FC2ブログ

plumeria

plumeria

つくしと出会ったのは俺が高校2年・・・英徳に一般庶民のつくしが入学してきた時だった。

些細な事から司とつくしが喧嘩をし始め、それがいつしか恋に変わり、俺達を巻き込んでの大騒動が始まり・・・すげぇ勢いで燃え上がった恋は大雨の日に終わりを迎えた。
長かったようで短かったあいつらの恋は、そのあとゆっくりと友達の域に戻っていった。


この頃から俺は無意味な夜遊びを止めた。
言い寄ってくる女達の腕を取ることも、送られてくる魅惑的な視線も何もかもが鬱陶しくて堪らなくなった。


理由なんて簡単・・・俺がつくしに恋をしていたから。


あいつが司を追い求めて泣きながら突っ走っていた頃・・・類やあきらと同様、俺もつくしに恋心を抱いて苦々しくそれを見ていた。

終わった恋にあいつが落ち込んでいた時、あきらは気が利くから何かと世話を焼いてストレートにつくしに想いを伝えるし、類は何にも言わないけどいつも真横にいてつくしの心に寄り添ってた。

俺はそんな2人みたいに素直になれなくてつくしをからかってばかり。
わざと怒らせて喧嘩をふっかけたり、たまには無視して近寄らなかったり・・・それでも遠くからつくしを見守っていた。


そんなある日、ボケッとしていたつくしを茶に誘ってみた。


*


「・・・今、なんて言った?」
「だから!そんなにボケッとするんなら茶でも点ててやるからうちに来いっつったんだよ!」

「・・・なんでよ。ボケッとしてるから抹茶?苦くて目が覚めるから?」
「アホか!茶道を馬鹿にすんな!・・・牧野が嫌なら別にいいけどよ」


「・・・ううん。せっかくだから行く」

俺が誘ってこんなに仏頂面になる女なんか見たことがない。
誰もが泣いて喜んで俺の腕を取ったのに、つくしは腕を取るどころか1メートル以内には近寄らないと言って距離をあけて歩きやがった。

誰が近づいただけで妊娠だ?そんな事あるわけがないだろう!って怒鳴りたかったけど、口をへの字に曲げて眉に皺寄せて斜め後ろを歩くから何も言えない。


「その顔、どーにか出来ねぇのかよ。俺が悪いことしたみてぇじゃね?」

「べっ、別にそういう意味じゃないけど気を許したらダメだって思うんだもん。英徳一の危険人物だから」
「アホか!!俺にだって選ぶ権利があるっつーの!」

「見境ないクセに・・・」


西門に着いて「こっち・・・」と正面玄関から母屋の方に向かおうとしたけど、それまでうちに入ったことがないつくしはデカい目を余計デカくして、それよりも更に口をデカくして玄関の上り框で棒立ちになった。

「何してんだよ、こっちだって。そこでぼーっとすんな」
「・・・ここ、西門さんの家?それとも何かの博物館?」

「馬鹿言ってんじゃねぇよ。俺んち!司の家だって入ったんだろ?今更驚くなっての」
「・・・いや、雰囲気がまるで違うから」


当たり前!うちは築180年の純和風。
重要文化財並みの石庭付き日本庭園で敷地だけは1番なんだから。知らずに入れば迷子間違いなしの迷宮みたいな屋敷だからな。
しかも総平屋造りで何棟も渡り廊下で繋がってるから普通の人間が初めて来た日には大抵こいつと同じ顔になる。

そんな牧野を連れて奥の自分用の茶室に行こうとしたらつくしがピタッと足を止めた。


「どうした?何かあったか?」
「・・・なんかいい匂いがする。何だっけ・・・これ」

「匂い?あぁ・・・金木犀じゃね?風の向きで本邸にまで香りが来てんだな」
「金木犀?へぇ、いい匂いだよね!なんか和んじゃうね・・・」


そんな事を言うもんだから茶を点てようと思ったのに、先に裏庭の方に連れて行った。

そこには茶花用に沢山の草花や花木が植えられてて、金木犀はその中でも端の方に植えられていた。成長すると5メートルを超えるぐらいになるが花が付きすぎるのも問題があるって事で3メートルぐらいに剪定されていた。

今は10月で満開・・・側に行くと噎せ返るような甘い匂いが漂っていた。


「うわぁっ・・・ホントにいい匂いだね。こんな所で咲いてるのに向こうまで匂うなんて。お部屋に飾りたくならない?」
「これは切り取って部屋に持って入らねぇ花なんだよ。匂いがキツすぎるから」

「そうなの?少しなら良さそうなのに」

「茶道には香りの強い花は禁花って言って使えねぇんだ。せっかくの茶の香りを邪魔するだろ?でも、この季節の代表花だから、季節を楽しむって意味でここには植えられてるだけだ。牧野が教えてくれたから今年もちゃんと匂いを楽しめて良かったってことだな」

「・・・そ、そお?」


何故か照れ臭そうに金木犀を見上げて、手が届くところの花に近づいてクンクンと匂いを嗅いでいた。



「俺はどっちかって言うと・・・あいつの方が好きだな。香りは少し控えめだけど白い方が高貴な気がしてさ」
「・・・白?」

「見てみな?少し向こうにあるだろ?白い花・・・銀木犀だ」

「銀木犀?」


つくしに指さしてやったらそっちにも足を踏み入れて今度は銀木犀の下に行った。
ここでは金木犀のような強烈な匂いはしない。花に近づかないとこいつの香りは届かないから・・・そう言うと1番下で咲いてる銀木犀の花に近づいて同じようにクンクンしてやがる。


「ホントだ・・・こっちのが優しい香りだね。すごく落ち着く・・・」

「だろ?実はあの金木犀の方が銀木犀の変種なんだ。昔、中国ではこの銀木犀を酒に入れて飲んで自分に甘い香りを付けてたって話もあるし、それで好きなヤツの気を引こうとしたことから花言葉の中に『初恋』ってのがあるんだぜ」

「初恋?」

「そう。部屋に持って入るならこっちにするな。惚れた女のことを考えながら・・・なんてロマンチストじゃね?」

「・・・馬鹿じゃないの?本気で好きになることあるの?」

今度は怒ったような顔して俺とは反対側に顔を向けた。
マジ、ムカつく・・・この俺に本気がないような言い方しやがって!


「・・・全部が嘘っぱちな訳ねぇだろ。本気で惚れた相手には茶に関する事もだけど、俺が教えられたことを同じように伝えたいし、俺が好きなものもそいつには教えてやる。この家の裏側も見せてやる・・・何処になにが咲いてるか、とかな」

「ふぅん、そんなもの?」
「くくっ、まぁな」



この後つくしに茶を点ててやって少し作法を教えてやると、足が痺れただの苦かっただの散々文句を言われた。
でも茶は全部飲み干して「また飲ませてね」・・・なんて横を向いた可愛くない顔で言っていた。

帰り際、つくしが裏庭に目をやるから「一枝やろうか?」って言うと嬉しそうに頷いた。



つくしが欲しいと強請ったのは「銀木犀」の方だったっけ。




c636233cef7d87344275a9fbba6c3488_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/12 (Fri) 11:14 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/12 (Fri) 13:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

金さん、銀さん(笑)
そうね、何となく縁起が良さそうですね。

総ちゃんの初恋?さて・・・誰だろう?(笑)
この前さとぴょん様が花言葉とか書いたから「あれ?もうその部分出したっけ?」って調べちゃった(笑)

初恋の他に「あなたの気を惹きたい」って言うのもあるらしいですよ。
何となくエロっぽくないですか?(笑)

私はどうしても金木犀ってきくとトイレを想像しちゃうわ~(笑)

2018/10/12 (Fri) 16:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは。

沈丁花♥素敵ですよね~!
私はどっちかといえば沈丁花の香りの方が好きです。

1度庭で育てたのですが枯れてしまって・・・。

和のフレグランスって言うのを使ってるんですが、金木犀と沈丁花、両方持っています。
リラックス効果があるんですよね~。お話に煮詰まったらよく付けてます。

後はサンダルウッド。総ちゃんが使ってるのはサンダルウッドに何かをブレンドした特注品らしいのですが流石に同じものはないので純粋に白檀の香りを付けてます。
いわゆるお線香の香りですね(笑)

でも和みます・・・。

ちなみに類君ので柑橘系のフレグランスも持っています。
たまにごちゃごちゃになって臭くなる・・・(笑)

まぁ、自然の香りに勝るものはないですけどね。
後編には再び陽葵ちゃんが登場です♥お楽しみに~。

2018/10/12 (Fri) 16:22 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply