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plumeria

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私の身体に異変が起きたのは西門さんの誕生日の前々日・・・12月1日。
少し前から生理が来ないことが気になっていたけどとうとう軽い吐き気もあって、恐る恐る妊娠検査薬を使って調べてみた。

結果は・・・妊娠を示す赤い線。それが目の前に現われた。


これを西門さんに報告したらどんな顔をするんだろう。
困ったって顔されたらどうしよう・・・でも、避妊しなかったのは彼で受け入れたのは私。責任は2人にあるし、西門さんはもしかしたら喜んでくれるんじゃないかって気がしていた。

でも、いつ話そうかしら・・・知ってしまったら彼との行為は取り敢えず止めた方がいいのよね。


あれからも私たちは何度も身体を繋げてて、一晩中離してくれない時もあったから、本当にお腹に子供がいるなら激しすぎるのは良くないんじゃ?って知識もないのに悩んでいた。

それに市販の検査薬だけだからきちんと病院に行かなきゃ・・・それは彼に報告してから?それとも病院で確かめた後で報告?


「いや、その前にプレゼント、買いに行かなきゃ」

バイトや卒論の事でやることが沢山あったから後回しになってた西門さんへのプレゼント。
なんにしようか迷ったけどそんなに欲しいものはないって言うし、そもそも特注品が殆どで既製品なんか買わない人だし。

だから少し高かったけど彼の好きなブランドのブレスレットを買うことにしていた。
そのために2ヶ月間必死に貯めたバイト代、1回で吹っ飛んで行っちゃうんだけどなぁって思ったけど、渡した時の嬉しそうな顔を想像したらそんな苦労はどっかに消えていく気がした。


いつもより慎重に歩きながら、靴だってヒールの無いブーツで、まだわかってもいないのにお腹を押さえてバスに揺られていた。


頭の中に浮かぶのはこの先の光景・・・ここにいる子供を彼が抱っこしてくれてる姿。

呼ぶのなら「お父さん」「パパ」・・・どっちだろう?
パパかぁ・・・西門さん、子供好きなのかしら?自分の子供なら溺愛しそうだよね。特に女の子だったら離さないだろうなぁ。それを見たら私はヤキモチ焼くのかしら、それとも笑ってるのかしら。

いつもなら気にもしないのに窓の外に妊婦さんを見つけたら目で追いかけるし、赤ちゃんを抱っこした人を見たら顔がニヤける。

「あんな風になるのかなぁ、このお腹・・・」

愛おしくなって撫でちゃうけどまだぺったんこなんだから実感なんて湧かなかった。


でも、その前に立ちはだかるのはやっぱり『西門』・・・この家は私を受け入れてくれるんだろうかって事は今まで怖くて確認出来なかった。
道明寺と付き合ってたことは知ってるかもしれないけど別れてしまえば一般人・・・しかもその中でもかなり下の方。
西門さんはそんな事を気にしないって言ってくれるけど西門流は判らない。

美作さんも花沢類も言ってたもの・・・『俺達の中で1番環境が重苦しいのは総二郎だ』って。


実際に私は家元とも家元夫人とも殆ど会ったことがない。もう何年もお稽古に通っていても・・・だ。
私のような人間が会えるわけがない雲の上の人・・・そうなんだろうって思ってるから。
それに独特な空気が流れてるし、なかなか理解出来ない古いしきたりがあるようで、若いお手伝いさんなんて長続きしなくて辞めてしまうって聞いたことがある。

都会の真ん中にあるのに広大な敷地・・・だからなのかお屋敷の中には殆ど街の雑音は届かなくてシーンとしてる。
俗世と切り離されたような空間だって事は知ってるけど、そこに自分の居場所があるのかって言われると・・・。

でも、西門さんを信じていれば大丈夫・・・そう思うしかなかった。



目的の物を買って、またゆっくりと自分のアパートに帰った。
可愛らしくラッピングしてもらった箱を綺麗な袋に入れてもらって、あとはこの中に古臭いと思われるだろうけど手紙を添えようと思っていた。

それを大事に抱えて歩いていたら私のアパートの前に1台の車が停まっていた。
見慣れない黒い高級車・・・それを見た瞬間、私の背中に汗が流れた。



**************



「総二郎さん、少しいいかしら」

その声に振り向いたら、滅多に俺と話さないお袋がそこに立っていた。
今日も何1つ乱れていない完璧な装いに感情の見えない目・・・自宅内とは思えない緊張感。

これはどっちだ?母親としてか、家元夫人としてか・・・それ次第で俺の態度は変わる。それを知っているからこの人は話しかける時に自分からそれを告げてくる。


「今は家元夫人としてです。お話しがあるの、私の執務室に来てもらえる?」
「・・・わかりました。この後、高嶋様のお屋敷に伺うことになっておりますので手短にお願い致します」

「あぁ、そうなのね。お話はあなた次第で早く終わるわ。とにかくこちらに・・・」

俺次第で?その言い方が気になったけどお袋について両親の執務室に向かった。
そこには誰もいなくて俺と家元夫人だけ・・・テーブルに置かれている釣書が目に入ったが知らん顔をした。

また誰かに頼まれて置いて帰られたのか?それなら毎月あるだろうに、何を今更と思ったが受ける気なんか微塵もないからなんとも思わなかった。

好きなだけ置いて帰ればいい。
俺は自分の相手は自分で決める。
たとえどんな妖艶な女を持ってこられても選ぶのはただ1人・・・それはもう決めてるんだから、と。


「突然なのだけどね、お家元があなたのお相手に宝生様のお嬢様をお決めになったのよ」


・・・は?家元が俺の相手を決めた?


決めたってなんだ?俺は何も聞いてないのに相手を決めたって・・・?
家元夫人がサラッと出した言葉に驚いて返事すら出来なかった。


「聞こえたのかしら?総二郎さんのお相手は宝生ゆかり様、宝生家のご長女です。会ったこともないでしょうからお写真だけでもご覧になる?とても美しいお嬢様よ」

「・・・お待ちください。それはどういう意味でしょう?決定事項のように聞こえますが、私にはそのような気は一切ありませんし、今の時代、そのような古臭い縁組みなど必要でしょうか?」

「そう言うとは思っていましたがこれはお家元が決めたこと・・・西門ではお家元のお言葉は絶対です。従わないという選択はありません。そんな事は百も承知でしょう?総二郎さん」

家元夫人の冷たい言葉・・・俺の人生をなんだと思ってるのか知らないが、こんな馬鹿げた話を持ち出すことになんの違和感もないのか?選択の余地がない、それは百も承知だろうって・・・?


ひと呼吸置いてから、この人の目を睨み付けて言い返した。

「お断り致します。私には心に決めた人がおりますのでその人以外の女性と生涯を共にするつもりはない・・・聞き入れられないと言うのなら西門の次期家元という立場を孝三郎に譲っても構いません」


冗談じゃない!
差し出された釣書も当然のように突き返し、そこに置かれていた写真も開くことなどしなかった。

その行動を予想していたのか、小さく溜息をついた家元夫人は釣書をテーブルの端に置き、今度は態度を崩して言葉を続けた。


「総二郎さん・・・ここからは親子に戻りましょうか。落ち着いてちょうだい・・・今の話は本当なの?」

「勿論。まだ話すには早いと思ったから言わなかっただけで本気で考えてる女がいる。お袋も知ってると思うけど俺が稽古つけてる司と付き合っていた女で牧野つくし・・・こいつと付き合ってる。
遊びだと思うなよ、俺達は真剣だから。あいつはまだ学生だし、茶道の腕もまだまだだからこれから稽古をつけていくつもりだったし、上達具合を見て親父達には報告するつもりだった」


この話にお袋は驚かなかった。
逆にそれに驚いた・・・もしや俺達の事を薄々感づいていたのか?それとも調べさせたのか・・・?


「そう・・・本気なのね?でも、お父様も本気なのよ。この話、既に宝生家も動いてると思うわ」

「どうしてそうなるんだ?!俺の事だろう!どうしてそこを無視して話を進める?時代ってもんを考えろよ!」

「・・・私ではどうにも出来ないわ。実はあなたに好きな人がいるような気がしたからお父様にそれとなく話してみたのよ。
無理なことをさせなくても良くないかって・・・でも、聞く耳持たずでこの話は進めると言い張るの。遠い昔に余程宝生家と深い縁でもあるのかもって思ったけど私もよく知らないのよ」


お袋の話はここで終わった。
馬鹿馬鹿しい!そんな見たことも会ったこともない女なんかと結婚だなんてする訳がない。


そうなったらこんな家、速攻捨ててやる・・・!
心配そうに俺の事を見るお袋には「親父と直接話をつける」と言ってこの部屋を後にした。




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明日は「私の帰る場所」はお休みさせていただきます。
総誕イベントを楽しんでくださいね♥
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