FC2ブログ

plumeria

plumeria

次の日・・・大学の講義の空き時間、1人で2階の渡り廊下の真ん中にある日当たりのいい休憩場所で窓の外を見ていた。


「何だかもう慣れたなぁ、この感覚・・・この景色も見慣れたらなかなか長閑でいいかもねぇ・・・」


親しい友達は作れないけどちょっとした会話ができる友人も数人出来たし、学食も美味しいと感じられるほどになった。
ぽっかり空いた穴を埋められるほどではないけど、こうやって少しずつ前に進んで行くしかないんだなぁって中庭を眺めながらぼーっとしていた。


そこに1人の男子学生がいるのが見えた。
着古したジーンズに色褪せたシャツ・・・どう見ても私と同じぐらい生活に困ってるんじゃないの?って人。

とっても穏やかな顔で何かの本を読んでる・・・類には全然似てないんだけど、1人でいるもんだから何となく彼と重なって気になってしまった。


そこに駆け寄ってきたのは外人の女の子。
こっちはまるでアリスさんみたいなお嬢様で着ているものも可愛らしかったし、よく見えないけど持ってるバッグも安物じゃなさそう・・・スニーカーだらけの大学生の中で彼女はきちんとした靴を履いてるようにも見えた。

何処かで見たような・・・って少し考えたらピン!ときた。
あぁ、この雰囲気は英徳のお嬢様達だ。いつもうんざりして見ていたあのお嬢様達に見た目の感じが似てるんだ!

「うわっ・・・何だか似合わない2人。恋人?いや・・・どうだろ、まさかね~」


息を切らして走ってきた彼女は大学のド真ん中なのに男子学生に飛びついて頬にキスして、男の子の方が慌てて引き離してる。
でもすぐに隣に座らせてお喋りが始まって・・・何だかとっても仲が良さそうだった。


素直にいいなぁって思った。
羨ましいなぁ・・・私も最近まであんな風に隣に座ってたのになぁって・・・。

何を話してるんだろう?友達・・・いや、やっぱり恋人に見えるよね?気がつかないうちに姿勢が前のめりになって、その2人の事を眺めてしまっていた。




「何見てるの?牧野さん」

振り向いたら同じ学科を専攻している田代さんが不思議そうな顔して立っていた。

「うん、あのね、ほら、あそこ・・・外人の女の子がいるの。隣の男の子は彼氏なのかなぁって思って。えへへ、私、彼氏がいないもんだから羨ましくって見てたの」

誰もそんなこと聞いてないのに、如何にも恋人なんていませんって言ってるみたいな答え方して。
自分でも馬鹿だなって思いながら田代さんから視線を外して、また窓の外を見ていた。


「あぁ、クリスと聡君?ふふふ、仲がいいでしょ?恋人なんだよ。それもすっごい大恋愛なの」
「えっ!恋人なの?でも・・・」

似合わない2人だよ?って言いそうになって慌てて口を押さえた。
そんな失礼なこと・・・自分が言われ続けて散々嫌な目に遭ったのに、他人には簡単に使ってしまうなんて嫌な子だって恥ずかしくなった。


「・・・釣り合わないって思ったんでしょ?牧野さん、口に出さないなんて優しいんだね」

「・・・いや、そんなんじゃないけど」

「でも当ってるのよ。あの2人、古い言い方だけど身分違いなの。聡君は親を早くに亡くして施設で育った人でね、クリスはアメリカの大手企業の1人娘さん・・・見たら解るでしょ?」

「大手企業の・・・1人娘さん?」


田代さんは私の隣に座ってクスクス笑いながら同じように中庭を見下ろしていた。
そして「あの2人はこの大学で知らない人はいないわ」って・・・その大恋愛の話をしてくれた。


クリスさんは3年前の夏、家業のために両親が沖縄にしばらく滞在するからと、それに同行して来たらしい。そして偶然海の家でアルバイトをしていた聡さんと出会い恋に落ちた。

当然、クリスさんの両親は大反対ですぐに帰国させたけど、聡さんのことを忘れられない彼女の方が家出をして沖縄に戻ってきた。聡さんは「自分では幸せに出来ないから帰れ」って言ったらしいけど、クリスさんは慣れないアルバイトをしながら彼の傍で暮らし続けたんだって。


アメリカから何度も迎えの人間が来ては連れ戻され、その度にクリスさんは「聡さんとじゃなきゃ帰らない」と言い張り、どうしてもと言うなら「自分は命を絶つ」とまで言い出した。
それには聡さんがクリスさんを叱り「自分が努力してクリスの親に認められるような人間になるから」と、コンピュータープログラマーの勉強をしているそうだ。

一流企業に入り、その中で功績を残し、時間はかかるだろうけど必ず迎えに行くからと・・・そんな約束をして1度はアメリカに帰ったクリスさんだけど、やっぱり恋しさから身体を壊してしまった。
そこまで想い合うのなら、とクリスさんの両親は彼女をここに移住させ、聡さんにはアメリカの企業の入社試験を受けるように言い渡した。

それに合格したなら2人の事を認めようと。



「だからね、聡君は今猛勉強なの。英語は完璧に出来なきゃいけないし、アメリカの企業からも特別扱いはしないって言われてるんだって。いつもああやって2人で勉強してるわよ。あんなに人を好きになれるって凄いことだと思うのよね。
クリスさん、もし聡君が試験に落ちたら自分の家の相続放棄する覚悟らしいわ」


あんなに人を好きになれるって凄いこと・・・

大好きな人のために頑張ること・・・その人がいるから頑張れる・・・


もしかしたら、私は間違えていたかもしれない。


「ありがとう!田代さん、教えてくれて!」
「はっ?!どうしたの?牧野さん・・・牧野さん?!」

私はスッと椅子から立ち上がって、急いで階段を駆け下り2人のところに向かった!



*************



朝になってホテルの部屋で珈琲を飲みながら考えた。

大学で会えなかった時のこと・・・もしかしたら俺を見かけた牧野の方が姿を隠すかもしれない。それなら住んでいるところを先に探そうと思った。


母さんが教えてくれた花沢の不動産関係の子会社。
確か九州・沖縄を管轄する所に送金があったって・・・それは間違いなく牧野の住むアパートに関する振り込みだ。

父さん、もしくは秘書が依頼するならそこの責任者・・・それならカマをかけて電話してみるか。


こんな演技はしたこともなかったけど上手くいけば住んでいるアパートの名前ぐらいは聞けるかもしれない。最悪俺だと正体をバラして吐かせてもいいし。
ここまできたらもう怖いものなんかない・・・俺はすぐに福岡にある支店に花沢社長秘書室の人間を装って、ホテルの電話を使い支店長を呼び出した。


『はい!お待たせ致しました。先日はどうもありがとうございました。支店長の矢部でございます!』

先日はありがとう?くすっ、もうここで白状してるのと同じだけど。


「・・・実は先日探してもらった沖縄の物件ですが、至急住んでいる人に会いに行かなくてはならなくなったんですよ。でも、うっかりして物件名を書いたメモをシュレッダーしてしてしまってね・・・悪いんだけど、教えてくれる?」

『・・・は?えっと名護のですよね?シーサイドハイツ・田中の・・・えっと、あなたは秘書室のどなたで?』


シーサイドハイツ・田中、そこまで聞いたら急いで電話を切った。
慣れないから途中から言葉が変になった・・・もしかしたらバレたかも?ま、いいか!


意外と簡単に話してくれた矢部支店長に感謝だ。
俺はすぐに「シーサイドハイツ・田中」を探すためにホテルを出た。




a82c040562cc4217d2388633ca97495b_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 5

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/24 (Wed) 06:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

あはは!焦らしてはいないんですが(笑)
これから書く再会シーンが1番初めに思いついたものなので変更出来ないんです💦

そうそう、つくしちゃんも今頃になって気がつくんですよ(遅いというか鈍いというか)

エンドまでもう少し・・・イライラしながらお待ちくださいませ(笑)

いつもコメントありがとうございます♥

2018/10/24 (Wed) 09:01 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/25 (Thu) 11:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

あっはは!元々この人達に演技なんて必要ないんですもんね。
どっちかって言うと「吐け!」って脅す方が多いような気がする・・・。

何気にこういう細かいところで笑いを取ろうとする姑息な私(笑)


可笑しいなぁ、シリアスなはずなのに(笑)

2018/10/25 (Thu) 17:49 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/30 (Tue) 13:44 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply