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10月末の東京の夜・・・初めて見る大都会のド真ん中で、私はお財布以外なにも持たずに呆然と立っていた。


なんなの?この人混みは!
こんな時間なのにどうしてこんなに明るいの?車のライトで眩しすぎ!おまけにビルが高すぎて見上げたら首が痛い。
それに五月蠅すぎる・・・何処からこの音楽が流れてるんだろう?
やたらとぶつかってくる人は謝りもしないし、殆どの人がスマホ画面に釘付けで無表情。おまけに小学生みたいな子までこんな時間にウロウロと!

好奇心の塊のようにも見えるけど、みんな自分以外には無関心にも見える・・・なんとなくそれに恐怖を感じた。


だから、そこから逃げるように光の少ない方に向かって歩いて行った。


「ハックション!!寒い~!東京ってやっぱり寒い~!どうしよ・・・もうここで寝ようかしら」

どこだか知らないけど緑が多い公園に来たら段ボールで作った囲いの中で寝てる人がいる。これがテレビで見たことある『ホームレス』って言う人達かしら?


チラッと覗いてみたらお爺さんが寝ていた。

あら?意外にも色んなものがある・・・ガスコンロにお鍋に食器・・・やかんにテーブルに座椅子まで!
へぇ・・・壁が段ボールで屋根がビニールシートってだけで中は空っぽじゃないのね?

その毛布に包まったお爺さんが私に気がついて薄ら目を開けた。


「あの~、お爺さん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「はぁ?なんだ、あんた・・・からかうんなら向こうに行ってくれ。目障りだよ・・・」

「えっと、からかってるんじゃなくて段ボールって何処かに置いてあるんですか?」
「・・・はぁ?あんた、何を言っとるんだ?」

「凄く困ってるんです。寝るところがなくて・・・お爺さん、余分に持ってないの?」


私が真面目に聞くとお爺さんはすぐそこの商店街で段ボールをタダでくれる店があるって教えてくれた。
「最近ではホームレスの反対運動ってので段ボールをくれない店もあるんだけどね」、なんて言ってたけど、商店街に入ったら本当に『必要な方はどうぞ』と紙に書かれて段ボールが積み重ねてあった。

その中から大きめなのを3つもらって、また公園に戻ってベンチの周りに置いた。
1つはベンチの前の地面に敷いて、2つは角っこを1箇所切り離して下に敷いたヤツで押さえて・・・なるほど!風よけになるから1日ぐらいならベンチを枕に寝られるかも・・・?



そしたらさっきのお爺さんが薄汚れたハーフケットを持ってきてくれた。
「一晩なら使いな・・・風邪引くぞ」、無愛想にそう言って私の肩にそれを掛けてくれた。

このお爺さん、なかなかいい人みたい。ちょっと匂いがするような気もするんだけど、有り難くそのハーフケットに包まって目を閉じた。



そして夢を見た。
飛び出してきた九州の田舎の・・・私がこんな所で寝る羽目になった出来事の夢だった。



**



「・・・は?今、なんて言ったの?お爺さま」

「だからな、つくし。そろそろ五十嵐家の浩司君とのことを本気で考えねばなるまいなぁ、と言うたんじゃよ。
延ばし延ばしにしておったが浩司君ももう28歳、お前は24歳だろう?あまり焦らすような歳でもないのだから次の春辺り、祝言を挙げようかと思ってるんだがどうじゃな?」

「お爺さま、そのお話でしたらお断りしてるでしょ?こんな田舎に住んでても世の中の流行くらい知ってます。今じゃそんな許嫁制度なんて何処の家庭でもしてないんですよ?自由恋愛が殆どだし、最悪ネットで恋人も選べるんでしょ?」


身体を壊して療養中のお爺さまがベッドの中でそんな事を言う。
痩せ細った腕を私の伸ばして頼み込むように言うけど、流石に私も過去に1度しか会ってない人との結婚なんて考えることも出来ない。

だから毎度知らんふり。
親代わりのお爺さまの看病はいくらでもしてあげるけど、その頼み事は聞けない。


「そんな事言わなくてもうちには進がいるでしょ?跡取りはいるんだから私に無理は言わないでよ、お爺さま」

「いやいや、確かに進はおるがあいつはちょっと頼りないでの・・・うちの会社にはつくしの頭脳が必要なのじゃよ。どうせ好きな男もおらんのじゃろう?浩司君は見た目もいい男じゃないかい?」

「頭脳・・・お爺さまは私本人より頭脳が欲しいだけですか?やれやれ、なんてはっきり言うんでしょうね!
好きな人ねぇ・・・好きな人ぐらい見つけますよ。まだ出会ってないだけです。その人が見つかったら五十嵐のお屋敷にお嫁に行かなくてもいいの?」

「はっはっは・・・無理じゃろうて。つくしはこの村しか知らんのだから探しようがないのぉ?」


その言い方にムカッとした・・・。
こんな村に私を閉じ込めてるのは誰よ!お爺さまとお父様とお母様でしょうが!

都会に出たいって言ったら大反対してこの家に閉じ込めたまま24年間も!
そう言うならいいわ・・・探しに行こうじゃないの!私の運命の相手・・・世界で1番素敵な恋を探すためにこの家を出てやる!


「本当に好きな人を見つけたら私をここから自由にしてくれる?跡継ぎは進って事で仕事からも解放してくれる?」

「つくしはこの儂を置いてはいかんよ。言われた通りに生きていけば幸せになれるんじゃから我儘を言うもんじゃなかろう?」

「幸せは自分で見つけるものだと思いますけど?でも、いいわ・・・我儘ついでにしばらく私に時間をくださいな」

「・・・無駄な事を。昔から頑固じゃなぁ、つくしは」


1番頑固なのはお爺さまだっつーの!
最後まで「そんな馬鹿なことはするまいて」と笑っていたけど、お爺さまの身体を拭いてあげながら頭の中ではすっごいイケメンと恋をしてる自分の姿を思い描いていた。

そして最後にお布団を交換したとき、「やるだけやってみるか?」なんてニヤニヤして言ったのを聞き逃さなかった。


「それではお爺さま、他の人が看病しても文句なんて言うんじゃありませんよ?それでは失礼します」

「楽しみな事じゃなぁ、はははは」


静かに襖を閉めて・・・私は猛スピードで自分の部屋に戻った。
そして小さな鞄にハンカチとティッシュ、それにお財布に部屋にあるだけ全部のお金を入れて、平然と廊下を歩いて屋敷の門をくぐった。


『恋を探しに行ってきます。探さないでね』


そんな置き手紙を自分の部屋の机に置いて、探されたら困るからスマホも置いて故郷、宮崎を出た。

どうやって都会に行けるのかがわからないから取り敢えず来た電車に乗って、途中から「東京」って書いてある電車に乗り換えて・・・ここまで来るのに2日もかかったわ。

あぁ、まだ電車に揺られてるみたい。
頭の中をガタンゴトン、ガタンゴトンと・・・海を見ながら山を見ながら途中で大きな街も見たけど何処だったかしら・・・。


ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・私、何処に何しに行くんだっけ?
ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・


ガタン!とベンチから頭が落っこちて目が覚めた。


「あれ、夢だった?私、もう東京に来てるんだっけ?いたたた・・・こんな所で寝たから身体が!・・・ん?この毛布なんだっけ?」

自分の周りにある段ボールを退けたら見たこともない公園の中・・・でも、ちょっと離れた茂みの中からお爺さんが顔を出して私に手招きしてくれた。
あぁ、思い出した!このハーフケット、あのお爺さんが貸してくれたんだった!


「おはようございます!これ、ありがとうございました。助かりました!」
「・・・ホントに寝たんだな。まぁ、いい・・・これでもお飲み。何も持っておらんのだろ?」

「あはは!身体1つですから!」

急いで返しに行ったら何故かコーヒーメーカーで煎れた珈琲をくれた。

侮れないのね、ホームレス・・・流石に紙コップだったけど、私は生まれて初めて公園で野宿して、知らない人から珈琲をもらった。




私は瀧野瀬つくし 24歳。

九州有数の企業、瀧野瀬コーポレーションの代表者、瀧野瀬孝三の1人娘、牧野千恵子の娘。本当は牧野つくしだけど、瀧野瀬家の養女になってるから瀧野瀬つくしに変わったらしい。

何故か小さい頃から頭だけはよくて小学生からお爺さまの仕事上の相談相手をしている。
パソコンに関してはプログラミングが出来るし、株にも手を出してる。それで瀧野瀬も儲かったらしいけど詳しいことは知らない・・・私はただパソコンの中で操作するだけだから。

それが故に変な男に騙されないようにと宮崎の山奥に閉じ込められて、お爺さまチョイスの許嫁にはこれまた大企業の五十嵐物産の御曹司、五十嵐浩司さんがいる。
ただし会ったのは10歳の時に1度きりで14年間音信不通・・・恋が芽生えるわけもない。


お爺さまの言葉に反発して宮崎を飛び出して2日目・・・私が彼と出会ってドキドキするまであと12時間と15分だった。




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2018/11/01 (Thu) 06:54 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/01 (Thu) 06:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様 おはようございます。

お嬢様(笑)
一応お嬢様なんでしょうかねぇ・・・でも、こんな感じです。

コメディ路線・・・ですね(笑)LOVE度あがるの遅いんじゃないかなぁ?
事件少なめの予定です。予定ね、予定。

何となく野宿させる辺り半分ぐらい事件ですけどね💦誰かが刺されるとかはないと思う・・・。


うちの亀ちゃんもまだ動きまくってます。
もう少し後に冬眠ですかねぇ?

今年の夏は意外と大人しかったんですが、暑すぎたから?10月初め頃が1番煩かったです。
バンバン叩くのよね、ケースの壁を・・・夜中までバンバンするから何度も叱ったけど言うこと聞かないですよね(笑)

2018/11/01 (Thu) 08:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

ふふふ、そうなんです。

恋がしたい世間知らずの田舎のお嬢さんと恋がよくわからない類君・・・ははは、どうなるんでしょうか。
そんな2人なので甘くなるには時間がかかりそうですね💦

のんびりと読んで下さいね。少々ややこしい部分があって申し訳ないですが。
いつもコメントありがとうございます♥

2018/11/01 (Thu) 08:47 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/01 (Thu) 11:06 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/01 (Thu) 14:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは。

あはは!お嬢様って言われればそうですがわんこ様のお好きなお嬢様かどうかは疑問ですが。
なんといっても野宿できるつくしちゃんですからね。

類君との恋の進展もどうでしょう・・・(笑)


ややこしい設定ですみません💦わかりにくかったですかね?
類君と五十嵐君は別人です・・・ごめんなさい、書き方が悪くて。

五十嵐君はお爺さんが決めた許嫁さんですので九州に住んでると思います(適当)


展開はどうでしょうかね・・・ハラハラはないと思うんですが始まったばかりなのでなんともお答えできません(笑)
言えるのはハピエンで終わらせるぞ!って事だけでしょうか。

ロマンス要素も・・・どうだろう?(笑)
前にも書きましたがコメディータッチのお話です。

出来るだけ甘くはしたいですが、私の場合どっちかって言うと切ないお話で甘くなるのでねぇ・・・。
期待薄でお願いします(笑)

「隣の部屋の彼」のリハビリ作品ですから(笑)

期待に反したらごめんなさいね♥

2018/11/01 (Thu) 17:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

お嬢様設定かもしれませんが英徳のお嬢のような感じじゃないですよ。田舎のお嬢さんって感じですかねぇ。
だって野宿してますもんね!

山奥から殆ど出してもらえなかったので世間知らず、ですね。

宮崎、確かまだ新幹線通ってないですよね?
で、世間知らずだから適当に来た電車に乗って、何処かで「東京」の文字を見つけたんですよ(笑)
そうしたら2日ぐらいかかるだろうと・・・。途中乗り間違いしたとかね(笑)


最近は少なくなったんでしょ?そういう方・・・ちゃんと保護されてるケースが増えてるって聞きましたが。

そうそう!危ないよね(笑)
それこそ響子とか渚沙とか小春とか出てきそう(笑)良く襲われなかったねぇ・・・つくしちゃん。



2018/11/01 (Thu) 18:10 | EDIT | REPLY |   

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