門さんと2人きり。
向かい合って使ったお道具を片付けていた。

粗方目の前に集めてきたから私が黒文字を茶巾で拭いて、西門さんは茶筅を湯通ししていく。それが終わったら茶匙や棗も拭いて綺麗に箱に仕舞う。


「終わったか?しかし、あの中で誰か真面目に茶を勉強してるヤツがいるのかよ!」
「さぁ?どうでしょうねぇ、教える人が西門さんじゃ真面目に出来ないんじゃないの?誰も手元なんて見てないじゃないの」

「・・・なんだよ、その言い方。ははぁ、またヤキモチか?」
「だっ、誰がヤキモチ焼くのよ!同じことばっかり言ってんじゃないわよ!」

思わず力が入って茶匙1本折ってしまった。



茶道部の和室の窓から秋の夕日が差し込んでくる。
オレンジ色が濃くて温かい色・・・それが西門さんの顔を横から照らして、髪が赤く光って綺麗・・・思わず手を止めて彼のことを見つめていた。

それに気が付いた西門さんが顔を上げて私の方を見る。
その瞳に夕日が映って妖しい色に変わる・・・そしてやっぱりニヤッと笑ってきた。


「・・・どうした?俺の顔、そんなに珍しいか?見慣れてるだろ」
「えっ!あ・・・ごめん。つい、その・・・」

「別に見るぐらい構わねぇけど?なんならもう少し近くで見るか?」
「・・・えっ?」

スッと立ち上がった彼が私の真横に来て座り、止めていた手を掴むと自分の胸に引き寄せた!
私はまだ着物のままだったから身体が動かしにくくてそのまま西門さんの胸に蹌踉けてしまって、急いで離れようと手で押し退けようとすると今度はそれを止められた。


今・・・西門さんと私の顔は30センチぐらいしか離れてなくて、彼の左手は私の右手首を掴んでる。空いてる右手で私の背中を支えるとゆっくり西門さんの顔が近づいてきて・・・そのままキスされた。

ギュッと目を瞑って彼の唇の熱さを感じていたら、今度は舌を入れてきた!
それには驚いて顔を背けようとしたけど西門さんの方がそれを許さない。私が唇を動かす方に器用に移動してきてそれを解放してくれなかった。


やっと離された時には肩で息してて、掴まれてる腕はガタガタと震えていた。

「なに・・・すんのよ!もうっ・・・離して!」
「離さねぇって言ったら?」

「は?じょ、冗談は止めてよ・・・私は西門さんがいつも連れて歩いてるような人とは違うんだから」
「俺はお前をあいつらと一緒だとは思ってねぇけど?」


彼は私をふわっと抱き締めて、私の顔は彼の肩の上に・・・彼の顔は私の肩の上にある。
凄い力で背中を押さえられて動けない・・・西門さんの膝の上に座るような体勢のまま、正面から来る夕日が眩しくて彼の首に顔を埋めた。



「なぁ・・・牧野、俺の事好きだろ?」

急にドキンとする言葉を出してくる。
しかもこんな体勢で、返事も出来なくてどうしようかと困っていたら・・・


「俺はお前の事が好きだ。もう随分前からな・・・今このままお前をこの場で抱きたいぐらい惚れてるわ」

「・・・う、うそっ・・・そんな言葉に騙されない・・・もん!」

「くくっ、騙しゃしねぇよ、マジだって。お前はどうよ・・・?」
「わ、私?え、えっと・・・私は・・・」

あまりに急すぎる告白とシチュエーションに自分の心がついていかない。
ドキドキしすぎて心臓が爆発しそうなぐらい音を立ててるのに西門さんの腕の力はどんどん強くなって私を抱き締めるんだもの。もう苦しくて息が出来なくて、粉々に砕けてしまいそう・・・そのぐらい動揺してしまった。


「・・・言葉に出来ねぇなら牧野も俺を抱き締めてくれよ。それで返事にしてやる。今日だけな・・・」


私の腕はゆっくりと彼の背中に回って、そして抱き締めた。

そしたら「クスッ」って笑う声が聞こえて、もう少し力を入れてみた。
着物、皺にならないかな、なんて思ったりもして・・・でも、西門さんの着物をギュッと掴んでみた。


「じゃ、今日から俺がお前の男ってことで。牧野・・・俺の傍から離れるなよ」
「・・・うん」


この後、もう1度西門さんがキスしてくれた。

窓の外がオレンジ色から紫色に変わり和室がどんどん暗くなる・・・その中でいつまでも彼に抱かれていて、ようやく通じた想いに胸を高鳴らせていた。




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2018/11/28 (Wed) 22:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんばんは

meimei様 こんばんは。

ありがとうございます。
ははは!まだシリアス部分に入っておりませんのでね(笑)これからですよ?

本当に心配なんですよね。
早く良くなるといいですけど。待ってるんだけど、こればっかりはねぇ・・・。

ご無事でありますことを祈っております。

はい!今の所ラブラブモードですね!
それは・・・あるでしょう(笑)程々にしておきます。

2018/11/28 (Wed) 23:35 | EDIT | REPLY |   

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