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急いで階段を駆け下りて中庭に向かった。
何処かに行かれたら話が出来ない・・・そう思って全速力で聡さんとクリスさんのところに向かったら、まだ同じ場所に座って本を読んでいた。

植木を飛び越えて、縁石に躓きながら、芝生の上を猛ダッシュ!
そうやって走り寄ってきた私に気が付いて2人ともびっくりしてる。私も目の前まで行ったけど、息が切れてすぐに話が出来なかった。


「はぁ、はぁ・・・あの、はぁ・・・ちょっと待ってくださいね、お話が・・・はぁはぁ、お話がしたくて・・・」

「え?俺達に?」
「はい、そう!あなた達に・・・はぁ、聞きたいことがあるんです。ごめんなさい・・・はぁ、落ち着いた!」


やっと息が整って2人の前の芝生に座った。

キョトンとして私の事を見てるけど無理はない。いきなり見ず知らずの人間がすごい勢いで走ってきて、話があるだなんて言うんだもん、そりゃ驚くよね。
自分で自分の行動に頷いてる間も、2人はお互いに目を見合って不思議そうにしていた。


「それで・・・どんなこと?俺達にわかること?」

「あの、えっと・・・あ、私は1年の編入生で牧野つくしと言います。さっき2人の事を聞いたんです。それで・・・どうしても知りたいことがあるんです」

クリスさんは日本語が少しはわかるんだろうけど早口になったら聞き取れないらしい。
聡さんが通訳していたからここからは英語で話すことにした。


「突然失礼なことを聞くんですが、クリスさん・・・あの、恋のために自分の家を捨てる覚悟があるって聞いたんです。それって・・・それって後悔しないんですか?大きな会社の1人娘さんでしょう?後継者、ですよね?」

「えぇ、そうね。私は確かに大きな会社の1人娘で後継者ってのになるのかしら。選ぶ相手はパパの跡を継げる人にしろって昔から言われているわ。でも、私が選んだのはこの人・・・ふふ、ちゃんと継げるのかしらね?サトシ」

「クリス・・・そんなこと言って。だから今は頑張ってるだろ?」


「でも、もしですよ?聡さんが認められなかったら・・・あっ!失礼なことを言ってごめんなさい!
万が一です、認められなかったら・・・それでも聡さんを選びますか?どれだけ苦労しても?どれだけ親から怒られても・・・もう2度と親と会えなくなったとしてもですか?」

何故こんな事を聞かれるんだろうって思っただろう。
それでも2人はニコニコ笑って答えてくれた。


「えぇ、多分そうするわ。たとえ親から追い出されても構わないわ。だって、サトシと別れたらもう一生誰とも恋なんてしないと思ったんだもの。そうなったら私、それこそ2度と笑えないわ。人生が楽しくなくて苦しいだけ・・・だから自分の選んだ人のところに行くって決めてるの。
そして両親には説得を続けるわ。それでもダメなら2人で暮らすの。でもね、私が笑っていたら両親はいつか許してくれると思うの。だから頑張れるわ」

「・・・俺もね、跡取りなんて全然自信はないんだけど、クリスを笑顔にすることは俺にしか出来ないって思ってる。それが彼女のご両親に対する1番の親孝行じゃないかなって思うことにしてる。
逃げ口上みたいに思われるかもしれないけど家や会社が全てじゃないって思うんだ。聞いてるかもしれないけど、俺は家族がいないからね・・・毎日笑える場所があるだけでどれだけ嬉しいかって誰よりも知ってるつもりなんだ」


「毎日笑える場所?・・・聡さんにとってはクリスさんの横って事ですか?」

「勿論そうだよ。クリスにとっては俺の横・・・つまり同じ場所だね」


心臓がドキドキする・・・2人の言葉は優しいのに私の心にグサグサくる。
涙が出そうになるのを堪えてたらクリスさんがそっとハンカチを差し出してくれた。それを受け取って目元に当てたら、堪えていたものが溢れだした。


「・・・もし、クリスさんのご両親が聡さんに嫌がらせしたらどうするんですか?」

「私が彼を守るわ。そしてサトシもきっと負けない・・・そう信じてるわ」

「聡さんと引き離されたらどうするんですか?1度は追いかけたでしょう?次は・・・次はどうするの?凄く遠いところだったら・・・」

「場所なんて関係ないわ。私はサトシを探してそこに行くわ。どんなことをしてもね」

「もし、何もかもなくなったら?・・・全部失ったらどうするんですか?」

「あら!彼が残るんならそれに勝てるものなんてないわ」




類・・・私はやっぱり間違えてたんだ。

私さえお父様の言うことを聞けば類は今まで通りの暮らしが送れるって思ったけど、ヴァイオリンを弾き続けられるって思ったけど、西門さん達友達がいれば寂しくないって思ったけど・・・そうじゃないんだ。

私がいなくなったら類は・・・!

止まらなくなった涙を拭いていたらクリスさんがそっと肩を抱き締めてくれた。


「何か苦しい恋をしてるのね?私もね・・・これまでに何度も泣いてきたわ。1度は彼とも別れて離れたし、そうならないと見つけられない未来や想いがあったの。だから大丈夫よ。心が彼を求めてるのなら迷わないで・・・彼も同じだったらきっとまた会えるわ」


心が彼を求めているのなら・・・類が私の事を想ってくれてるならまた会える?
またあの手を掴むことが出来る?

涙を拭ったら最高に輝いてるクリスさんの笑顔がすぐ近くに見えた。


「・・・ありがとうございました!私・・・私も彼のところに帰ります!」

「・・・え?何のこと?彼のところ?」
「うふふ!わからないけど頑張って!恋はいつでもあなたの味方になってくれるわ」

「恋が味方?・・・あはは!そうですね、本当だわ!」


私はこの後にもまだ講義があるのに、2人にお礼を言ったらその足でアパートに向かった。



***************



『ホント?見つかったの?会えたの、類!』

「正確にはまだ会っていません。大学で、と思ったんですが父さんがどんな手を使うかわからないでしょう?もしかしたら俺の事がバレて大学側が牧野を隠すかもしれないし、待ち伏せても俺の姿を確認したら牧野が逃げるかもしれない。
どのくらい父さんが牧野に精神的圧力をかけたのかがわかりませんからね・・・それなら確実な方法を選びます」

『・・・なんか怖いわ、類ったら・・・』

「なんとでも。そのぐらい必死ですからね。ちゃんと会えたら連絡します」

電話の向こうで嬉しそうに笑う母さんの声がくすぐったい。こんなに優しい声をしてたんだって・・・機械を通してわかるだなんて皮肉なもんだなって俺も自然と口元が緩んでた。
多分、俺の声も同じように母さんに届いてるんだろうから。


「あぁ、母さん、ごめん・・・謝らなきゃいけなかった」

『あら、今度はなあに?』

「・・・英徳大学に先ほど電話をかけて退学の申し出をしました。家に連絡があるかもしれません。対応してもらえますか?」

『・・・わかったわ。それについては落ち着いてから相談しましょう。ふふっ、大学なんてどうにでもなるわよ、心配しないで』


母さんとの電話を切ってスマホをポケットに入れた。
潮の香りがする通りの向こう・・・「シーサイドハイツ・田中」で探せばそれはすぐに見付かった。

名前の通り海の近くの3階建て・・・如何にも南国って感じのパステルカラーの外壁に周りには生け垣があって可愛らしいアパートだ。

部屋番号なんて聞かなくてもわかった。3階の左から2番目、見慣れた服が干してあるから。
ここは普通のアパートだから外から見える所に干してもいいんだね。


くすっ・・・あんた、そういうの嬉しかっただろうね。
太陽が好きだったから。


まだ会えてもいないのに何故か嬉しくて、その部屋を見上げていた。
そして管理人を探して、ある事をした。


牧野・・・俺、やっとここまで来たよ。もう逃げられないからね?



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2018/10/25 (Thu) 00:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは🎵

ふふふ、やっとですね♥️
待っててくださいませ。

焦らしてごめんね♥️

2018/10/25 (Thu) 00:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/25 (Thu) 07:32 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/25 (Thu) 07:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様 おはようございます。

はい♥やっとこさでございます!
ふふふ、焦らしてごめんなさい♥

早かったですか?(笑)
いや、もうここまで書いて別れさせたらブーイングでしょう?(笑)

ラストシーンに拘ってしまってのでこんなことになりましたが・・・いよいよゴールテープ直前。
ははは、流石に疲れました。

残り数話ですが応援宜しくお願いします。

2018/10/25 (Thu) 09:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

そうですね♥いよいよですね。
お待たせ致しました。

類君にとっては大学なんてどうでもいいんですよ、きっと。
つくしちゃんがいなかったらもう行かないと思いますしね(笑)

ベランダ越しの「おいで」がもう出来ないかと思うと悲しいですが・・・。

ご希望の再会シーンかどうかはわかりませんがお楽しみに~♥

2018/10/25 (Thu) 09:30 | EDIT | REPLY |   

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