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plumeria

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牧野はガタガタと震えて玄関に座り込んだ。
俺の服を掴んでるその手が可哀想なほど震えている・・・すぐ側にあったメモ紙に書いて見せた。

必要な物だけ取ってきて。すぐに帰るから

大丈夫っていう代わりに軽くウインクして笑って見せた。
少し落ち着いた牧野は頷いて部屋に入っていく・・・もちろんその後をついて入った。
部屋の中に誰かがいるというわけではない。ただ、すごく荒らされていただけだった。

元々荷物の少ない部屋だから、参考書や資料などのいるものと、少しの着替えを持ってバッグに詰め込んだ。
帰るよ、とサインを出したけど牧野は悔しそうに自分の部屋を見渡している。

そんな牧野の手を掴んで、早々にアパートを後にした。
これをどこかで見られているかもしれないと思うと・・・安全なはずの自分のマンションでさえ不安になる。
もしも、道明寺がらみで起きているのなら・・・プロの組織が動いていたら安全な場所なんてないから。

隠れて暮らすのを選択するよりも、司が解決する方が早いのにっ・・・!
牧野を悲しませ続ける司が本当に許せなかった。



「牧野、もう話しても大丈夫だから・・・落ち着いた?」

車の中で聞いたけど、牧野は少し首を縦に振っただけで言葉は出さなかった。
それを見て運転中だったけど牧野の手を握ってやったら、俺の方に顔を向けてきた。

「心配しないで?ほら、もう1人じゃないんだから・・・俺たちがついてるし。マンションに帰ったらすぐにあきらに連絡
するよ。こういうのは美作が得意分野だからね」

取ってきた荷物を自分の胸に抱き締めるようにして抱え込んで、その荷物に顔を埋めている。
自分の部屋が荒らされたんだから無理もない・・・やっと探した自分の部屋なんだから。


マンションに着いてからも、とにかく周りには注意をしてエレベーターに乗り込んだ。
直通のエレベーターでさえ何かが起きそうで恐怖だったが、牧野にこれ以上の不安も与えたくなくて冷静を装う。



「あきら?牧野の部屋が何者かに荒らされたんだ。悪いんだけど盗聴器の類いがないか調べられない?
それと、その付近の防犯システムで不審者かそんな車が止まってなかったか調べて欲しい」

『部屋が荒らされた?泥棒の仕業とは考えられないか?まぁ、調べるのは出来るけどそれと司の件を結びつける
のは早くないか?』

「わかってるよ。でも、盗聴器が出てきたら間違いないと思うけど?泥棒は仕掛けていかないからね。それにさ、
持ち物はなくなってないんだ。あれだけ高級品が揃ってるのにさ」

『・・・そういう事か。すぐにうちの者を行かせるよ』

俺たちの会話をジッと座って聞いていた牧野は、さすがに落ち込んでいた。
昨日は連れ去られそうになるし、今日は部屋が荒らされるしで落ち込まない人間もいないと思うけど・・・。


作る元気もないだろうし、外に食べにも行きたくないだろうから簡単な物をルームサービスで頼んだ。
テーブルに並んだ料理を見ても食べる気も起きないのか、ソファーから動かない。
仕方ないから小さな皿に食べやすいものを載せて牧野の所に運んだ。

「ちょっとでもいいから食べてよ。牧野が食事をしないって一番心配だからさ。食べられそうなもの持ってきてあげるよ?」

そう言って牧野の膝の上にその皿を置いた。

「類・・・ありがとう。・・・ごめんね、こんなことまでしてもらって。昨日のことは忘れようって頑張ったんだけど・・・
やっぱり2日もこんなことがあったら、もう怖いって言うより悲しくなっちゃって・・・」

そうだよね・・・俺だって怖いよ。口に出せないけど、またあんたが俺の前からいなくなったりしたらって・・・
それだけが怖いよ。二度と離れたくなんてないんだから。

「どうして?・・・私は道明寺から離れられないの?類・・・こんなんじゃ、あいつの事を忘れられないよ・・・
いつまでもこんなことが起きてたら、その度に道明寺の事を思い出してしまうよ!もう・・・嫌だよ!」

テーブルに皿を戻してから、泣き出した牧野をそっと抱き締めた。
今はまだ何もわからないから曖昧な言葉では慰められない。こうして支えてやることしか出来ないけど・・・。

「泣いてすっきりするなら好きなだけ泣いていいよ。ずっとこうしててあげるから。だけど、ここにいつでも俺がいるって
事だけは忘れないで?牧野が泣いてもいいのは俺の所だけだから・・・それも覚えていてよ」

結局何も食べられずに、泣き疲れてしまった牧野は寝息をたて始めた。
俺の腕を離さずに掴んだまま寝てしまったから、しばらくそのまま抱き締めていた。
起きたときに泣いたらいけないからそっと俺のベッドに運ぶ・・・。

牧野が寝たのを確認してから、道明寺の最新の情報を調べたけど、企業自体の規模と現在進行中の
事業の数が多すぎる・・・。司が絡んだトラブルも数十件起きていてどれが問題の事件なのかがわからなかった。


「それにしても、やり過ぎじゃない・・・?こんな無茶やってたらいつか命落とすよ?・・・司」


******


翌日、元気はなかったけど大学も休みたくないからって登校した。
もちろんガードもついてるし、あれからは俺はもちろん、総二郎もあきらもピッタリと牧野に付き添っていた。
周りが見たら何事かと思うほど。

そしてあきらが持ってきた物・・・美作お得意の発信器の付いたピアスを牧野につけてもらった。

「いいか?牧野。これは結構高性能だから、万が一って時でもお前の位置はまず特定できるからな!
外すなよ?誰が見たってこれが発信器だとは思わないだろうから、捕まっても見つからないと思うし・・・」

「美作さん・・・嬉しいんだけどさ、その私が捕まることを想定して話すのやめてくれない?ますます怖いんだけど?
それに万が一ってなに?すっごく不安になるんだよね・・・美作さん、一体どんな生活してんの?それにさ・・・
こんな物って売ってるの?まさか・・・作ってるの?美作商事ってどんな会社?」

「・・・至って普通の企業だよ、うちは。ただ、ちょっと変わった知り合いが多いだけだよ」

そうだよね・・・花沢と違って裏にとんでもない奴らを抱えてるなんていえないよね?
そんな優しそうな顔してるのに、いざとなったら一番エグいことしてるもんね?
妹のように可愛がってる牧野には絶対に知られたくないはず・・・その信頼だけはなくしたくないよね?


「類・・・今日牧野のアパートに美作の連中が行ってるから、後で教えるよ」

「了解。ありがと、あきら」

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