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plumeria

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つくしと俺の事が認められ、あいつが西門に嫁に来たのは4年前。

それまで付き合っていた3年の間にどれだけ反対されたかわかんねぇ。
何度も食い下がる俺と、常に明るくて笑顔を絶やさなかったつくし・・・この俺が何回頭を下げても両親は会おうとはしなかった。

とうとう痺れを切らした俺が無理矢理つくしの点てた茶を家元に飲ませたら途端にデレデレになり、今度は家元が自ら後援会の爺さん達を説得して回り、西門の長老を説き伏せての長い道のりだった。

つくしの後ろ盾には家元夫人の実家がついて、後援会長も京都の爺さんもすっかりつくし贔屓で俺のことなんか後回しになっちまった。

まぁ、それでもいい・・・つくしは今ではみんなに可愛がられてんだから言うことはない。



そして西門に来てから1年後、長女陽葵ひまりが生まれた。

その陽葵ももうすぐ3歳・・・いまだに男子誕生の知らせがないと色んな所からプレッシャーをかけられてるのにつくしはのほほんとして「仕方ないよねぇ」なんてケラケラ笑う。
内心はかなり焦っているんだろうが「授かり物だから」なんて言って誰にも愚痴をこぼさない。

陽葵が男だったら、なんてことも言わないで「女の子は絶対に欲しかったの!」って毎日のように抱き締めてる。


でも、そろそろ周りを、ってのじゃなくてつくしを楽にしてやりてぇな・・・って考えているが、俺達の仲は順調この上なく、むしろつくしを休ませる日の方が少ないぐらいだ。
やれやれ、コウノトリも焦らすのが上手いな・・・なんて俺の方が気を揉む日が続いた。


**


10月の晴れた日・・・先週、急に降った冷たい雨に濡れたからなのか不覚にも風邪を拗らせて発熱。
つくしに無理矢理熱を計られベッドから出してもらえなかった。

そして突っ込んだ体温計を俺から奪って確かめる。
苦笑いしてそれを片付けると捲っていた布団を掛け直された。


「38度2分・・・これじゃ今日のお茶会は無理だわね。仕方ない、お義父さまに伝えてくるわ」

「・・・すまない。滅多にこんな熱出さねぇのになぁ・・・マジ、みっともねぇ・・・」

「あはは!生きてるんだから熱ぐらい出すわよ。いいから寝ておいてね。何か食べられそう?」

「いや・・・暫く1人で寝とくよ」


「それじゃ、大人しく寝てるのよ」なんて子供に言い聞かせるみたいにして偉そうに・・・ポンポンと胸に掛けられた布団を叩かれて部屋を出られた。

今日は「紅葉の茶会」の日・・・西門の庭園にある紅葉が見頃になるこの時期、それを眺めながら恒例の茶会が行われる日だった。沢山の客人を招待し、野点という形で茶を振る舞う。
俺の茶席は毎年待ちが凄くてクレームが来るほどだったが、休むとなると誰が代わってくれるのか・・・古弟子の後藤さんか町田さん、客として招いているが京都の大叔父さんが代行するのかもしれない。

揉め事がなければいいがな、と思いながら熱でぼーっとする頭を抱えて眠っていた。



どのくらい寝ていたんだろう・・・ほんの少しいい香りがして目を覚ました。


なんの香りだ?
鼻が利かないからぼんやりとしかわからないけど・・・これは毎年嗅ぐ香りだ。

なんだっけ・・・これは・・・これはって考えていたら俺の横を小さなものが動いた。ピンク色の幸せの塊・・・甘い匂いをさせながらそれは静かに静かに俺の部屋の中をウロウロしていた。


「・・・くすっ、陽葵だろ?どうしたんだ?」

「あっ、見ちゅかった?父ちゃま、起きたでちゅか?」

「陽葵がいい匂いさせてるから目が覚めた・・・俺は風邪を引いてるからうつしたら大変だ。お母様のところに行っておいで」

「母ちゃまはいそがちいでちゅ。ひまはおじゃまだからいい子にしてまちゅ」


はぁ・・・マジ可愛くて堪らねぇ。
元気なら抱っこしてその真っ赤なほっぺたにキスして・・・いや、つくしがいないなら本気でキスしてもいいけどな、なんて子供相手に浮気心にも似た感覚が湧いて可笑しくなる。


「で、陽葵・・・何を持ってるんだ?」

「これでちゅか?これは・・・父ちゃまがしゅきなものでしゅ。おそばにあったらよろこぶものでしゅよ」

「俺が好きなもの?」

「あい!そうでしゅ。父ちゃまがいちばんしゅきなものでしゅ!」


タッタッタッと軽快に走ってベッドの横に来ようとして、あと3歩ぐらいで辿り着くときにドタッ!と転けた。
驚いてベッドから飛び降りて、一瞬クラッとしたけどそんな事言ってられない、陽葵を抱き上げたらその小さな身体の下から潰れた銀木犀の一枝が出てきた。

「ふぇ・・・おはな、おはなが・・・」
「ん?これは銀木犀だな。東の庭にあったヤツか?」

「しょのおはな、ひまがとったのに・・・ふぇっ、ふぇっ・・・うわあぁーん!!」
「・・・泣くな、陽葵。ほんの少し花が落ちただけだ。まだ枝についてる花はいい香りを届けてくれるぞ?」

「ひくっ、ひっ・・・く、ほ、んとでしゅか?」
「あぁ、ホントだ。花器に入れないとな・・・一緒に行こうか」


熱で身体がふらふらするけど小さな陽葵を抱えるぐらいはどうって事ねぇ。
むしろ何だか得した気分で楽しいぐらいだ・・・なんて蹌踉けながら少し離れた和室まで一輪挿しを取りに行って、陽葵に持たせて部屋に帰った。

自室のミニキッチンで水を入れてさっきの銀木犀をそれに挿す・・・それをベッドの近くの机の上に置いた。


「うわぁっ、ひま、これをしたかったでちゅ!でも、おはなを入れるものがわかんなかったでしゅ・・・」

「ははっ、そうか。今日はみんな忙しいから誰も相手をしてくれなかったんだな?」

「あい!おにわのおじちゃんも今日はいそがしいでしゅから」


お庭のおじちゃん・・・あぁ、庭師の前田さんね。
陽葵が毎日庭で遊んでるときに相手をしてくれて、花のことを教えてるってつくしが言ってたっけ?


「父ちゃま、くるちいでしゅか?」

「ん?はは、大丈夫だ・・・陽葵の顔を見たからな」

「ふふふ、またおねんねしましゅか?」

「あぁ・・・もう少しだけな・・・」

「今度はここにおはながあるから大丈夫でしゅ。父ちゃま、ひとりじゃないでしゅよ?」


「・・・ん?そうか?」


陽葵の可愛い声は子守唄みたいに俺をまた眠りに誘う・・・そこで宝物が笑っているのに睡魔に勝てなくて俺は目を閉じた。

でも、なんで1人じゃないんだ?
銀木犀があったら・・・なんでそれがあったら大丈夫なんだ?

その木に「風邪に利く」なんて効能があったか?


でも銀木犀の香りがほんのり漂う部屋で、俺は遠い昔の夢を見た。



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秋の総ちゃんのSSです♥
ほんわかしていただけると嬉しいです・・・。
偶数日が予定です。
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2018/10/10 (Wed) 11:23 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/10 (Wed) 13:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

私は銀木犀が好きでして・・・実はお隣さんにあるんです。
香りは近くまで行かないと香りませんが金木犀に似た感じです。

実家には金木犀がありまして昨日行ったら満開でした。
なので、もう少し後で公開しようと思ったけど、時期が遅れそうだったので早めてしまった(笑)


オカルトでイメージがガタ落ちしただろうから(笑)頑張って可愛くしてみました!
今回は秋のSS、チビちゃんシリーズで攻めてみようかと思っています。
総ちゃんの後は類君、あきら君まで書けたらいいなぁ、なんて。


隣の・・・(笑)

誰も予想しなかったラスト前のお別れ。
怒られるだろうなぁ、と思いながら打ち込みました。

ホント、ごめんなさい💦

2018/10/10 (Wed) 17:09 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/10 (Wed) 19:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

ほほほ、私にしては可愛らしいでしょ?(笑)
実はこういうものも書こうと思えば書けるアピールでございます(笑)

ってか、長編しか書けないのに3話で終わるSSとか超難しいっ!!
久しぶりにチャレンジしたら3話に10日もかかってしまった。

何でかしらねぇ・・・?


え?その人は絶対に出てきませんよ。
S嬢と同じ位置にいますので記憶から抹消しています。(酷い言い方)

優紀ちゃんならまだしも無理無理っ!!


今回は秋のチビちゃんシリーズにしたいのですがあきら君のところに子供がいないので考え中。
どんな名前がいいかなぁ・・・?
(ってか、あきら君の話が書けるかどうかも今の所不明だけど・笑)


2018/10/10 (Wed) 20:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ミキッp様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

それはそれは・・・大変ですよね。
うちもそうなんですが、私では嫌だというので義姉たちが色々としてくれています。
どうぞ休めるときには休んで、頑張りすぎないようにしてくださいね。

このお話で少しでもほんわかしていただけたら嬉しいです。
陽葵ちゃんは後編に再び登場♥お楽しみに~!


類君のお話・・・最後になってこんな展開、すみませんね💦
これもハピエン前のスパイスだと思っていただけたら嬉しいです。

私もお待ちしてますよ~♥
宜しくお願いします。


2018/10/10 (Wed) 20:19 | EDIT | REPLY |   

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