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あきらの家で数日間、何か情報がないかとパソコンだけを相手にして過ごしていた。

もう何日こんな事をして時間を潰したかわからない・・・イライラしながらキーボードを乱暴に叩きつける日もあれば、何もかもが嫌になってベッドに潜り込むこともあった。


地下では相変わらず美作のシステム作業員が交代制で24時間モニターを見続けている。
牧野が西日本にいる可能性が高いからって小さな地方空港の降機者の中から探していたり、不動産の売買や賃貸の契約を調べたり、ホテル・旅館の宿泊者を調べたり・・・あらゆる手を尽くしてくれていた。

「花沢様、我々の出来る範囲のことを懸命に調べております。ご心配はわかりますがお部屋でお待ちください。顔色が随分と悪いようですよ」

「・・・すまない。頼むね」


こんな俺がジッとここで見ていたら催促されているようで落ち着かないんだろう。
俺も中央にある大画面モニターの中で元気よく笑っている牧野の顔を見るのは・・・確かに辛かった。


大学からも出席を促す連絡は何度も入り、これ以上休めば進級にも影響が出るとまで言われたが足は向かなかった。

教授からはメッセージで『マイナス金利の発生メカニズムと金融市場への影響について、英語での論文提出を』と、来たがそんなものは1度見ただけでさっさと消した。

正直・・・そんなことはどうでもよかった。
花沢が許さないんだろうけどこのまま退学になっても構わない・・・そんな気分で大学のことなんて考えもしなかった。




そんなある日、母さんから連絡が入った。
すぐに戻ってくるようにとのことだけで内容は言われなかったけど、その声は心なしか明るかった。

牧野の事で何かがわかったのかも・・・そう思って部屋を飛び出し駐車場に向かおうとしたら、地下から上がってきたあきらに呼び止められた。

「どうした?類、何かあったのか?」
「あきら!たった今、母さんからすぐに来いって連絡があった。何かわかったのかもしれないから自宅に戻るよ。ごめん、色々ありがと!」

「そうか!実はこっちも今動きがあったんだ」

「・・・え?」


あきらがニヤッと笑って髪を掻き上げた。
急いで側まで駆け寄ると手には1枚のメモ・・・それには名護市の住所が書かれていた。


「名護市・・・って沖縄だよね?牧野、沖縄にいるの?」

「それはまだ確定してないけど、これは名護市にある携帯の基地局住所。昨日極僅かな時間だけどここの基地局が牧野のスマホの電波をキャッチしてるんだ。その情報をたった今仕入れたからお前に持って行こうとしたところだ」

「ホントに?!」

「あぁ、監視カメラの調査よりもこいつに重点を置いて探りを入れてたからな。ホントに短時間だからお前からの連絡を恐れて電源入れてないのかもしれない。それか花沢に電話の使用を極力禁止されてるか・・・だろうな」

スマホの電源を入れていると、一定時間ごとに弱い電波を発信して付近の基地局に対し自分の端末の情報を送信している。
基地局の位置情報 の精度は都市部で半径500メートル前後、田舎に行くと最大で十数キロメートル・・・牧野のいる場所がどんなところかわからないけど基地局からそんなには離れてないはずだ。


「お袋さんの情報と照らし合わせて大至急行ってやれ。あの子も絶対に待ってるはずだから」

「ん、そうするつもり。ありがとう、あきら!」


あきらからメモを受け取るとハイタッチだけしてまた駐車場まで急いで走った。



*************



「いらっしゃいませ、2名様ですか?」

喫茶店でのバイト・・・やっぱりこんな南の島では遠くから遊びに来ている若いカップルは多かった。

可愛らしい彼女を連れてニコニコしてる男の人や、彼氏の腕にしがみついて離れない彼女。
高校生みたいな歳の子も2人でアイスなんて食べにくるし、社会人の恋人は一緒に休暇を取っているのか、平日なのにお揃いの服で手を繋いでいたり。

「ねぇ、今度の日曜に映画行きたい!」
「日曜?何にもなかったから連れてってやるよ。午後から行って夕方飯食って、そのあと飲みに行こうか?」

「新しいお店が出来たって言ってたとこ?うん!嬉しいなぁ、楽しみだね!」


いいなぁ・・・デートの約束してるよ。

今だって一緒にいるんだからそれでいいじゃん。それだけで羨ましいのに私の前でデートの約束なんてしなくてもいいのに・・・なんて考えて顔が暗くなる。
注文されたチョコレートパフェのサクランボ、1つ減らしてやろうかしら、なんて変な所で意地悪しても仲のいい2人には痛くも何ともないのにね。



「いらっしゃいませ。4名様ですか?」

今度入ってきたのは女の子の4人組みだった。
もしかしたら東京の人かな?って思うような格好・・・ブランド物ばかりを身につけた彼女たちは何処かで見たような雰囲気だなって思いながらお水を出した。

「お決まりになりましたら呼んで下さいね」

そう言ってテーブルを離れたら背中側から聞こえてきた彼女たちの言葉に凍り付いた。


「やだぁ!美作さんを銀座で見掛けたの?本物なんでしょうね?!」


美作さん?あの・・・あの美作さんのこと?
ドキンドキンと心臓が早くなってゴクリと唾を飲み込んだ。

振り向くことも出来ずに1度は止めた足を前に出してカウンターまで戻ると、知らん顔して洗い物を始めたけど、耳は彼女たちの会話を聞こうと必死・・・聞いちゃいけないって思うのに意識は完全に4人のテーブルに向かった。

「そうなの!もう半月も前だけどホントに偶然よ!間違いないと思うわ。ほら、あの人も一緒にいたもん」

あの人?まさか・・・類、じゃないよね?


「お茶の先生でしょ?西門総二郎!あの人、ホントにミステリアスだよね~!見てるだけでゾクゾクしない?」
「そうそう!英徳の学生っていいよねぇ、毎日彼等を見ることが出来るんだよ?」

「自分の勉強なんてしないで1日中追っかけそう!」
「そんな子もいるわよ。でもほら、セレブ校だから実は御曹司なんて見慣れてるんじゃない?羨ましいなぁ・・・」

「あっはは!入れるもんなら入ったわよ。お金も頭もないもん!」
「英徳だもんねぇ!外にも格好いい人いるんでしょ?」


「いるよ、すっごく綺麗な人!その2人の友達で・・・」


その時、手が滑って硝子のコップを床に落としてガシャーン!と大きな音を立ててしまった!
店内は一瞬シーンとなって彼女たちの会話も止まった。店長さんも慌てて飛んで来て「怪我してない?」と心配してくれて、私は真っ赤になりながらお客さん達に謝った。

「お、お騒がせしました!申し訳ございません!」


割れた硝子を片付けてからカウンターを飛び出した。


さっきあの人達が言いかけたのはきっと類の事だ。美作さんと西門さんと友達なのは類だもん・・・。


こんな所に逃げたのに、どうして彼等の名前を聞いてしまうんだろう。まるで芸能人並み・・・それだけ有名ってことだろうけど、逃げた私を責めるように追いかけてこなくてもいいじゃん。
そう思ってグッと手を握り締めたらチクッと指の先に痛みが走った。

「あっ・・・痛っ」

指を広げたら右手の人差し指から血が・・・さっきの硝子の小さな破片が何処かに残っていたんだ。
それが刺さったのは指だったのに、痛むのは胸のずっとずっと奥だった。


私の心の中に住んでる類の悲鳴・・・そんな気がした。




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2018/10/21 (Sun) 00:33 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/21 (Sun) 11:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

書いてて思うんですけど・・・あきら君ち、怖いですよね(笑)
携帯微弱電波の追跡って、実際されたらたまったもんじゃないですけど。

妄想の怖さですよね・・・まぁF4そのものがあり得ないのでいいのかしら(笑)

類ママ、何を見つけたんでしょうか?
お楽しみにっ!


昨日食べた水餃子で何故か本日胃もたれ・・・💦

2018/10/21 (Sun) 15:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

そうですね・・・でも、近づいてきてますよ♥
ふふふ、焦らしちゃってすみません。もうすぐなのでお待ち下さいね!


え?総ちゃん・・・盛り上がってるって・・・そっち?ははは!
まぁ、総ちゃんですからね💦これがないと怒られるんですよ(誰に?)

長いことなかったもんですから最後になって爆発してます(笑)

ごめんなさーい!!

2018/10/21 (Sun) 15:48 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/21 (Sun) 16:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。


あっはは!気が付いたんだ!!
ごめんなさい💦爆笑っ!

だってぇ・・・本当なんだもん(笑)プレッシャー半端ないんだもん!

言ってるでしょ?プロに頼んで下さいって♥
息絶える前にそうして下さいね!


ちなみに私は・・・いまだにお腹の調子が悪いです・・・なんでかしらね。

2018/10/21 (Sun) 18:00 | EDIT | REPLY |   

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