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「パ~パ!たいへんでしゅ!玲那がふいてあげるから泣いちゃダメ!」
「パパ、目にゴミが入ったの?それとも虫が入っちゃった?」

「えっ?あはは!虫は入んないでしょ!」


玲那が俺の膝の上によじ登ってきて、そのまま顔に手を伸ばしてくる。俺の涙を拭き取ろうとしてるみたいだけど小さな手を容赦なく振り回すからちょっと怖い。
むしろ可笑しくなって笑ったら「あら?とまったでしゅか?」って言って嬉しそうに手を引っ込めてくれた。

ちょっと湿ってる温かい手にキスしたら「きゃははは!くしゅぐったい!」って・・・ヤバい、また涙が出そうだ。

玲音は「パパ、寒かったんでしょ?」って背中から抱きついてくる。
もう随分重たいんだから首が苦しいのに、それでも「降りてよ」なんて言えない。俺の服を握り締めて身体をくっつける玲音が可愛くて、自分が出来なかった事をさせてやる。

いずれ君の肩にはこれより「重たいもの」がのし掛かる・・・その時に心の支えとなる「思い出」を沢山作ってやりたいからね。



そのうち玲那は手をグーにして自分の目をゴシゴシして、疲れたのかそのまま俺の胸に中に踞った。

玲音は「ぼくも、ぼくも!」って玲那の隣に来ようとするけど2人が乗れるほど俺の膝の上は広くない。
だから2人を抱えて落ち葉の上に寝っ転がり、右に玲音、左に玲那で両脇に抱え込んだ。

あはっ、これも長さ違いの「川の字」ってヤツ?


小さな身体がモゾモゾ両側で動く・・・くすぐったくて可笑しくて、でもすごく温かくてほんわかしてくる。

薄く目を開けたら薄くなった空の色。
でも、綺麗に晴れ渡ってて色付いた葉っぱが風邪に揺られて数枚落ちてきて・・・。


そのうち俺も眠たくなって目を閉じた。
そして・・・遠い日の秋の夢を見た。



***



「北公園で秋桜が満開なんだって!花沢類、今度の日曜日、一緒に見に行かない?」


そう言われたのは数年前の秋の初め。
いつ、自分の想いを牧野に伝えようかと悩んでいた頃だった。

伝えてしまえば何処かに消えてしまいそうな気がしたり、黙っていれば友達のままこうして一緒に歩けると思ったり・・・だけどやっぱりこの腕の中に抱き締めたかったり。

溢れ出てしまいそうな想いを抱えて毎日隣にいた学生時代。


「・・・いいけど。俺の車でいいの?」
「うん、勿論。私運転できないもん」

「・・・あんた、前に酔ったじゃん」
「そうだっけ?花沢類、少しは上達したでしょ?」

「うん・・・じゃあ、日曜日ね」
「お天気、晴れるといいねぇ!秋桜畑って綺麗だろうなぁ!」


スマホで確認したら今度の日曜日・・・曇りのち雨。



そして日曜日、予報通り薄曇りの天気で肌寒かった。
それなのに待ち合わせ場所に車で迎えに行ったら、薄いセーター1枚でミニスカートにスニーカーの牧野が立ってて、手を擦り合わせて小刻みに足を動かしてる。

俺の車を見つけたら嬉しそうに手を振りながら寄ってきて、運転席からドアを開けたら助手席に飛び込んで来た。


「あんた、なんでそんなに薄着なの?風邪引くよ?」

「あはは!だってぇ、まだ冬じゃないんだもん。コートなんて出してないし、ブーツだって持ってないし。大丈夫!私の自慢は身体が丈夫ってことだけだから」

「・・・そんなこと言って去年も大風邪引いて熱出してるよ」
「そうだっけ?ホントによく覚えてるねぇ、昔のこと!」

昔のことを覚えてるんじゃないよ。
あんたのことだから覚えてるんだよ。


車の中じゃフンフン鼻歌なんて歌って楽しそう。
殆どの会話は牧野のお喋りで俺は相槌だけ・・・よくそこまで休みなく喋れるよね?って感心する。
「聞いてる?花沢類!」って何回言われただろう。

ちゃんと聞いてるよ。話の中身はわかんないけどあんたの声は聞いてるよ、そう言ったら怒られたっけ。


1時間ぐらいで牧野の言ってた北公園ってところに着いて、車を降り秋桜畑を見に行った。
そこにはピンクや赤や白、オレンジの秋桜が満開で沢山の人が訪れていた。


「うわあっ!花沢類、見て見て、凄く綺麗だねぇ!私、こんなに咲いてる秋桜なんて初めて!写真撮らなきゃ!」
「うん、凄いね。結構広いんだ・・・牧野、足もと気をつけなよ」

「うん!靴が汚れたら花沢類の車が汚れちゃうもんね!」
「・・・そんなこと言ってないよ。転けたらいけないからだろ?」

「・・・はーい」



自然のままの遊歩道を歩いていたら数人の女性と擦れ違い、ひそひそと何かを言ってるのが聞こえた。
牧野はその度に少しだけ足が止まって、すぐにまた歩き出す。

知り合いだっけ?って振り向くけど全然見たことない人・・・まぁ、俺は他人を覚えるなんて事をしないから会ったことがあるとしてもわからないんだけど。

「・・・ねぇ、・・・だよね?」「まさか!だってあの子さ・・・」って小さな声は何度か聞いたけどそんなことも気にしていなかった。
俺の目は牧野しか見てないし、だんだん多くなる人混みに紛れてしまいそうで焦ったりして。

こんな時、手を繋がなきゃ迷子になるんじゃないの?って思ったけど牧野は何故かどんどん先に行ってしまう。


「そんなに急いでどうすんの?もう少しゆっくり歩きなよ」
「だって綺麗なんだもん!早く向こうまで行きたいから花沢類はゆっくりでいいよ~!」

「・・・それって2人で来る意味あるの?牧野ってば!」
「先に行ってるね~!」


そんなに走ったらミニスカートだからヤバいって!
ひらひら翻るスカートにドキドキしながら牧野を追いかけた。


しばらくしたら少しだけ広い通路で牧野は立ち止まってた。
その視線の先は仲良さそうな2人連れ・・・しかもさりげなくコーディネイトされた温かそうな服装を少し寂しそうに見ていた。

「どうしたの?走ったりするから疲れたんでしょ?」
「このぐらいで疲れたりしないもん。何でもない・・・」

「寒いんじゃないの?そんな薄着だから」
「寒くないもん。花沢類の意地悪!」

「意地悪?なんでそんなこと言うのさ。俺、なにもしてないよね?」
「だって・・・」



また少し俺の前をズンズン歩いて行く。
今度はさっきと違って後ろ姿が怒ってる・・・?なにが起きたんだろうって不思議だった。

ここに来たいって言ったのは牧野で、時間も日にちも牧野が決めて、昨日なんかワクワクしてたじゃない?それなのに来たら怒っちゃうの?
やっぱり俺、なにかしたっけ・・・って考えたけど全然わかんない。


だから黙って牧野の後ろを歩いてた。
秋桜なんて全然見ないで、カラフルな花の中を進む牧野だけを見ていた。



とうとう公園の1番奥まで来て、やっと牧野は足を止めた。

ここには誰もいなくて、秋桜なんて咲いてなくて目の前に銀杏の木があった。
黄色く色付いててすごく高く伸びた立派な木・・・その下で牧野は止まって、その眩しい黄金色を見上げてた。


「・・・だって、花沢類ったら格好いいんだもん」
「・・・は?」

「そんなコート着て靴だって綺麗だし、ジーンズなのにお洒落だし、そのセーターだって似合ってるし・・・だから色んな人が花沢類を見ていくんだもん。それなのに私なんて着古したセーターで子供みたいなミニスカートでスニーカーで・・・全然釣り合わないんだもん。わかってたけどイヤんなっちゃう・・・来なきゃよかった!」


急に銀杏の木に向かって叫んだ言葉・・・・・・くすっ、なんだ、そんなことだったの?

だから俺から逃げるみたいに先に先にって進んだの?
ホントに・・・馬鹿だね。


サァーッと冷たい秋風が吹いて、牧野が少し肩を竦めた。
だから俺はそっと真後ろまで近づいて、自分のコートの中に牧野を入れた。


「うわっ・・・いいよぉ!そんな事しなくても!そんなつもりで言ったんじゃないもん!」

「いいから。こうしてたら子供っぽい牧野が隠れちゃうでしょ・・・ね?」
「やだやだ!誰かに見られちゃうって・・・恥ずかしいよぉ!」


見てるのは銀杏の木だけだよ。
そしてきっと・・・知らん顔してくれるよ。




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Comments 4

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2018/10/18 (Thu) 20:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんばんは

meimei様 こんばんは。

私も好きですよ♥
近くにこんな公園があるんです~!子供を連れてよく行きました。

そこではお花を切り取っていいスペースがあって、好きなだけ持って帰っていいんです。
でも確かに長持ちはしませんね。

秋桜はやっぱり風に揺れてるのが似合います。


ふふふ、明後日ラストです。お楽しみに♥

2018/10/18 (Thu) 22:31 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/19 (Fri) 08:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

ありましたねぇ!私もびっくりした!(笑)
あの時はもうお話を書いていたので「あれ?このシーン💦」って思いましたよ。


ただあれを見て思った事。

そうか・・・この時期はまだコートを着ないのか(笑)
コートって真冬か?って笑いましたが・・・もう訂正出来なかった!

ふふふ、ほんわかしていただけたら嬉しいです♥

2018/10/19 (Fri) 11:54 | EDIT | REPLY |   

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